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妖狐族の奇病
第441話、妖狐の回復
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原因がわかれば、あとは対処するだけだ。
俺はフヨウさんにお願いして緑龍の村から援軍を要請した。
エルダードワーフ、サラマンダーと力自慢に来てもらい、アウグストさんが記した里の詳細な地図をもとに、雪解け水が川に混ざらないように新たなルートを構築する。
あとはサラマンダーたちに作業を手伝ってもらい、雪解け水が流れる溝と溜池を掘ってもらった。
ちなみに、温泉の成分が溶けだした水は人体には有害だが、大地に染み込むと成分が分解されて無害となる。掘った溜池を仕切りで覆い、人が近づけないようにする。
それらの作業をアウグストさんに任せ、俺は宿の庭に魔犬族のみんなを呼んだ。
魔犬族のみんなは鼻を押さえながら並ぶ。
「みんな、臭い?」
「は、はい……鼻がおかしくなりそうだ」
そう言うのは、魔犬族のリーダーであるベイクドさん。
久しぶりに活躍できるのを喜んでいたけど、妖狐族の里に来たとたん顔色が悪くなった。
それに、ちょっとだけ驚いた。
「わぅぅ……」
「ライラちゃん、無理して来なくてもよかったんだよ?」
「わぅぅ!! わたしだって魔犬族だもん!! お手伝いするもん!!」
そう、ライラちゃんも来たのだ。
そりゃ「魔犬族のみんなに手伝って欲しいことがある」って言ったのは俺だけどさ。
ライラちゃんは鼻を押さえたままだ。魔犬の少女たちも気分が悪そうだし。
「えっと、みんなには温泉のガスが強く出ている場所を探してほしいんだ」
妖狐さんたちが倒れた原因は、雪解け水の摂取だけじゃない。
濃度の高い温泉ガスを吸い込んだことで、体調が急激に悪化したからだ。
なので、ガスが出ている場所に近づけないように、囲いをしなくちゃいけない。
ベイクドさんは、顔をしかめつつ頷いた。
「難しいが……たぶん大丈夫。匂いの濃い場所を探せばいいんだろう?」
「はい。それと、気分が悪い場合は無茶しないで」
「わかった。じゃあ、手分けして始めよう……ライラ、お前は」
「わたしもやる!」
「……わかった。じゃあ村長と一緒に行け。いいな?」
「わぅん!」
ライラちゃんは頷き、資材を持ったサラマンダーたちと一緒にベイクドさんたちは里を回り始めた。
ライラちゃんは、鼻を抑えながら俺に言う。
「お兄ちゃん。あぶない場所はわたしに任せてね」
「うん、ありがとう」
「くぅぅん……」
頭を撫でると、イヌミミがピコピコ動いた。
さて、危険個所の手入れはこのくらいでいい。
手入れはいいが、この硫黄の香りが強すぎるのは問題だ。
「ライラちゃん、お鼻は大丈夫?」
「わぅぅん……ちょっと苦しい」
「そっか。うーん……この匂い、少し減らせないか?」
匂いをなんとかする、か……消臭の植物ならあるけど。
よし、久しぶりに。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
《植物魔術・消臭》
〇消臭華
臭い匂いって我慢できない!!
そんな時はこれ、匂いを吸い込んじゃいます♪
単体じゃ消臭効果は弱いから、いっぱい植えるといいかもね?
それに、綺麗なお花も咲いちゃうのよ♪
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
お、いいなこれ。
アンスリウムか。聞いたことないけど、この本に書かれているなら問題ないだろう。
俺はさっそく杖を取り出し、近くの地面に向かって呪文を唱える。
「消臭、消臭、消臭力。みんなで消臭いざ招集。『消臭華』」
なんだこの呪文……と思ったら、地面に雑草みたいな葉っぱが生えた。
ギザギザした葉が四枚……え、これで終わり?
