大自然の魔法師アシュト、廃れた領地でスローライフ

さとう

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魔法学園の講師

第514話、魔法の動物たち

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 ある日。
 俺はルミナと一緒に、イワオ先生の担当教科である『魔法生物科』の授業を受けていた。以前から気になっていたし、今日の授業は午前中だけ。ルミナも結構乗り気だったので、こうして参加しているのである。
 基本的に、教師はどの授業も申請せずに受講できる。
 イワオ先生は俺を見ると、にっこり笑って親指を立てた。

「よーし。今日の授業は『ビッグスパロウ』の生態について学ぶ」

 そう言うと、イワオ先生は持ってきた大きなバスケットを開ける。
 すると、女子生徒から「きゃーっ」という声が。
 ビッグスパロウのヒナが、バスケットで丸くなっていた。
 すっごいな……大きさは俺が抱えられるくらいで、体毛は黄色。顔つきは鳥のヒナだが……体毛が多いせいで、まん丸な毛玉にしか見えない。
 イワオ先生は、黒板に大きな模造紙を貼る。そこに書かれていたのは、巨大な雀だった。

「こいつはヒナだが、成長すると全長二メートル、高さも二メートルくらいの大きさになる。人を載せて飛ぶこともできる力持ちだ。飼うには『魔法生物省』の許可証が必要だ」

 魔法生物省とは、魔法生物を管理する団体で、大きな国には大抵ある。
 ルミナは興味があるのか、モフ助を机に乗せた。

「モフ助。お前と同じもふもふだぞ」
『もきゅぅ~』

 モフ助は眠いのか目を閉じた。
 どうやら見ていない……まぁいいか。

「こいつは魔法師の使い魔として飼われることが多い。魔法師の乗り物になったり、荷物を運んだり……身体が大きい割に、食事の量は少ないし、排泄物も数日に一度しか出さないから世話が楽だ。それに、見ての通り愛くるしい」
『ぴゅるるるる』

 イワオ先生は、ビッグスパロウのヒナを撫でる。すると、ヒナは気持ちよさそうに鳴いた。
 
「まだ使い魔がいない生徒は、これを機に考えてみてくれ。魔法生物飼育場でも、ビッグスパロウのヒナはたくさんいる。今なら格安で買えるぞ!」

 なるほど。買えるのか……でも、申請が面倒だな。
 イワオ先生の授業は面白い。たまに冗談を言ったり、魔法生物の問題を出したりしている。
 生徒からも人気があるのか、みんな笑っていた。
 そして気付く。この授業をシアンくんも受けていた。真面目な顔でメモを取り、たまにネコミミがピコピコ動いているのがとても可愛い。

「王族だっけ……魔法生物とかの知識も必要なのかな」
「みゃうー」

 俺は、ルミナの頭を撫でながらそんなことを思った。

 ◇◇◇◇◇◇

 授業の終わり、イワオ先生に挨拶した。

「イワオ先生、素晴らしい授業でした」
「いやー、アシュト先生に見られてたとは。いやはや、恥ずかしいですな」
「みゃあー」
『ぴゅるるる』
『きゅぅぅ~』

 ルミナは、ビッグスパロウのヒナを撫でる。
 するとモフ助も反応し、ヒナもモフ助に向かって身体を擦り付け始めた。

「ところでアシュト先生。今夜いっぱい……どうです?」

 イワオ先生は、片手の指を丸めて口元でクイッとやる。ああ、飲みに行くのか。

「いいですね。せっかくですし、他にも」
「じゃあシエラ先生とかどうです!?」
「……い、いいですね。じゃあ、声掛けてみますね」
「はい!! 場所はオレに任せてもらっていいですかね? いい酒場があるんですわ!!」
「は、はい」
「シエラ先生は音楽室だと思います。ではまた後で!!」
「…………」
 
