大自然の魔法師アシュト、廃れた領地でスローライフ

さとう

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春の訪れ

第454話、兄さんたちがやってきた!

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 冬が終わり、ようやく春。
 故郷に戻っていたフレキくんやエンジュたちも戻り、村は再び動き出した。
 畑仕事や建築が始まり、メージュとランスローの結婚式準備も進んでいる。
 
 建築では、いくつかの飲食店とバーを建てることになった。
 飲食店は妖狐族の居住者が希望し、バーはなんとアーモさんとネマさんがやりたいそうだ。冬の間、銀猫のミリアリアの元でお酒の修行をしたり、ディアーナがベルゼブブかでバーを経営している悪魔族を紹介していろいろ教えてもらったりしたそうだ。
 ディアーナは、二人になら任せられると言っていたし、問題ないだろう。
 
 畑仕事は、メージュの代わりにハイエルフのペルチェが代理のリーダーとなった。
 結婚式関係でメージュは忙しい。なので、代理でメージュが任命したんだけど……最初はルネアに任せようとしたが、ルネアが『わたし、人の上に立つの無理』とか言うので、代理としてペルチェが選ばれた。
 ルネアはメージュの友人としてずっと一緒だったが、ペルチェはメージュの下でいろいろ学んでいた。なので、農園関係の仕事を任せられるとのことだ。

 俺も、温室の土壌をウッドと整備し、アウグストさんに頼んで温室を建て直してもらった。
 マンドレイクとアルラウネも温室を心待ちにしていたようで、完成するなり薬草を植えようと俺をせかした。なので、今は温室に薬草の苗を植えてある。
 
 雪も殆ど溶け、かまくらや雪ダルマは崩れてしまった。
 ライラちゃんが悲しんだけど……春の暖かさを感じるとすぐに元気になった。
 そして、カエデや妖狐族の人たちは、体毛が綺麗な茶色になった。
 今までは真っ白だったからちょっと印象が変わった。でもモフモフ尻尾は変わってない。

 モフモフで思い出したが……ニコニコアザラシが何頭か牧場に住み着いてしまった。
 雪が消えるなり冬眠から覚めて元の場所に帰るかと思ったんだけど……いや、実際にけっこう帰った。でも、牧場が気に入ったのか十頭くらい住み着いてる。
 キングシープやクジャタとも仲がいいみたいだし……なんとも不思議だ。

 ベヨーテも、門番に復帰した。
 フンババの相棒として、村の正門を守っている。
 家の中に作った花壇のおかげで元気だった。やはり、植木鉢で一冬過ごすのと、花壇という広い場所で過ごすのでは違うらしい。俺に感謝していたようだ。

 そして、センティも冬眠から覚めた。
 冬の間は地中で寝ているようだが、ある日いきなり村の中央広場からボコっと現れた……その現場にちょうどいた俺は驚いて転んでしまった。センティ、このことは忘れないからな。

 緑龍の村に、春が訪れた。
 そして……リュドガ兄さんたちがやってきた。

 ◇◇◇◇◇◇

「兄さん! いらっしゃい」
「リュウ兄!」
「久しぶりだな、二人とも。元気だったか?」
「お姉さま!」
「ミュディ、元気にしていたか?」
「じーじ!」
「じじ!」
「おお、孫たち。はは、大きくなったなぁ」

 兄さん、ルナマリア義姉さん、スサノオとエクレールが、竜騎士たちの背に乗ってやってきた。
 背に乗ってというか、ドラゴン四匹で運搬する専用の乗り物でだ。小さな一軒家に頑丈な鎖を巻き付け、そのままドラゴンで運ぶという。
 シェリーが兄さんに抱き着いて甘えているのを見ながら、俺は言う。

「兄さん。家を用意してるから、荷物を置きに行こう」
「ああ。っと……アシュト」
「ん?……あ」

 リュドガ兄さんの視線は、父上に甘えるスサノオとエクレール。その近くで微笑んでいる母上だ。
 すると、父上が二人に何かを言い、スサノオとエクレールが母上の元へ。

「ばーば?」
「じじがばばだって。ちちうえのおかーさん?」
「……ええ、そうよ」
「ばーば、初めて見た」
「あたしも!」
「そうね……よろしくね」
「はい! よろしく、ばーば!」
「ばば、いっしょに遊ぼ!」

