大自然の魔法師アシュト、廃れた領地でスローライフ

さとう

文字の大きさ
314 / 474
魔法学園の講師

第507話、エルミナと学園散歩

しおりを挟む
 授業が終わり、ラクシュミは俺の元へ。

「久しぶり、アシュトくん」
「ラクシュミ。十年ぶりくらいだな……大きくなって」
「ふふっ、なんかお父さんみたいなこというね」

 確か、十七歳くらいだったかな。
 シェリーの二個下くらいだったはず。
 長い銀髪のポニーテールはよく似合っていた。
 ラクシュミは、前のめりになり俺を見る。

「うんうん。アシュトくん、大きくなったねぇ」
「お前も似たようなこと言ってるぞ。それと……十年ぶりくらいか?」
「うん。うちのお母さんがアリューシア様に会いに行って以来かな? 姉妹仲そんなによくないし、ビッグバロッグ王国は遠いから一回しか会えなかったけどね」
「そうだな……っと」

 うーん、今気付いたけど、けっこう目立ってるな。
 ラビリンさんやココロさんがこっちを見てボソボソ何か喋ってるし、バッシュくんやトーロウくんは近寄りがたそうに見ている。
 視線に気付いたラクシュミは、俺の腕を取った。

「じゃ、カフェでお喋りしよ! おすすめのカフェあるんだ」
「いいけど。あ、ちょっと待ち合わせしてるんだけどいいか?」
「ん、だれ? シェリー?」
「いや、奥さん」
「はぁ!? あ、アシュトくん結婚してんの!?」
「お、おお……声デカいぞ」

 ラクシュミは本気で驚いて……おいおい、教室中に響き渡ったおかげで注目されてるぞ。
 俺はラクシュミの腕を引き教室を出た。

「ったく、隠すようなことじゃないけど……注目されたぞ」
「あ、ごめん。ふっふっふ……その辺のことを踏まえて、お話聞かせてもらいましょうか」

 ラクシュミは、面白いモノを見つけたような顔で笑っていた。

 ◇◇◇◇◇◇

「お~いアシュト~♪」

 噴水広場の前にいたのは、学園の制服を着たエルミナだった。
 エルミナを見たラクシュミは驚愕する。

「す、すっごい美人……え、エルフ? アシュトくん、他種族間結婚したんだ」
「まぁな」
「お、シェリー?……じゃないわね。だれ?」

 エルミナはラクシュミを見て首を傾げる。
 俺は、ラクシュミの背を軽く押して前に出した。

「この子はラクシュミ。母上の妹君の娘……わかりやすい言うと親戚だ」
「親戚なんていたんだ」
「いるっての。それより、挨拶」
「はーい。こんにちはラクシュミ。私はエルミナ、アシュトの妻です! ふふーん、妻……一度こうやって自己紹介してみたかったのよねー」

 エルミナはやっぱりエルミナだった。
 ラクシュミはポカンとしていたが、首をブンブン振る。

「は、初めまして。ラクシュミです」
「ん、よろしくね! ところで、なんでアシュトと一緒に?」
「俺の話を聞きたいんだって。一緒でもいいか?」
「もっちろん。アシュトの親戚とか面白そう!」

 何が面白いのかは不明だが許可は出た。
 さっそくエルミナはラクシュミの腕を取る。

「ラクシュミ! ここ詳しいんだったらいろいろ案内して。アシュトの偏った知識じゃ変な店ばっかり行きそうだしー」
「おいこら、偏ったとはなんだ偏ったとは」
「だってあんた、園芸店とか本屋ばっかり地図にマークしてるでしょ。私、あんたの机の上にあった学園マップ見たんだから」
「い、いいだろ別に」
「もうちょっと女の子が喜ぶお店チェックしなさいよー」

 ラクシュミは、くすっと笑う。

「ふふっ……よーし! エルミナさん、わたしがいろいろ案内しちゃいます!」
「お、いいわね! アシュト、ラクシュミを見習いなさいよー!」
「はいはい……じゃあ、行くか」

 この日、三人で学園内を散策した。

 ◇◇◇◇◇◇

 ラクシュミと別れ、エルミナと学園内公園を散歩していた。
 緑が多く、川も流れている。
 大きな東屋の中には立派なベンチやテーブルがあり、そこで勉強している生徒や談笑している者が多くいた。
 俺とエルミナは、川沿いのベンチに座り、途中で買ったホットティーを飲む。

「いやー、楽しいわねここ。妖狐族の温泉とか天使の国ヘブンもいいけど、なんていうか……知的な感じのところね。うん、いい」
「知的もなにも、学校だしな」
「はぁ~、私も勉強しよっかな」
「お、やる気になったか。ジーニアス先生に相談してみようか?」
「冗談よ。勉強なんて六千年前くらいにやったけど、五十年くらいで飽きちゃったわ」
「…………」

 五十年間勉強……そういやエルミナ、九千歳超えてたっけ。
 普段がアホっぽい感じだから見えないけど、頭いいのかな。

「なに?」
「いや、お前……勉強できるのか?」
「『できる』基準がよくわかんない。そうねぇ……メージュとおんなじくらいかな。ルネアが頭いいよ。エレインがその次で、シレーヌがその次。私とメージュは悪いわ」
「そ、そうか」

 ハイエルフの学力気になるな……ジーグベッグさんなんて百万冊を超える本を書いてるし、頭がいいのはまず間違いないと思うけど。
 エルミナは、ホットティーを飲み欲し立ち上がる。

