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クララベルの甘いお菓子屋さん
第459話、春のエルミナ
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「アシュト~」
「ん、エルミナ?」
ある日、図書館に本を返しに行こうと歩いていると、エルミナが来た。
エルミナは俺の隣に並び、一緒に歩く。
「どうしたんだよ?」
「ん、べつに。最近、メージュのことでいろいろ忙しかったし、アシュトも家族団欒で楽しそうだったし、あんまりお喋りできなかったからねー」
「確かに……」
エルミナの言う通りだ。
ミュディやシェリーと過ごすことが多く、ローレライとクララベル、エルミナと過ごす時間が少ない。
父上や母上、兄さん一家が来てたから気を遣ったのかもしれないけど、やはり寂しいな。
「じゃあ、図書館にでも行くか。一緒に本でも読もう」
「えーやだ。あのさ、散歩しない? 春になって村も活気が出てきたしさ、一緒にいろいろ散歩しようよ」
「んー……まぁいいか。じゃあ図書館に本を返してから行こう」
「うん!」
そういって、エルミナは俺の腕を取る。
こういうの久しぶりだな。なんとなく俺も嬉しい。
「ところでそれ、なんの本?」
「オードリーおすすめの恋愛小説」
「あんた、そんなの読むの?」
「そんなのって……別にいいだろ。ってか、これ書いたのお前の祖父だぞ」
「おじいちゃん、なんでもできるのよねー」
エルミナと談笑しつつ、図書館に本を返却した。
◇◇◇◇◇◇
エルミナと散歩。
道はすっかり雪も消え、雑草や花が咲いている。
日差しも暖かく、散歩日和だ。ハイピクシーたちが飛び回り、ブラックモールの子供たちや、すっかり成長したサラマンダー族の子供たちが遊んでいる。
「今さらだけど、すごく発展したよなぁ」
「そうね。私とアシュトだけ……あ、ウッドもいたわね。あの頃が懐かしいわ」
「三年経ったのか」
「うん。時間ってのはあっという間ね」
エルミナは大きく伸びをする。
本当なら二十一歳だ。でも、身体の成長が殆ど止まったような俺は外見の変化がない。九千歳を超えるエルミナが外見年齢十八歳なんだ。俺もこの姿のまま年を重ねるのかな。
「あ、見て」
「お、これは……飲食店だな」
「うんうん。すっごく楽しみね!」
ドワーフたちが基礎工事している現場に来た。
ここには、妖狐族の移住者がきて飲食店を経営することになっている。
妖狐族は魔法のスペシャリストだが、緑龍の村では魔法よりも料理の腕を買われての移住だ。妖狐族は、これまで出会った種族の中でもずば抜けて料理上手なのだ。
肉や魚はもちろん、調味料や香辛料にも詳しく、なんとコメまで扱っていた。
知識も豊富で、妖狐族の長であるフヨウさんが、疫病から里を救ったお礼にと、腕の立つ料理人を何人か送ってくれたのだ。
飲食店は全部で四件。さらに夜は酒場になり、それとは別にバーも三軒開店する。
バーの一軒は、アーモさんとネマさんが経営する予定だ。冬の間、ミリアリアからカクテルの作り方をじっくり学んだようだし、あの二人なら安心できる。
「私も何かやろうかなー……」
「お前は酒造りがあるだろ?」
「そうだけどね。あ、そうだ! 今度人狼族の村に行って清酒見てこなきゃ! アシュト、あんたも一緒に行くわよ!」
「お、おお……」
エルミナは眼を輝かせていた。
とりあえず、エルミナには酒造りを頑張ってもらおう。
再び歩きだし、村はずれにある石切り場にやってきた。
ここは、ゴルゴーン族の仕事場だ。石を切って加工する場所で、ベルゼブブに卸す彫刻を作っている。
「お。村長ー!」
俺たちの元へ来たのは、ゴルゴーン族のステンナだ。
上半身は胸を隠すサラシだけで、下半身は蛇という女性だ。手にハンマーとノミを持ち、嬉しそうに手をブンブン振っている。
奥の方では、仲間のエウリーとリュアレが同じようにノミとハンマーを使い、彫刻を作っていた。
「忙しそうだな」
「いやー、春になったとたん、仕事がわんさと入って来ましてねー」
「彫刻づくりだっけ? 大変よねー」
