大自然の魔法師アシュト、廃れた領地でスローライフ

さとう

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魔法学園の講師

第497話、魔法学園へ

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 魔法学園出発の数日前。
 ミュディが俺の部屋に来て、教師っぽい服を持ってきた。

「じゃじゃーん! アシュト、着てみて!」
「お、おお……テンション高いな」

 ミュディの手には、装飾が施された白衣があった。
 上等なシャツにズボン、その上に白衣を着る。そして、新調した革靴を履く。
 最後に、ミュディの手にはメガネがあった。

「はいこれ。メガネ」
「…………なんで?」
「ふふ。先生っぽいでしょ?」
「そ、そうなのか?」
「うん。シェリーちゃんとお揃いのを作ってもらったの」

 シェリーも被害者だった……まぁ、あいつはけっこうノリノリで掛けそうだ。
 ミュディからメガネを受け取りかける。あ、これレンズに度が入っていない。スライム製ガラスだ。
 メガネをかけた俺を見るミュディは、すっごく嬉しそうだ。

「うんうん。アシュト、すっごく似合ってるよ!」
「あ、ありがとう」
「メガネ、ちゃーんとかけてね!」
「わかったよ」

 ミュディは俺の周りをグルグルと回り、しみじみという。

「アシュトが先生かぁ……うん、似合ってるかも」
「そうかな? 俺、人に教えるとかあんまり……」
「フレキくんを見てればわかるよ。アシュト、教えるのすっごく上手だし」
「そうかぁ?」

 どうもそんな気がしない。
 それに、魔法学園で教えるのは子供たちだ。年齢は十四歳~二十歳の魔法使いで、薬学と医学を習う少年少女たちだ。希望職業は医師と薬師……たぶん、魔法適性もそれに準ずるものだ。
 もしかしたら、俺と同じ『植物』の適性を持つ子がいるかも。

「アシュト、毎日ここから通うんだよね?」
「ああ。転移魔法の刻印は自室に打ち込んである。当日、ジーニアス様が転移魔法で迎えに来て、魔法学園まで転移する。そして魔法学園の教員寮に与えられた部屋に転移魔法の刻印を打ち込めば、魔法学園と自宅の往復がいつでもできるってわけだ」
「便利だねぇ……転移魔法」
「お前も覚えるか? ベルゼブブにあるお前の店と、自宅に刻印を打てばすぐに行けるぞ」
「……あ、じゃあわたしがアシュトの生徒一号かな?」

 ミュディはくすりと笑い、俺から転移魔法を教わった。

 ◇◇◇◇◇◇

 数日後。
 いよいよ、魔法学園へ出発する日だ。
 俺は教師服にメガネ、シェリーは学園の制服に着替えメガネをかける。
 自宅リビングでは、ミュディたちが見送りをしてくれた。

「私も行きたいけど、仕込んだ清酒がいい感じなのよねー」
「わたしも、お店があるから……ごめんね、お兄ちゃん」
「私も、司書の仕事を空けられないの……ごめんなさい」
「いいって。なぁシェリー」
「うんうん。あたしとお兄ちゃんで十分! 楽しんでくるからさ!」
「あのな、俺は仕事だからな。お前も勉強しろよ」
「はぁーい」