「わう?……なんかお鼻が楽になったかも」
「え」
ライラちゃんは鼻を押さえていた手を放し、アンスリウムをくんくん嗅ぐ。
「これの周り、お鼻いたくない!」
「えー……どう見ても雑草なんだけど」
「でもでも、まだ少し匂いするの。でも……このくらいなら平気なの」
確かに、少しだけ硫黄の匂いがする。
あとは、この雑草を生やしまくればいいな。
とりあえず、フヨウさんに許可をもらいに行こう。それに、エルミナたちの様子も見に行かないとな。
「よし、ライラちゃん、行こうか」
「うん!」
ライラちゃんと手を繋ぎ、フヨウさんのいる屋敷まで歩きだした。
◇◇◇◇◇◇
「…………ってわけで、里の周辺に消臭華を植えさせて頂いてもいいですか?」
俺とライラちゃんは、フヨウさんの屋敷へ来て事情を説明。
カエデにモミジさんもいる。ライラちゃんはカエデに手を振っていた。
俺の話を聞いたフヨウさんは、少しだけ悩む。
「もちろん構いませんが……硫黄は温泉の、里の香りです。それがなくなると思うと……」
「いえ、完全に消すんじゃなくて、濃度の高い場所と村の外周に少しだけです。この匂い、ちょっとキツイんですけど、なぜか癖になっちゃいますよね」
「それでしたら……そうだ、里に植えるということは、里を見て回るということですか?」
「はい。サラマンダーやドワーフたちも作業していますので、様子を見に行くつもりです」
「それでしたら……カエデ」
「はい、父上」
カエデはぴしっと返事をした。
なんとも礼儀正しい。それに尻尾モフモフで可愛いね。
「カエデ。アシュト殿に同行し里の案内をしなさい」
「え…‥あ、はい!!」
「アシュト殿。カエデを案内に付けますので」
「は、はい。じゃあよろしくな、カエデ」
「うむ!! じゃなくて……案内役、務めさせていただきます」
カエデは、座布団の上で手をついてお辞儀をした。
◇◇◇◇◇◇
「じゃ、行こうか」
「うむ!」
「わぅん!」
「みゃあ」
さっそく里へ───って、あれ?
なんかネコの鳴き声……って。
「ルミナ、いつの間に……」
「看病は任せてきた。あたいも行くぞ」
「おお、久しぶりなのじゃ!」
「ん。で、どこいくんだ?」
「わぅぅ、これから妖狐族の里を回るの!」
「ふふふ。おいしい《柏餅》の店や甘味処もあるのじゃ! わらわの案内に任せるのじゃ!」
「店って……あのな、とりあえず消臭華を」
「みゃあ。お腹減った、いくぞ」
「うむ! ついて参れ!」
「わうーん!」
「…………まぁいっか」
カエデが大きなモフモフ尻尾を振りながら歩きだし、俺たちも後に続いた。
ようやく、カエデとお話できる。
「カエデ、堅苦しい喋り方はしなくていいからな」
「う、む……でも、母上に叱られるのじゃ」
「俺としては、今の話し方がいいな。なぁライラちゃん、ルミナ」
「わん。わたしもそう思う」
「あたいは別に」
「ム……わかったのじゃ。みんなの前ではこのまま喋るのじゃ」
俺はカエデの頭を撫でる。
キツネ耳、シュッと立っているのがとてもかわいい。触り心地もいいし、ついつい揉んでしまう。
「ふぁぁ……気持ちいいのじゃ」
「はは。よかった」
「おい、あたいも撫でろ」
「わぅぅ……」
みんなの頭を撫でまくる。
もちろん、消臭華を植えるのを忘れない。
もらった地図を見ながら消臭華を植えて歩いていると、妙な店を見つけた。
「ん?……あれは?」
「あれは甘味処なのじゃ。おいしい柏餅やお団子が食べれるのじゃ」
「……かしわ、もち?」
聞いたことのない食べ物だ。
ルミナとライラちゃんは興味津々。寄ることがいつの間にか決定していたのか、カエデは迷いなく店の中へ。
「おばちゃん! 来たのじゃ!」
「はいはいいらっしゃい姫様。さぁさぁ……おや珍しい。狸さん以外のお客様かえ?」
五本のモフモフ尻尾を持つキツネ耳のおばちゃんだ。
冬なので毛は真っ白だ。外見は五十代くらいなのにすごい美人だ。
「おばちゃん! この人たちはわらわが世話になった人たちなのじゃ。とびっきりの柏餅と玉露を頼むのじゃ」
「はいよ。じゃあ席に座って待っててねー」
店内は広く暖かい。
それに、内装も……なんというか、見たことがない造りだった。
運ばれてきた《柏餅》にお茶……これ、《リョク茶》だよな? なんでここに。
このお菓子、葉っぱが巻かれている……どういうお菓子だ?