「いえいえ、めっちゃ面白いんで幸せっすよ。あの村長、故郷から何匹か移住希望出てるんですけど……あと、うちら三人だけじゃ仕事追っつかないので、増員していいっすか?」
「いいぞ。ゴルゴーン族の家の建築をしないとな……ディアーナに俺が許可したって伝えて、移住の準備を進めてくれ」
「やった! ありがとう村長!」
「うん。仕事の邪魔して悪かったな、じゃあ」
「どもどもー!」
ステンナは頭をペコっと下げた。
仕事の邪魔しちゃ悪いので別の場所へ向かう。
「アシュト、緑龍の村って住人どのくらいいるの?」
「んー……ディアーナに聞けばわかるけど、たぶん二千よりは少ないと思う」
「……三年前は私とウッドだけだったのにね」
「だな。ははは、すごいわ」
改めて整理する。
人間(ハイヒューマン)、ハイエルフ、エルダードワーフ、デーモンオーガ、人狼族、サラマンダー族(リザード族含む)、銀猫族、魔犬族、闇悪魔族(悪魔族含む)、熾天使族(天使族含む)、ハイピクシー、ブラックモール族、黒猫族、ゴルゴーン族、アラクネー族、ダークエルフ族、半龍人、龍人、そして妖狐族……増えたなぁ。
「村の面積も広がってるし、このまま町にしちゃったら?」
「いや、まだまだだろ」
「ハイエルフの里や人狼族の村より大きいじゃない」
「そんなに焦る必要ないだろ? のんびり行こう」
「はいはい。あ、見て」
『もきゅ』
ニコニコアザラシの子供が、地面を這っていた。
花の泉に帰ることなく住み着いた個体だ。牧場にも大人のニコニコアザラシがまだ残っていることから、すっかり村のペットみたいになってしまった。
エルミナはそっと子供を抱きあげる。
「ん~もふもふ。かわいいわねー」
『きゅうー』
「たしかにもふもふ……かわいいな」
『もきゅう』
エルミナの撫でている子供を撫でる……うん、もふもふ。
抱っこしたまま散歩を再開すると、小川近くにある東屋にシエラ様が座っていた。
いつもは急に背後に現れるんだけど、普通に出会ってしまった……なんか物足りないって思う自分がいる。
「あら、アシュトくんにエルミナちゃん。こんにちは~♪」
「こんにちは、シエラ様」
「いつもは驚かすのに、普通な登場ですねー」
「ふふ。たまにはね~」
シエラ様は可愛らしく手を振った。
俺たちはシエラ様の傍へ。
「暖かくなったわねぇ」
「はい。もう春です。ところでシエラ様、冬の間はどちらに?」
そういえば、シエラ様を全く見かけていなかった。
何気なく聞くと、シエラ様はにこっと笑う。
「ちょっとジーニアスのところへね。あの子が働いている学校でお勉強を教えていたの」
「け、賢龍ジーニアス様の学校ですか……確か、魔法国マジックキャッスル」
「ええ。特別講師として招かれたの」
「…………」
賢龍ジーニアス様……確か、全裸にローブの龍だったな。
下着を履かないし、ローブの下は素っ裸という変態……いや、やめておくか。
「あ、そうだ。ねぇアシュトくん。ジーニアスがアシュトくんにお願いがあるって言ってたわ。そのうち連絡するから、本を手放さないようにって」
「本……?」
「私があげた本よ。ジーニアスの力が入ってるから、あの子の魔法も使えるわよ。そのうちの一つに『通信』って魔法があるから、連絡が入ると思うわ」
「は、はぁ……」
「アシュト、なーんか嫌そうね」
「だ、だってよ……嫌な予感しかしない」
エルミナがニヤニヤしているのがちょっとむかついた。
というか、賢龍ジーニアス様の頼み……なんだろうか。
「さて! アシュトくんとエルミナちゃんに会えたし、みんなでお茶にしましょう~♪」
「お、いいわね! じゃあアシュト、家の裏庭でお茶会にしましょ!」
「そうだな。久しぶりに、シエラ様とお茶会も楽しそうだ」
「うふふ。嬉しいこと言うわねぇ~♪ えいっ」
「え、ちょ」
「し、シエラ様!! 私の前でアシュトを誘惑しないでください!!」
俺の腕に抱きついたシエラ様と、それに対抗するエルミナ。
柔らかいのが両腕にぷにぷにと……この時ばかりは、ジーニアス様の『頼み』を忘れた。
ぷにぷには正義……だって俺、男だし! 柔らかいの好きだ!
