大自然の魔法師アシュト、廃れた領地でスローライフ

さとう

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クララベルの甘いお菓子屋さん

第462話、お菓子屋の準備

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「んー……」

 クララベルは一人、自室の机に向かい何かを書いていた。
 羊皮紙には、『お菓子屋さんの準備』と題名が記され、クララベルが思う必要な物が書きだされている。
 従業員、設備、ディスプレイ。そしてカフェスペースとも書かれていた。
 カフェスペースはローレライの提案で、勝ったお菓子をその場で食べれたら、という意見から採用した。
 ちなみに、お菓子屋の開業について、ディアーナは全面的に賛同している。飲食店やバーばかりで、こういった甘い物のお店がすっぽり抜け落ちていたようだ。
 クララベルは、羊皮紙をファイルに挟んで立ちあがる。

「よし! お散歩しながら考えよう!」

 アシュトやローレライは仕事中だ。
 村を歩けば誰かいる。その時に意見をもらえばいいだろう。
 そう思い、部屋を出たクララベル。
 外へ出ると、温かい日差しがとても気持ちいい。

「はぁ~~~……変身して飛びたいな」

 空は青く、雲一つない快晴だ。
 すると、家の前でウッドが日光浴をしていた。

「あ、ウッド」
『ヤッホー……アッタカ~』
「あはは。気持ちよさそう……あ、そうだ! オープンテラスとかいいかも!」
『?』

 さっそくヒントを見つけたクララベル。
 羊皮紙に『オープンテラス』と書き加える。

「ありがと、ウッド! さっそく思いついちゃった!」
『ヨクワカンナイケド、ヤッター!……クァァ、ネムイ~……オヤスミ~』

 そう言って、ウッドは大きな欠伸をして寝てしまった。
 春の陽気は、植物であるウッドにとって睡眠薬のようなものだ。
 クララベルはウッドを撫で、村を歩きだした。

 ◇◇◇◇◇◇

 散歩気分で歩いていると、東屋にネコが……いや、ミュアが丸くなって寝ていた。
 春の陽気で眠くなるのはウッドだけではない。ミュアは気持ちよさそうにスヤスヤ寝ている。
 クララベルが近づくと、ネコミミがぴこっと動きミュアが目を覚ました。

「にゃう~……ふにゃぁぁぁ」
「あ、起こしちゃった。おはよ、ミュア」
「クララベルおねえちゃん……にゃあ、おはよう」

 ミュアは目をこしこし擦り、大きく伸びをした。
 猫っぽい仕草が何とも可愛らしい……可愛らしい?

「そっか! 可愛い子……うんうん、接客に可愛い子がいればみんな嬉しいかも!」
「にゃう?」
「ミュア、わたしのお店で働かない?」
「おみせ?」
「うん! あのね、お菓子屋さんを開くの!」

 クララベルは、ミュアの隣に座ってお菓子屋の説明をする。
 話をしていうくちに、ミュアの目がキラキラ光り出した。

「にゃあ! やるやる、やりたい! お菓子屋さん面白そう!」
「やった! じゃあミュアは従業員一号!」
「にゃったー!」

 喜ぶミュア。
 シルメリアやアシュトの許可も取らねばならないのだが、二人はまだ気付いていない。
 すると、東屋の前を横切る銀猫が二人。

「あ、ナナミお姉ちゃんたちだー!」

 通りかかったのは、銀猫の中でも若手のナナミとミリカだ。
 外見はまだ十代半ばほど。とっても仲良しな銀猫だった。

「こんにちはクララベル様。で……ミュア、なにしてんの?」
「にゃう。クララベルお姉ちゃんがお菓子屋さん開くの」
「お菓子屋さん、ですか?」

 ナナミがミュアの頭を撫で、質問の答えを聞いたナナミがクララベルを見た。
 クララベルは、思いついたように言う。

「よし! 従業員二号、三号ゲット!」
「「にゃ?」」
「にゃったー! ナナミお姉ちゃんとミリカお姉ちゃんも一緒だー!」

 こうして、クララベルのお菓子屋さんの従業員が三人となった。

 ◇◇◇◇◇◇

 四人は場所を変え、公園にやってきた。
 この公園。村に子供たちが増えたので新しく作られたのだ。屋根付きの休憩スペース、エルダードワーフたちが作った遊具、水飲み場もある。
 クララベルは、休憩スペースのテーブルに羊皮紙を広げ、ミュアたちにお菓子屋さんの詳細を説明する。