「この柏餅は、カシワの葉を剥いて食べるのじゃ」
「へぇ……カシワの葉なんて初めて見た」
「いただきまーす! わぅぅん」
「あむ、もぐ……みゃあ、甘いな」
不思議な味わいだった。
黒いマメみたいな甘い粒々、団子の生地だろうか? すごくモチモチしてる。
なるほど、これは美味い……さらにこのリョク茶、深い味わいだ。
すると、甘味処のおばちゃんが説明してくれた。
「この柏餅。昔は妖狐族の長だけが食べることのできたお菓子なのさ。当時、小豆は高級品でねぇ……あたしらみたいな庶民には食べることができなかったのさ。でもね、姫様のひいお爺さん……バショウ様が、大量の小豆を育てることに成功して、その方法をあたしら庶民に伝えてくれたのさ。それからさ、あたしら庶民の妖狐でも、小豆を使ったおやつを作ることができるようになったのは」
おばちゃんがしみじみと語ってくれた。
得意げに胸を張るカエデ。なるほど、小豆か……確かに美味しい。
ルミナが、くいくいと俺の袖を引く。
「みゃあ。おかわり」
「はいよ。ちょっと待っててね、ネコちゃん」
おばちゃんがおかわりを持ってきてくれた。
ルミナとライラちゃんは気に入ったようで、嬉しそうに食べている。
「ふっふっふ。わらわのおじい様はすごいのじゃ!!」
「そうだな。お爺さんって偉大だよな……」
俺は、ふと思い出した。
エストレイヤ家の偉大なる祖父、『巌窟帝』ギルガメッシュお爺様。
小さいころ一度だけ会ったことがある。
祖母もいるはずだけど……死んだという話は聞いてないから、どこかにいるはずなんだよな。
「どうしたのじゃ?」
「あ、いや。柏餅おいしいなぁーって」
「うむ。ならおかわりじゃ!」
消臭華を植える作業は、夜まで続けてようやく終わった。
俺はフヨウさんにお願いして緑龍の村から援軍を要請した。
エルダードワーフ、サラマンダーと力自慢に来てもらい、アウグストさんが記した里の詳細な地図をもとに、雪解け水が川に混ざらないように新たなルートを構築する。
あとはサラマンダーたちに作業を手伝ってもらい、雪解け水が流れる溝と溜池を掘ってもらった。
ちなみに、温泉の成分が溶けだした水は人体には有害だが、大地に染み込むと成分が分解されて無害となる。掘った溜池を仕切りで覆い、人が近づけないようにする。
それらの作業をアウグストさんに任せ、俺は宿の庭に魔犬族のみんなを呼んだ。
魔犬族のみんなは鼻を押さえながら並ぶ。
「みんな、臭い?」
「は、はい……鼻がおかしくなりそうだ」
そう言うのは、魔犬族のリーダーであるベイクドさん。
久しぶりに活躍できるのを喜んでいたけど、妖狐族の里に来たとたん顔色が悪くなった。
それに、ちょっとだけ驚いた。
「わぅぅ……」
「ライラちゃん、無理して来なくてもよかったんだよ?」
「わぅぅ!! わたしだって魔犬族だもん!! お手伝いするもん!!」
そう、ライラちゃんも来たのだ。
そりゃ「魔犬族のみんなに手伝って欲しいことがある」って言ったのは俺だけどさ。
ライラちゃんは鼻を押さえたままだ。魔犬の少女たちも気分が悪そうだし。
「えっと、みんなには温泉のガスが強く出ている場所を探してほしいんだ」
妖狐さんたちが倒れた原因は、雪解け水の摂取だけじゃない。
濃度の高い温泉ガスを吸い込んだことで、体調が急激に悪化したからだ。
なので、ガスが出ている場所に近づけないように、囲いをしなくちゃいけない。
ベイクドさんは、顔をしかめつつ頷いた。
「難しいが……たぶん大丈夫。匂いの濃い場所を探せばいいんだろう?」
「はい。それと、気分が悪い場合は無茶しないで」
「わかった。じゃあ、手分けして始めよう……ライラ、お前は」
「わたしもやる!」
「……わかった。じゃあ村長と一緒に行け。いいな?」
「わぅん!」
ライラちゃんは頷き、資材を持ったサラマンダーたちと一緒にベイクドさんたちは里を回り始めた。
ライラちゃんは、鼻を抑えながら俺に言う。
「お兄ちゃん。あぶない場所はわたしに任せてね」
「うん、ありがとう」
「くぅぅん……」
頭を撫でると、イヌミミがピコピコ動いた。
さて、危険個所の手入れはこのくらいでいい。
手入れはいいが、この硫黄の香りが強すぎるのは問題だ。
「ライラちゃん、お鼻は大丈夫?」
「わぅぅん……ちょっと苦しい」
「そっか。うーん……この匂い、少し減らせないか?」
匂いをなんとかする、か……消臭の植物ならあるけど。
よし、久しぶりに。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
《植物魔術・消臭》
〇消臭華
臭い匂いって我慢できない!!
