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日常編⑲
第548話、人狼族の村にて
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緑龍の村から少し離れた場所に、人狼族の村がある。
かつて、疫病が広がり、アシュトによって救われた村でもある。
さらに、そのアシュトから『酒造り』の産業をもたらされ、一気に活気づいた村でもあった。
以前は、人狼族だけの村だったが、今は他の種族が混ざり、多様な村となっている。
緑龍の村で鍛冶や農業を学んだ人狼たちも加わり、大きな村となっていた。
そんな村の外れに、小さな薬院があった。
「はい。では、朝晩必ずこの薬を飲んでくださいね。それと、今日明日は畑に出ちゃ駄目ですよ」
「わかりました。先生、ありがとうございます」
先生と呼ばれたのは、灰色の髪にメガネをかけた線の細い少年、フレキだ。
そして、フレキの後ろでは人狼の少年ロムルスがメモを取っている。
「フレキ師匠。今のは……」
「うん。今の患者さんは、畑仕事中に鎌で足を切ったんだ。そのまま処置をせずにほったらかしにしたから、傷口から菌が入って発熱したんだよ。ボクがやったのは、傷口の戦場と菌を殺す薬を処方したんだ」
「なるほど。菌かぁ」
「そうだね。ほんの小さな傷でも、馬鹿にしちゃいけないよ」
「はい!」
ロムルスは、メモを必死に取っていた。
すると、薬院の奥から褐色肌の少女が出てきた。
「いやー、アッツいわぁ……大鍋グツグツ煮えとるでぇ」
「エンジュ……もう、ロムルスもいるんだから、みっともない恰好しないでよ」
ダークエルフのエンジュだった。
今ではフレキの妻で、人狼族の村の薬師である。
シャツ一枚に短パンというラフな服装で、胸元をパタパタさせていた。
まだ幼いが、ロムルスも男だ。エンジュから目をそらし、メモをジッと見ていた。
エンジュは、汗を拭きながら言う。
「そんなことより、ダークエルフの秘薬が完成しそうやで。できたら瓶詰するから手ぇ貸してぇな」
「はいはい。あれ……マカミは?」
「マカミは、汗だく気持ち悪ぅー言うて、着替えに行ったで」
マカミ。
フレキの幼馴染で、妻である。
エンジュがフレキの妻になったことで、負けじと妻となった。
『あの』フレキが二人も嫁を……と、人狼族の村では少し騒ぎになったことも、今ではいい思い出だ。
「さて、そろそろお昼かな……ロムルス、今日はここまでにしよっか」
「はい! フレキ師匠、ありがとうございました!」
ロムルスは頭を下げ、薬院を出て行った。
ロムルスがいなくなると同時に、エンジュはフレキに抱き着く。
「んふふ~……フレキ、構ってぇな」
「ま、まだ仕事中だって! それに、マカミが……」
「マカミも混ぜればええやん……ダメ?」
「駄目! ほら離れて。仕事は真面目にやらなきゃ駄目だよ!」
「むぅ……堅物ぅ」
エンジュは不満げに離れ、椅子にかけてあった白衣を着た。
◇◇◇◇◇◇
フレキたちのいる薬院は、フレキの結婚に合わせて改築された。
結婚祝いにと、アシュトがエルダードワーフに依頼した建物で、薬院と新居が一体化している。さらに、薬院の裏手には大きな温室があり、フレキやエンジュが薬草を育てている。
フレキは、マカミが作った昼食をエンジュと三人で食べた。
「フレキ。午後はどうするの?」
「んー……薬草精製して、師匠に手紙書こうかなって思ってたけど、何かあるの?」
マカミは、ちょっと言いにくそうに言う。
「あのさー……お昼寝しない?」
「え……昼寝?」
「うん。変身してさ、日光浴びて外で寝るの」
「なんやなんや。マカミ、寝不足かいな? ふふふ、今夜のために寝だめしとくんか~♪」
「ばば、馬鹿言わないでよ!! あたしはアンタと違うから!!」
「おお怖い」
エンジュはこうやってマカミをからかう。
