大自然の魔法師アシュト、廃れた領地でスローライフ

さとう

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獣王国の家庭教師

第535話、獣王国サファリの王女様

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 さて、二日間のバカンスが終わった。
 三日目の朝。シルメリアさんの作った朝食を食べ、迎えを待っていた。
 俺は、ミュディの作った教師っぽい服装。グリフレッドとユーウェインは騎士服、シルメリアさんとミュアちゃんはメイド服に着替えていた。
 迎えが来るまでのんびりしていると、ミュアちゃんが言う。

「にゃあ。もっと遊びたかったー」
「ははは。じゃあ、今度はみんなと一緒に来ようね」
「にゃう! えへへ、うれしい」

 ミュアちゃんはにっこり笑う。
 シルメリアさんは小さくため息を吐き、ミュアちゃんを引っ張った。

「ミュア。あまりご主人様を困らせないように」
「にゃ……わかった」
「ご主人様も、あまりミュアを甘やかさないようお願いします」
「は、はい」

 怒られてしまった。
 ユーウェインはククッと笑い、グリフレッドに小突かれた。
 ま、こういう距離感も大事かな。
 それから一時間ほど経過。
 のんびりお茶を飲んでいると、来客があった。
 シルメリアさんに対応してもらう。

「ご主人様。王城からお迎えが」
「お、来たか」

 俺は立ち上がり、ミュアちゃんをひと撫でして外へ。
 そこには、鎧を着たトラ獣人が二人に、馬車が二台止まっていた。
 トラ獣人さんは一礼する。

「シアン殿下の遣いです。これより、王城へご案内します」
「はい。よろしくお願いいたします」
「では、馬車へ」

 俺、ミュアちゃん、シルメリアさんが馬車に乗る。
 グリフレッドとユーウェインは馬車に乗らず、護衛として歩いて行くようだ。
 二人の表情は引き締まり、遊んでいた時とは別人だった。

「にゃあ」
「ミュア、静かに。これより不用意な会話を禁じます」

 ミュアちゃんは口を押さえた。 
 俺は何も言わない。今朝怒られたばかりだしね。
 馬車はゆっくり走り出し、サファリの町を抜けて王城へ。
 三十分ほどで到着。門の前で馬車が止まった。

「おお……これが王城かぁ」

 遠目から見る王城と、近くで見る王城は全く別物だ。
 ビッグバロッグ王城と違い、サファリ王城は煉瓦を積み重ねて建築したようだ。
 さらに、植物が少ない。生えているのは砂漠にのみ生える固有種『サボチン』だ。緑龍の村にいるベヨーテみたいな植物だな。
 確か、食用にもなるんだっけ。と、考え事をしていたら到着した。
 城門を抜け、しっかりした造りの鉄扉の前で馬車が止まる。
 馬車から降りると、獣人数名が出迎えてくれた。
 一人は、犬獣人の女性。もう一人はアリの蟲人だ。

「使用人の方はこちらへ。護衛は一名だけ同伴をお願いします」
「わかりました。グリフレッド、シルメリアさんたちを頼む。ユーウェインは俺と一緒に」
「「はっ」」

 グリフレッド、ミュアちゃん、シルメリアさんは犬獣人の女性と一緒に行ってしまった。
 俺は、ユーウェインと一緒に蟲人の男性……男性だよな? 蟲人って性別わかりにくいんだよな。
 
「申し遅れました。ワタクシ、獣王国サファリの宰相を務めておりますアントマンと申します」

 なんと、宰相でした。
 おいおい……いち家庭教師に宰相が迎えるなんて。
 俺も挨拶を返し、アントマンさんに付いて行く。

「これより、国王に謁見していただきます」
「はい」

 城を進み、意外にも質素な造りの門前へ。
 門が開くと、広いダンスホール……じゃない。ここは謁見の間だ。
 王座に座る猫獣人の若い男性。その隣にはシアンくん……いや、シアン殿下。さらに隣には可愛らしいネコミミの女の子が座っていた。
 俺、ユーウェインは謁見の間を進み、跪く。

