大自然の魔法師アシュト、廃れた領地でスローライフ

さとう

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日常編⑯

第473話、川のせせらぎと昔話

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 ある日の休日。
 俺は、ローレライに誘われて図書館……ではなく、村を流れている川の上流にやってきた。
 手には数冊の本があり、東屋に本を置いておく。
 俺は、ローレライに言う。

「こんなところに東屋があったのか……知らなかったな」
「上流にはあまり来ないからね。ここ、村の人もあまり知らない場所なの」
「へぇ~……」

 河原というだけあり砂利の地面で、水の流れはゆったりでとても透き通っている。
 ローレライは、靴を脱ぎ素足にあり、川沿いの大きな岩に座って足を水に浸けた……こういう仕草、とても大人っぽいんだよなぁ。

「実はここ、私の日光浴ポイントなの。ここなら変身しても迷惑がかからないし」
「じゃあ、クララベルも?」
「ええ。あの子は所かまわず変身しちゃうけどね……最近はお仕事が忙しいおかげで、あまり変身することはなくなったけど」
「そっか……じゃあ、今日は」
「ええ。ここでゆっくり読書しましょう。図書館もいいけど、たまには自然に囲まれても悪くないわ」
「だな。じゃあ俺も少し……」

 俺は靴を脱ぎ、足を水に浸ける。
 ひんやりと気持ちいい。

「ふふ、どうかしら?」
「最高だな。川の流れる音、吹き抜ける風、太陽の光……大自然って感じだ」
「あら、詩人ね」
「本いっぱい読んでるからな」

 ローレライと笑いあい、東屋で読書を開始した。

 ◇◇◇◇◇◇

 しばらく、静かな時間が流れた。
 本のページをめくる音だけで、会話は特にない。
 川のせせらぎ、柔らかい風が運ぶ緑の匂いだけが世界のすべてで、こんなにも穏やかな時間は久しぶりだ。
 何か飲み物とかおやつでも持ってくれば……と思っていると。

「お兄ちゃーん! 姉さまーっ!」
「にゃあーっ!」

 とても元気な声が。
 声の方を見ると、クララベルとミュアちゃんがいた。
 手には大きなバスケットを持っている。

「えへへ。姉さま、ここにいたんだ」
「クララベル。今日はお店、お休みなの?」
「うん! のんびりお昼寝しようかなーって。そしたら、エルミナが姉さまとお兄ちゃんがここにいるって教えてくれたの」
「にゃあ。おやつ持ってきたの」

 ミュアちゃんがバスケットをテーブルに置いて開けると、クッキーやマフィン、ケーキなどがたくさん詰まっていた。すごく甘い匂いがする。
 
「お茶もあるの。ご主人さま、みんなでお茶にするー」
「そうだね。ありがとう、ミュアちゃん」
「にゃあ……ごろごろ」

 頭を撫でると可愛らしく鳴いた。
 クララベルはローレライの隣に座り、ミュアちゃんは背負っていたカバンからお茶の道具を取り出す。
 こういう場所でするお茶もたまにはいいな。

「はい、ご主人さま」
「ありがとう」

 カーフィーを受け取る。
 ローレライとクララベルは紅茶、ミュアちゃんは果実水だ。
 すると、東屋の屋根から黒い何かが落ちてきた……って。

「みゃあ。あたいも飲むぞ」
「にゃう!? ルミナ、いつのまにー」
「ふん。今日はお休みだからお昼寝してたんだ。ここ、静かで涼しいからよく来てる」

 なんと、ルミナがいた。
 全然気付かなかった……ルミナは俺に甘えてきたので頭を撫でる。

「ふふ、お菓子はいっぱいあるみたいだし、大丈夫よね」
「もちろん! えへへ、なんか楽しくなってきたー!」
「にゃあ。はいルミナ」
「ん」

 こうして、川辺でのお茶会が始まったのだった。

 ◇◇◇◇◇◇

 お菓子を食べ終わり、のんびりしていると……ミュアちゃんとルミナは寝てしまった。
 可愛いので、東屋のそばにシートを敷き、木陰に寝かす。
 
「にゃう……」
「みゃ……はむはむ」

 すると、ルミナがミュアちゃんのネコミミをはむはむした。
 愛らしい姿にしばし見惚れていると、ローレライが言う。

「そういえば、クララベルも小さいころ、私の尾をよく噛んでたわね」
「うぅ、だって姉さまの尻尾、おいしいんだもん」
「……味するのか?」
「うん!」
「しないわよ……まったく」

 クララベルはローレライの腕に抱きつく。
 そして、思い出したように言った。

「パパやママの尻尾も齧ったなー……おじいちゃんの尻尾も齧って怒られたっけ」
「そんなこともあったわね。それと、おじい様は怒ってないわよ。むしろ甘えるクララベルが可愛くてしょうがないみたいだったわ」
「そうなの?」
「おじい様って……ドラゴンだよな」
「うん! アンおじいちゃんとジルおばあちゃん。オーベルシュタインのどこかにいるってパパが言ってた」
「このどこかに?……とはいっても、オーベルシュタインは広いからなぁ」

 なんとなく空を見上げた。
 ルシファーやディミトリでさえ、オーベルシュタインの全貌を半分も把握できていない。まだまだ知らない種族や魔獣が山ほどいる。
 把握しているのは、シエラ様くらいだろう。

「お兄ちゃん、姉さま。アンおじいちゃんとジルおばあちゃんに、お菓子食べてもらいたいな」
「……難しいわね。おじい様とおばあ様、ドラゴンロード王国の運営から引退して、しばらくのんびりすると言ってから殆ど行方不明なのよね……オーベルシュタインにいるのは間違いないけど」
「んー……そっかぁ」
「……シエラ様なら知ってるかも」
「「あ」」

 俺がそう言うと、ドラゴン姉妹は俺を見た。
 困ったときのシエラ様。姉妹の祖父祖母に、おいしいお菓子を食べてもらいたい。
 
「どうする? 頼んでみようか?」
「うん!」
「そうね。私もご挨拶したいわ」
「うんうん♪ 困ったときのお姉さん頼みね~♪」
「ですねってぇぇ!? ビックリしたぁぁぁ!?」

 俺の隣に、シエラ様が座っていた。
 シエラ様は俺の腕にじゃれつきながら、クララベルに言う。

「クララベルちゃんのお爺ちゃんとお婆ちゃん。アンくんとジルちゃんね? オーベルシュタインの『大火山』近く温泉が湧いててね、そこでのんびりしているわ。そうね……私が呼んできてあげる」
「ほんと!? やったぁ!! シエラ様ありがとー!!」
「うふふ。どういたしまして~♪」
「シエラ様……ご足労おかけいたします」
「いいの。ローレライちゃんも会いたいでしょ? ガーくんとアルメリアちゃんにも伝えておいてあげる♪」

 シエラ様、相変わらず底が知れないな。
 それにしても、おじいちゃんとおばあちゃんかぁ。

「お爺様とお婆様かぁ……」

 エストレイヤ家にも、隠居した祖父と祖母がいるんだよなぁ。
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