大自然の魔法師アシュト、廃れた領地でスローライフ

さとう

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クララベルの甘いお菓子屋さん

第465話、お菓子屋ブランシュネージュ

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「これが内装でー、こっちがショーケース! こっちにクッキーとか並べて、こっちはカフェスペースなの!」
「これはまた……凝ったなぁ」
「うん!」

 ある日の夜。
 寝間着姿で俺の部屋にやってきたクララベルは、ベッドにたくさんの羊皮紙を並べてお菓子屋の説明をした。
 途中、ミュアちゃんとルミナも混ざって話をしていたが、二人は眠くなったのかベッドの隅で丸くなって寝ている。可愛いのでそのまま寝かそう。
 
「細かいお話も全部終わったし、あとは工事するだけなの」
「そっか。家具とか細かい雑貨も、アウグストさんに受注したんだな?」
「うん! ディアーナがいろいろやってくれたの。えへへ……明日から工事始まるから、楽しみ!」
「そうかそうか……クララベル、頑張ったな」
「えへへー……わたしね、忙しかったけどすっごく楽しかったの。お兄ちゃんや姉さまの力を借りようと思ったけど、今思うと借りないでよかった。わたし、お仕事の大変さと忙しさ、すっごくわかった気がする」
「クララベル……」

 クララベルは、羊皮紙を抱いてにっこり笑った。
 お菓子屋ブランシュネージュ。まだ始まってもいない。だけど、どんな困難があろうともクララベルなら乗り越えられる。そんな気がした。

「お兄ちゃん。お店ができたらお兄ちゃんを招待します!」
「うん。楽しみにしてるよ」
「みゃう……うるさい、明るい……」
「にゃあ……」

 おっと、ルミナとミュアちゃんが起きてしまう。
 俺とクララベルは頷き、羊皮紙を片付けベッドに潜り込んだ。

 ◇◇◇◇◇◇

 翌日から、さっそく工事が始まった。
 場所は、村の中心から少し離れた空き家を改装することになった。
 家の一階を広くして増築。二階をカフェスペースにすることで、一階で買ったお菓子をそのまま二階で食べることができる。

 キッチンスペースも大幅に改造。
 大型冷蔵庫を三台入れ、調理スペースもクララベルの好みに合わせて改造する。
 そして、キッチンの脇に小さな部屋を作り、従業員の着替えや休憩所にした。今は五人だけだが、これからもっと従業員が増える可能性も考慮する。
 
 クララベルが依頼した小物や家具も、続々と運ばれた。
 春に大量発生するスライムも捕まえ、店のショーケースや窓ガラスとして大いに役に立っている。
 クララベルは、工事用ヘルメットをかぶり、現場を見守ったり家具の配置などを指示するまでになっていた。
 その様子を、俺とローレライが影から見守る。

「クララベル、すっごく楽しそうだな」
「ええ……あんなに楽しそうなクララベル、初めて見たわ」
「だな。あ、そういえばこのことだけど……」
「もちろん。お父様とお母様に報告したわ。開店日に顔を出すって」
「く、来るのか……」
「ええ。それと……未確認だけど、もしかしたら……」
「ん?」
「いえ、なんでもないわ。お父様も『わからない』って言ってたし……」
「?……あ、そういえばアイオーンは?」
「あの子は冬の間ずっと部屋に引きこもって何か書いてるわよ」
「…………」

 そういえば、全く見ていない……ミュディが差し入れとか持って行ったようだけど。
 ローレライは、首を傾げていた。

「あの子、『春にイベントがあるんで冬が勝負なんです!』って、帰省から戻るなりずっと引きこもってるのよ。雪合戦や鍋会にも参加していないわね」
「……ふーん」

 イベント……なんか嫌な予感しかない。
 ま、まぁ今はクララベルのお菓子屋だ。

「とりあえず、俺たちにできることはなさそうだ」
「ええ。あの子に任せて……アシュト、お茶でもしない?」
「お、いいね」
「ふふ。美味しいカーフィーがあるの。私の部屋に行きましょう」
「ああ。お邪魔するよ」

 クララベル、頑張れよ。応援してるからな!

