大自然の魔法師アシュト、廃れた領地でスローライフ

さとう

文字の大きさ
235 / 474
オーベルシュタイン、二度目の冬

第428話、冬のミュディ

しおりを挟む
「ん……寒い」
「んん~……」

 冬の寒い朝。
 ミュディは自室のベッドで目を覚ます……ベッドにはクララベルも一緒にいた。
 クララベルは、自室で寝るより他の人のベッドで寝ることが多い。最初の頃はローレライと一緒に寝ていたが、最近はミュディやシェリー、アシュトと寝ることが多かった。
 ミュディは、クララベルの頭を撫でる。

「クララベルちゃん、朝だよ」
「ん~……ミュディ? おふぁよぉ」
「おはよう。さ、着替えて朝ご飯にしよう」
「ん~」

 ミュディは素早く着替え、自分の髪を櫛で整える。
 未だに寝ぼけ気味のクララベルの着替えを手伝い、鏡の前に座らせて髪を梳かした。
 実はミュディ、この瞬間がたまらなく好きなのである。
 自分の髪より、誰かの髪を梳かしたり結ったりするのが好きだった。
 
「クララベルちゃん、三つ編みにしていい?」
「いいよ~……くぁぁ」

 欠伸をするクララベルの髪を三つ編みに結う。
 櫛を通さなくてもサラサラな白髪は触っていて気持ちいい。当の本人であるクララベルは『姉さまが伸ばしているからわたしも伸ばした!』くらいの認識で髪を伸ばしている。なのであまり髪型に興味がない。
 ミュディの部屋で寝た翌日はクララベルの髪型がいつのもストレートではない。

「できた。ふふ、今日は緩い三つ編みでーす」
「おお~!」

 緩めに結った三つ編みはクララベルによく似合っている。
 ようやく目が覚めたクララベルは、その場でくるりと回って三つ編みを揺らした。

「ありがと、ミュディ!」
「うん。じゃあ、朝ご飯行こっか」
「お腹へったー」

 二人は仲良くダイニングルームへ。
 三つ編みをみんなに褒められ、クララベルはとっても上機嫌だった。

 ◇◇◇◇◇◇

 朝食後、ミュディはライラと手をつないで職場である製糸場へ。
 製糸場には魔犬族の少女たち、悪魔族と天使族、帰省せず村に残ったアラクネー族が数名だ。
 その中には、分厚いセーターとニット帽をかぶった少女、アラクネー族のアンナがいた。

「おはよー、アンナちゃん」
「わん。アンナ、おはよう」
「ライラ、ミュディさん。おはよう」

 アラクネー族とゴルゴーン族は寒さに弱い。
 ゴルゴーン族は下半身が蛇なので習性も蛇に似ている。村にいたゴルゴーン族は故郷に帰省した。どうやら冬眠に入るらしい。
 アラクネー族も寒さに弱く、冬眠こそしないが家にこもり切りだ。大半のアラクネー族は帰省したが、何人かは村に残り、防寒対策をして仕事をしている。
 最初は蜘蛛の下半身が怖いとアンナを避けていたライラだが、今はとっても仲良しだ。

「ミュディさん、今日の仕事は……」
「うん、ディミトリ商会に卸す商品だね。防止にマフラー、靴下かな」
「わかりました」

 すると、従業員の天使や悪魔たちがぞろぞろ入ってきてミュディに挨拶した。
 全員揃い、今日の仕事内容を説明。簡単なミーティングを終え、さっそく仕事に取り掛かる。
 今や、『ミュディ・ブランド』は村の大事な産業だ。
 ちなみに、ミュディの生市場は個人にノルマを与え、そのノルマを終えた者は自分で好きな物を作っていいという決まりがある。
 半日ほどで終わるノルマだ。ノルマを終えたライラは自分の荷物から編みかけの毛糸を取り出した。