すると、フレキが言う。
「……そうだね。たまにはのんびりお昼寝もいいかな。薬草精製はいつでもできるし、師匠の手紙は夜にも書けるし……あ、ついでにアセナにも書かないと」
「じゃあお昼寝でいい?……エンジュ、あんたも」
「うちはええで。ってか、お腹いっぱいで眠いしなぁ~……くぁぁ」
エンジュは大きな欠伸をした。
こうして、フレキ一家の午後の予定は、お昼寝となった。
◇◇◇◇◇◇
薬院の裏にシートを敷き、フレキとマカミは人狼へ変身した。
「おお~、相変わらずモッフモフやなぁ」
「そうかな……?」
「よくわかんないわね……」
狼の姿も、人間の姿も、二人にとって『自分』であることに変わりない。
エンジュは大あくびすると、フレキの腕に抱き着いた。
「ほんま、アシュト村長には感謝やなぁ……こうして、フレキやマカミと一緒にのんびり過ごせるのも、アシュト村長のおかげや……」
「だね! やっぱり師匠はすごい……!」
「ねーフレキ。遊びに行かないの? 帰ってきてから一度も緑龍の村に行ってないよね?」
「……師匠のところに行きたい気持ちはあるけど、ボクはこの人狼族の村の薬師だからね。何かあった時のために、常に村にいないと」
「「真面目……」」
マカミとエンジュの声が重なった。
真面目なフレキらしい。
すると、エンジュが言う。
「じゃあ。アシュト村長に来てもらえばええやん」
「あ、それいいかも。ね、フレキ」
「確かにね……くぁぁ」
フレキが大きな欠伸をした。
だいぶ眠くなってきたのか、フレキの瞼が重くなっていた。
さらに、マカミもエンジュも大きな欠伸をする。
「……うち、眠いわぁ」
「あたしも……」
それから間もなく……三人は眠りについた。
そして数十分後。忘れ物を取りに来たロムルスが、昼寝をしている三人を見た。
「……そういえば、村のみんなが言ってたっけ。師匠のところは『おしどり夫婦』だって」
意味はわからないが、ロムルスはウンウン頷きながら、そっとその場を後にした。
人狼族の村は、今日も平和である。
かつて、疫病が広がり、アシュトによって救われた村でもある。
さらに、そのアシュトから『酒造り』の産業をもたらされ、一気に活気づいた村でもあった。
以前は、人狼族だけの村だったが、今は他の種族が混ざり、多様な村となっている。
緑龍の村で鍛冶や農業を学んだ人狼たちも加わり、大きな村となっていた。
そんな村の外れに、小さな薬院があった。
「はい。では、朝晩必ずこの薬を飲んでくださいね。それと、今日明日は畑に出ちゃ駄目ですよ」
「わかりました。先生、ありがとうございます」
先生と呼ばれたのは、灰色の髪にメガネをかけた線の細い少年、フレキだ。
そして、フレキの後ろでは人狼の少年ロムルスがメモを取っている。
「フレキ師匠。今のは……」
「うん。今の患者さんは、畑仕事中に鎌で足を切ったんだ。そのまま処置をせずにほったらかしにしたから、傷口から菌が入って発熱したんだよ。ボクがやったのは、傷口の戦場と菌を殺す薬を処方したんだ」
「なるほど。菌かぁ」
「そうだね。ほんの小さな傷でも、馬鹿にしちゃいけないよ」
「はい!」
ロムルスは、メモを必死に取っていた。
すると、薬院の奥から褐色肌の少女が出てきた。
「いやー、アッツいわぁ……大鍋グツグツ煮えとるでぇ」
「エンジュ……もう、ロムルスもいるんだから、みっともない恰好しないでよ」
ダークエルフのエンジュだった。
今ではフレキの妻で、人狼族の村の薬師である。
シャツ一枚に短パンというラフな服装で、胸元をパタパタさせていた。
まだ幼いが、ロムルスも男だ。エンジュから目をそらし、メモをジッと見ていた。
エンジュは、汗を拭きながら言う。
「そんなことより、ダークエルフの秘薬が完成しそうやで。できたら瓶詰するから手ぇ貸してぇな」
「はいはい。あれ……マカミは?」