「ん、エルミナ?」
ある日、図書館に本を返しに行こうと歩いていると、エルミナが来た。
エルミナは俺の隣に並び、一緒に歩く。
「どうしたんだよ?」
「ん、べつに。最近、メージュのことでいろいろ忙しかったし、アシュトも家族団欒で楽しそうだったし、あんまりお喋りできなかったからねー」
「確かに……」
エルミナの言う通りだ。
ミュディやシェリーと過ごすことが多く、ローレライとクララベル、エルミナと過ごす時間が少ない。
父上や母上、兄さん一家が来てたから気を遣ったのかもしれないけど、やはり寂しいな。
「じゃあ、図書館にでも行くか。一緒に本でも読もう」
「えーやだ。あのさ、散歩しない? 春になって村も活気が出てきたしさ、一緒にいろいろ散歩しようよ」
「んー……まぁいいか。じゃあ図書館に本を返してから行こう」
「うん!」
そういって、エルミナは俺の腕を取る。
こういうの久しぶりだな。なんとなく俺も嬉しい。
「ところでそれ、なんの本?」
「オードリーおすすめの恋愛小説」
「あんた、そんなの読むの?」
「そんなのって……別にいいだろ。ってか、これ書いたのお前の祖父だぞ」
「おじいちゃん、なんでもできるのよねー」
エルミナと談笑しつつ、図書館に本を返却した。
◇◇◇◇◇◇
エルミナと散歩。
道はすっかり雪も消え、雑草や花が咲いている。
日差しも暖かく、散歩日和だ。ハイピクシーたちが飛び回り、ブラックモールの子供たちや、すっかり成長したサラマンダー族の子供たちが遊んでいる。
「今さらだけど、すごく発展したよなぁ」
「そうね。私とアシュトだけ……あ、ウッドもいたわね。あの頃が懐かしいわ」
「三年経ったのか」
「うん。時間ってのはあっという間ね」
エルミナは大きく伸びをする。
本当なら二十一歳だ。でも、身体の成長が殆ど止まったような俺は外見の変化がない。九千歳を超えるエルミナが外見年齢十八歳なんだ。俺もこの姿のまま年を重ねるのかな。
「あ、見て」
「お、これは……飲食店だな」
「うんうん。すっごく楽しみね!」
ドワーフたちが基礎工事している現場に来た。
ここには、妖狐族の移住者がきて飲食店を経営することになっている。
妖狐族は魔法のスペシャリストだが、緑龍の村では魔法よりも料理の腕を買われての移住だ。妖狐族は、これまで出会った種族の中でもずば抜けて料理上手なのだ。
肉や魚はもちろん、調味料や香辛料にも詳しく、なんとコメまで扱っていた。
知識も豊富で、妖狐族の長であるフヨウさんが、疫病から里を救ったお礼にと、腕の立つ料理人を何人か送ってくれたのだ。
飲食店は全部で四件。さらに夜は酒場になり、それとは別にバーも三軒開店する。
バーの一軒は、アーモさんとネマさんが経営する予定だ。冬の間、ミリアリアからカクテルの作り方をじっくり学んだようだし、あの二人なら安心できる。
「私も何かやろうかなー……」
「お前は酒造りがあるだろ?」
「そうだけどね。あ、そうだ! 今度人狼族の村に行って清酒見てこなきゃ! アシュト、あんたも一緒に行くわよ!」
「お、おお……」
エルミナは眼を輝かせていた。
とりあえず、エルミナには酒造りを頑張ってもらおう。
再び歩きだし、村はずれにある石切り場にやってきた。
ここは、ゴルゴーン族の仕事場だ。石を切って加工する場所で、ベルゼブブに卸す彫刻を作っている。
「お。村長ー!」
俺たちの元へ来たのは、ゴルゴーン族のステンナだ。
上半身は胸を隠すサラシだけで、下半身は蛇という女性だ。手にハンマーとノミを持ち、嬉しそうに手をブンブン振っている。
奥の方では、仲間のエウリーとリュアレが同じようにノミとハンマーを使い、彫刻を作っていた。
「忙しそうだな」
「いやー、春になったとたん、仕事がわんさと入って来ましてねー」
「彫刻づくりだっけ? 大変よねー」
「いえいえ、めっちゃ面白いんで幸せっすよ。あの村長、故郷から何匹か移住希望出てるんですけど……あと、うちら三人だけじゃ仕事追っつかないので、増員していいっすか?」
