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日常編⑯
第470話、エルダードワーフとお酒を
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仕事が終わり、俺は村の大衆酒場にやってきた。
食堂。村に何軒かオープンし、妖狐族が運営している。
こうして入るのは初めてだ。
「ほらお兄ちゃん、席に座らないと」
「お、おお。でも、空いてなくないか?」
今日は、シェリーを連れてきた。
シェリーは軍属時代、こういうお店で部下と飲んだり食べたりすることが多かった。俺は殆ど無いのでシェリーに頼るしかない。
さて、どこに座ろうか。
食堂内はかなり広く、四人掛けくらいの円卓がいっぱい並んでいる。カウンター席もあるがハイエルフやドワーフたちで埋まっており、座れる場所がない。
すると、店の奥にある円卓から俺を呼ぶ声がした。
「おーい村長。こっちこいや!」
「あ、アウグストさんだ。お兄ちゃん、行こう」
「お、おお」
「お兄ちゃん、緊張しすぎ。こういう店に不慣れなの知ってたけど、店にいる人みんな知り合いでしょ? そう肩肘張らなくてもいいんだって」
「わ、わかってるって」
シェリーに連れられ奥の円卓へ。
四人掛けの席には、アウグストさんしか座っていなかった。他に誰か座っていた形跡もない。円卓の上には骨付き肉とエールのジョッキがあった。
席に座り、質問する。
「お一人ですか?」
「おう。マディガンとワルディオを誘ったんだが、あいつら金を使っちまったとか言いやがってなぁ……仕方なく一人で飲んでたら、村長たちを見かけたってわけよ」
当然のことだが、飲食店を利用するにはベルゼ通貨が必要だ。
この村にいる人たちは仕事をし、給料をもらっている。銀猫族の家事も安いながら料金を支払うシステムに切り替わっていた。
ベルゼブブやヘイブンと交流するようになり、この村の通貨制度もきっちりと形を整えた。
ちなみに、薬院は無料だ。怪我や病気をしてお金がないからなんて追い出すことは俺にはできないし。
なので、村長として給料をもらっている。まぁその……たぶん、村では一番多い金額だ。
「お兄ちゃん、注文しないと」
「あ、そっか。すみませーん!」
店員さんを呼ぶ。
ちなみに、この店の店員さんは全て妖狐族だ。
キツネの刺繍が背中にされたシャツとスカート、そしてキツネの模様が刺繍されたエプロンを着た女の子が、俺たちの円卓にやってきた。
「はいはーい! ご注文は?……お。村長じゃない」
「ん、えっと……」
「あはは。名乗ってないからわからないと思う。アタシや妖狐族のみんなはもちろん知ってるけどね。あ、アタシはレンゲ、この『キツネ亭』の看板娘ね! お父さんの料理、楽しみにしててね!」
レンゲと名乗った妖狐の少女。
ショートポニーが似合う十代半ばくらいの女の子だ。尻尾の数は四本。
なんでも、妖狐族の里で料理屋をやっていたけど、厳かでのんびりした雰囲気がどうにも合わなかったらしい。レンゲの一家は大衆酒場みたいに雑多な感じが好きなのだ。
緑龍の村の雰囲気は、レンゲ一家によく合ったそうだ。
「あ、ご注文! 村長、なににする?」
「えっと、俺は……とりあえずエールで。あと干し肉」
「あたしも。おつまみに焼き鳥、あとナッツも」
「わしもエールのおかわりを頼もうかの」
「はいはーい! ん~……こういう忙しさ、静かな妖狐族の里じゃ味わえないよ! じゃ、少々お待ちくださーい!」
レンゲは嬉しそうにカウンター奥へ。
シェリーはお冷を飲みながら言う。
「たしかに、妖狐族の里って静かだし、飲食店とかも静かでお喋りしにくいよね……もちろん、雰囲気はすっごくいけどさ」
「わかる。旅行とかするのには最高かもな」
「わしは温泉に行ったが、あそこの温泉は穴倉に負けとらんぞ」
それから、数分で飲み物が運ばれ、料理も運ばれてきた。
それぞれグラスを掲げる。
「じゃ、かんぱい!」
「「かんぱい!!」」
俺、シェリー、アウグストさんはグラスを合わせ、エールを飲む。