「表を上げよ」

 言われた通り、顔を上げる。 
 こういう作法久しぶりだな。一応、エストレイヤ家の次男だったし、国王陛下に謁見する機会もあった。
 たぶん、マナー的には大丈夫なはず。

「そなたがアシュトか?」
「はい。陛下」
「…………うむ、目元は似ておるの」
「え……?」

 猫獣人の陛下は、どこか懐かしそうな眼をしていた。
 シアン殿下も、その隣に座るネコミミ少女もポカンとしている。
 陛下は、懐かしむように言った。

「アイゼンの息子よ。私はな、アイゼンに命を救われたことがある」
「え……」
「く、はっはっは!! そう固くならんでいい。アイゼンの息子となれば、私の息子も同然だ。アイゼンには死んでも返しきれない恩がある……シアンよ、よくアシュトを連れてきてくれた」
「え、あ、はい……」
「さて、アシュトよ。ペルシャの家庭教師をするという話だったな?」
「は、はい」

 うーん……なんかノリに付いていけない。
 陛下は、父上に命を救われたことがある。そして、その恩を感じている。父上……そんなこと一言も言ってなかったけど。
 
「お前の噂も聞いている。期間は短いが、どうかよろしく頼むぞ」
「は、はい」
「ふふ……それと、アイゼンの話を聞きたい。今夜、一杯付き合ってくれ」
「わかりました」
 
 当然、断れるわけない。
 父上の話か。どういう関係なのか気になるし、ちょうどいい。
 陛下は、ネコミミ少女を見た。

「シアンはもう知っているようだな。この小さいのが私の娘、ペルシャだ」
「初めまして。ペルシャ王女殿下」
「…………」

 ペルシャ王女殿下は、ペコっと頭を下げた。
 可愛らしい灰毛をツインテールにした少女だ。猫尻尾はふさふさしており、ネコミミもかわいらしい。出会ったばかりのミュアちゃんみたいな感じがした。 
 
「さて、堅苦しい挨拶はここまで。今夜は晩餐会だ。アシュト、それまでゆっくり休んでくれ」
「ありがとうございます」

 こうして、あんまり緊張しない謁見は終わった。
 ある意味……父上、ありがとうございます。と思わなくもない。

 ◇◇◇◇◇◇

 夜。
 晩餐会が終わり、部屋に戻ってきた。 
 部屋には、ミュアちゃんとシルメリアさんがいる。
 護衛の二人は、部屋の前で警備をしていた。

「まさか、父上と陛下が戦場で会ってたなんてな」

 なんでも、怪我した陛下を若かりし頃の父上が助けたのだとか。
 戦場といっても、サファリとビッグバロッグが争ってたわけじゃない。たまたま遠征に来ていたビッグバロッグ軍が、同じく遠征に来ていたサファリ軍が魔獣に襲われているのを助けたのだとか。 
 部隊からはぐれた陛下をたまたま父上が救い、怪我の手当てをして、家に連れて行き、サファリ王国へ連絡したり、迎えが来るまで家に住まわせたりしたそうだ。
 サファリからビッグバロッグ王国まで、急いでも二ヶ月。
 その二ヶ月間。陛下は『人生でもっとも楽しい二ヶ月』だと言っていた。
 それから、国王となり、多忙で父上とろくに連絡もできなかったそうだ。
 そこに、エストレイヤ家の俺が家庭教師をすると聞いて、最大の支援をすると言ってくれた。

「にゃあー」
「おっと。ミュアちゃん、シルメリアさん、お疲れ様」
「ご主人さまも」
「うん。さ、今日はもう寝ないと。シルメリアさん、おやすみなさい」
「はい。さ、ミュア、寝ますよ」
「はーい」

 シルメリアさんは、ミュアちゃんを連れて隣の部屋へ。
 俺は寝間着に着替え、ベッドに飛び込んだ。

「明日から授業……うん、念のため復習しておくか」

 俺はベッドから降り、授業内容を確認するべく資料に手を伸ばした。
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