 スサノオとエクレールは、母上にくっついたり引っ張ったりしていた。
 母上は腕を引っ張られて痛いのか……少し涙目だ。
 でも、笑顔だった。今まで見た中で、一番の笑顔かもしれない。

「……心配なさそうだな」
「うん……」
「ま、あたしは心配してなかったし。それよりリュウ兄、家に案内するから! ほらチビたち、お家に行くわよー!」

 シェリーが母上の元へ。そして、子供たちを連れて宿となる家に向かう。

「ふふ、シェリーちゃん楽しそう」
「そうだな。リュドガ、アシュト、ミュディ、私たちも行こう」

 ミュディとルナマリア義姉さんも後に続き、父上と母上も歩きだす。
 俺はリュドガ兄さんと顔を合わせた。

「改めて、いらっしゃい兄さん。話したいこといっぱいあるんだ」
「オレもだ。その前に……美味いカーフィーを飲ませてくれ」
「うん!」

 俺と兄さんは、並んで歩きだした。

 ◇◇◇◇◇◇

 兄さんたちの宿は、空き家をそのまま使うことにした。
 ベッドや家具を入れ、お世話係の銀猫を一人派遣する。
 食事は宿でも俺の家でも取ることができるようにする。ちなみに今日は歓迎会ということで、俺の家でパーティーをすることになっている。
 家に着いて荷物を置くなり、スサノオとエクレールは村の散歩に出たがった。こうなることを予想していたので、シェリーにお任せする。

「さ、行くわよ」
「やった! おばちゃん、どこいく?」
「おばちゃん、ねこいないのー?」
「ねこ……ミュアならあたしたちの家にいるわね。っていうかおばちゃんってやめて。なんかグサっとくるから……」

 シェリーは若干のダメージを受けて出ていった。
 俺もおじさんって言われたらショックだしな……気持ちはわかる。
 残された俺たちはソファに座り、ここの世話係となった銀猫のオードリーにカーフィーを淹れてもらう。
 兄さんはカーフィーを味わい、ふぅと息を吐いた。

「……美味い」
「レッドリヴァーって高級品なんだ。兄さんが気に入ると思って」
「へぇ……なぁアシュト」
「もちろん、お土産としていっぱい持って帰ってね」
「さすがオレの弟。ありがとう」

 俺もカーフィーを飲む……うん、やっぱりうまい。
 ルナマリア義姉さんとミュディは砂糖とミルクをたっぷり入れ、父上はブラック、母上はカーフィーではなく紅茶を飲んでいた。
 少し落ち着き、俺は切り出す。

「兄さんたち、どのくらい滞在できるの?」
「……十日ほどか。ルナマリア」
「そのくらいだ。休暇は二十日だが、ビッグバロッグ王国で国王主催のパーティーがあってな。私とリュドガはエストレイヤ家として出席しなければならない」
「そっか。ふふ、読み通り……」
「アシュト?」

 兄さんが首を傾げる中、俺は言う。

「あのさ、結婚式と新年会を開催するから、兄さんたちも参加してほしい」
「新年会……ああ、ヒュンケルが参加したやつか」
「うん。実はさ、兄さんたちの滞在が十日くらいって見込んで、いろいろ予定を入れたんだ」

 大きなイベントは結婚式と新年会だ。
 これから十日の間にイベントが二つ。ディアーナたちと文官たちは頑張っている。
 けっこう無茶なことを言ったが、まかせろとばかりに予定を調整してくれた。
 最初にメージュとランスローの結婚式、そして新年会だ。
 準備は、冬の間に進めていたから大丈夫!
 兄さんは、笑顔でうなずいた。

「新年会か。オレたちや子供たちにとっても、いい思い出になりそうだ」
「ああ。実に楽しみだ」

 兄さんとルナマリア義姉さんは、嬉しそうに笑った。
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