大自然の魔法師アシュト、廃れた領地でスローライフ

さとう

文字の大きさ
290 / 474
グランドファーザー&マザー

第483話、祖父母たちの村巡り

しおりを挟む
 宴会翌日。
 俺は、おじい様と一緒に村の鍛冶場へやってきた。
 壊れたおじい様の籠手をラードバンさんに見せると、だいぶ呆れていた。

「こいつはダマスカス鋼で作られたやつだな。ふむ……装飾デザインを見ると、二百年前くらいに流行した模様じゃな。それに、この彫りの深さと造形……こいつはドワーフじゃない。エルダードワーフの仕事じゃ」
「え、そんなこともわかるんですか?」
「当然じゃ。だが、だいぶ酷使されちょる」
「がっはっは! まぁ手入れはあまりしなかったからのぉ」

 おじい様らしいな。
 ラードバンさんが籠手をテーブルに置き、小さなハンマーでコツンと叩くと、籠手は綺麗にパックリと割れてしまった。

「どうやら、ここにきて役目を果たしたようじゃな。完全な寿命じゃ……よくやったわい」
「…………そうかい」
「新しい武具の依頼じゃな? ほれ、手を出せ。腕の長さとサイズを測る」
「おお。よろしく頼むぜ。それと……こいつの供養もな」
「うむ」

 ラードバンさんはおじい様の腕の長さやサイズを測る。
 そして、テーブルに羊皮紙を広げ、図面を書き始めた。

「素材はオリハルコン製にしてやる。ダマスカス鋼の何倍も強い金属じゃ。お前さんの腕力にも十分耐えられる。それと、拳の大きさでわかったが、お前さんの拳は鈍器のような重さがある。少し重量を増すだけで攻撃力も相当上がるはずじゃ。どうする?」
「任せる。あんたはワシが見た中でも最強最高の職人のようじゃ。信頼しておるぞ」
「ふん。ガキめ。なまっちょろいこと言いいおって」

 おじい様をガキとは……確かに、エルダードワーフは長寿だし、俺やおじい様なんて子供みたいなモノだ。
 ラードバンさんは何の迷いもなく羊皮紙に籠手をデザインする。

「こんなもんかの。どうじゃ?」
「……あんた、最高の職人だぜ!」

 デザインされた籠手は、拳部分が少し大きくなった鈍器のような籠手だった。
 『轟拳アドゥレセンス』はエストレイヤ家の家宝。だが、こちらは実戦をより重視したデザインで、おじい様にピッタリの武器だ。

「名はお前さんが付けな。文句ねぇなら仕事を始める」
「名か。そうだな……よし決めた!! そいつの名は『岩窟拳アールマティ』だ!!」

 こうして。おじい様の新しい武器が完成した。

 ◇◇◇◇◇◇

 おじい様の武器は二日で完成した。
 ラードバンさんもノリノリで、不眠不休で仕上げたらしい。
 おじい様の拳には『岩窟拳アールマティ』が装備され、おじい様は子供のように拳を振っている。

「試し打ちしてぇ。アシュト、頼みがある」
「え、お、俺ですか!? あの、俺は殴られると死んじゃいますけど」
「馬鹿。おめぇみたいな虚弱を殴るつもりねぇよ。ここに強いのいるだろ? そいつと戦いてぇ。肌が黒い、頭にツノ生えた男たち」
「…………ああ、デーモンオーガですね」

 虚弱という言葉が地味にショックだった。
 デーモンオーガと模擬戦か。
 とりあえず、バルギルドさんたちがいる解体場へ。

「む……村長と、祖父殿か」

 ちょうど、バルギルドさんが魔獣の骨を運んでいた。
 ディアムドさん一家も揃ってる。いいタイミングだ。
 俺はおじい様を改めて紹介し、さっそくお願いしてみた。

「───ってわけで、おじい様と軽く戦って欲しいんですが……」
「頼むぜ。兄ちゃんたち、すげえ強いんだろ? ワシも疼いてのぉ」
「……オレは構わんが、手加減は苦手だ」
「いらねぇよ。手加減が必要な相手に見えるか?」

