大自然の魔法師アシュト、廃れた領地でスローライフ

さとう

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緑龍の村・夏祭り

第585話、出店巡り②

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「参ったな……」
「みゃう」

 俺とルミナは手を繋いだまま困っていた。
 エルミナ、ミュディとはぐれてしまったのである。
 村の広場に設けた特設ステージで、ゴルゴーン族のダンスが公開されると放送が入り、大勢の人波にもまれてはぐれてしまったのだ。
 探すにも、人が多くて大変だ。
 キョロキョロしていると、ルミナが袖を引く。

「みゃう。べつにいつでも会えるだろ、行くぞ」
「お、おい」
「おなかへった」

 まぁ……いいか。
 俺はルミナと手を繋ぎ、歩きだす。
 出し物を設けたのは正解だった。ディアーナの案で、村外れの資材置場にステージを設けたのもよかった。おかげで、だいぶ歩きやすくなった。
 ルミナは出店で買った飴玉を舐め、一つを俺に差しだす。

「ん」
「お、ありがとな」
「みゃう~」

 頭を撫でると機嫌がよくなる。
 最近、こうやってルミナと過ごすこともなかったしな。甘やかすのもいい。
 出店を見ながら歩いていると、ローレライの店があった。
 何やら竜騎士や女性が集まってる……お、よく見るとイオフィエルや、整体天使のハニエル、アニエルもいる。
 俺が近づいても全員見向きもしない。それほど集中しているようだ。
 イオフィエルの背後からコソッと覗く。

「ドラゴンチェスか」
「みゃう」

 立て看板には『詰めドラゴンチェス』と書かれている。
 ローレライの前にはドラゴンチェスのボードがあり、詰みかけの状況だ。
 ここから数手を差し、逆転できるらしいが……うむむ。

「……では、『飛龍』をここに。『騎士龍』をこちらへ」
「甘いわね。『守護龍』で『騎士龍』を防御。『覇王龍』ががら空きよ?……ドラゴンチェック」
「っく……」

 イオフィエルが指を噛む。
 ありゃりゃ……これはダメだな。というか、ここから逆転できる手なんてあるのか?
 すると、ローレライと目が合った。

「あら、アシュト」
「よ、盛況だな」

 ようやく、竜騎士や天使たちが俺に気付いた。竜騎士は慌てて敬礼する。
 みんなすごく集中してた。ドラゴンチェス、あまりやらないけど楽しそうだ。
 ルミナは、興味深そうに盤上を眺める。

「なにこれ」
「ドラゴンチェス。それぞれ異なる動きをする駒を使ったゲームだ。やってみるか?」
「みゃう……」
「ちなみに、ミュアちゃんはできるぞ」
「む……やる」
「じゃあ、お祭りが終わったら一緒にやるか」
「ごろごろ……」

 頭を撫でるとゴロゴロ鳴いた。
 せっかくなので、俺も考えてみるか。
 ハニエルとアニエルが盤上を見てムムムと唸っている。
 俺も盤上を眺め、考える。

「んー……ここから逆転の手か。ほんとにあるのか?」
「もちろんよ。この日のために寝ずに考えたのよ? そう簡単に破られたら面白くないわ」
「ちなみに、何手で詰みだ?」
「四十四。ふふ、考えるのが楽しいでしょ?」
「…………」

 いや、無理。普通数手だろ。
 四十四って……間違えたらやり直しだ。

「ディアーナはいいところまで行ったけどね、私の張った罠にかかって抜け出せなくなったわ。ふふふ」
「そ、そうか」
「……ルシファー様がチラッと見て『ああ、なるほどね』って笑ってたのが気になったわ……ディアーナが背中を押して連れてったけどね」
 
