大自然の魔法師アシュト、廃れた領地でスローライフ

さとう

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オーベルシュタイン、二度目の冬

第430話、妖狐族のカエデ

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 カエデを連れて村に戻ってきた。
 カビの採集は諦めた。バルギルドさんと別れ、手をつないで俺の家に向かう。
 カエデは、村をキョロキョロ眺めていた。

「こんな村があったなんて……わらわの村よりも大きいのじゃ!」
「あはは。オーベルシュタインは広いからね」
「うむ。わらわの村はみんな妖狐なのじゃ。わらわは……うぅ」
「大丈夫大丈夫。泣かないで」
「うむ……な、撫でてもいいのじゃぞ?」
「はいよ……なでなで」
「きゅぅぅん……気持ちいいのじゃ。母さまみたい」

 カエデの頭を撫でると、キツネ耳がぷるっと動き、四本のモフモフ尻尾がふんわり揺れる。
 それにしても、妖狐族か……久しぶりに、新しい種族の子に会ったな。
 後で、ディミトリ辺りに聞いてみるか。

「あ、着いた。ここが俺の家」
「おぉぉ~~~……おっきいのじゃ」
「うん。あ、そうだ。カエデと同じくらいの子が何人かいるけど、仲良くね」
「うむ。わらわ、村でも友達はおおいのじゃ」

 家に入ると、シルメリアさんが編み物をし、その近くでミュディが読書をしていた。

「ご主人様。お帰りなさいませ」
「アシュト、おかえり」
「ただいま。ん……?」

 あれ、カエデがいない……あ、いつの間にか俺の後ろに隠れていた。
 俺の背中に隠れるが、大きなモフモフ尻尾は隠れていない。
 なので、シルメリアさんとミュディが首を傾げていた。

「ほらカエデ、出ておいで」
「う、うむ……」

 ちょこんと顔だけを出し、ミュディたちを見る。

「ん? 誰かな?」
「ご主人様、この子は……?」
「この子はカエデ。ちょっとわけありで、カビを採取しに行った洞窟で出会ったんだ。しばらくここで預かろうと思う」

 俺はカエデを前に出し、頭を撫でる。
 ミュディは尻尾が気になるのか、すぐに反応した。

「わぁ……尻尾、すっごくもふもふだね」
「う、うむ……尻尾はわらわの自慢なのじゃ。妖狐族でもこれほどのもふもふはいないって、母さまが言ってたのじゃ!……あ」

 と、ここでカエデのお腹がグルル~っと鳴った。
 そういや、もうお昼すぎだ。俺も腹減ったな。

「よし。シルメリアさん、簡単な昼食をお願いします。ミュディ、カエデに着替えと風呂を任せていいか?」
「かしこまりました」
「わかった。じゃあカエデちゃん、わたしと一緒にお風呂行こうか」
「風呂!? 風呂があるのか!?」
「うん。アシュト、村長湯借りていい? まだ来たばかりだし、いろんな人に会わせるのは早いと思うから」
「もちろん。好きに使ってくれ」

 シルメリアさんはキッチンへ。ミュディはカエデと手をつないで浴場へ向かった。
 俺も少し休んでから、カエデとお話しますかね。

 ◇◇◇◇◇◇

 お風呂から戻ったカエデは、とってもホクホクしていた。
 というか……かなり長風呂だった。

「最高だったのじゃ……」
「アシュトアシュト、カエデちゃんの尻尾すーっごくもふもふなの! う~ん可愛いぃ~♪」

 ミュディも興奮してた……カエデ、抱きしめられてるけど風呂の余韻なのか抵抗しない。
 カエデ、まさかの風呂好きだった。
 さて、さすがに腹も減ったしご飯の時間だ。
 俺はカエデをリビングのソファに座らせた。

「おお、これは」
「今日は特別。リビングでサンドイッチってのもたまにはいいだろ? ほら、ミュディも座って」
「うん。カエデちゃん、隣いいかな?」
「うむ。遠慮せずに座るのじゃ」

 カエデとミュディは仲良しになっていた。
 裸の付き合いのせいか。少しでもカエデの不安が消えればそれでいいか。
 俺も座り、シルメリアさんも(ちょっと強引に言って)座らせた。

「じゃ、いただきまーす」
「いただくのじゃ!……あむ、ん!! うまいのじゃ!!」
「よかったです。ほら、こぼしていますよ」
「む……すまんのじゃ」

 シルメリアさんはカエデの世話をする……なんか、ネコミミ美女がキツネ耳少女の世話をするっていいな。
 ミュアちゃんと同い年くらいだからなのか、手慣れている。
 俺とミュディもサンドイッチを食べ、食後にシルメリアさんは紅茶を淹れてくれた。

