大自然の魔法師アシュト、廃れた領地でスローライフ

さとう

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魔法学園の講師

第495話、賢龍の来訪

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 ある日。
 仕事をひと段落終え、自室でのんびりしていると、ルミナがじゃれついてきたので頭を撫でていた。
 ネコミミを揉んだり顎の下を撫でていると、ミュアちゃんと一緒にシェリーがやってきた。
 俺がルミナを撫でているのを見てミュアちゃんが羨ましがったので、シェリーが俺の代わりにミュアちゃんを撫でている。

「ごろごろ……」
「わぁ~♪ みてみてお兄ちゃん、ミュアってば撫でると喉ごろごろ鳴るの可愛い~♪」
「ミュアちゃんは顎もだけど、ネコミミをカリカリしてやると喜ぶぞ。ほら、こんな風に」
「みゃう……ごろろ」

 ルミナのネコミミをカリカリすると蕩けた。
 シェリーが同じようにミュアちゃんのネコミミをカリカリすると蕩ける……なにこれ、すっごい可愛い。
 しばし、ネコミミを撫でていると。

「はぁ~……ねぇお兄ちゃん、最近どう?」
「どう、とは?」
「ごろごろ……にゃぁぁ」
「いや、あたしさ、最近思うのよ……訓練して、ごはん食べて、お菓子食べて、お風呂入って、たまーに温泉行ってのんびりして……充実してるけど、その……なんか物足りないっていうか」
「物足りない? 充実してるのに物足りないって矛盾してるぞ」
「みゃぅぅ」
「いや、なんていうか……そう、刺激が欲しいのよ」
「刺激……」
「ごろごろ……」

 刺激ねぇ。
 こんな言い方はアレだが、俺の人生で刺激は必要ない。
 薬草採取、温室手入れ、新薬の開発と研究、村にある大量の蔵書。ぶっちゃけやること、やりたいことならいくらでもある。執筆も順調だし、毎日とっても楽しい。
 すると、俺の顔を見ていたシェリーがため息を吐いた。

「その顔、『俺の人生で刺激は必要ない』って思ってるでしょ」
「うっ……なんでわかった」
「妹ですし。お兄ちゃんが何を考えてるかなんてわかりますー」
「やるな、シェリー」
「「ごろごろ……」」

 ネコミミを揉み続けていると、ドアがノックされた。

「はーい。入っていいよ」
「失礼します。ご主人様、お客様がいらっしゃいました」

 シルメリアさんがそう言い、ミュアちゃんとルミナをジロっと見た。
 すると、ネコミミ少女たちはビクッとして起き上がる。
 
「えーっと、お客ってのは?」
「はい。以前、こちらにいらしたジーニアス様です」
「え」

 ジーニアス。
 まさか、シエラ様と同格の神話七龍の?
 この世界に『知識』をもたらした、偉大なるドラゴン?
 すると、シエラ様の肩をポンと叩き、銀髪のイケメンが現れた。

「やぁ、久しぶりですね。お邪魔しますよ」
「じ、ジーニアス様!! どど、どうぞ中へ」
「ありがとう」

 サラサラ銀髪、スタイリッシュなメガネ、高身長でスタイル抜群。
 二十代前半ほどの男性がゆっくりと部屋の中へ入り、俺とシェリーの座る対面のソファに腰掛けた……なんというか、動作の一つ一つがとんでもなく様になっている。
 シルメリアさんがお茶を運び、ミュアちゃんがそれを手伝う。ルミナはいつの間にか消えていた。
 紅茶を啜り、ジーニアス様はゆっくり眼を開ける……うわ、睫毛長い。

「いい紅茶ですね。これは……この村で収穫された物ですか?」
「え、ええ。銀猫族が中心となって行っている事業の一つです」
「そうですか。うん、素晴らしい」

 ジーニアス様はにっこり笑う。うわイケメン……シェリーがぽわーっとしてる。
 物語の主人公みたいなジーニアス様は、しばし紅茶を楽しんだ。

「ふぅ……さっそくですが、本題に入ります。以前、ムルシエラゴから聞いたと思いますが……あなたに頼みがあるのですよ」
「お、俺にですか!?」
「ええ。通信魔法を使おうとも考えましたが、やはり直接話をするのが礼儀と思いまして」

