大自然の魔法師アシュト、廃れた領地でスローライフ

さとう

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竜騎士とハイエルフ

第447話、氷の華を探して

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 メージュと打ち合わせをして数日後。
 早朝にカビを採取しに行くとみんなに伝えると、みんな露骨に嫌な顔をした……いや、カビだって立派な自然の恵みだよ? ミュディやローレライは苦笑し、エルミナとシェリーは『朝から変な話すんな』だし、クララベルは眠そうに欠伸した。
 とりあえず、出かけることにかんしては大丈夫そうだ。
 朝食後、仕事前のカーフィーをリビングで飲んでいると。

「そういやアシュト……最近、メージュと仲いいわね」
「ぶっ」

 エルミナが俺の隣に座り、腕に抱き着いて顔を近づけてくる。
 柔らかな胸の感触を味わう間もなく、エルミナは言う。

「……まさか、浮気?」
「ち、違うっての。それに、メージュは好きな人がいるだろうが。俺やお前のことを応援してくれたメージュに、俺が手を出すはずないだろ」
「……そーだけどー……なーんかメージュ、最近嬉しそうなのよねー」
「そ、そうなのか?」
「うん。それに、最近よく薬院に出入りしてんじゃん」
「……まぁ、怪我の治療をしにだけど」

 こ、こいつ……鋭いな。
 俺をジーっと見る目がなんか怖い……でも、バレるわけにはいかない。
 俺はエルミナの頭を撫でた。

「ったく。俺を信用しろって」
「んー……わかった。ごめんね」

 そう言って、エルミナは離れた。
 
「私、研究室でお酒の研究してくる。じゃあね」
「ああ。いってらっしゃい」

 とりあえず、エルミナの追求から逃れた。
 さすがエルミナ。メージュとは何千年もの付き合いだし、微細な変化にいち早く気付いたんだろう。
 たぶん、ルネアも。エレインとシレーヌも……もっと気を付けないとな。

 氷の華を採りに行くのは明日……慎重に行こう。

 ◇◇◇◇◇◇

 翌日。
 朝食に『おにぎり』を作ってもらい、家を出た。
 普段通り態度なので、当然護衛が付いているとシルメリアさんは考えている。だがその護衛がメージュだとは知るまい……くっくっく。
 村の入口に、メージュがいた。

「村長、こっちこっち」
「ああ」

 メージュは、スヤスヤ寝ているフンババの陰に隠れていた。
 ちなみに、フンババは俺の命令で寝ている。俺が村から出たら魔力を通じた命令で起こすつもりだ。
 フンババの陰で『緑龍の知識書ムルシエラゴ・グリモワール』を開く。
 『氷の華』のページには地図が書かれており、丁寧に緑龍の村の位置まで書いてあった。

「…………ふむ。距離的に徒歩二時間くらいか。でも、整備されてない道だから、それ以上かかるな」
「あたしには何も書かれてないように見えるけど……」

 メージュが本を覗き込むが、何も書かれていないように見えるらしい。
 だが、俺にはわかる。

「ま、道案内は任せろ。その代わり、魔獣の気配とかは任せる」
「うん。じゃあ、遅くならないうちに行こう」
「おう……あ、これ。シルメリアさんからもらったおにぎり。コメを握って固めた物だ」
「お、いいね。じゃあ食べながら行こっか」

 こうして、俺とメージュによる『氷の華』探索が始まった。

 ◇◇◇◇◇◇
 
 歩き始めて数十分……俺は早くも疲れていた。
 ざっくざっく、ざっくざっくと雪を踏みしめながら歩き、早くも汗だくに。

「あ、足、取られ……お、重いっ」
「村長ぉ~……雪をそんなに強く踏みしめるからだよ。仕方ないなぁ……」

 メージュはカバンから、妙な『何か』を取り出す。
 木を丸く加工し、縄を括りつけたような……なにこれ?

「これ、かんじきっていう道具。靴に付けて歩くと雪の上を歩けるの」
「そ、そんな道具が?」
「うん。ハイエルフの里じゃけっこう使ってるよ。いちおう用意しといたけどよかった」
「メージュ……!! お前最高だぜ!!」
「はいはい。ほら付けて付けて」
「おう……(こんなのあるなら最初から出してほしかった)」
「何か言った?」
「い、いえ」

 丸いわっかに紐をくっつけたような道具だ。
 これを両足に付けて歩くと、確かに足が沈まない。
 それに、滑り止めにもなる。

「……なるほど。このわっかが体重を分散させるから、雪の上でも沈みにくいのか」
「いや、難しいこといいから。ほら行くよ」
「はーい」

 かんじきのおかげで歩くペースが上がった。
 俺が道を示し、メージュが周囲を索敵して魔獣を避けて進む。
 かれこれ一時間ほど歩き、メージュが止った。

「村長、止まって……何かいる」
「!!」

 俺は立ち止まり、メージュの傍へ。
 風は吹いていない。でも、メージュの髪がなびいた。
 魔力を感じる……そっか、メージュが魔法を使ってるんだ。

「…………でっかい。それに息が荒い……お腹減ってるのかな……」
「お、おい……魔獣か? 肉食なのか?」
「静かに。大丈夫だって。あたしがいるんだから……風向きに気を付けて迂回すれば大丈夫」
「メージュ……!!」

 なんて頼りになるハイエルフだ。
 一応、杖を握っているけど……っていうか、植物魔法って冬でも使えるのかな。
 メージュは風を読み、『あたしについてきて』と言って歩き出した。
 そして、そのまま歩くこと数十分。魔獣を撒いた。
 俺は地図を見ながら歩く。

「……たぶん、この辺りだと思うんだけど」

 周囲を見るが、雪が積もった地面や岩、木々しかない。
 メージュもきょろきょろするが、首を傾げた。

「ほんとにここ?」
「あ、ああ。地図の上ではだけど……」
「その地図、大丈夫なの~? ここまで来て無駄足とか、マジで勘弁……ん?」
「メージュ?」

 メージュが立ち止まり、足下をジーっと見た。
 
「…………え、風?」
「は?」
「足下、ここから下……風が吹いてる」
「え……?」

 足下。
 雪の積もった地面だ。さっきまで歩いていたので足跡がくっきり残っている。
 メージュが手をかざすと、雪と土がブワッと舞った。

「お、おい!?」
「見て……これ、土じゃない。この下に大きな空洞がある……まさか、洞窟?」
「洞窟って……」
「待って。風を読む…………あ、そこ!!」

 メージュが指さしたのは、大きな岩だった。
 雪が積もっている大岩にしか見えない。だが、メージュは何かに気付いた。

「村長、その岩の下から風が流れてる!!」
「マジか……よし、どかしてみよう」
「うん!! 任せて」

 メージュが風魔法を使うと、岩がゴロンと転がった。
 そして、岩の下に亀裂があり、下に通じる穴が空いていた。
 その穴を覗き込むと……俺でも感じる。風の音だ。

「こんな隠し洞窟があったなんてな……」
「この岩が守ってたのかな……ねぇ、行ってみよう」
「ああ。慎重に行くぞ」

 俺とメージュは、洞窟の中を進むことにした。
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