「マカミは、汗だく気持ち悪ぅー言うて、着替えに行ったで」
マカミ。
フレキの幼馴染で、妻である。
エンジュがフレキの妻になったことで、負けじと妻となった。
『あの』フレキが二人も嫁を……と、人狼族の村では少し騒ぎになったことも、今ではいい思い出だ。
「さて、そろそろお昼かな……ロムルス、今日はここまでにしよっか」
「はい! フレキ師匠、ありがとうございました!」
ロムルスは頭を下げ、薬院を出て行った。
ロムルスがいなくなると同時に、エンジュはフレキに抱き着く。
「んふふ~……フレキ、構ってぇな」
「ま、まだ仕事中だって! それに、マカミが……」
「マカミも混ぜればええやん……ダメ?」
「駄目! ほら離れて。仕事は真面目にやらなきゃ駄目だよ!」
「むぅ……堅物ぅ」
エンジュは不満げに離れ、椅子にかけてあった白衣を着た。
◇◇◇◇◇◇
フレキたちのいる薬院は、フレキの結婚に合わせて改築された。
結婚祝いにと、アシュトがエルダードワーフに依頼した建物で、薬院と新居が一体化している。さらに、薬院の裏手には大きな温室があり、フレキやエンジュが薬草を育てている。
フレキは、マカミが作った昼食をエンジュと三人で食べた。
「フレキ。午後はどうするの?」
「んー……薬草精製して、師匠に手紙書こうかなって思ってたけど、何かあるの?」
マカミは、ちょっと言いにくそうに言う。
「あのさー……お昼寝しない?」
「え……昼寝?」
「うん。変身してさ、日光浴びて外で寝るの」
「なんやなんや。マカミ、寝不足かいな? ふふふ、今夜のために寝だめしとくんか~♪」
「ばば、馬鹿言わないでよ!! あたしはアンタと違うから!!」
「おお怖い」
エンジュはこうやってマカミをからかう。
すると、フレキが言う。
「……そうだね。たまにはのんびりお昼寝もいいかな。薬草精製はいつでもできるし、師匠の手紙は夜にも書けるし……あ、ついでにアセナにも書かないと」
「じゃあお昼寝でいい?……エンジュ、あんたも」
「うちはええで。ってか、お腹いっぱいで眠いしなぁ~……くぁぁ」
エンジュは大きな欠伸をした。
こうして、フレキ一家の午後の予定は、お昼寝となった。
◇◇◇◇◇◇
薬院の裏にシートを敷き、フレキとマカミは人狼へ変身した。
「おお~、相変わらずモッフモフやなぁ」
「そうかな……?」
「よくわかんないわね……」
狼の姿も、人間の姿も、二人にとって『自分』であることに変わりない。
エンジュは大あくびすると、フレキの腕に抱き着いた。
「ほんま、アシュト村長には感謝やなぁ……こうして、フレキやマカミと一緒にのんびり過ごせるのも、アシュト村長のおかげや……」
「だね! やっぱり師匠はすごい……!」
「ねーフレキ。遊びに行かないの? 帰ってきてから一度も緑龍の村に行ってないよね?」
「……師匠のところに行きたい気持ちはあるけど、ボクはこの人狼族の村の薬師だからね。何かあった時のために、常に村にいないと」
「「真面目……」」
マカミとエンジュの声が重なった。
真面目なフレキらしい。
すると、エンジュが言う。
「じゃあ。アシュト村長に来てもらえばええやん」
「あ、それいいかも。ね、フレキ」
「確かにね……くぁぁ」
フレキが大きな欠伸をした。
だいぶ眠くなってきたのか、フレキの瞼が重くなっていた。
さらに、マカミもエンジュも大きな欠伸をする。
「……うち、眠いわぁ」
「あたしも……」
それから間もなく……三人は眠りについた。
そして数十分後。忘れ物を取りに来たロムルスが、昼寝をしている三人を見た。
「……そういえば、村のみんなが言ってたっけ。師匠のところは『おしどり夫婦』だって」
意味はわからないが、ロムルスはウンウン頷きながら、そっとその場を後にした。
人狼族の村は、今日も平和である。
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