冷たく、シュワシュワしたエール特有の味が喉に流れ込む。
しかも、食堂内の熱気が合わさり、とても美味しく感じた。
「っぷぁ! 美味い!」
「はぁ~っ……最高!」
「仕事終わりはこれじゃねぇとな!!」
大衆食堂『キツネ亭』か。いいお店ができて嬉しいよ。
◇◇◇◇◇◇
エールを何杯かおかわりし、話も弾んできた。
俺は焼き鳥を食べながら、ほろ酔いのアウグストさんに聞く。
「アウグストさん、仕事でなにか困ったことあります?」
「あぁん?……ん~……特にねぇな。建築も村の拡張も順調に進んでいる。あ、そういやローレライの嬢ちゃんが言ってたな……そろそろ、図書館の本が入らんと」
「え……そうなんですか?」
「ああ。軽い愚痴みたいなモンだがな。百万冊入る図書館がいっぱいとはなぁ……念のため、図書館二号の図面でも引いとくかぁ」
「俺もローレライに確認してみます。シェリー、お前は何かあるか?」
「んー……あ、そうだ。竜騎士の宿舎、何か所か雨漏りしてるって言ってた。あと、マルチェラが言ってたけど、装備の保管庫があれば嬉しいって」
「そんなこと言ってたのか……俺、知らなかったぞ」
「ま、こっちも愚痴だけどね」
「アウグストさん……」
「わかったぜ。まぁ、竜騎士の宿舎は突貫工事で作ったしな。そろそろでっかく作りなおしてもいい時期だ」
そうだ。ランスローとゴーヴァン、そして竜騎士たち。いきなり来たガーランド王が置いていったんだよな。それで宿舎とか厩舎が必要になって、突貫工事で作ったんだっけ。
俺はシェリーに言う。
「シェリー、ランスローとゴーヴァンに宿舎改築するって伝えておいてくれ」
「わかった。ふふ、きっと喜ぶよ」
「アウグストさん、準備ができたら着工を」
「おう。まかせとけ」
酒場で仕事の話をしてしまった。
でも、酒場ならではの『世間話』から始まった会話がなかったら、図書館と竜騎士たち宿舎の問題を知ることはもっと後になってたかもしれない。
「さーて、仕事の話は終わりだ! 村長、肉食え肉!」
「は、はい」
「あ、あたしも食べる!」
俺はレンゲに肉の追加注文をして、アウグストさんとシェリーの三人で楽しんだ。
食堂。村に何軒かオープンし、妖狐族が運営している。
こうして入るのは初めてだ。
「ほらお兄ちゃん、席に座らないと」
「お、おお。でも、空いてなくないか?」
今日は、シェリーを連れてきた。
シェリーは軍属時代、こういうお店で部下と飲んだり食べたりすることが多かった。俺は殆ど無いのでシェリーに頼るしかない。
さて、どこに座ろうか。
食堂内はかなり広く、四人掛けくらいの円卓がいっぱい並んでいる。カウンター席もあるがハイエルフやドワーフたちで埋まっており、座れる場所がない。
すると、店の奥にある円卓から俺を呼ぶ声がした。
「おーい村長。こっちこいや!」
「あ、アウグストさんだ。お兄ちゃん、行こう」
「お、おお」
「お兄ちゃん、緊張しすぎ。こういう店に不慣れなの知ってたけど、店にいる人みんな知り合いでしょ? そう肩肘張らなくてもいいんだって」
「わ、わかってるって」
シェリーに連れられ奥の円卓へ。
四人掛けの席には、アウグストさんしか座っていなかった。他に誰か座っていた形跡もない。円卓の上には骨付き肉とエールのジョッキがあった。
席に座り、質問する。
「お一人ですか?」
「おう。マディガンとワルディオを誘ったんだが、あいつら金を使っちまったとか言いやがってなぁ……仕方なく一人で飲んでたら、村長たちを見かけたってわけよ」
当然のことだが、飲食店を利用するにはベルゼ通貨が必要だ。
この村にいる人たちは仕事をし、給料をもらっている。銀猫族の家事も安いながら料金を支払うシステムに切り替わっていた。
ベルゼブブやヘイブンと交流するようになり、この村の通貨制度もきっちりと形を整えた。
ちなみに、薬院は無料だ。怪我や病気をしてお金がないからなんて追い出すことは俺にはできないし。
なので、村長として給料をもらっている。まぁその……たぶん、村では一番多い金額だ。
「お兄ちゃん、注文しないと」
「あ、そっか。すみませーん!」