 ◇◇◇◇◇◇

 五日後……ついに、『お菓子屋ブランシュネージュ』が完成した。
 完成式典を執り行うとのことで、式の前に俺やミュディたちが先に店内を見せてもらうことに。
 お菓子屋の前に行くと、外観が見えた。

「おおー……こりゃすごいな」
「クララベル、やるじゃん」
「わぁ……すごぉい」
「へぇ~! いいじゃんいいじゃん!」
「素敵ね……」

 俺、シェリー、ミュディ、エルミナ、ローレライが建物を見上げる。
 完成までシートが掛けられて見えなかったので、俺も初めて見た。

「素敵ねぇ~♪」
「うおっ……し、シエラ様」
「ふふ♪ クララベルちゃんに呼ばれて来ちゃいましたぁ~♪」

 シエラ様はにっこり笑ってピースサイン。
 クララベル、シエラ様を呼ぶとか、なかなかやるな。
 すると、店内からクララベルたちが出てきた。

「いらっしゃいませ! えへへー、ミュディの作った制服、すっごくいいよ!」
「にゃあ!」
「いえい!」
「ちょっと恥ずかしいです……」
「アシュト様、姫様、奥方様。ようこそいらっしゃいました」

 クララベル、ミュアちゃん、ミリカ、ナナミ、ゴーヴァンが出迎える。
 女子は、白を基調としたフリフリのエプロンドレスだった。可愛らしいが決して派手ではない、動きやすさを重視し、どことなくミニスカートのメイド服っぽい。
 ゴーヴァンは、まんま執事服だ……いや、イケメンだし似合ってるよ?
 
「じゃ、みんな中にどーぞ! 今日のためにいっぱいお菓子作ったから、好きなだけ食べていいからね!」

 店内へ入ると、甘い匂いが鼻をくすぐる。
 
「うぉぉ……すっげぇ」

 思わず声が出た。
 カウンターがショーケースになっていて、カットされたホールケーキが何種類も並んでいる。
 クララベルがデザインした棚には、何種類ものクッキーやマカロンが陳列され、妖狐族の里で見た柏餅や、クララベルの作ったオリジナル作品がたくさんあった。
 他にも、ナナミとミリカが作ったジャムのコーナーもあったり、ゴーヴァンの趣味で集めた高級茶葉のコーナーもある。値段はそれ相応だが。
 
「アシュト、上見ましょうよ!」
「お、おお」

 エルミナに引っ張られ二階へ。
 二階はカフェスペース。お洒落な小物がいっぱいある可愛らしいカフェスペースだ。
 小さな円卓や椅子はドワーフたち渾身の一品。スライム製ガラスが張られた窓から日差しが差し込み、明るい空間を作りだしていた。

「お洒落ねぇ~♪ お姉さん、お茶飲みたくなってきちゃった」
「あ、じゃあ下でお菓子もらってきましょうよ!」

 エルミナがシエラ様を引っ張って一階へ。
 俺も続いて下へ降りると、ミュディやシェリーはすでにお菓子を選んでいた。
 たくさんのケーキを皿に取りご満悦のミュディ。シェリーはクッキーを齧りご機嫌で、エルミナとシエラ様はクリのケーキを指さして笑っている。
 ミュアちゃんたちもお菓子を選んで笑い、ゴーヴァンが紅茶の支度をする。
 そして、ローレライとクララベルは。

「姉さま、姉さまは何が食べたい?」
「そうね……あなたの一番好きなもの、かしら?」
「じゃあ、ショートケーキ! 姉さまと一緒に初めてたべたケーキ!」
「……ええ、そうね」

 ローレライは目元を拭い、クララベルと一緒にケーキを選び始めた。
 俺は、階段からその光景を見て思わず笑う。

「みゃあ。あたいもケーキ食べるぞ」
「うお!? ル、ルミナ、いつの間に……」
「ふん。あたいに黙って甘い物食べるなんて許さないからな」
「はいはい……」

 俺はルミナを連れ、クララベルたちの元へ。
 『お菓子屋ブランシュネージュ』、クララベルのお店は間もなく開店だ。
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