 おじい様、なんか言葉遣いが若々しくなってる気がする。
 二の腕の筋肉が盛り上がり、血管が浮いている。丸太並みに太い腕……この人、もう六十超えた人間だよな。どういう身体の構造してるんだ。
 すると、バルギルドさんの肩をディアムドさんが掴んだ。

「オレがやろう。祖父殿、いいか?」
「いいぜ。本気で来な」
「あ、あの。あまり無茶は」
「村長、下がってた方がいいです。父さん、本気ですよ」

 キリンジくんに押され、俺はその場を離れる。
 おじい様は首をコキコキ慣らし、ディアムドさんは指をバキバキ鳴らす。
 バルギルドさん、ちょっとウズウズしてる気がした。

「父さん、合図はオレが」
「任せる」
「はい。では……始め!!」

 その後、俺が見たのは……とんでもない殴り合いだったとだけ言っておこう。

 ◇◇◇◇◇◇

 その日の夜。
 俺は、ボロボロになったおじい様の背中を流していた。
 場所は村長湯。
「いい汗掻いたぜ!」と言うおじい様を連れて二人でやってきたのだ。

「くぅ~……ひっさしぶりにブン殴られたぜ。いやぁここに来てから随分と若返った気がするわい」
「おじい様……デーモンオーガと殴り合いした人間は、たぶんおじい様が初かと」
「そうか? がっはっは! オーベルシュタインは面白れぇなぁ!」

 身体を流し湯船へ。
 今日もいい温度だ。温泉もいいけど、やっぱり浴場は最高だ。

「おじい様、明日はどうします?」
「そうだな。今日はアシュトと遊んだし、明日はセレスティーヌと遊ぶかぁ……」
「じゃあ、妖狐族の温泉とかどうです? 村にある転移魔法陣で一瞬で行けますよ」
「ほお、そりゃいいな」

 おじい様たち、明日は温泉巡りをするそうだ。
 妖狐族の里は観光地だし、様々な種類の温泉がたくさんある。飲食店やお土産屋もあるし、のんびり過ごすにはいいところだろう。
 おばあ様、今日はシェリーやミュディと一緒に読書して過ごしたって聞いたし、明日はおじい様とデートってのも悪くない。
 と、なんとなくおじい様に聞いてみた。

「あの、おじい様。おじい様はどうして旅に出たんですか?」
「ああ~……まぁ、見てのとおりよ。ワシは貴族のしがらみとか大っ嫌いでな。戦場で暴れたり、強くなるために修行したりするのが大好きだったのよ。セレスティーヌに惚れて結婚しアイゼンが生まれて、しばらくはエストレイヤ家にいたけどよ、アイゼンがそこそこ強くなって使えるようになったから全部くれてやったのよ。んで、若いころできなかった世界中を巡る旅に出たってわけだ。まぁ、セレスティーヌまで付いてくるとは思わんかったけどな。がっはっは!」
「ご、豪快すぎる……」

 一体誰に似たのか……少なくとも、父上は似なかったようだ。
 おじい様は湯を掬い、顔を洗う。

「ここはいいところだ。未開の地って言われたオーベルシュタインに村を作るとはなぁ……アシュト、おめーも相当にぶっ飛んだ奴だぜ」
「あ、あはは……」

 俺は苦笑した……いや、俺はそこまでぶっ飛んでないと思いたい。
しおりを挟む
感想 1,145

あなたにおすすめの小説

腹違いの妹にすべてを奪われた薄幸の令嬢が、義理の母に殴られた瞬間、前世のインテリヤクザなおっさんがぶちギレた場合。

灯乃
ファンタジー
十二歳のときに母が病で亡くなった途端、父は後妻と一歳年下の妹を新たな『家族』として迎え入れた。 彼らの築く『家族』の輪から弾き出されたアニエスは、ある日義母の私室に呼び出され――。 タイトル通りのおっさんコメディーです。

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  お気に入り・感想、宜しくお願いします。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。