「なるほど。お菓子屋さんの従業員……すっごく楽しそう!」
「で、でも……わたしたち、お仕事あるし……」
「ご主人様に相談すれば大丈夫だって! ね、クララベル様!」
「うんうん! お兄ちゃんならきっと大丈夫!」
「にゃあ。ご主人さまにお願いするー」

 ナナミ以外はノリノリだ。
 クララベルは、仕事の詳細を説明する。

「みんなには、接客や調理補佐をお願いしたいの。お菓子販売だけじゃなくて、カフェスペースでお菓子食べたり、お茶を飲んだりできるようにしたいなー」
「楽しそう! あたし、やりたいです!」
「わたしもー!」
「わ、わたしも……やりたいです」

 ミリカとミュアは元気よく、ナナミが控えめに喜んだ。
 だが、少し問題がある。

「でも、クララベル様……四人じゃちょっと厳しいかも?」
「んー……そうかも」
「大人の人が必要かも。力仕事もあるし、手際のいい男の人とか」
「そ、それに、カフェならお茶も出しますよね……? わたし、お茶にはあまり詳しくなくて……ミリカもでしょ?」
「う、うぐ……」
「にゃあ……わたしもわかんないー」
「…………」

 クララベルは少し考え……ポンと手を叩いた。

「そうだ! 一人いたかも!」

 ◇◇◇◇◇◇

「……え、えっと」

 ミュアたちと別れ、クララベルがやってきたのは、竜騎士団の訓練場だ。
 訓練中の騎士たちは敬礼してクララベルたちを出迎える。
 そして、クララベルが向かった先にいたのは。

「ゴーヴァン! ゴーヴァン、紅茶に詳しかったよね!?」
「く、クララベル様? その、いきなりどうされました……?」
「ゴーヴァン、わたしのお菓子屋さん、手伝って!!」
「え……」

 そう。クララベルの当ては、ローレライの騎士ゴーヴァンだ。
 ゴーヴァンは、ローレライのために紅茶の勉強をし、ローレライの気分に合わせて様々な紅茶を出している。自室には高級茶葉や珍しい茶葉が豊富に取り揃えてあると、ランスローから聞いたことがあった。
 いきなりのことで驚くゴーヴァン。
 ゴーヴァンにとってクララベルは仕えるべき姫の妹だ。だが、妹だからといって言うことを聞かないというわけではない。ゴーヴァンはドラゴンロード王国に忠誠を誓った騎士であり、王族の命令には絶対なのだ。

「く、クララベル様……ここでは目立ちますので、あちらへ」
「うん!」

 すると、騎士たちを掻き分けランスローが現れた。

「ひ、姫様! いったい何事ですか!?」
「あ、ランスロー。ごめんね、今日はゴーヴァンに用事があるの」
「……わ、私でなくゴーヴァンに?」
「うん。ゴーヴァン、はやくはやく!」
「は、はい」

 ゴーヴァンの背を押し、クララベルは訓練場の休憩スペースへ。
 当然、ランスローも付いてきた。
 クララベルは、ランスローに構わず話をする。
 お菓子屋さん、従業員、カフェスペース……そして、お茶。
 ゴーヴァンが紅茶通ということはランスローも知っている。さすがにこれには勝てそうにない。

「なるほど。私がそこで働くと……」
「うん!……だめ?」
「うぐぅ……か、構いませんと言いたいのですが、私はローレライ様の騎士。ローレライ様の許可がないと……」
「じゃあ姉さまに聞いてくるーっ!」
「え、あの!?」
「姫様!? お、お待ちを!!」

 クララベルは脱兎のごとく走り出した。
 慌てて追いかけるランスロー。見慣れた光景だ。

「…………紅茶を提供か」

 取り残されたゴーヴァンは、少し考える。
 紅茶は、ゴーヴァンの趣味だった。
 ローレライに提供するために学び始めたが、今やすっかり紅茶に詳しくなった。
 最近はカーフィー豆にも興味を持ち、悪魔族やリザベルに聞いて学んでいる。
 もし、自分の紅茶を提供する場ができたら……と、考えたら。

「…………ふむ」

 ゴーヴァンは、顔がにやけていることに気付いていなかった。
 そして、ローレライの許可が得られたことを知るのは、もう少し後のことだ。
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