大自然の魔法師アシュト、廃れた領地でスローライフ

さとう

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ドラゴンロード・フェスティバル

第568話、ドラゴンロード・フェスティバル

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 ドラゴンロード王国の建国祭が始まった。
 町の全てがお祭り騒ぎで、他国からも様々な貴族や重鎮が挨拶に来ている。
 挨拶がひとしきり終わると、王族たちは変身し、ドラゴンの姿で国の上空を飛ぶのが儀式となっている。
 そんな中、俺は『木龍セフィロト』の姿で上空を飛んでいた。

『えへへー、お兄ちゃんと一緒に飛べるの嬉しい!』
『あはは……まさか、俺も王族と一緒に飛べるなんて思わなかったよ』

 真っ白なドラゴンとなったクララベルは、嬉しそうに翼をバサバサする。すると、綺麗な羽が舞い、城下町に落ちた……あらら、住人たちが拾ってるよ。どうも幸運があるとかないとか言ってるな。
 そんな話をしていると、隣にローレライが並ぶ。

『クララベル、列を乱さないの』
『はーい、姉さま』
『アシュト。あなたも』
『わかった。悪いな、ローレライ』

 前方を見ると、ガーランド王とアルメリア王妃を筆頭に、王族たちが並んで飛んでいる。ルクソードやエシルドも背後で飛び、俺が知らない王族のドラゴンも飛んでいた。
 アンフィスバエナ様とジルニトラ様は……俺たちの上空を飛んでいた。最古のドラゴンは大きさも尋常ではない。並んで飛ぶことができないのだ。

 ドラゴンたちが飛ぶと、国民たちが大喜びだ。
 手を振る子供、旗を振る男性、キャーキャー叫ぶ女性。いろんな人がいる。
 あんまり町を見たりはできなかったけど、ドラゴンロード王国、楽しかった。

『そういえば、ミュディたちはどうしてるかな……』

 ◇◇◇◇◇◇

 ミュディは、ドレス制作の仕事を終え、着付けをしていた。
 
「……あの、ミュディ様。もう結構ですので、自分の支度を」
「待って。もう少しで終わるから……ディアーナ、胸大きくなった? わたしの知ってるサイズと違うかも」
「~~~っ」

 ディアーナは赤くなる。
 なぜかミュディの背後で、白とブルーのドレスを着たイオフィエルがジト目で見ていた。その手は胸を押さえているように見える。

「みゃう……」
「ルミナちゃん、今日はよろしくね」
「まぁいいけど。ずっと勉強してたし、最後くらい」

 ルミナもドレスを着ていた。
 今日はパーティーがある。ずっと勉強していたルミナは、最後くらいならと行事に付き合ってくれた。
 ミュディの着替えも終わり、全ての支度が終わった。
 パーティー会場へ向かうと、途中でタヌスケと合流。

「おお、皆さん素敵な装いで……へへへ」

 揉み手をしながら頭を下げるタヌスケ。
 かなり胡散臭いが、これが素のタヌスケである。
 パーティー会場近くの控室に入り、待つ。
 待つこと数十分。ドアがノックされた。

「みんな、おまたせ」
「みゃう」

 正装したアシュトが入ってきた。
 その後ろには、ローレライとクララベルもいる。
 ルミナは立ち上がり、アシュトに抱き着いては頭をグリグリ擦り付けた。
 ミュディは、嬉しそうに言う。

「ん~! みんな、似合ってる!」
「ありがとう。ミュディ、あなたがこのドレスを仕立ててくれたそうね。針子やメイドたちが絶賛していたわ」
「えへへ……なんだか楽しくなっちゃって、つい。ごめんね、勝手なことして」
「いいの。むしろ嬉しいわ。ああ、お母様があなたにお礼をしたいって。それと、正式に報酬を支払うから」
「ええ? いいよいいよ、わたしが勝手に……ん、やっぱりもらおうかな」

 ミュディは慌てて言い直す。
 王族が報酬を支払うと言っている。それを拒絶するのは、王族の行為を無下にするのと同じ。ミュディも元貴族。しきたりや作法は覚えていた。
 クララベルは、ドレスが嬉しいのかくるりと回る。

「えへへ、ミュディのドレスすっごく素敵! ねぇタヌキさん、どう?」
「いやぁ、すっごく似合っていますよ~……へへへ」

 揉み手をするタヌスケ。
 アシュトはルミナの頭を撫でながら、全員に言う。

「じゃあみんな、パーティー会場に行こうか」

 今日は、建国祭。
 そして、これから始まるのは、王族主催のパーティーだ。
 
 ◇◇◇◇◇◇

 パーティーが終わり、俺は部屋でのんびり過ごしていた。
 ルクソードたちと和解し、一緒に酒を飲んだり話をした。あの二人とはいい友人になれそうだ。
 機会があれば、緑龍の村に招待しよう。

「アシュトくん」
「シエラ様」
「ふふ、一杯どう?」

 すると、シエラ様が酒瓶を持って現れた。
 ドアも開いていないし、いきなり現れたけど……なんとなく、来る予感がした。

「ルクソードくん、エシルドくん。仲良くできそう?」
「はい。本気でぶつかって、あいつらの想いも知りました。その上で、俺が勝ちました」
「そう……あの子たち、昔からローレライちゃんたちが好きでね」

 シエラ様はワインを注ぎ、俺のグラスにも注ぐ。
 グラスを軽く合わせ、ワインを飲んだ……甘くておいしいな。

「アシュトくんなら、あの子たちの想いを断ち切れると思ったのよ」
「……俺も、みっともない姿を見せましたけどね」
「ふふ、まだ子供だから……でもね、アシュトくんはカッコよかったわよ?」
「そう、ですかね」
「ええ。ディアーナちゃんたちの後押しのおかげ」
「はい……」
「ふふふ。アシュトくん、一つ大人になったわね」
「……はい」

 やっぱり、シエラ様には敵わないな。
 俺はワインを飲み欲し、おかわりを注いだ。
 
「明日、ローレライちゃんやミュディちゃんたちを誘って、城下町で遊んで来たら? 今のアシュトくんならきっと、楽しく遊べるはずよ~?」
「はい。そうだな……ルミナやディアーナたちも一緒に遊ぼうかな。村にお土産も買いたいし」
「そうね。あ、そうだ。一個言い忘れてたわ」
「はい?

 シエラ様は、ちょっぴり楽しそうに言った。

「ふふ。緑龍の村に『夏』が来たわよ?」
「……夏?」
「ええ。あの場所はね、三年に一度、一年かけて冬が来るのは知ってるわよね? でも、夏は不定期にやってくるの。ハイエルフたちなら、微細な気温や湿度で夏を察知することができると思うけど……まぁ、基本的には短い夏だと思えばいいわ」
「そ、そうなんですか? 知らなかった……」
「ふふ。夏は楽しいわよ? 川辺で水遊びできるし、お洗濯ものはすぐに乾くし」
「でも、暑いんですよね」
「そりゃあ夏ですから!」

 夏、夏か……村は大丈夫かなぁ?
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