大自然の魔法師アシュト、廃れた領地でスローライフ

さとう

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魔法学園の講師

第508話、課外授業は薬草の香り

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 シェリーの「ぶち切れ氷像オンパレード模擬戦」は一気に学園中に知れ渡り、ビッグバロッグ王国軍『氷姫』シェリーが未だに現役であること、そしてその強さを知らしめたことが有名になった。
 おかげで、シェリーのファンクラブが結成されたとか、挑戦者が増えたとかで大忙しらしい。平和な学園生活が楽しくなったようで……なーんて、シェリーはすっごく嫌がってた。
 とりあえず、騒ぎが収まるまで我慢するしかない。
 そんな模擬戦の翌日、俺は生徒たちと学園にある温室に来ていた。
 今日の授業は消毒液の原料の一つである、キュアハーブの採取方について学ぶ。
 俺は、ルミナとモフ助から手袋を受け取り、温室前に整列した生徒たちに言う。

「今日はキュアハーブの採取方法について学びます。みなさん、手袋は持ってますか?」
「「「「「持ってまーす」」」」」

 元気のいい生徒が何人か返事し、手袋を掲げた。
 俺は頷き、講義をつづける。

「キュアハーブの採取に関しては授業でやりました。では質問、採取の際に注意すべきことは?」

 すると、ココロさんが挙手。

「では、ココロさん」
「はい。採取の際に、根はそのまま残して葉だけ摘むことです」
「正解。あと二つ、わかる人」

 今度はトーロウくんが挙手。

「はい、トーロウくん」
「ハイ。刃物は使わず、手で採取することデス」
「正解。刃物の金属成分とキュアハーブの成分が反応して、キュアハーブが枯れてしまう可能性があります。採取は手が望ましいですね。さて、最後の一つ」
「はいはーい! 採取したキュアハーブをすぐに水に漬ける!」
「正解。バッシュくん、次は先生が指名したら応えるように」
「えへへ」

 すると、生徒たちがクスクス笑う。嘲笑ではなく、お調子者を笑う明るい笑いだった。
 さて、キュアハーブの注意事項はここまで。

「では、三人一組になって、キュアハーブ用の容器を取りに来てください」

 温室前にテーブルを置き、そこに水の入った入れ物を用意してある。俺が講義している間に、ルミナがせっせと準備してくれたのだ。あとでいっぱい撫でてやろう。
 三人グループはすぐにできた。代表が受け皿をもらいにくる。

「みゃう」
「ありがとう、ルミナちゃん」
『もきゅ~』
「ありがと、モフ助」

 ルミナが手渡しで受け皿を生徒へ。モフ助も器用に受け皿を渡していた。
 ルミナ、人見知りするかと思ったが、けっこう慣れていた。
 全グループに容器を渡し、さっそく温室内へ。
 温室内は気温が高く、けっこう蒸す。

「あ、あっつぅ……先生、こんなに暑いのかよ?」
「うん。キュアハーブは熱帯地方にしか生えないからね」

 バッシュくんは舌を出して暑い暑いと言い出す。それをラビリンさんが「我慢しなさい」と言い、トーロウくんは「ボクは別に」とあまり暑さを感じてないような口ぶりだった。
 さっそく、キュアハーブの生えている区画へ。
 生徒たちはキュアハーブの生えている畝にしゃがみ込む。

「では、採取をしましょう。わからないことがあったら質問を」

 生徒たちは、わいわいがやがやと採取を始めた。
 キュアハーブ。見た目は雑草みたいな細い葉の集合体だが、見た目以上にしっかりしている。葉は硬く、手ではなかなか千切りにくい。
 プチン、プチンと生徒たちが千切り、入れ物に入れていく。

「みゃう。あたいもやる」
「お、ルミナもやるか」
「みゃあ。これ、動物にも使えるのか?」
「うん。キュアハーブは消毒液の原材料の一つだからな。怪我をした動物にも消毒するだろ?」
「なるほど」

 ルミナはキュアハーブをプチン、プチンと千切り、モフ助の頭の上に置いた水の容器に入れていく。
 俺は温室内を見回り、生徒たちが質問するのに答えたりしていた。
 そして、生徒たちが採取を終えたのを確認し、温室の外へ。

「みなさん、綺麗に採取できたようですね」
「「「「「はーい!!」」」」」
「では、次の工程です。採取したキュアハーブを……どうするんでしたっけ? では、ココロさん」
「え、あ、はい! えっと……瓶に入れて、水に漬ける、でしたっけ?」
「正解。キュアハーブの特徴、覚えてますか?」
「…………えっと」

 ココロさんは返答に困ってしまう。すると、ラビリンさんが肘撃ちし、こしょこしょと耳打ち。ココロさんのエルフ耳がぴこーんと動いた。

「キュアハーブの特徴は、水に漬けておくと溶けちゃうことです!」
「正解。そう、溶けちゃうんです。その溶けだした水が消毒液の原料です。なので、専用の瓶に水を入れて、そこにキュアハーブを移し替えます。それから数日間、そのまま溶けるまで置いておくと、消毒液の原材料である『キュアドレッシング』の完成です」

 そう、溶ける。
 キュアハーブは水に漬けこむと溶けちゃうのだ。なので、雨が少ない熱帯地方の岩影などにしか生えない。ビッグバロッグ王国に運ばれてくるのは『キュアドレッシング』かキュアハーブの苗なのだ。薬師くらいしか触れることのない植物である。

「では、実験室に行きましょう」

 生徒たちと一緒に、実験室へ。
 温室の近くに専用の建物があり、実験室の中はとても広かった。
 事前に申請しておいたので、キュアハーブ用の瓶などは全て準備してある。生徒たちを班ごとにテーブルに着かせ、さっそくキュアハーブを瓶詰した。
 
「キュアハーブを入れたら常温で保存します。素材室があるので、そこの戸棚に置いておくように。それと、瓶に班のメンバーの名前を書いた付箋を貼っておくのを忘れないように」
「「「「「はーい!!」」」」」

 瓶を素材室の戸棚に安置したのを確認し、この日の授業は終わった。
 ここで授業が終わり、解散となる。
 俺は、生徒たちの質問を受けたり、談笑したりでなかなか戻れなかった。
 シェリーの話題も出たが、とりあえず無難に返しておく……あまり変なこと言うとシェリーにどやされるからな。
 それから、お昼の時間になり、ルミナとモフ助を連れて、温室の近くにあったパスタ専門店へ。
 ルミナは、魚の身をほぐしたソースのパスタを注文。俺も同じのを注文し、二人で食べる。

「いやぁ、なんか授業って楽しいな」
「みゃあ。おまえ、楽しそうだった」
「はは、かもな」
「モフ助もたのしいって」
『もきゅ~』

 先生って楽しいかも……教師アシュト、悪くない。
 
「学校か……村に学校があったらいいかもな」
「みゃう。あたい、勉強するぞ」
『もきゅう』

 先生にもようやく慣れてきた。
 やばい、教師の道に目覚めそう……!
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