大自然の魔法師アシュト、廃れた領地でスローライフ

さとう

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ドラゴンロード・フェスティバル

第566話、その頃のミュディ

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 アシュトが男として、夫としてのプライドを賭けた勝負を挑まれている頃。
 ミュディは、ドラゴンロード王城内にある王族専用のドレスを仕立てるブティックで、王族付きの針子たちと仕事をしている最中だった。
 ミュディは、マネキンに着せられたドレスを見ている。
 マネキンは二体あり、ローレライとクララベルのスタイルを忠実に再現している。

「んー……ローレライのドレス、もう少し露出を多くしてもいいかも。背中と胸元をもう少し開けて、薄手のヴェールを着せましょう。クララベルちゃんは、露出を減らしてフリルを付けて。可愛いらしさをアピールしましょうか」
「「「「「はい」」」」」

 針子たちは、ミュディに頭を下げた。
 ここでは、ローレライたちが建国祭で着るドレスを仕立てている。
 正直、ミュディは無関係。だが……ローレライが『ミュディ、私とクララベルのドレスの仕立て、手伝ってもらっていいかしら?』など言われれば手伝わないわけにはいかない。
 ローレライとしては、完成寸前のドレスに少し手を加えるだけでよかったのだが……思った以上にミュディが本気になってしまい、ほぼ初めから仕立てているような状況になっていた。

「ミュディ様。フリルもですが、こちらのレースを使ってはどうでしょうか?」
「そうね。レースも使いましょう。でも、このレースは少し太いし、装飾も荒いわ。使うなら……そうね、こっちのレースにしましょう」
「なるほど。これはいいですね」

 針子たちも、最初は『なぜこんなこんな面倒なことを……』と思っていたのだが、ミュディの本気具合と技術にすっかり飲まれてしまい、質問や意見などを交わしていた。
 ミュディも、緑龍の村とは違う環境が楽しく、ついつい熱が入ってしまう。

「あ、そうだ。せっかくだし、ルミナちゃんたちのドレスも作りたいな……あの、余ったドレスの素材、使っていいかな?」
「「「「「どうぞどうぞ!! ご自由にお使いください!!」」」」」
「わぁ、ありがとうございます」

 針子たちは、余った素材どころか、手を付けていない素材も全てミュディに渡した。
 ミュディは、ルミナ、イオフィエル、ディアーナのスリーサイズを思い出す。イオフィエルとディアーナは、以前ドレスを作ったことがあり、スリーサイズやスタイルなどは記憶していた。
 ルミナも、一度だけスタイルを計ったことがあるので、なんとかなりそうだ。

「よーし!! じゃあ、やっちゃおうかな」

 ミュディは張り切って作業を始めた。 
 ちなみに、アシュトのことは……すっかり忘れていた。

 ◇◇◇◇◇◇

 ついつい、時間を忘れてしまった。
 針子たちが『お食事を』とか『お休みになってください』とか言っていたような気がしたが、ミュディはどうも記憶が曖昧になっていた。
 疲れ切ったような針子たちに気付いたミュディは、慌てて頭を下げて退出。
 時間は、夜遅く。
 夕食も終わってしまっただろう。

「あぁ~……やっちゃった。せっかくドラゴンロード王国に来たのに、いつもと変わらないかも」

 小さくため息を吐き、自分の部屋に戻ろうとする。
 すると、後ろから一人の騎士が。

「ミュディ様。お部屋までお送りします」
「あ、はい。えーっと……ユーウェインさん」
「名前を覚えて頂けるとは、光栄です」
「ふふ。アシュトから聞いています。いつも通りで大丈夫ですよ」
「……じゃあ、遠慮なく」

 ユーウェインは肩の力を抜いた。

「ふぅ、どうも堅苦しいのは苦手でね」
「アシュト、言ってました。ユーウェインさんは軽いノリで、グリフレッドさんは堅物系だって」
「あっはっは。まぁ合ってるな。さて、奥様。お部屋までご案内しますよ、っと」

 ミュディはクスっと笑い、ユーウェインと歩きだす。
 
「グリフレッドさんはいないんですか?」
「あいつは奥様の部屋の前にいます。今夜はあいつが番をするんで」
「そうなんだー……大変ですねぇ」
「仕事なんで。それに、久しぶりの故郷だし、オレらも交代で休みがあるんですよ」
「へぇ~、じゃあ、お家に帰るんですか?」
「いやいや、実家は面倒くさいし、給金も入ったし、町で酒でも飲んで遊びますよ」
「お酒かぁ……」
 
 あまり酒は飲めないミュディ。だが、城下町は気になった。
 今は、ディアーナたちが『祭り』のために下見をしている。

「そうだ。アシュトを誘って、ディアーナたちと合流しようかな。町でお買い物したり、ご飯食べたりしたいなぁ」
「平和っすねぇ……うんうん。いいことだわ」
「ねぇユーウェインさん、城下町おススメのご飯屋さん、教えてくれる?」
「もちろん! お任せ下さい」

 ユーウェインは一礼し、どんな店を勧めようか考え始めた。

 ◇◇◇◇◇◇

 部屋には戻らず、まっすぐアシュトの部屋へ向かったユーウェインとミュディ。
 ドアをノックすると、アシュトがいた。

「はい……ああ、ミュディか」
「アシュト、ちょっといい…………何かあったの?」
「……まぁ、少し」
「……入っていい?」
「ああ、うん」

 ユーウェインはドアの前に立ち、ボソッと呟く。

「顔見ただけで何かあったかわかるなんてな……すげぇ」

 アシュトの部屋にはルミナがいた。
 ベッドですやすや寝息を立て、たまにネコミミがピコッと動く。
 アシュトとミュディは、窓際の椅子に座った。
 そして、アシュトは話をする。

「ローレライとクララベルの幼馴染たちと揉めて、戦うことになった」
「…………そっか」

 なんとなく、こうなる予感がしていたミュディ。
 でも、アシュトが喧嘩をするとは思わなかった。よほど、引けなかったんだろう。
 ミュディは、深く聞かずに言った。

「私は、アシュトを応援する。アシュトの味方だから」
「ミュディ……」
「それと、ローレライとクララベルちゃんも、アシュトの味方だよ?」
「うん……ありがとう」

 そうだ。
 何があろうと、ミュディはずっと、アシュトの味方だ。
 ミュディが傍にいてくれるだけで、アシュトは嬉しかった。
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