「ふぅ、お腹いっぱいなのじゃ」
「よかった。シルメリアさん、カエデの部屋だけど」
「はい。使用人邸に用意します」
「あ、待って。今日はわたしの部屋で一緒に寝るね。それに……」
「…………」

 カエデは、ミュディの袖を掴んでいた。
 俺が「カエデの部屋」と言った瞬間に掴んだようだ。それを察知したミュディはカエデの手を握り、柔らかく抱きしめて頭を撫でる。
 そっか、カエデ……家族とはぐれて寂しいんだな。
 それに、お風呂に入ってお腹いっぱいになったせいか、ミュディに抱きしめられて眠そうにしていた。

「カエデちゃん。少しお昼寝しよっか」
「うむ……少し眠いのじゃ」
「うん。じゃあ行こう。わたしのお部屋、あったかいしベッドもフカフカだよ」
「ん……」

 ミュディは俺に向かってウィンクし、カエデと一緒に部屋へ戻った。
 シルメリアさんは俺に紅茶のおかわりを注ぎ、聞いてきた。

「ご主人様。あの子は一体……」
「うん、説明するよ」

 俺はカエデ保護の経緯を説明した。
 ミュアちゃんたちにも紹介したいし、これからのこともちゃんと話合わないといけないけど……まずはゆっくり休んでからだな。

 ◇◇◇◇◇◇

 夜。俺はディミトリを呼び出しバーに誘った。
 最初、俺の呼び出しにいたく興奮し、アドナエルを出し抜いたとかでニヤニヤしっぱなしだった……いや、別にどっちでもよかったけどね。
 さっそく、カエデと妖狐族について話を聞いた。

「なるほど。妖狐族とは……あすがアシュト様ですな」
「知ってるのか?」
「ええ、モチロンでございます」

 ディミトリは血のように赤いワインを傾け、グラスをもてあそぶ。
 胡散臭いがディミトリはイケメンの部類に入る。こういう仕草も様になっていた。
 俺はセントウ酒をを飲み、チコレートをつまむ。

「妖狐族。狐族の上位種族で希少種ですネェ。最大の特徴は長く大きな尾」
「ああ、確かに。カエデの尾は四本あるな」
「ほう、若干九才で四本とは、かなり優秀なのですな」
「?……どういうことだ?」
「妖狐族の尾は、一つの魔法を極めた証明のような物です。つまり、妖狐族は魔法のスペシャリストなのですよ」
「魔法……そういえばカエデ、転移魔法を使ってここに来たとか」
「ふむ。転移魔法はかなり習得が難しい。おそらく、練習していたのでしょうネェ……」

 ディミトリが説明してくれた。
 妖狐族の尾は最大で九本。魔法を一つ極めるごとに増えていくらしい。
 《地水火風・光闇雷呪・空間》の九属性魔法を使用できるそうだ。空間魔法は悪魔族や天使族でも習得が難しいらしい……村に来る連中はポンポン使ってるからそんなイメージなかったよ。
 カエデの尾は四本。順番通り習得しているのなら、地水火風属性の魔法を習得している。

「順序を無視して空間魔法を使い、暴走してアシュト様の向かった洞窟に飛ばされた……ということでしょうな」
「そっか……なぁディミトリ、妖狐族の村がどこにあるかわかるか?」
「残念ながら……妖狐族は外部との関わりが薄く、『豆狸まめだぬき族』としか交流を持っていないそうです。ですが、おそらく……そのカエデ様の捜索は行っているはず」
「そっか……待つだけしかできないのか」
「フゥム……でしたら、ワタクシが何とかいたしましょう。知人に妖狐族がいらっしゃいますので、カエデ様のことをお話しておきます。そうすれば迎えに来ると思われますので」
「え、知り合いいたのか?」
「ええ。ですが、妖狐族の故郷の場所などは教えていただけませんでした」

 ここは、ディミトリの人脈に期待するか。
 それまで、カエデは村でのんびりさせよう。ミュアちゃんたちもいるし、いい友達になれそうだ。

「妖狐族かぁ……あんなに大きな尻尾で、髪も真っ白で……」
「ああ、妖狐族の体毛は季節によって変わりますネェ。冬は真っ白、春~秋は薄茶色になるそうです」
「え、そうなんだ。物知りだなぁ……ま、のめのめ。ここはおごりだ」
「これはこれは。フフフ、アシュト様のお役に立てたようで! やはりアシュト様、天使よりも悪魔がお似合いのお方ですネェ!」
「………‥いや、それはちょっと」

 とりあえず、カエデのことはなんとかなりそうだな。
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