そんな時はこれ、匂いを吸い込んじゃいます♪
単体じゃ消臭効果は弱いから、いっぱい植えるといいかもね?
それに、綺麗なお花も咲いちゃうのよ♪
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
お、いいなこれ。
アンスリウムか。聞いたことないけど、この本に書かれているなら問題ないだろう。
俺はさっそく杖を取り出し、近くの地面に向かって呪文を唱える。
「消臭、消臭、消臭力。みんなで消臭いざ招集。『消臭華』」
なんだこの呪文……と思ったら、地面に雑草みたいな葉っぱが生えた。
ギザギザした葉が四枚……え、これで終わり?
「わう?……なんかお鼻が楽になったかも」
「え」
ライラちゃんは鼻を押さえていた手を放し、アンスリウムをくんくん嗅ぐ。
「これの周り、お鼻いたくない!」
「えー……どう見ても雑草なんだけど」
「でもでも、まだ少し匂いするの。でも……このくらいなら平気なの」
確かに、少しだけ硫黄の匂いがする。
あとは、この雑草を生やしまくればいいな。
とりあえず、フヨウさんに許可をもらいに行こう。それに、エルミナたちの様子も見に行かないとな。
「よし、ライラちゃん、行こうか」
「うん!」
ライラちゃんと手を繋ぎ、フヨウさんのいる屋敷まで歩きだした。
◇◇◇◇◇◇
「…………ってわけで、里の周辺に消臭華を植えさせて頂いてもいいですか?」
俺とライラちゃんは、フヨウさんの屋敷へ来て事情を説明。
カエデにモミジさんもいる。ライラちゃんはカエデに手を振っていた。
俺の話を聞いたフヨウさんは、少しだけ悩む。
「もちろん構いませんが……硫黄は温泉の、里の香りです。それがなくなると思うと……」
「いえ、完全に消すんじゃなくて、濃度の高い場所と村の外周に少しだけです。この匂い、ちょっとキツイんですけど、なぜか癖になっちゃいますよね」
「それでしたら……そうだ、里に植えるということは、里を見て回るということですか?」
「はい。サラマンダーやドワーフたちも作業していますので、様子を見に行くつもりです」
「それでしたら……カエデ」
「はい、父上」
カエデはぴしっと返事をした。
なんとも礼儀正しい。それに尻尾モフモフで可愛いね。
「カエデ。アシュト殿に同行し里の案内をしなさい」
「え…‥あ、はい!!」
「アシュト殿。カエデを案内に付けますので」
「は、はい。じゃあよろしくな、カエデ」
「うむ!! じゃなくて……案内役、務めさせていただきます」
カエデは、座布団の上で手をついてお辞儀をした。
◇◇◇◇◇◇
「じゃ、行こうか」
「うむ!」
「わぅん!」
「みゃあ」
さっそく里へ───って、あれ?