「わぅぅ~ん♪」
「ライラ、何を作ってるの?」

 アンナが聞くと、ライラは嬉しそうに答えた。

「えへへ。毛糸のぱんつ! ミュアとルミナとー、マンドレイクとアルラウネとー、わたしのぶん! 寒いときは毛糸のぱんつがあったかいって、エルミナが言ってたの」
「なるほど……ぱんつ、ですか」
「わうぅ。あ、アンナは履いてないね」
「はい……あ、温かいんでしょうか?」

 アラクネー族は、上半身が人間で下半身が蜘蛛という種族だ。
 本来は服を着ない種族で上半身なのだが、村に住む以上は胸を隠せという命令だ。なので、下着というものをよくしらない。
 
「じゃあ、アンナのも作るね!」
「え……い、いいの?」
「うん。じゃあ、サイズ計らせてね」
「は、はい」

 ライラはメジャーを取り出し、アンナの下半身のサイズを測る。
 足が八本なので下着を通す穴は八つだとか、通すのが大変なので履くのではなく着るようにすればいいとか、アンナと二人で相談しながらデザインをする。

「……ふふっ」

 そんな二人を見て、ミュディは優しく微笑んだ。

 ◇◇◇◇◇◇

 仕事が終わり、ライラはアンナと一緒に帰った。
 今日はアンナ家でお泊りするらしい。どうもぱんつがどうのこうのと喋っていたようだ。
 ミュディは、一番最後に製糸場を出て鍵を閉める。

「ん~……っ、今日も疲れたぁ」

 大きく背伸びをして歩きだすと……目の前に見知った人が。

「あ、エルミナー!」
「ん、ミュディ! お疲れ、仕事終わり?」
「うん。エルミナも終わり? 一緒に帰ろ」
「ええ。帰ったらお風呂行きましょ……なーんか疲れたわ」

 エルミナは首をコキコキ鳴らした。
 けっこう疲れているようだが、すぐに笑顔になる。

「そうだ。ねぇミュディ、今日みんな誘ってさ、バーでお酒飲まない?」
「あ、いいね。それなら、アリューシア様をお誘いしてもいいかな」
「アシュトのお母さんでしょ? もちろん……やっぱアシュトなし、女だけで飲みましょ! ローレライとクララベルとシェリーと……あ、シルメリアたちも誘ってさ!」
「面白そう! でも、アシュト、かわいそうかも」
「大丈夫だいじょーぶ。アイゼンと飲めばいいわよ」
「……そうだね」

 なんとなく、ミュディは納得した。
 それに、女だけでする飲み会が楽しみだった。

「あ、そういえばさ、メージュたちが森に入って狩りをしに行ったらしいんだけど……」
「どうしたの?」
「んー、なんか変な風だったって。アシュトに伝えた方がいいって言ってたわね」
「……風?」
「うん。私らハイエルフは風を読んだりするのが得意だからね。メージュ曰く、森の風がおかしいって」
「……なんだろう。大変なことなのかな?」
「さぁね。でもま、村に害はなさそうだから安心しなよ」
「う、うん」

 だが……この『風』の正体が、久しぶりの来客に繋がることになるとは、エルミナもミュディも気付くことはなかった。
しおりを挟む
感想 1,145

あなたにおすすめの小説

腹違いの妹にすべてを奪われた薄幸の令嬢が、義理の母に殴られた瞬間、前世のインテリヤクザなおっさんがぶちギレた場合。

灯乃
ファンタジー
十二歳のときに母が病で亡くなった途端、父は後妻と一歳年下の妹を新たな『家族』として迎え入れた。 彼らの築く『家族』の輪から弾き出されたアニエスは、ある日義母の私室に呼び出され――。 タイトル通りのおっさんコメディーです。

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」 前世、15歳で人生を終えたぼく。 目が覚めたら異世界の、5歳の王子様! けど、人質として大国に送られた危ない身分。 そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。 「ぼく、このお話知ってる!!」 生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!? このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!! 「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」 生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。 とにかく周りに気を使いまくって! 王子様たちは全力尊重! 侍女さんたちには迷惑かけない! ひたすら頑張れ、ぼく! ――猶予は後10年。 原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない! お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。 それでも、ぼくは諦めない。 だって、絶対の絶対に死にたくないからっ! 原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。 健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。 どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。 (全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。