大自然の魔法師アシュト、廃れた領地でスローライフ

さとう

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日常編⑲

第543話、久しぶりのネコミミ

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 獣大国サファリでの家庭教師を終え、転移魔法で緑龍の村に帰ってきた。
 転移したのは村の入口で、ウッドがフンババと一緒に昼寝をしている。俺に気付いたウッドは飛び起き、俺に飛びついてきた。

『アシュト、オカエリ、オカエリ!!』
「あはは。ただいまウッド。イイ子にしてたかー?」
『シテタ、シテタ! アシュト、アソボ!』
「悪いなウッド。明日にしてくれ……っと、フンババも久しぶり」
『アシュト。オラ、ヒサシブリ』

 フンババは巨大な手を上げフリフリする。
 この大きく愛くるしい門番は、今日も元気のようだ。まぁ、俺が消さない限り不滅の存在だし、身体が砕けてもすぐに元通りになるが。
 ウッドたちと別れ、村の中を歩く。すると今度は巡回中の竜騎士たちと会った。中にはランスローもいる。

「アシュト様。お帰りなさいませ」
「ただいま。いやー疲れた……」
「お疲れ様です。グリフレッド、ユーウェインの働きは如何でしたか?」
「ん、最高だった。な」
「「はっ!!」」

 二人はビシッと一礼した。
 俺は二人に言う。

「あとでお礼のお酒持って行かせるから。ランスロー、この二人は今日と明日くらい休ませてやって」
「かしこまりました」
「じゃ、ここでお別れだ。二人とも、いろいろありがとな」
「「はっ!! お疲れ様でした」」

 二人は再び一礼。
 そのままランスローに二人を任せた。
 去り際、グリフレッドが笑みを浮かべ、ユーウェインがウインクする。またこの二人とは一緒にお酒飲みたいね。
 二人と別れ、俺とミュアちゃんとシルメリアさんの三人で歩いていた。

「にゃう……」
「ミュアちゃん、疲れたよね。お家に付いたら、ゆっくり休んでね」
「にゃあ……くぁぁ」
「ミュア。はしたないですよ」
「まぁまぁ。あと、シルメリアさんも今日は休むこと。家のことは大丈夫だからね」
「かしこまりました」
「にゃあ。シルメリア、一緒に寝るー」
「……はぁ」


 シルメリアさんはミュアちゃんの頭を撫でる。
 この二人も疲れただろう。というか、俺もぶっちゃけ眠い。
 ようやく家に到着。そして、シルメリアさんたちは使用人邸へ行った。
 俺は家のドアを開ける。

「ただいまー……」
「あ、おかえりー」

 出迎えたのは、エルミナだった。
 出迎えたというか、ソファに寝転がったままブドウを食べている。手には本があり読書していたようだが・……なんとも行儀が悪い。ある意味、いつも通りのエルミナで安心する。
 俺はエルミナの向かいのソファに座る。

「あー疲れた……いやー、家庭教師って大変だった」
「ふーん。あむ」

 ブドウを食べるエルミナ。
 なんか淡泊だな。けっこう久しぶりに帰ってきたのに。
 すると、エルミナはようやく俺を見た。

「アシュト、なんか言うことないのー?」
「え……なに?」
「あんたさぁ。約束めっちゃ破ってんじゃん。『家から通う』とか言っときながら、サファリで寝泊まりしてたんでしょ? 私はともかく、ルミナとかすっごく寂しがってたわよ。あむ」
「……あ」

 そういえば、そんなこと言ったかも。
 転移魔法陣は刻んでおいた。でも、授業内容とか考えてたら夜遅くまでかかるし、飲み会とか誘われると断れないんだよな。三十日間で帰ってきたの、たぶん最初の一日だけだ。
 エルミナ、機嫌が悪いのか……?

「ルミナ、ココロと喧嘩したり何日も姿が見えなかったり大変だったんだから。ツンツンしてるけど、あんたのこと大好きだからね。ちゃーんとフォローしなさいよ」
「う……わ、悪い。って、喧嘩?」
「ええ。ココロ、薬院にいるルミナと仲良くなろうと話しかけてたんだけど……ルミナがいないときにコタツ周りを掃除してあげたらルミナが怒っちゃってね。シャーロットやマルチェラがフォローしてたけど、今でも喧嘩したままなのよ」
「……マジか」

 しまったな……これは俺のミスだ。
 ココロの仕事場は薬院。ルミナは薬院に住んでいる。二人が話をするタイミングはいくらでもある。それに、ルミナは魔法学園で俺の助手だった。ココロも話はしたことがないが面識はある。これを機に仲良くなろうと、ココロがあれこれする可能性はいくらでもあった。
 でも……ルミナは、未だに村の住人と打ち解けていない。
 頭を撫でていいのは俺だけ。シルメリアさんや数名の銀猫とは会話くらいする。だが、基本的には単独行動を好むのだ。
 俺は、頭を掻く。

「とりあえず、ルミナとココロのところに行くよ」
「そーしなさい。あと、私にも構ってよね」
「ああ。今度、一緒に釣りでもしよう」
「ん。約束ね」

 エルミナと約束した俺は、薬院へ向かった。

 ◇◇◇◇◇◇
 
 薬院のドアを開けると、いた。

「あ、先生!!」
「……!」

 机にノートを広げて勉強するココロと、コタツで寝ていたルミナだ。
 ルミナはネコミミをピーンと立て、コタツから這い出ると一瞬で俺の元へ。そのまま抱きつき、俺の腹に頭をぐりぐり擦りつけてくる。
 
「みゃう……撫でろ」
「ただいま。ルミナ」
「ごろごろ……」

 ネコミミを揉み、顎を撫で、頭を撫でる。
 ルミナは気持ちいのかトロンとしていた。
 ルミナを撫でながらココロに言う。

「ココロ。留守中、何か変わったことは?」
「……特にないです。怪我人や病人は私が治療できる範囲でしたので」
「噓つくな。怪我人出た時、お前何もできなかった。あたいが包帯巻いたり、縫合したりした」
「むっ……わたし言いましたよね。あのくらいの裂傷なら縫合は必要ないって。傷を押さえて薬を塗ればいいって。あなたが勝手に縫合したんでしょう。怪我人は動物じゃありませんよ」
「ふん。血を見て腰抜かしたくせに」
「抜かしてません!!」
「こらこら。二人とも落ち着いて……」

 エルミナの言った通り、険悪だった。
 でも、これは俺の責任だ。ちゃんと村に帰ってこなかった俺のせい。
 俺は、ココロに言う。

「ココロ。留守をありがとう。本当に助かったよ」
「いえ。あの、治療記録がありますので、先生に確認していただきたいのですが」
「もちろん。気になることはなんでも聞いて。あと、ココロはしばらくお休み。ずっと薬院で働いてくれたみたいだし、特別給金を払うよ。村でのんびりするのもいいし、魔法学園で友達と遊ぶのもいい」
「い、いいんですか?」
「うん。たまには遊ぶことも必要だよ」
「あ、ありがとうございます」

 ココロはペコっと頭を下げた。
 そして、ルミナ。

「ルミナ、何かしてほしいことあるか? なんでもいいぞ」
「みゃう。おいしいもの食べたい。撫でて欲しい、一緒に寝たい。遊びたい」
「よし。全部叶えてやる」
「ごろごろ……」

 ルミナのご機嫌を取らないと。
 ココロとの関係修復は、その後かな。
 久しぶりに帰ってきたけど、俺が休めるのはもう少し先になりそうだ。
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