大自然の魔法師アシュト、廃れた領地でスローライフ

さとう

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日常編⑯

第471話、アシュト。たまには一人でのんびりする

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 さて、今日は仕事がお休みだ。
 温室で薬草採取し終わると、マンドレイクとアルラウネとウッドたちはフンババたちの元へ遊びに行った。
 ミュアちゃんたちも、カエデのいる妖狐族の里へ遊びに行ったし、ミュディやローレライたちはみんな仕事だ。
 つまり、俺は一人。
 庭でのんびり読書をして時間を過ごしている。

「…………」

 一人の時間、久しぶりだ。
 少し苦めの紅茶を飲みながら、クララベルが作ったクリパイを食べる。
 風の音を聞き、太陽の光を浴びながら読書するのは気持ちいい。

「…………」

 今、読んでいるのは恋愛小説だ。
 主人公はとある貴族の女性。だが、彼女には優秀な姉がおり、いつも比べられては蔑まれていた。
 そんな彼女には、愛する男がいた。
 姉の婚約者という、許されない恋……だが、婚約者もまた、姉ではなく妹である主人公を愛していたのだ。
 だが、その恋は実らない……でも、婚約者はなんと、結婚式当日に妹を攫って駆け落ちしてしまったのだ。
 愛、それはどんな障害でも乗り越える力……と。

「…………」

 まぁ、この小説書いたのジーグベッグさんなんだよな。
 あのハイエルフお爺さん、小説ジャンルの幅が広すぎる。若い頃はいろいろやったらしいけど……なんか、若い頃のジーグベッグさんに会ってみたい。

「…………ふぁぁ」

 本を閉じ、のんびり空を見上げる。
 時間的にはお昼前。お昼を食べるには少し時間がある。
 
「…………散歩でもしようかな」
 
 俺は立ち上がり、大きく伸びをした。
 たまにはこんな一人の時間もいいな。

 ◇◇◇◇◇◇

「はぁ~……誰もいない」

 俺は、温室近くの街道をのんびり歩いていた。
 俺の畑と温室がある場所はユグドラシルも生えており、たまにハイエルフたちが祈りを捧げている。
 今日は誰もいない。しかもシロもいない……ああ、ミュアちゃんたちが連れてったんだ。ウッドも一緒に。

「よっと……なーんか、今日はだらけちゃうな~」

 ユグドラシルの根元に座り、そのままゴロンと横になる。
 風が吹き、カサカサと葉が擦れる音が心地いい。春風が身体に染み込んでゆき、緑の匂いが鼻をくすぐる。
 やっぱり、ユグドラシルの下はいい。

「……ん?」

 俺は、シロの狼小屋を見た。
 そういえば、けっこうボロボロだな。ここに来て3年くらい。掃除や手入れはしているけど、けっこう痛んでいるように見える。
 小屋の中には、ボロボロのシーツや魔獣の骨、キラキラ光る石があった。全部シロの宝物だ。
 そろそろ、立派な小屋に建て替えてやるか。シロが帰ってきたら聞いてみよう。

「……よし。そろそろ行くか」

 腹も減ってきたし、お昼ご飯の時間だ。

 ◇◇◇◇◇◇

 お昼のスープカレーを食べ、再び外へ。
 本を数冊抱えてやってきたのは、ニコニコアザラシのいる花畑だ。
 いつも誰かがいるのだが、今日は誰もいない。お昼ご飯でも食べてるのだろうか?
 俺は東屋に向かい、本を置いた。

「ここは今日も平和だな……」

 大きなニコニコアザラシが、泉の傍で眠っている。
 村に出入りするニコニコアザラシも増えた。もふもふは大歓迎だ。
 俺は読書を開始……たまにニコニコアザラシを見て癒される。

「もふもふ……いいな」

 今、読んでいるのは冒険譚だ。
 冒険者と仲間が、大迷宮や古代の遺跡を冒険する物語。その仲間にヒツジが乗り物として登場するんだが……やはり、もふもふな動物ということで仲間たちに愛されている。
 もふもふ……うちにも、キングシープっていう巨大なヒツジがいる。
 もふもふっていうかモコモコだけど、大した違いじゃない。

「そういえば……」

 もふもふで思い出した。
 母上と一緒にエストレイヤ家に行ったニコニコアザラシの子供、元気かな。
 今度、母上に連絡して聞いてみるか。たぶん、エストレイヤ家の庭で元気にしているだろう。

「ふふ……今度帰省するのが楽しみだ」

 母上、庭園をやるって張り切ってたしな。
 ニコニコアザラシにとっても、いいことだろう。

「さーて、読書読書……」

 水筒を持ってきてよかった。
 俺は持参したカップに水筒の中身を入れ、読書を始めた。

 ◇◇◇◇◇◇

 夕方になり、家に帰った。
 夕飯を食べ、一人でのんびり浴場へ。
 村にはたくさんの街灯が設置されているので夜でも明るい。それに、飲食店やバーも新たに営業を始めたので、夜でも人の通りがあった。
 飲食店やバーが増えたことで、村への移住希望がまた増えた。主に天使や悪魔、妖狐族だ。
 
「そういえば……宿とかないよなぁ」

 移住希望ばかりで家は建ててるけど、宿泊施設がない。
 転移魔法で簡単に帰れるけど、やはり必要な気がする。
 この辺り、ディアーナに相談してみるか。

「と、考えてるうちに到着……」

 村長湯。相変わらず俺だけの浴場だ。
 たまに嫁さんたちも使うが、基本的には俺だけだ。住人も増えたし解放してもいいんだけど……なぜか、村の種族代表たちがこぞって反対した。
 というわけで、しばらくは俺だけの浴場だ。
 中へ入り、脱衣所で服を脱いで浴場内へ。
 身体を洗い、薬草がたっぷり入った壺湯へやってきた。

「う、ふぃぃぃ~~……」

 一人用の壺湯は、身体がすっぽり収まる大きさの壺だ。
 俺が厳選した薬草を網に入れて沈めてある。おかげで、薬草の効能がたっぷり溶けだした湯が、全身に染み込んでいくような気持ちよさだ。

「あぁぁ~~~……死んでしまうような気持ちよさぁ~~~……」

 死なないけどね。
 のんびりと壺湯に浸かり……少しのぼせて来たので上がった。
 ロテン風呂や蒸し風呂も入ろうか迷ったけど、今日はいいか。
 身体を流し、脱衣所へ。
 冷蔵庫で冷えているミルクを一気に飲みほした。

「っかぁぁ~~~っ!!」

 この一杯のために生きている。
 火照った体内に冷たいミルクを流し込むのはあまりよくないんだが、そんなのどうでもよくなるくらい気持ちいい……風呂、最高です。

「ぁぁ~~~……なんかのぼせてきた。今日は帰って寝るかぁ」

 着替えをして建物を出ると……夜風がまた最高に気持ちいい。
 少しゆっくり歩き、家に戻った。
 自室に向かい、寝間着に着替えてベッドへ飛び込む。

「はぁ~~~……今日はのんびりしたなぁ」

 読書ばかりの休日だった。
 明日から仕事だ。今日はのんびりしたし、また頑張ろう。

「あ~あ……俺、幸せ……だ……」

 そのまま目を閉じ、俺は夢の世界へ旅立った。
 明日も頑張ろう……そう思いながら。
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