大自然の魔法師アシュト、廃れた領地でスローライフ

さとう

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日常編⑲

第544話、アシュトのいなかった日常

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「え? アシュト、帰ってきたんだ」

 お菓子屋ブランシュネージュの二階カフェで、ミュディがケーキを食べながら言う。
 アシュトの帰還を伝えたのはエルミナだ。つい先ほど、アシュトに「おかえり」を言って別れ、こうしてミュディたちのいるお菓子屋まで来たのである。
 ちなみに、ミュディと一緒にお茶を飲んでいたのは、ローレライだ。

「全く……獣王国サファリに行ったはいいけど、全く帰って来なかったわね」
「それ、私も言った。ルミナとか寂しがってるって行ったら薬院へすっ飛んで行ったわ」

 エルミナがケーキを食べながら言う。
 すると、ミュディが苦笑していた。

「たぶん、アシュトのことだから……図書館とか、勉強とかで忙しかったんじゃない? 獣王国サファリの歴史を勉強してたし、本だけじゃ物足りなかったのかも」
「「…………」」

 エルミナとローレライはミュディを見て、互いに顔を見合わせる。

「確かに。アシュトならねー」
「そうね。なんだかんだで、アシュトは勉強や研究が大好きだもの……まぁ、私たちを大事に想っていることに変わりはないし、あまりきつく言うのはやめておきましょうか」
「そーね。でも私、ちょっと言いすぎたかも……」
「後で謝ればいいわ。ね」
「そうね。それより、久しぶりなんだしいっぱい遊んでもらわないと!」

 エルミナが手をグッと握る。
 すると、パティシエ服を着たクララベルが来た。

「ねぇねぇ、お兄ちゃん帰ってきたの!?」
「そうよ。あんたも、あとでいっぱい甘えなさい」
「うん! えへへ、今日は一緒にお風呂入っちゃお」
「クララベル。入るならみんなで入るわよ」
「うん。姉さまも一緒! エルミナ、ミュディも一緒!」
「ま、たまにはいいわね。ね、ミュディ」
「うん。ふふ、村長湯でのんびりして、お酒も飲んじゃおうかな」
「あ、いい! ところでシェリーはいないの?」 
「シェリーちゃん。魔法学校に通ってるから、帰りは夕方かなぁ」

 ミュディ、エルミナ、ローレライ、クララベルは、とても楽しく会話をしていた。

 ◇◇◇◇◇◇

 薬院から戻ったアシュトは、たまたま転移魔法でリビングに戻ってきたシェリーと出会った。

「あれ? お兄ちゃん?」
「シェリー? おかえり」
「ただいま……って、お兄さんもおかえり」
「ん、ただいま」

 兄と妹は笑い合い、シェリーはカバンをソファに置く。
 魔法学校の制服も、だいぶ着慣れてきたようだ。
 アシュトは、シェリーの隣に座った。

「お兄ちゃん、いつ帰ってきたの?」
「ついさっき。いやー、獣王国サファリは暑かったり寒かったり大変だった。でも、面白い本もいっぱい手に入ったし、みんなにお土産も買ってきた。あとで渡すから」
「ん、ありがと」
「お前は魔法学校か?」
「うん。生活魔法習ってきた」
「まだ習ってたのか……で、今日はどんな魔法を?」
「今日は、銀製品をピカピカにする魔法。あんまり使い道なさそう」
「ははは。確かに」

 のんびり会話をしていると、ドアが開く。

「まんどれーいく!」
「あるらうねー!」
「お、二人とも久しぶり。はは、おいで」

 マンドレイクとアルラウネが、アシュトの太腿に飛び乗った。
 アシュトは、二人の頭を優しく撫でる。

「温室の世話、ありがとうな。あとでお土産渡すから」
「まんどれーいく」
「あるらうねー」

 温室の世話は、マンドレイクとアルラウネがやっていた。
 アシュトの教えを忠実に守り、痛みやすい薬草の世話や、収穫時期の薬草の採取、そして採取した薬草をまとめて天日干しなどもした。おかげで、アシュトはすごく助かっている。
 
「お前たち。今度一緒に遊ぼうな」
「まんどれーいく!」
「あるらうねー!」

 アシュトは改めて思う。
 妻、そして家族たちとの時間をもっと増やそうと。
 そして、シェリーにも言う。

「シェリー。今度みんなでお茶でもしよう。あ、湖でバーベキューとかもいいな」
「お、いいね。エルミナとか張り切りそう」
「だな。うーん……バーベキューか」

 と、アシュトは考える。
 バーベキュー。つまり飲み会。大きく考えればイベント。
 
「イベントか……なぁ、最後にやったイベントってなんだっけ?」
「えー?……たぶん、冬にやった鍋会とか、雪合戦とか?」

 イベントは、これまで開催してきた。
 そろそろ、いい頃合いかもしれない。

「シェリー、緑龍の村ができて、どのくらい経つ?」
「なにいきなり……そうねぇ。たぶん三年くらいかな? あたしとミュディがここに来て三年目くらいだし」
「そうか……よし」

 アシュトは、大きく頷く。
 そして、シェリーに向かってニヤリと笑った。

「シェリー……ここらで、お祭りなんてやりたくないか?」
「お祭り……?」
「ああ。この村ができてだいたい三年。最初は俺とエルミナ、そして銀猫族、サラマンダーにエルダードワーフ、ブラックモールに妖狐族に……村も三千人くらい住んでる。ここらで、村の設立記念のお祭りなんてどうだ?」
「……なるほど」
「ビッグバロッグ王国でも、建国祭とかあるだろ? 町中がお祭り騒ぎでさ、朝から晩まで大騒ぎの」
「うんうん。あたしも軍属だったころ、リュウ兄とか同僚たちと遊び回ったわ。お兄ちゃんは勉強してたけどねー」
「…………ま、まぁ。とにかく、そういうことだ!! ここらでお祭りとか開催したい」
「まんどれーいく!」
「あるらうねー!」

 シェリーは、腕組みをしながらニヤリと笑う。こういう笑みはアシュトそっくりだった。
 
「その考え、乗ったわ。さっそくディアーナに企画書を」
「ああ。でもその前に……ミュディたちとのんびりする時間がほしい」

 アシュトは、マンドレイクとアルラウネをギューッと抱きしめた。
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