 俺はシェリーの頭を軽く撫でる。
 ミュディはウンウン頷いていた。

「やっぱり、二人ともメガネ似合うね!……うーん、おしゃれメガネってアクセサリー、流行るかも。よーし!!」

 なぜかミュディに火が付いた。
 すると、玄関ドアがノックされる。
 シルメリアさんが開けると、ジーニアス様だった。

「遅くなりました。っと……準備はできているようですね」
「はい。ジーニアス様、転移をお願いします」
「承知しました」
「ふっふっふ。魔法学園、楽しみー!」

 シェリーはウキウキしている。
 俺は、ちょっと寂しそうにしているミュアちゃんの頭を撫でた。

「お土産、買ってくるからね」
「にゃあ……ごろごろ、ごろごろ」

 ミュアちゃんから離れ、ジーニアス様の近くへ。
 ジーニアス様が指をパチッと鳴らすと、足下に魔方陣が描かれる。

「では、転移」
「いってきます。あ、帰りは遅くなるから」
「いってきまーす!」
「みゃう」

 一瞬の浮遊感、そして景色が切り替わり……到着。
 どこか、広い部屋に到着した。
 大きなデスク、壁には大きな本棚があり本がぎっしり詰まっている。来客用のソファとテーブルがあり、床に敷かれた絨毯は高級品だ。

「ここは私の執務室です。アシュト先生、シェリーさん、ここで魔法学園に関する注意事項をお話します。その後、寮に案内しまして、学園内を案内します。アシュト先生の授業は明日から、シェリーさんの編入も同じく明日からです」

 ジーニアス様がにっこり笑う。
 そっと手を窓へ向けたので、シェリーと二人で窓際へ。
 窓を開けると、そこは……知らない場所だった。

「これが魔法学園……」

 窓の外は、緑龍の村にはない『文明』のある風景だった。
 広い石畳の道。噴水。噴水の周りにはベンチがあり、生徒たちが座って談笑している。
 周りには様々な大きさの建物があり、どれも城のような造りだ。

「まず、目の前に広がるのが『噴水広場』です。ここは魔法学園の中心で、ここから様々な校舎へ向かうことができます。私たちがいるのは『職員校舎』で、あちらが『魔法学園本校舎』、あちらが『魔法動物厩舎』で、あちらが『魔法訓練場』、そしてあちらが『購買校舎』で、あちらが『魔法薬研究所』、そしてあちらが『薬草農園』、向こうの大きな建物が『男子寮』と『女子寮』です」
「あの、そんないっぺんに言われても……」
「なるほど、覚えました」
「うそ!? って、お兄ちゃんだしね……」

 というか、建物が多い。
 敷地もすごく広いし、この学園だけで町一つぶんありそうだ。

「アシュト先生の執務室もこちらにご用意しています。教員寮は職員校舎の裏にありますので」
「わかりました。近いのはいいですね」
「ええ。シェリーさんは第七女子寮。ここから少し遠いですが……」
「あの、地図あります……?」

 シェリーはゲンナリしていた。
 そういえば、シェリーは勉強があまり得意じゃない。戦闘魔法師としては一流なんだけどな。
 ジーニアス様はくすりと微笑み、自分のデスクから地図を手渡した。
 シェリーは地図を広げ、ムムムと唸る。

「……魔法王国マジックキャッスルの魔法学園は噂で聞いてたけど、とんでもないところね。見てよお兄ちゃん、この敷地の広さ」
「うお、すごいな……何も知らずに踏み込んだら迷子になりそうだ」
「購買だけで五軒。お! お兄ちゃん、学食だけで十二軒もある! ふふふ。完全制覇したいな~」
「ったく、子供だなぁ」
「ふんだ。いいでしょ別に」

 シェリーは可愛いな。
 もうすぐ二十歳になるんだけど、外見は十七歳でほとんど固定されている。
 俺も、十八歳のころから変わっていない。エルミナも九千歳を超えてるのに外見が十八歳のままだから、あと数千年はこのままだ。
 ジーニアス様は、俺たちに言う。

「あと、ここでは私のことをジーニアス先生、とお呼びください。神話七龍ということは秘密ですので」
「え、そうなんですか?」
「ええ。そちらの方がいいのですよ」
「わかりました。では、ジーニアス先生」
「ジーニアス先生、よろしくお願いします!」
「はい。では、アシュト先生の部屋と執務室を案内してから女子寮へ向かいましょうか」

 魔法学園の生活が始まる。
 やばい。すっごく楽しくなってきた!
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