「さーて、シェリーのところ行く?」
「そうだな。たぶん、『魔法訓練場』だ。生活魔法の練習してるんじゃないか?」
「よし! じゃあ行くわよ!」

 エルミナはいつも元気だ。この元気がすっごく好きなんだよな。

 ◇◇◇◇◇◇

 魔法訓練場。
 ここは、実戦魔法師になるために魔法師たちが訓練をするところだ。
 魔法兵士になりたいなら攻撃魔法を。生活魔法師になりたいなら生活魔法を。魔法研究者になりたいなら自分で生み出した魔法を実験する。
 敷地もすごく広く、個室や研究室が完備されていたり、寝泊まりするための簡易宿泊所なんかもある。研究で止まりこむなんてこともよくあるみたいだ。
 俺とエルミナが向かったのは『中央訓練場』だ。
 ここは、大きな広場みたいになっていて、大勢の生徒が魔法訓練をする場所なのだが。

「シェリー・エストレイヤ!! あなたに勝負を申し込む!!」

 そこで見たのは……シェリーに決闘を挑む、キラキラした青年だった。
 シェリーは盛大にため息を吐く。

「はぁ~……まぁ、いいですけど」
「ふん。エストレイヤ家の才女、ビッグバロッグ王国『氷姫』のシェリーと呼ばれたキミの時代はもう終わり。これからはこの『氷帝』アビシオンが王国の『氷』となる」

 キラキラした青年はアビシオンと言うらしい。
 透き通ったサーベルみたいな杖を突きつけている。しかも、背後には取り巻きみたいな生徒が十人くらいいた。
 すると、シェリーが俺とエルミナに気付き、向かってくる。

「お兄ちゃん、エルミナ」
「シェリー、何があったんだ?」
「ん、なんかあのアビなんちゃらって人が、『ボクの傍にいろ』とか『きみに結婚を申し込む』とかやかましくて。それで断ってたら『決闘を申し込む!』ってなって……」
「……なんとなくわかった」

 たぶん。シェリーのことだから無視してたんだろう。それで、あのアビシオンのプライドを逆なでしたってことになるのかな。
 アビシオンは剣を突きつけたまま言う。

「あなたは、新任のアシュト先生? ああ……エストレイヤ家の次男、落ちこぼれの」

 アビシオンは馬鹿にするように嗤う。
 ああ、こういう風に見られるの久しぶりだ。馬鹿にされてるけど怒りはない。むしろなつかしさすら感じた。
 なんとなく微笑ましい気分になっていると、シェリーが言う。

「決闘を受けるわ。場所はここで、開始はいつ? もうやっていいの?」
「ふ、その気になったか……もちろん今すぐ、この場でだ!! アシュト先生、あなたに開始の合図をお任せしよう。さぁみんな、離れて!!」

 取り巻きが離れる。
 俺とエルミナはシェリーを見た。

「おいシェリー、お前どうしたんだ」
「……アシュト、察しなさいよ。シェリーが何も言わなかったら私が喧嘩買ったわ」
「え……」
「お兄ちゃん、合図。エルミナは離れてて」
「ん、シェリー、私の分もよろしく」
「うん」
「お、おい?」

 エルミナは離れた。
 そして、けっこう目立っていたせいで訓練場内にいた生徒たちは観客にでもなったように離れていく。
 シェリーとアビシオンは杖を構え、俺の合図を待った。
 もう止まらないな……仕方ない。
 俺は手を上げ、開始の宣言をした。

「───始め!!」

 アビシオンは剣杖を構え詠唱を開始する。
 それに対し、シェリーの口元は高速で動いていた。

「氷の───以下省略───氷姫───以下省略───以下省略」

 こいつ……詠唱を『以下省略』で短縮してる。
 アビシオンの詠唱はまだ半分も終わっていない。
 だが、シェリーは杖を振った。

「氷の化身よ来たれ、『氷像顕現アイスドール・アブソルート』」

 すると───地面が一瞬で凍り付いた。
 地面だけじゃない。施設内の壁も凍り付き、室内気温が一気にマイナスまで下がる。
 地面から氷柱が何本もせりあがり、ガリガリと彫刻されていく。
 そこに現れたのは───センティ、フンババ、キングシープ、クジャタ、ドラゴンを模した氷像だった。あ、よく見るとローレライやクララベルのドラゴン態を模した氷像もある。
 その数、百を超えている。
 一気に空間内がシェリーの氷像に支配された。

「……………………」

 アビシオンの詠唱は完全に止まる。
 俺ですら驚いた。シェリー、ここまでとは。

「あたしのお兄ちゃん、馬鹿にしないで」
「…………あ、あの」
「やれ」

 杖を振ると、氷像たちはアビシオンに襲い掛かった……結果は言うまでもなく、シェリーの勝利だった。
しおりを挟む
感想 1,145

あなたにおすすめの小説

腹違いの妹にすべてを奪われた薄幸の令嬢が、義理の母に殴られた瞬間、前世のインテリヤクザなおっさんがぶちギレた場合。

灯乃
ファンタジー
十二歳のときに母が病で亡くなった途端、父は後妻と一歳年下の妹を新たな『家族』として迎え入れた。 彼らの築く『家族』の輪から弾き出されたアニエスは、ある日義母の私室に呼び出され――。 タイトル通りのおっさんコメディーです。

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  お気に入り・感想、宜しくお願いします。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。