大自然の魔法師アシュト、廃れた領地でスローライフ

さとう

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日常編⑲

第549話、銀猫大宴会

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「宴会、ですか?」
「うん。銀猫のみんなには世話になってるし、みんな集まって宴会でも……ってのは建前で、実はカエデに頼まれてさ、妖狐の宿で出す新しい料理の試作を食べて欲しいって」

 ある日。 
 洗濯を終えたシルメリアさんを呼び止めた。
 カエデに頼まれたお願い事を、そのままシルメリアさんに説明する。
 
「料理のことはよくわからないし、料理上手な銀猫族のみんななら、いい意見を出せると思う。せっかくだし、宴会って形で、みんなでゆっくり休んでほしいんだ」
「なるほど。新しい料理ですか……」

 シルメリアさんは「ふむ」と考え込む。

「わかりました。では、ご主人様の好意に甘えさせていただきます」
「うん。妖狐の宿は貸し切りになってるから、仕事を忘れて楽しんでよ」

 ちなみに、料理だけではなく酒も出る。
 酒代は俺持ちだ。言うと気を遣わせるから黙っておこう。

「あの、ご主人様……お願いが」
「ん、なに?」
「宴会に、ライラや子供たちを招いてもよろしいでしょうか? ミュアだけですと、あの子が楽しめないと思いますので……」
「もちろん構いませんよ。みんなで楽しんでください」
「ありがとうございます」

 こうして、妖狐の宿で銀猫たちの宴会が開催されることとなった。

 ◇◇◇◇◇◇

 ミュアは、ライラと一緒に温泉に浸かっていた。

「にゃぁぅ~……」
「わふぅ~……」

 肩までしっかり浸かれ。それがシルメリアの口癖だ。
 すると、温泉好きのマンドレイクとアルラウネが、仰向けに浮かびながらスイ~っとやってきた。

「まんどれ~いく……」
「あるらうね~……」
 
 二人とも気持ちいいのか、ご満悦だ。
 そして、洗い場では。

「みゃぁぁ!! もういい!!」
「駄目です。しっかり洗わないといけませんよ。ほら、耳に泡が入りますよ」
「みゃぁぅ!!」

 ルミナが、シルメリアに洗われていた。
 アシュトといる場合は別だが、ルミナは風呂があまり好きではない。
 さらに、銀猫族の宴会に参加するつもりもなかったが、ミュアに無理やり連れてこられたのだ。
 シルメリアに捕まり、こうして温泉に入れられている。

「にゃあ。おんせん気持ちいい……えへへ、このあとは美味しいご飯だね」
「わうぅ。楽しみ……くぅぅん」

 今日は貸し切り。
 女湯は、銀猫たちでにぎわっている。今頃宴会場では、試作の料理が準備されている。
 銀猫族にとって、料理は生活の一部だ。どんな料理が出てくるのかとても気になる。
 シルメリアは、ルミナを洗い終わると、浴場にいた全銀猫に言う。

「皆さん。そろそろ上がりましょう」

 銀猫たちは温泉から上がり、浴衣に着替えて二階の宴会場へ。

 ◇◇◇◇◇◇

 宴会場へ向かうと、カエデが出迎えてくれた。

「ようこそいらっしゃいました」
「カエデ!」
「まんどれーいく」
「あるらうねー」
「わわわ、待て待て、わらわは『女将』として出迎えをするのじゃ。遊ぶのはまた今度なのじゃ!」

 ミュア、マンドレイクとアルラウネがじゃれつく。
 カエデは三人から離れ、座敷へと案内する。
 大きな尻尾が揺れ、とても可愛らしい。

「こちらのお座敷となります。どうぞ」

 畳敷きの部屋にはお膳が並び、座布団が敷いてある。
 宴会場はとても広く、五十人以上入っても問題なかった。

「にゃあ。広いね」
「空間歪曲魔法なのじゃ。外から見ると大した大きさの建物ではないが、中はとっても広いのじゃ。妖狐族の建物には全て、この空間歪曲魔法がかけられているのじゃ」

 空間歪曲。
 ビッグバロッグ王国ではまだ確立のしていない魔法だ。現時点で理論だけなのだが、魔法のスペシャリストである妖狐族にとっては、そこまで難しい魔法ではない。
 魔法について知識のない銀猫たちは、特に気にすることなく座布団に座った。
 さっそく、妖狐族の仲居がお酒の準備をする。
 シルメリアは、お膳に釘付けだ。

「これは……」
「新メニューなのじゃ。川魚のフルコースなのじゃ」

 川魚のフルコース。
 煮物や焼き魚、和え物などが並んでいる。さらに、コメは魚と一緒に炊いたのか、淡い茶色に染まっていた。 
 魚の香りに、銀猫たちはゴクリと喉を鳴らす。

「みゃう……」

 ルミナも、ネコミミと尻尾を揺らしていた。
 シルメリアは咳払いし、グラスを持って立ち上がる。

「それでは、試食会を始めたいと思います。皆さん、新メニューに対する意見を出し合いましょう。では……いただきます」

 乾杯ではなく、いただきます。
 あくまで試食会ということを忘れない銀猫たちだった。

 ◇◇◇◇◇◇

「にゃあ。おいしい! このお魚ごはん、すごくおいしい!」
「お魚ご飯じゃない。アマゴイって魚の炊き込みご飯なのじゃ」
「あまごい?」
「そうなのじゃ。こっちには塩焼きもあるのじゃ」
「にゃうう! おいしそー!」

 ミュアは、カエデに説明を受けながら食べていた。
 その隣では、ルミナがもくもくと食べている。銀猫たちと違い、試食会ではなく、美味しい物を食べに来ただけのようだ。
 ミュアの反対側では、ライラが魚の酢漬けに鼻をピクピクさせる。

「わぅぅ……これ、苦手かも」
「まんどれーいく」
「え、食べてくれるの?」
「まんどれーいく!」

 マンドレイクが、胸をドンと叩く。
 ライラは、酢漬けの小鉢をそのままマンドレイクのお膳へ。
 お返しにと、山菜の天ぷらをライラへ。

「えへへ。交換だね」
「まんどれーいく」

 嬉しそうに笑うライラとマンドレイク。
 そして、シルメリアとアルラウネは、カワメという魚の照り焼きを食べていた。

「ふむ。これはなかなか……白身は甘く、口の中でふんわり蕩けて……ですが、もう少し火を通して身を固めてみるのも、面白いかもしれませんね」
「あるらうねー」
「なるほど……」

 妖狐族の料理人たちが、銀猫たちから意見を聞いている。
 そう、これはあくまでも試食会。
 お酒も出ているし、ほんのり気分がいいけど……料理に関する意見を求められているのだ。
 すると、食べ終わったルミナが大きな欠伸をした。

「ふみゃぁぁぅ……」
 
 座布団を宴会場の片隅に持って行き、そのまま丸くなって寝転んだ。
 試食会の時間が長引くに連れ、欠伸をする銀猫たちが増えてきた。
 お酒もだいぶ回り、気分がよくなっていったのだろう。そのまま横になり、丸くなって寝てしまう銀猫が増えていったのである。
 ミュアやライラは、すでに寝てしまった。
 最後まで起きていたシルメリアも、限界が近い。

「うぅ……もう、限界、です」

 シルメリアは、お膳に突っ伏すように寝てしまった。
 翌朝。全ての銀猫たちが寝坊してしまい、アシュトの家の朝食は久しぶりにミュディが腕を振るったそうだ。
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