 行っちゃった……ビッグスパロウのヒナを抱えて。
 
「おい、飲みに行くのか」
「うん。悪いけど、お前を送ったらまた戻るよ」
「みゃあ」

 ルミナを転移で家に送り、再び執務室に戻る。
 地図を確認しながら音楽室へ向かうと、ハープの音が聞こえてきた。

「ここかな……?」

 音楽室と書かれた建物だ。
 ドアをそ~っと開けると……そこには、ハープを奏でるシエラ先生がいた。
 さらに、傍にはうっとりした女生徒がたくさん。どうも音楽で魅了しているようにしか見えない。
 演奏が終わると、シエラ先生はにっこり笑った。

「今のが練習曲ね。さぁみんな、それぞれのパートに分かれて練習!……と言いたいけど、今日はここまで。また明日から頑張りましょ~♪」
「「「「「は~い……」」」」」

 おいおい、生徒が魅了されたまま楽器を片付けに行ったぞ。
 するとシエラ先生は俺の元へ。

「あらあらアシュトくん。ふふ、私の演奏を聴きに?」
「いえ。あ、いやまぁ……その、はい。えっとですね、今日このあと暇かな~と」
「お? もしかして……夜のお誘いかな~♪」
「ひっ!? い、いえ。その、一緒にお酒でもどうかなと。イワオ先生と一緒に」
「ふぅ~ん?」

 シエラ先生は、人差し指で俺の顎をクイッと持ち上げる。
 妖艶すぎる笑み……ああ、美人すぎだろこの人。
 シエラ先生はにっこり笑った。

「ふふ。いいわよ♪ ジーニアスも連れて行くから」
「は、はい」

 シエラ先生、教師似合いすぎる……色気やばいよ、マジで。

 ◇◇◇◇◇◇

 イワオ先生行きつけの大衆食堂っぽい居酒屋に来た。
 広い空間にたくさんの椅子テーブルが乱雑に並び、仕事を終えた教師たちが集まって酒を飲んでいる。
 俺たちが座っているのは、四人掛けの丸テーブルだ。
 そこで、冷えたエールジョッキを片手に乾杯する。

「では、お疲れで~っす!」

 イワオ先生のあいさつでグラスを合わせ、俺、イワオ先生、ジーニアス先生、シエラ先生はエールジョッキを一気に飲み干した……やっべぇ、めっちゃ美味い。
 
「っかぁぁぁ!! ネーちゃん!! エール四杯おかわりだ!!」
 
 イワオ先生がおかわりを注文。
 俺はおつまみのイカ焼きを食べる。
 シエラ先生は、上品に焼き鳥を食べていた。

「アシュト先生。だいぶ学園に慣れたようですね」
「ええ。もう一ヵ月ちょいですから……あと一ヵ月もないのかぁ」

 ジーニアス先生は、焼き魚を食べながら言う。
 そう、もう一ヵ月とないんだよなぁ。

「うふふ。アシュトくん、ここの先生になっちゃえば?」
「いやぁ、村長……じゃなくて、領地の仕事もありますし」

 イワオ先生にはオーベルシュタインで村長やってることは内緒だ。なので、領地で仕事ってことにしてる。
 すると、イワオ先生はおかわりのエールを飲みながら言った。

「そういや、アシュト先生は次の仕事先があるとか。猫族の生徒から聞いたんですけど、獣王国の王女相手に家庭教師をやるとか」
「ああー……まだ、話だけで」

 一応、エストレイヤ家が絡むから兄さんに任せた。
 たぶん、すぐにってことにはならないはずだ。
 
「獣王国ですかぁ。いやぁ、あそこの砂漠料理は絶品なんですよ! それにリゾート王国でもある」
「へぇ~……気になります」

 俺はエールを飲む。
 シエラ先生もエールを飲みながらイワオ先生に言う。

「ふふ、イワオ先生も興味があるのでは~? 獣王国の魔法生物、珍しい種類がいっぱいありますよ♪」
「でへへ……シエラ先生はお見通しですなぁ」

 でへへ……って、鼻の下伸ばしてる。
 ジーニアス先生は苦笑し、『からかってるだけです』と耳打ちしてくれた。
 
「アシュト先生。約束通りあと一ヵ月です。それまで、よろしくお願いしますね」
「はい。頑張ります」

 あと一ヵ月……もうすぐ、教師生活も終わりかぁ。
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