なんかネコの鳴き声……って。
「ルミナ、いつの間に……」
「看病は任せてきた。あたいも行くぞ」
「おお、久しぶりなのじゃ!」
「ん。で、どこいくんだ?」
「わぅぅ、これから妖狐族の里を回るの!」
「ふふふ。おいしい《柏餅》の店や甘味処もあるのじゃ! わらわの案内に任せるのじゃ!」
「店って……あのな、とりあえず消臭華を」
「みゃあ。お腹減った、いくぞ」
「うむ! ついて参れ!」
「わうーん!」
「…………まぁいっか」
カエデが大きなモフモフ尻尾を振りながら歩きだし、俺たちも後に続いた。
ようやく、カエデとお話できる。
「カエデ、堅苦しい喋り方はしなくていいからな」
「う、む……でも、母上に叱られるのじゃ」
「俺としては、今の話し方がいいな。なぁライラちゃん、ルミナ」
「わん。わたしもそう思う」
「あたいは別に」
「ム……わかったのじゃ。みんなの前ではこのまま喋るのじゃ」
俺はカエデの頭を撫でる。
キツネ耳、シュッと立っているのがとてもかわいい。触り心地もいいし、ついつい揉んでしまう。
「ふぁぁ……気持ちいいのじゃ」
「はは。よかった」
「おい、あたいも撫でろ」
「わぅぅ……」
みんなの頭を撫でまくる。
もちろん、消臭華を植えるのを忘れない。
もらった地図を見ながら消臭華を植えて歩いていると、妙な店を見つけた。
「ん?……あれは?」
「あれは甘味処なのじゃ。おいしい柏餅やお団子が食べれるのじゃ」
「……かしわ、もち?」
聞いたことのない食べ物だ。
ルミナとライラちゃんは興味津々。寄ることがいつの間にか決定していたのか、カエデは迷いなく店の中へ。
「おばちゃん! 来たのじゃ!」
「はいはいいらっしゃい姫様。さぁさぁ……おや珍しい。狸さん以外のお客様かえ?」
五本のモフモフ尻尾を持つキツネ耳のおばちゃんだ。
冬なので毛は真っ白だ。外見は五十代くらいなのにすごい美人だ。
「おばちゃん! この人たちはわらわが世話になった人たちなのじゃ。とびっきりの柏餅と玉露を頼むのじゃ」
「はいよ。じゃあ席に座って待っててねー」
店内は広く暖かい。
それに、内装も……なんというか、見たことがない造りだった。
運ばれてきた《柏餅》にお茶……これ、《リョク茶》だよな? なんでここに。
このお菓子、葉っぱが巻かれている……どういうお菓子だ?
「この柏餅は、カシワの葉を剥いて食べるのじゃ」
「へぇ……カシワの葉なんて初めて見た」
「いただきまーす! わぅぅん」
「あむ、もぐ……みゃあ、甘いな」
不思議な味わいだった。
黒いマメみたいな甘い粒々、団子の生地だろうか? すごくモチモチしてる。
なるほど、これは美味い……さらにこのリョク茶、深い味わいだ。
すると、甘味処のおばちゃんが説明してくれた。
「この柏餅。昔は妖狐族の長だけが食べることのできたお菓子なのさ。当時、小豆は高級品でねぇ……あたしらみたいな庶民には食べることができなかったのさ。でもね、姫様のひいお爺さん……バショウ様が、大量の小豆を育てることに成功して、その方法をあたしら庶民に伝えてくれたのさ。それからさ、あたしら庶民の妖狐でも、小豆を使ったおやつを作ることができるようになったのは」
おばちゃんがしみじみと語ってくれた。
得意げに胸を張るカエデ。なるほど、小豆か……確かに美味しい。
ルミナが、くいくいと俺の袖を引く。
「みゃあ。おかわり」
「はいよ。ちょっと待っててね、ネコちゃん」
おばちゃんがおかわりを持ってきてくれた。
ルミナとライラちゃんは気に入ったようで、嬉しそうに食べている。
「ふっふっふ。わらわのおじい様はすごいのじゃ!!」
「そうだな。お爺さんって偉大だよな……」
俺は、ふと思い出した。
エストレイヤ家の偉大なる祖父、『巌窟帝』ギルガメッシュお爺様。
小さいころ一度だけ会ったことがある。
祖母もいるはずだけど……死んだという話は聞いてないから、どこかにいるはずなんだよな。
「どうしたのじゃ?」
「あ、いや。柏餅おいしいなぁーって」
「うむ。ならおかわりじゃ!」
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