店員さんを呼ぶ。
ちなみに、この店の店員さんは全て妖狐族だ。
キツネの刺繍が背中にされたシャツとスカート、そしてキツネの模様が刺繍されたエプロンを着た女の子が、俺たちの円卓にやってきた。
「はいはーい! ご注文は?……お。村長じゃない」
「ん、えっと……」
「あはは。名乗ってないからわからないと思う。アタシや妖狐族のみんなはもちろん知ってるけどね。あ、アタシはレンゲ、この『キツネ亭』の看板娘ね! お父さんの料理、楽しみにしててね!」
レンゲと名乗った妖狐の少女。
ショートポニーが似合う十代半ばくらいの女の子だ。尻尾の数は四本。
なんでも、妖狐族の里で料理屋をやっていたけど、厳かでのんびりした雰囲気がどうにも合わなかったらしい。レンゲの一家は大衆酒場みたいに雑多な感じが好きなのだ。
緑龍の村の雰囲気は、レンゲ一家によく合ったそうだ。
「あ、ご注文! 村長、なににする?」
「えっと、俺は……とりあえずエールで。あと干し肉」
「あたしも。おつまみに焼き鳥、あとナッツも」
「わしもエールのおかわりを頼もうかの」
「はいはーい! ん~……こういう忙しさ、静かな妖狐族の里じゃ味わえないよ! じゃ、少々お待ちくださーい!」
レンゲは嬉しそうにカウンター奥へ。
シェリーはお冷を飲みながら言う。
「たしかに、妖狐族の里って静かだし、飲食店とかも静かでお喋りしにくいよね……もちろん、雰囲気はすっごくいけどさ」
「わかる。旅行とかするのには最高かもな」
「わしは温泉に行ったが、あそこの温泉は穴倉に負けとらんぞ」
それから、数分で飲み物が運ばれ、料理も運ばれてきた。
それぞれグラスを掲げる。
「じゃ、かんぱい!」
「「かんぱい!!」」
俺、シェリー、アウグストさんはグラスを合わせ、エールを飲む。
冷たく、シュワシュワしたエール特有の味が喉に流れ込む。
しかも、食堂内の熱気が合わさり、とても美味しく感じた。
「っぷぁ! 美味い!」
「はぁ~っ……最高!」
「仕事終わりはこれじゃねぇとな!!」
大衆食堂『キツネ亭』か。いいお店ができて嬉しいよ。
◇◇◇◇◇◇
エールを何杯かおかわりし、話も弾んできた。
俺は焼き鳥を食べながら、ほろ酔いのアウグストさんに聞く。
「アウグストさん、仕事でなにか困ったことあります?」
「あぁん?……ん~……特にねぇな。建築も村の拡張も順調に進んでいる。あ、そういやローレライの嬢ちゃんが言ってたな……そろそろ、図書館の本が入らんと」
「え……そうなんですか?」
「ああ。軽い愚痴みたいなモンだがな。百万冊入る図書館がいっぱいとはなぁ……念のため、図書館二号の図面でも引いとくかぁ」
「俺もローレライに確認してみます。シェリー、お前は何かあるか?」
「んー……あ、そうだ。竜騎士の宿舎、何か所か雨漏りしてるって言ってた。あと、マルチェラが言ってたけど、装備の保管庫があれば嬉しいって」
「そんなこと言ってたのか……俺、知らなかったぞ」
「ま、こっちも愚痴だけどね」
「アウグストさん……」
「わかったぜ。まぁ、竜騎士の宿舎は突貫工事で作ったしな。そろそろでっかく作りなおしてもいい時期だ」
そうだ。ランスローとゴーヴァン、そして竜騎士たち。いきなり来たガーランド王が置いていったんだよな。それで宿舎とか厩舎が必要になって、突貫工事で作ったんだっけ。
俺はシェリーに言う。
「シェリー、ランスローとゴーヴァンに宿舎改築するって伝えておいてくれ」
「わかった。ふふ、きっと喜ぶよ」
「アウグストさん、準備ができたら着工を」
「おう。まかせとけ」
酒場で仕事の話をしてしまった。
でも、酒場ならではの『世間話』から始まった会話がなかったら、図書館と竜騎士たち宿舎の問題を知ることはもっと後になってたかもしれない。
「さーて、仕事の話は終わりだ! 村長、肉食え肉!」
「は、はい」
「あ、あたしも食べる!」
俺はレンゲに肉の追加注文をして、アウグストさんとシェリーの三人で楽しんだ。
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