 ジーニアス様は、少しだけ身を乗り出す。

「まず、私の職業をご存じで?」
「えーっと……確か、魔法王国マジックキャッスルにある、魔法学園の講師ですよね?」
「ええ。覚えていたのですね」

 神話七龍が魔法学園の講師とかあり得ないけどな。
 
「実は、魔法学園の講師が一人、結婚を機に辞めてしまうのですよ」
「ほぉ、それはおめでたい」
「ええ。その教師というのが『薬学』の教師でして。替えの教師はすぐに手配したのですが、赴任まで二月ほど時間がかかるのです。そこで……きみに、臨時講師を頼みたいのですよ」
「え」
「生を受けてからこれまでの人生を見させて頂きましたが……いやはや、申し分ない。大国ビッグバロッグにてエルフ最高の頭脳を持つ王宮薬師シャヘルに師事し、難関とされる王立学園を主席で卒業、在学中に博士号と新薬の開発を手掛け、史上最年少で薬師と医師の資格を手に入れた。その後、王宮薬師に推薦されたが突如エストレイヤ家から除籍……その後の足取りは不明となっていますが、オーベルシュタインで村を興し、薬師として活躍中。ふふ、実に面白い」
「え、あの……俺、そんな、勉強してただけで」

 マジで、俺は勉強してただけだ。
 家族に認められたいから。優秀なリュドガ兄さんとシェリーの重荷にならないように勉強してただけ。
 すると、シェリーが言う。

「お兄ちゃん、何度も言うけど……お兄ちゃんってビッグバロッグ王国じゃホントに優秀だったんだからね? そりゃあたしやリュウ兄みたいな軍事の才能はなかったけど、王宮薬師に推薦する話もあったんだから。お兄ちゃん、お父さんに認めてもらうことしか考えてなかったけど、周りの人はみんなお兄ちゃんに期待してたのよ?」
「…………耳が痛い」

 ぶっちゃけ、マジで勉強してただけ。
 主席とか資格とかどうでもよかった。魔法適性が『植物』だったから薬師になろうと思ったし、医師の資格も取ったけどついでだった。
 ジーニアス様は優しく微笑む。

「改めてお願いします。二月、魔法学園で教鞭を振るって頂けますでしょうか?」
「いきなり言われても……仕事もあるし。それに、魔法学園ってかなり遠いですよね?」
「そうですね。ここからですと馬車で三月はかかります」
「じゃあ……」
「ですが、あなたには『転移魔法』があります。この村から魔法学園に通えますよ」
「あ、そうだった」
「当然ですが、報酬も用意します。授業範囲のテキストも用意してありますので、あなたのやりたいように授業をしていただいて構いません」
「やりたいようにって……」
「大丈夫。アシュトくんは教員の資格も持っているではありませんか」
「え?……いや、そうなのか?」
「あたしに聞かないでよ。でもお兄ちゃん、馬鹿みたいにいろんな試験受けて資格取ってたじゃない。教員の資格くらいあるんじゃないの?」
「……どんな試験受けたのか覚えてない」
「…………それで試験満点取っちゃうんだから馬鹿だよね」

 どうやら俺、教員の資格持ってるみたいです。
 
 ◇◇◇◇◇◇

 結局、受けることになってしまった。
 神話七龍のお願いを断るなんてできない……というのは建前。実は教員に興味があった。
 さらに、シェリーが『あたしも魔法学園に行きたい』と言い、ジーニアス様は『では、留学生ということで二月ほど入学しますか?』ということで、シェリーの入学も決まったのだ。
 授業範囲のテキストをもらい、俺なりに授業計画を立てる。
 そして、村長の仕事はディアーナに任せた。村長代理として頑張ってもらう。
 薬院は、フレキくんとエンジュに任せる。

「なんや、またお出かけかいな」
「うぐ……すまん」
「ま、ええよ。フレキと二人きりになれるしぃ~♪」
「……フレキくん、任せっきりでごめん」
「いえ!! 師匠には返しきれない恩がありますし。それに……こんな言い方していいのかわかりませんけど、師匠が不在の間はすごく緊張するんです。この村には様々な種族がいますし、頼れるのは自分だけ。この緊張感、ボクにとってはいい経験です」
「せやなー……フレキ、度胸付いたもんなぁ」
「フレキくん……」
「もちろん、慢心はしません。わからないことがあるたびに、師匠から習ったことを思い出したり、メモや医学書を読み直して対応しています。エンジュもいますし、ここは任せてください!!」
「うん……ありがとう」
「いえ!! でも……まだまだボクは師匠の足下にも及びませんので、早めに戻ってくてくださいね……?」
「ははは。わかったよ」
「フレキ!! ウチが付いとるで~♪」
「わわ、エンジュ、くっつかないでよ!?」

 本当に頼もしくなった。
 もう、フレキくんは立派な薬師だ。
 これなら、安心して魔法学園にいけそうだ。
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