 ディアーナ、来てたのか。
 ルシファー……あいつ、この場面をすんなり解きそうで怖い。
 さて、ここで驚くべきことが起きた。

「詰めドラゴンチェスね。なかなか面白いことを考えるじゃない」
「「え」」
「「「えっ」」」

 俺たちの背後に現れたのは、ドラゴンロード王国の王妃、アルメリア様だった。
 いきなりのことで愕然とする俺、ローレライ、竜騎士たち。
 最初に復活したのは俺だった。

「あ、アルメリア様? え? ど、どうして」
「ふふ。驚かせようと思って……ガーランドとお忍びで来たの」
「お、お母様……す、すみません。驚きすぎて言葉が出ません」
「あなたのそういう顔、久しぶりに見れて嬉しいわ。ローレライ」
「お母様……」

 ローレライは恥ずかしそうに笑う。
 ここでようやく竜騎士たちが復活。周囲を確認し、アルメリア様の周りを囲んだ。

「もう、大丈夫よ。ちゃんと離れたところにいるから」
「お母様……お母様は王妃なのですよ? 何かあったら」
「あら? 私に何かあると思う?」
「……ありませんね」
「そういうこと。じゃあローレライ、あなたの自信作を見せてもらおうかしら」
「ええどうぞ。ふふ、さすがのお母様でも、そう簡単には破れませんわよ?」
「どうかしら? ふふふ」
「ふふふ」

 うーん、楽しそう。俺のことなんか見えていない。
 すると、イオフィエルが言う。

「なんだが怖いオーラを感じますね。アシュト村長」
「まぁ確かに……今は近づかない方がよさそうだ」
「ですね。では、行きましょうか」
「おう……って、一緒に?」
「ええ。デートをしましょう」
「…………」
「裏なんてありませんよ? ね、ハニエル、アニエル」
「ええ」
「アシュト村長の好感度を稼ごうなんて考えてませんので」
「口に出てるんだよなぁ……」
「おい、まだ食べ足りない。いくぞ」

 ルミナが袖をクイクイ引っ張る。
 仕方ない。この腹黒い天使たちを連れて、屋台巡りを再開しますか。

 ◇◇◇◇◇◇

 ◇◇◇◇◇◇

「あー、ごほん! 氷菓子を一つ!」
「パパ!?」
「が、ガーランド陛下!?」
「速攻でバレた!? くぅぅ、驚かせようと思ったのにぃ!!」

 ガーランドは、クララベルの屋台にこっそり近づき氷菓子を注文したが、すぐにバレてしまった。
 なぜバレたのか理解できていないガーランド。
 すると、シェリーが言う。

「いやだって、ツノ生えてるし、威圧感すごいし……マスクで誤魔化すのは無理ですよ」
「ううう……」
「パパ、どうしてここに?」
「あー、三日だけ休みを取った。手紙をくれただろう? お祭りを開くと」
「うん。でも、来れるなんて……あ、ママは!?」
「ママも来てるぞ~! 今頃、ローレライのところにいるはずだ」
「やったぁ! えへへ、今日はママと一緒に寝よー」
「うんうん。パパと一緒にお風呂入ろうな~?」
「ヤダ」
「ぐはっ!?」

 さすがに気持ち悪かったのか、クララベルはそっぽ向く。
 シェリーもドン引きだったが、口には出さなかった。
 ドラゴンロード国王は、愛娘を溺愛している。軍属時代にも聞いたことがあるが、ガーランドはまさに親バカだった。
 とりあえずお客様なので、氷菓子を作る。

「にゃあ。おうさま、氷菓子をどうぞ」
「おお、ありがとう。ん~美味い!! おかわり!!」
「にゃうぅ、もっとゆっくり舐めないとだめー」
「おお、そうか。すまんすまん」

 ガーランドは、ミュアの頭をなでなでする。
 愛娘の溺愛もだが、純粋に子供好きなのだろう。いい父親である。

「パパ。ママにわたしのところに来るように伝えてね」
「もちろん!! ふふふ、今日は楽しむぞ~!!」

 ガーランドは子供っぽく笑い、おかわりの氷菓子をペロペロ舐めた。
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