大自然の魔法師アシュト、廃れた領地でスローライフ

さとう

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魔法学園の講師

第506話、アシュトとラクシュミ

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 歓迎会を終えて家に帰ると、猫がいた。
 大きなバスケットにクッションを入れ、そこに親猫が寝転んでいる。さらに、弱った子猫は身体を綺麗にされ、手拭いで包まれてスヤスヤ眠っていた。どうやら無事らしい。
 バスケットの傍には、ミュアちゃんとルミナがいた。

「にゃあ。ご主人さま」
「ただいま。猫の様子はどう?」
「なんとか無事だぞ。親猫はごはんいっぱい食べたし、子猫にもミルクをやった。今はゆっくり寝てる……少しずつ、かいふくしていくはずだ」

 ルミナはネコミミをピコピコ動かしながら言う。
 二人とも、バスケットの傍で寝転んでいた。

「にゃあ。ここはあったかいから、あんしんだね」
『ゴロゴロ……』
「だいじょぶだ。ごはんは明日ももってくる。今日はゆっくり休んで、はやくお乳が出るようにしないと。牛の乳は子猫によくない」
『にゃぁご』
「うん。わかった」
「みゃう。まかせろ」

 うーん。猫族は猫と会話できるの羨ましい。
 俺も動物と会話する『森のお友達ビーストフレンズ』っていう魔法がある。でも……ちょっとした一件があり、なるべく動物や魔獣とは会話しないようにしている。
 村で会話できる動物は、ネズミのニックとセンティだけだ。
 いやー……解体される魔獣の断末魔とか、狩られた魔獣の恨み声とか聞くの辛い。これからお肉になる動物の声なんて絶対に聞きたくないし……ね?
 ニコニコアザラシとかの声は聞いてもいいと思うけど、あいつらは『もきゅ~』って鳴くのが可愛いし、いきなり声聞いてイメージ崩れるのも嫌だしな。
 というわけで、俺はなるべく動物と会話はしないようにしているってわけだ。

「さて。二人とも、今日はそろそろ寝ないと。もう遅いぞ」
「にゃうー」
「みゃあ」

 二人は尻尾を揺らした。
 そして、俺のベッドに潜り込む……すっごく今更だけど、ここ俺の部屋なんだよなぁ。
 俺、二人には自分の部屋に戻って寝ろってことだったのに……まぁ、いいか。
 俺も着替え、ベッドに潜り込む。すると、ミュアちゃんとルミナが腕に顔を擦り付けてきた。

「にゃう……」
「みゃう……ごろごろ」
「……ふふ、おやすみ」

 大きな猫みたいで可愛いな……とりあえず、今日はゆっくり寝よう。

 ◇◇◇◇◇◇

 翌日の朝。
 起きると、まだ二人は寝ていた。起こさないようにベッドから降りると。

『ミー』『みぃぃ』
「ん……おお、お前ら。起きたのか」
『ミィ』『みぃぃ』

 子猫が起きていた。
 まだ弱々しいが、しっかりと自分の脚で歩いている。
 さらに親猫ものそのそ起きて俺の足に身体を擦り付ける……か、可愛いな。純粋な動物って牛とかニワトリ以来だよな。癒される。
 俺は親猫、子猫を撫でる。

「よしよし」
『ゴロゴロ』
「にゃぁーっ!! おきた!! ルミナ、起きておきて!!」
「ふみゃっ!? し、尻尾つかむな!!」
「こねこ、大丈夫? おなかすいてない? うん、ごはん取ってくるね!」
「みゃあ!! あたいもいくぞ」

 二人は着替えもせず部屋を出て行った……よっぽど心配だったのか。
 
「とりあえず……よかったな、お前ら」
『にゃぁごろろ……』
『みぃー』『ミィミィ』

 猫たちは、感謝するように俺に身体を擦り付けた。

 ◇◇◇◇◇◇

 猫たちはシルメリアさんとミュアちゃん。そしてルミナに任せた。
 なんとなくだけど、ここで飼うことになりそうだ。猫は可愛いし、ミュアちゃんとルミナにお願いされたら了承してしまうだろう。
 今日はルミナを休ませ、俺とシェリーで学園へ。

「え、猫なんていたの?」
「そういやお前、ノータッチだったな」
「うん。何があったか教えて」

 まだ時間があるので、俺の執務室でお茶を飲むシェリー。
 昨日のネコ騒動を話すと「へぇ~」と言った。

「猫かぁ。そういえば、学園内で野良猫をけっこう見かけたような」
「やっぱりいるのか?」
「うん。従魔法の実験に使うのが脱走したとか。あ、実験っていっても酷い実験じゃないよ? ちゃんとごはん食べてるし、ネコちゃん用に一軒家丸ごと家にしてるとか」
「ま、ジーニアス先生はいるし、そんな非道なことにはならんだろ。それでも、脱走か」
「捕まえて戻してもすぐ逃げちゃう子も多いって。だから、餌だけやって自由にさせてるとか」

 シェリーは紅茶を飲み欲る。

「あ、そうだ」
「ん?」
「……あー、いや、なんでもない」
「……なんだよ?」
「いや……うん、そのうちわかる? かな?」
「はぁ?」
「なんでもない! じゃ、あたし行くね。今日は『生ごみの匂いを消す魔法』を習うんだ」
「生活魔法か。そういや、そんなのもあったなぁ」

 シェリーは手を振って出て行った。
 俺も授業の内容を確認し、メガネをかける。

「よし、行くか」

 授業の時間だ。
 教科書を持ち、薬学教室へ向かう。
 今日は午前中が薬学。午後は医学の授業だ……今更だが、俺が教師とは。
 教室前。生徒はすでに教室内にいる。
 俺がドアを開けると、生徒たちは全員席に着いた。
 
「おはようございます。それでは、今日の授業を始めます」

 号令などない。
 さっそく、教科書を開いて授業開始。今日は火傷軟膏に関する授業だ。
 アルォエ草の鉢を持ってきたし、実物を見せながらの授業をする。

「では、今日はアルォエ草の特性と用途について学んでいきます」

 と、教室を全体を見渡して気付いた。
 さらりとした長い銀髪の少女がこちらを見ていた。
 一瞬、シェリーかと思った。だが俺がシェリーを見間違えるはずがない。
 銀髪の少女、初めて見たな。授業は選択制で好きな学科を受講できるから、その日によって生徒の顔が違うんだけど……なんか見たことある子だ。
 銀髪の少女はにっこり笑い、俺に手を振る。

「……………………あ!!」

 やべ、声が大きくなった。
 魔法で声を大きくしているから大声だと響く。
 すると、エルフのココロさんが挙手。

「せ、先生? 何か間違えでも……」
「あ、いや。違います。ごめんなさい」

 謝罪する俺。
 銀髪の少女はクスクス笑っていた。
 思いだした……あの子、母上の妹の娘、ラクシュミだ。
 小さい頃、一度だけ会ったことある。プリメーラ家の特徴である銀髪、シェリーと同じ色で髪質もそっくりな子で間違いない。
 もしかして、今朝のシェリーが言い淀んだの、この子のことか。

「───くすっ」

 ラクシュミはクスっと微笑み、俺に向かってウィンクした。
 やれやれ。授業終わったら挨拶しないとな。
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