「いいぞ。ゴルゴーン族の家の建築をしないとな……ディアーナに俺が許可したって伝えて、移住の準備を進めてくれ」
「やった! ありがとう村長!」
「うん。仕事の邪魔して悪かったな、じゃあ」
「どもどもー!」
ステンナは頭をペコっと下げた。
仕事の邪魔しちゃ悪いので別の場所へ向かう。
「アシュト、緑龍の村って住人どのくらいいるの?」
「んー……ディアーナに聞けばわかるけど、たぶん二千よりは少ないと思う」
「……三年前は私とウッドだけだったのにね」
「だな。ははは、すごいわ」
改めて整理する。
人間(ハイヒューマン)、ハイエルフ、エルダードワーフ、デーモンオーガ、人狼族、サラマンダー族(リザード族含む)、銀猫族、魔犬族、闇悪魔族(悪魔族含む)、熾天使族(天使族含む)、ハイピクシー、ブラックモール族、黒猫族、ゴルゴーン族、アラクネー族、ダークエルフ族、半龍人、龍人、そして妖狐族……増えたなぁ。
「村の面積も広がってるし、このまま町にしちゃったら?」
「いや、まだまだだろ」
「ハイエルフの里や人狼族の村より大きいじゃない」
「そんなに焦る必要ないだろ? のんびり行こう」
「はいはい。あ、見て」
『もきゅ』
ニコニコアザラシの子供が、地面を這っていた。
花の泉に帰ることなく住み着いた個体だ。牧場にも大人のニコニコアザラシがまだ残っていることから、すっかり村のペットみたいになってしまった。
エルミナはそっと子供を抱きあげる。
「ん~もふもふ。かわいいわねー」
『きゅうー』
「たしかにもふもふ……かわいいな」
『もきゅう』
エルミナの撫でている子供を撫でる……うん、もふもふ。
抱っこしたまま散歩を再開すると、小川近くにある東屋にシエラ様が座っていた。
いつもは急に背後に現れるんだけど、普通に出会ってしまった……なんか物足りないって思う自分がいる。
「あら、アシュトくんにエルミナちゃん。こんにちは~♪」
「こんにちは、シエラ様」
「いつもは驚かすのに、普通な登場ですねー」
「ふふ。たまにはね~」
シエラ様は可愛らしく手を振った。
俺たちはシエラ様の傍へ。
「暖かくなったわねぇ」
「はい。もう春です。ところでシエラ様、冬の間はどちらに?」
そういえば、シエラ様を全く見かけていなかった。
何気なく聞くと、シエラ様はにこっと笑う。
「ちょっとジーニアスのところへね。あの子が働いている学校でお勉強を教えていたの」
「け、賢龍ジーニアス様の学校ですか……確か、魔法国マジックキャッスル」
「ええ。特別講師として招かれたの」
「…………」
賢龍ジーニアス様……確か、全裸にローブの龍だったな。
下着を履かないし、ローブの下は素っ裸という変態……いや、やめておくか。
「あ、そうだ。ねぇアシュトくん。ジーニアスがアシュトくんにお願いがあるって言ってたわ。そのうち連絡するから、本を手放さないようにって」
「本……?」
「私があげた本よ。ジーニアスの力が入ってるから、あの子の魔法も使えるわよ。そのうちの一つに『通信』って魔法があるから、連絡が入ると思うわ」
「は、はぁ……」
「アシュト、なーんか嫌そうね」
「だ、だってよ……嫌な予感しかしない」
エルミナがニヤニヤしているのがちょっとむかついた。
というか、賢龍ジーニアス様の頼み……なんだろうか。
「さて! アシュトくんとエルミナちゃんに会えたし、みんなでお茶にしましょう~♪」
「お、いいわね! じゃあアシュト、家の裏庭でお茶会にしましょ!」
「そうだな。久しぶりに、シエラ様とお茶会も楽しそうだ」
「うふふ。嬉しいこと言うわねぇ~♪ えいっ」
「え、ちょ」
「し、シエラ様!! 私の前でアシュトを誘惑しないでください!!」
俺の腕に抱きついたシエラ様と、それに対抗するエルミナ。
柔らかいのが両腕にぷにぷにと……この時ばかりは、ジーニアス様の『頼み』を忘れた。
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