大自然の魔法師アシュト、廃れた領地でスローライフ

さとう

文字の大きさ
368 / 474
ドラゴンロード・フェスティバル

第562話、今度こそ一緒に

しおりを挟む
 シエラ様の登場で、ダイニングルームにいた龍人たちは一斉に跪いた。
 ガーランド王、アルメリア王妃、アンフィスバエナ様、ジルニトラ様。そしてルクソードにエシルド、他にも俺の知らない龍人たちが跪き、ローレライに引っ張られるようにクララベルも跪いた。

「お久しぶりです、ムルシエラゴ様」
「やっほ~♪ ふふ、アンくん、ジルちゃん、久しぶり」
「またお会いできて嬉しいです。ムルシエラゴ様」

 うおお……始祖龍であり、全ての龍人たちの名付け親であるアンフィスバエナ様とジルニトラ様が、シエラ様に跪いて頭下げてる。
 俺も跪くべきなのだが、シエラ様に腕をがっちり取られてるからできない。
 アンフィスバエナ様は、隠し通路をチラリと見た。

「まさか、こんな通路があったとは」
「んふふ~♪ アンくんとジルちゃんが見つけたら面白いかな~って思ったけど、気付かなかったわねぇ? まだまだ面白い仕掛けいっぱいあるから、ガーくん、探してみてね♪」
「は、はいっ!!」

 シエラ様、どこまでも笑顔だな。
 というか……ドラゴンロード王族が跪いているこの状況、なんとかしてほしい。
 すると、シエラ様はにっこり笑った。

「ねぇガーくん、お願いがあるの」
「はっ、なんなりと」
「これからアシュトくんと町でデートしたいんだけど」
「はい!?」
「案内が欲しいのよ。ローレライちゃんとクララベルちゃん、借りていい?」
「もちろん、構いません。ローレライ、クララベル。役目を全うなさい」
「「はい」」

 驚く俺を置いて、ローレライとクララベルが頭を下げた。
 もしかしたら、そう思ってシエラ様を見ると。

「うふふ、これがドラゴン権力です♪」
「ええ~……でも、ありがとうございます」

 シエラ様、なんて優しい……本当に嬉しいよ。
 
「お待ちください」
「ん~?」
「このルクソードめに、護衛の任をお任せいただけないでしょうか」
「護衛? ん~、でもねぇ」
「王族の護衛は必要のはず」
「……うん、わかった♪ じゃあお願いしちゃおうかしら」
「え、ちょ、シエラ様?」
「ふふ、大丈夫大丈夫。ああそれと、護衛は二人一組が基本だから、エルシドくんも一緒ね」
「は、はい!!」

 こうして、俺とローレライとクララベル、ルクソードにエルシド兄弟でドラゴンロード王国城下町へ出かけることになった。

 ◇◇◇◇◇◇

 さて、これからデートだ。
 ローレライとクララベルは普段着に着替え、なぜか王城最上階へ集まった。
 そこには、ルクソードにエルシドもいる。
 クララベルは嬉しくてたまらないのか、俺の腕にくっついていた。

「えへへ、お兄ちゃんとお出かけ!」
「そうだな」
「……ごめんね、お兄ちゃん。忙しくて、一緒にいれなくて」
「わかってる。クララベルは王族だしな」
「ぅぅ……」

 クララベルの頭を撫でてやる。
 ローレライも、申し訳なさそうだった。
 ちなみに、シエラ様はすでにいない。ミュディも火が付いたのか、デザイナーたちと一緒にローレライたちのドレスを仕上げているようだ……ミュディ、仕事しに来たみたいだな。

「さて、時間が惜しい。さっそく行こう」
「うん!! じゃあお兄ちゃん、わたしに乗ってね」
「……やっぱ飛んでいくんだよな」

 王城の最上階に集まった理由。それは……飛んでいくから。
 ローレライとクララベルが変身。そして、黙っていたルクソードとエルシドも変身した。
 クリーム色、純白、濃い緑、濃い群青のドラゴンだ。
 シエラ様に聞いたが、建国祭の当日、龍人たちは一斉にドラゴン態でドラゴンロード王国を回るらしい。

『お兄ちゃん、乗って』
「ああ。あ、クララベル……くれぐれも飛ばすなよ」
『うん! 落ちたら姉さまが拾うから安心して!』

 なにがどう安心なのか俺には理解できなかった。
 クララベルの背に乗ると、四匹のドラゴンは一斉に飛び上がる。

『ローレライ、行先は城下町の停留所でいいかい?』
『ええ。そこで降りて、食事にしましょう』
『じゃあ、行こうか』

 ローレライと親し気なルクソード。

『クララベル、大事なお客様を落とすなよ』
『わかってるし! お兄ちゃんは大事な旦那様なんだから!』
『旦那様ね……ガーランド王を倒したって、ホントなのかい?』
『うん。お兄ちゃん、すっごく強いんだから!』
『……ふーん』

 濃い群青のドラゴンことエルシドは、ギョロリとした眼で俺を見た。
 ガーランド王を倒したのは本当だぞ。まぁ、シエラ様のおかげでもあるけど。

『アシュト様』
「え、あ、はい」

 ルクソードが、俺に話しかけてきた。
 ちょっとびっくりしていると、ルクソードは続ける。

『嫌いな食べ物はありますか?』
「い、いや……特にないけど」
『では、ドラゴンロード王国名物、『竜王肉』をごちそうします。ローレライ、いいかな?』
『なるほどね。さすがルクソード、いいアイデアだわ』
『お褒めに預かり光栄、かな?』
『もう、何よそれ』

 おいおいおいおい、なに楽しそうにしてんだよ。
 ってか、竜王肉ってなんだ?

「あー、その、竜王肉って?」
『竜王肉は、歴代の『覇王龍』の一部です。まぁ、ドラゴンの尻尾ですね』
「え……尻尾?」
『はい。ドラゴンの尾は切れても数日で再生しますので。ガーランド王は数日おきに、行きつけの店に自身の尻尾肉を卸しているんですよ』
「…………」

 なにそれ。
 つまり、これから俺はガーランド王の尻尾肉を食べさせられるの?
 倫理的に大丈夫なのかよ。

『あ、見えてきた! エルシド、競争しよっ!』
『いいね。クララベル、久しぶりだけど負けないぞっ!』
「え、ちょっ」

 急に加速したクララベル。
 どうやら停留所が近いようだ。
 ちなみに、ドラゴンロード王国の至る所に、騎乗用のドラゴンやワイバーンが着陸する広場がある。

「うぉぉぉぉっ!?」

 俺は必死にクララベルにしがみつき、これから出されるであろうガーランド王の尻尾肉に恐怖した。
しおりを挟む
感想 1,145

あなたにおすすめの小説

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

腹違いの妹にすべてを奪われた薄幸の令嬢が、義理の母に殴られた瞬間、前世のインテリヤクザなおっさんがぶちギレた場合。

灯乃
ファンタジー
十二歳のときに母が病で亡くなった途端、父は後妻と一歳年下の妹を新たな『家族』として迎え入れた。 彼らの築く『家族』の輪から弾き出されたアニエスは、ある日義母の私室に呼び出され――。 タイトル通りのおっさんコメディーです。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  お気に入り・感想、宜しくお願いします。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。