大自然の魔法師アシュト、廃れた領地でスローライフ

さとう

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常夏の村

第575話、夏と言えば?

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 エルミナ曰く、『夏真っ盛り』らしい。
 連日、気温は40度近くまで上がり、木には常夏セミがくっついてミンミン鳴いている。洗濯物が乾くのは早いが、大汗をかいてみんな着替えまくるので、洗濯物の量が増えたとか。
 ディミトリが持ってきた『扇風機』も、近くだと涼しいが部屋一つを冷やすほどの効果はない。
 プールは連日賑わいを見せ、今や憩いの場となっている。
 ブランの奴がミズギを着たハイエルフや銀猫たちに絡むのがうっとおしい都の苦情もあったが、バルギルドさんとディアムドさんに話したらスッパリなくなった……ブラン、デカいタンコブを頭に作ってた。

 さて、現在の俺。
 ドラゴンロード王国から戻り、仕事に精を出していた。
 留守番をしれくれたココロはしばらくお休み。プールでのんびり過ごしたり、シェリーと一緒に魔法学園に行って級友たちと過ごしているだろう。
 俺も、しばらく出かけてばかりだったし、勉強や研究に精を出しますかね。
 
「にゃあ……あついー」
「暑い~」

 ふと、そんな声が聞こえた。
 声の主は、ミュアちゃんとクララベル。
 二人とも薄着で、暑いのか床に寝転がっている。
 
「ほらほら二人とも、床は寝るところじゃないぞ」
「にゃう、あついよー」
「お兄ちゃん、氷出してぇ~」
「シェリーに頼め……っと、あいつは魔法学園か。ほら二人とも、起きろって」

 二人を起こし、部屋の隅で読書するルミナを指さす。

「ほら、ルミナを見てみろ。こんな暑いのに黙々と読書してるぞ」
「にゃあ。ルミナ、扇風機の前にいるー」
「みゃう。うるさいぞ」

 ルミナは扇風機を独占していた。
 それを見たミュアちゃんがルミナの隣へ。ルミナはうっとおしがり、ミュアちゃんを尻尾で叩く。するとミュアちゃんも負けじと尻尾で叩き返した。

「みゃう!! なにすんだ!!」
「ルミナが先にやった!!」
「うるさい!! ってか暑苦しいからくっつくな!!」
「にゃにぃ!? ふしゃぁぁぁ!!」
「ふしゃーっ!!」
「こら!! いい加減にしろって」
「にゃうっ」「みゃうっ」

 二人の頭を少し強めに撫でる。暑くてイライラしてるのかな。

「二人とも、プールで頭を冷やして来たらどうだ?」
「にゃあ……ひといっぱい」
「あたいも、ひとが多いのヤダ」
「んー……」

 すると、クララベルが俺の背中に抱きついてきた。

「お兄ちゃぁん……暑いの、なんとかしてぇ」
「何とかって言われてもな……あ、そうだ」

 そういや、転移魔法を覚えたての頃、今まで行った場所に再度行って、転移魔法陣を刻んだっけ。

「仕事もあるからそんなに長くはダメだけど……ちょっとだけ、涼みに行こうか?」
「にゃう?」
「みゃう?」
「涼みに?」
「ああ。そうだな……お昼前の、一時間だけな」
「行きたい!」
「にゃあー!」
「みゃう……ま、まぁ、行ってもいいぞ」
「よし。じゃあ、ミズギを持ってここに集合だ」

 五分後、ミズギを持って……ではなく、ミズギに着替えた三人が集まった。
 いや、まぁ……うん、可愛いし別にいいや。

「じゃ、行くぞ」

 俺は杖を振り、転移魔法を唱えた。

 ◇◇◇◇◇◇

 青い空、白い雲、そして波の音に潮風。

「わぁ~……」

 クララベルが感動していた。
 ミュアちゃん、ルミナも目をキラキラさせている。
 そう、やってきたのは『海』だ。
 マーメイド族の住む陸の村。海底には海の村がある。
 陸の村には、よく日焼けした若い男女が、魚をさばいて干していた。
 その中に一人に、見覚えがあった。

「あれ?……村長? アシュト村長じゃないか」
「シード、久しぶり」

 マーメイド族のシードだ。
 陸では細マッチョのイケメン。海では頼れるマーメイド族だな。
 シードは手を止め、俺の元へ。

「なんだなんだ、ずいぶん久しぶりじゃないか。何か用かい?」
「ああ、ほんの一時間だけ涼みにね。実は今、緑龍の村に夏が来ててさ……暑くて死にそうなんだ」

 俺は胸元をパタパタさせる。
 シードはあははと笑い、指をパチッと鳴らした。すると、俺たちの身体が淡く光る。

「海中呼吸の魔法をかけた。時間もないようだし、自由に泳いでくれ」
「ありがとう。助かるよ」

 シードは手を振って作業に戻った。
 俺の後ろにいたクララベルたちは、目をキラキラさせている。

「お兄ちゃん!! 遊んできていい?」
「ああ、いいぞ」
「やった!! ミュア、ルミナ、行こっ!!」
「にゃあー!!」
「ふん、付き合ってやってもいいぞ」

 三人は海に駆け出し、飛び込んだ。

「にゃあ!! いきできるー!!」
「よーしっ!! 泳ぐぞーっ!!」
「みゃうー……きもちいい」

 うんうん、みんな楽しそうで何よりだ。
 
「よし。俺も泳ごうかな」

 俺は服を脱ぎ、ズボンの下に履いていたミズギ姿になる。
 軽く準備運動をして、海に飛び込んだ。

「くぅっ!! 気持ちいいなっ!!」
「みゃうー」
「ほらルミナ、泳ごう」
「泳げない。浮かぶだけ」
「じゃあ、教えてやるから。ほら」
「……ん」

 この日、ルミナはバタ足を覚えた。
 クララベルが変身したり、クララベルの背中に乗って海中を散歩したり……一時間は、あっという間に過ぎてしまった。
 
「さ、そろそろ帰ろう」
「にゃぁ~……もっと遊びたい」
「みゃう~」
「お兄ちゃん……ダメ?」
「駄目。みんなに話してないし、心配するからな」
「「は~い……」」
「みゃう……」

 シードに挨拶しようかと思ったが、すでにいなかった。
 転移魔法で薬院へ戻り、着替えて仕事を再開。
 ミュアちゃんたちも泳ぎ疲れたのか、今度は三人仲良く昼寝を始めた。

「ヤレヤレ……でも、海で遊ぶのいいな。転移魔法で行けるし、休みの日とかみんな誘って行こうかな」

 夏に海、この組み合わせ最強すぎるよ。
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