大自然の魔法師アシュト、廃れた領地でスローライフ

さとう

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竜騎士とハイエルフ

第446話、メージュのプレゼント

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 クララベルから手に入れた情報を、さっそくメージュに報告した。
 メージュが仕事中に怪我をした……という軽い噓で仕事を抜け出し、薬院で話をする。

「あ、甘い物?」
「ああ。ランスローはかなりの甘党らしい」
「甘党……で、趣味とかは?」
「趣味は剣術と読書……」
「えー……じゃあ、甘い物しかないじゃん」
「だな。とりあえず、甘い物で考えればいいんじゃないか?」

 メージュは少し考える。

「甘い物……果物とかでお菓子作ろっかな」
「それがいいんじゃないか? 冷蔵庫に保存してあるし、『|花妖精の蜜《フェアリーシロップ』も備蓄がいっぱいある。ナナミからジャムもらうのもいいし……あ、妖狐族の里にある柏餅とかも美味いぞ」
「ん~……どうしよ。悩むなぁ」

 メージュはニヤニヤしながら悩む。
 頭の中では甘い物でいっぱいになってるだろう。
 
「ねぇ、村長は何がいいと思う?」
「ん~……この村には甘い物いっぱいあるしなぁ。無難なところでケーキとか……」
「それじゃつまんない! もっとこう……愛を感じるような、『これしかない!』ってやつを……」
「なんだそれ……ん~」

 愛する人への贈り物。
 メージュなりに、全力で取り組みたいんだろう。
 後悔しないように、自分にできる精一杯の愛で……。

「……そういえば」

 そういえば俺……結婚してから、ミュディたちに何かをプレゼントしたっけ?
 
「村長、どしたの?」
「……なぁメージュ、ちょっと相談乗ってくれ」
「……いや、マジでどうしたの?」

 俺は思ったことをメージュに相談した。
 嫁たちへのプレゼント……これを機に、俺も何か送ろう。

 結婚して一年以上経つのに、何もやってないことに気が付く俺だった。

 ◇◇◇◇◇◇

「あー……そりゃマズいね」
「うぅ……け、結婚記念日とか忘れてた」

 というか、ミュディたちも忘れている。
 誰も話題にしなかったし、それっぽいそぶりもなかった。
 メージュにお茶を出して相談すると、メージュは苦笑した。

「いやー……たぶん、村長やみんなが忙しかったからじゃないかな? 新婚旅行でみんな満足しちゃったのかもよ?」
「えぇ~……」
「むしろ、新婚旅行が記念日のプレゼント!とか思ってたりして」
「…………それじゃ駄目だろ」
「うん。駄目だね。よーし! これを機に村長も贈り物考えよう!」
「……だな。ありがとうメージュ。おかげで気付けた」
「うんうん。じゃ、もう一度考えて───」

 と、ここで薬院のドアがノックされた。
 俺とメージュは口を閉じ、メージュは指に包帯を巻く。

「アーシュトッ!……って、メージュじゃん。どうしたの?」
「あ、あーいやその、指を切っちゃってさ」
「ふーん。大丈夫なの?」
「う、うん」

 入ってきたのはエルミナだった。
 手に持っているのは木の箱だ。

「これ、カエデがくれた柏餅。一緒に食べよ!」
「お、おお。いいぞ」
「じゃ、あたしはこれで……」

 立ちあがり、すれ違うメージュに、俺は小声で言う。

「夜、バーで」
「わかった」

 メージュは手を振ってドアから出て行った。
 エルミナは柏餅の箱を開け、俺をジーっと見る。

「……アシュト、なんか変よ?」
「な、なにがだよ?」
「……ん~、まぁいいや。アシュト、お茶!」
「はいよ……」

 とりあえず、エルミナにはバレてなさそうだ……よかった。

 ◇◇◇◇◇◇

 夜。
 バーは『本日清掃中』の看板を出してもらい、メージュと二人で会った。
 バーテンダーのミリアリアに、二人で会うことは絶対に内緒と釘をさす。こういう時の銀猫族は信用できる。主の言うことは絶対だからね。
 カウンター席では話辛いので、窓際の席へ。
 酒を注文し、メージュはチコレートをモグモグ食べる。

「で、どうしよっか」
「そうだな……やっぱり甘い物で攻めた方がいいんじゃないか? 俺も少し考えたけど、全員に一個何かを送るんじゃなくて、結婚祝いに美味しい物を食べながらパーティーとかのがいい気がする」
「あまい! いい? 美味しい物なんてみんな食べ慣れてるのよ! だったら、心のこもった形のある物を送った方がいい!」
「お、おお……あれ、これって誰の相談だっけ」
「あ、いいこと考えた! 甘い物とエルミナたちの贈り物、一緒に考えよう!」
「……まぁいいか」

 話し合いの結果。
 甘い物と贈り物をすることになった。
 俺はミュディたちをパーティーに誘い、美味しい甘い物と贈り物をする。
 メージュはランスローに甘い物と贈り物をする。

「村長、あたしらだけで考えてもいい案は浮かばないから……」
「相談相手、誰かいるのか?」
「違う違う。エルミナが言ってた本あるでしょ? 開くといろんなことが書かれてる本」
「あ、そっか」
「そ! じゃあ最初、贈り物を調べて!」
「わかった。結局最後はこの本に頼るのか……」

 さっそく『緑龍の知識書ムルシエラゴ・グリモワール』を開く。
 贈り物……そうだな。男も女も喜ぶ贈り物……来い!!


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
氷の華フロストフラワー

〇今の季節ならではの贈り物!
 氷の洞窟に咲くこの花は、永久氷華とも呼ばれてるお花♪
 氷の花弁は美しく光り、決して溶けることのない永遠の美しさ♪
 アシュトくんの村からけっこう近いところに咲いてるわよ♪
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 なるほど、氷の華か。
 今の季節にピッタリだ。
 しかも、親切なことに『緑龍の知識書ムルシエラゴ・グリモワール』には地図が表示されている。いつも行くカビの洞窟の少し先だ。
 この花を持って行けば、いい贈り物になる。
 俺は開かれていた内容をメージュに説明した。この本に書かれている内容、俺以外に見えないんだよね。

「氷の華……いい!! すっごくいい!!」
「俺も気に入った。これなら、みんな喜んでくれそうだ」
「あとは甘い物だけど……」
「とりあえず、フルーツケーキでも作ればいいんじゃないか?」
「ん~……そうね。果物はあたしたちが作ったやつだし、甘い物はいつでも贈れるしね!」
「問題は、洞窟までどうやって行くかだけど……さすがに、護衛を連れて行かないと危険だぞ」
「あたしは狩人でもあるのよ? 風に聞けば危険な魔獣の位置とかわかるし、この辺りなら狩りとかでよく行くから大丈夫だって」
「……信じるぞ」
「任せなさい。ハイエルフ舐めないでよね!」

 というわけで、メージュと一緒に『氷の華』を採りに行くことになった。
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