大自然の魔法師アシュト、廃れた領地でスローライフ

さとう

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緑龍の村・夏祭り

第586話、出店巡り③

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 少しずつ日が落ちてきた。
 夕方になると、特設ステージの前ではハイエルフたちの踊りや一発芸が始まった。
 大勢の観客が、楽器を演奏するハイエルフや、芸をするハイエルフたちを見る。
 俺とルミナは会場にはいかず、まだ屋台を巡っていた。
 
「まんどれーいく」
「あるらうねー」
「おお、お前たちの屋台か」

 俺とルミナがいるのは、マンドレイクとアルラウネの屋台。
 メージュやルネアに誘われ、手伝っているらしい。
 売っているのは、スープカレーとアルラウネドーナツだ。
 組み合わせが微妙だと思ったが、意外と繁盛してる。

「いやぁ、暑いでしょ? 暑い日に食べる辛さたっぷりのスープカレーって癖になるみたい。ドーナツは食べ歩きできるし普通に売れる」

 と、メージュが言う。
 ルミナは財布からお金を出し、ルネアに支払っていた。
 すると、アルラウネがドーナツをルミナに渡す。

「あるらうねー」
「ん、うまい」

 ルミナはモグモグ食べていた。
 せっかくなので、俺はスープカレーを注文。
 葉っぱで作った器にスープカレーをよそい、同じく葉っぱを固めた匙を受け取る。食べ終わったら捨てていいみたいだ。
 スープカレーを食べてみる……うん、辛い。そして美味い……いや、暑い!! 熱い!!

「あ、暑い、熱い!!」
「あはは。それが売りだもん。やったね」
「まんどれーいく!」

 マンドレイクが大喜びだ。
 ルミナもドーナツを完食。アルラウネが喜んでいた。
 少しお腹を休ませたい……そう思っていると。

「あ、師匠!! 師匠!!」
「え? あ、フレキくん?」

 なんと、フレキくんがいた。
 エンジュとマカミちゃんも一緒にいる。そういや結婚したんだっけ。
 フレキくんはダッシュで俺の傍へ来て、物凄い速度でお辞儀した。

「お久しぶりです!!!!!!」
「ひ、久しぶり。あの、声もう少し押さえて」
「はい!!!!!」

 全然聞いてない。
 フレキくんはルミナにも頭を下げた。

「お久しぶりです!!!!!」
「みゃう。うるさい」

 ルミナはネコミミをパタンと閉じ、フレキくんのデカい声を聞かないようにしてる。
 すると、エンジュが俺に手を振る。

「村長、おひさ」
「エンジュ、久しぶり。元気にしてたか?」
「当然やろ。新婚アツアツやでー?」
「はいはい。マカミちゃんも久しぶり」
「お久しぶりです、村長」

 二人も変わりないみたいだな。
 フレキくんたちはドーナツとスープカレーを注文する。近くにベンチがあったので、そこに座った。
 俺とルミナは果実水を買い、話をする。

「フレキくん、最近どう?」
「はい。毎日が大変です。怪我人や病人が多くて……でも、師匠の教えに従って治療していますので、なんとかやれてます。それにエンジュもいるし……」
「ま、そういうことや。うちら薬師夫婦、人狼族の村じゃかなり頼りにされてるんやで?」
「あたしもいるの忘れないでよね!」

 うんうん、仲がいいことで。
 
「村長。村長はどうなんや?」
「俺のところも変わらないよ。ルミナもいるし、ココロもいる。いつも通りさ」
「ふーん」

 何か変わったことがあるわけじゃない。
 いつも通り。これが大事なんだ。
 
「あ、そうだ。師匠、今夜薬院にお邪魔していいですか? 質問したいことがいくつか」
「もちろんいいよ。待ってる」
「えへへ……」
「……マカミ、まだまだ村長には勝てんなぁ」
「だね。まぁいいけど……」

 なんだかエンジュとマカミちゃんが遠い目をしていた。
 そろそろ夜か。祭りは夜が本番だぞ!

 ◇◇◇◇◇◇

 ◇◇◇◇◇◇

 空がオレンジになり、徐々に暗くなり始めた頃。
 クララベル、シェリー、ミュアの屋台の営業が終わった。
 後片付け、明日の準備を終え、シェリーはエプロンを脱ぐ。

「あ~終わった。でも楽しかったぁ」
「うんうん。い~っぱい売れたね!」
「にゃあー」

 三人とも、すごく充実していた。
 すると、屋台に近づく一人の少女が。

「あれ? ミュディじゃん、どうしたの?」
「シェリーちゃん。アシュト見なかった?」
「え、見てないけど。どうしたの?」
「ちょっとはぐれちゃって……」

 ミュディが困ったように笑っていた。
 シェリーはため息をつき、言う。

「ま、お兄ちゃんならそのうち会えるでしょ。それより、あたしたち仕事終わったのよ、一緒にご飯でも食べない?」
「ん~……」
「あ、ごめんねシェリー。わたし、姉さまのところに行くね」
「ローレライのところ?」
「うん。ママも来なかったし、たぶん姉さまのところにいると思う」
「そっか。じゃあまた後でね」
「うん、ごめんね」

 クララベルは行ってしまった。
 すると、ミュアがミュディの袖を引く。

「にゃあ。ご主人さま、さがすの?」
「そうね……シェリーちゃん、いい?」
「……ま、いっか。じゃあ三人で探そっか」
「にゃうー!」

 と、ミュアのお腹が鳴る。
 シェリーのお腹も鳴った。どうやらお腹が空いているようだ。
 
「出店、まだまだ開いてるし、ご飯食べながら行こっか」
「そうね。ミュア、いっぱい食べましょ!」
「うん!」

 三人は並んで歩きだし、屋台巡りを始めた。

 ◇◇◇◇◇◇

 串焼き、焼きリンゴ、水あめ、ドーナツと、たくさん食べた。
 お祭りの屋台はどれも楽しい。
 ミュアは、ミュディと手を繋ぎながら飴を舐めていた。

「にゃあ。あまいー」
「ふふ、かわいい」
「ほんと、子供っていいわー……お? ねぇミュディ、あれって」
「え? あ……」

 シェリーが見つけた屋台にいたのは、雪豹族のカレラだった。
 大きな樽がいくつも積み重なり、ワイングラスも並んでいた。
 屋台に近づくと、カレラが一礼する。

「いらっしゃいませ」
「カレラちゃん! お店出してたんだ。知らなかったよー」
「まぁ、報告しようかと思いましたが、忙しいようでしたので……む、その衣装は?」
「えへへ。浴衣っていうんだ。可愛いでしょ?」
「む……やりますわね。さ、ご注文は? 当店自慢の『アイスワイン』はどうですか?」
「アイスワイン?」
「その名の通り、冷たいワインですわ。のど越し爽やか、後味スッキリ、夏にピッタリのワインです」

 と、カレラの眼がミュアへ。

「にゃあ。おねえさんだー」
「ん~ミュアちゃん可愛い! ふふ、お祭り楽しいかな?」
「うん! あ、メリルだー!」

 屋台の奥に、銀猫のメリルがいた。
 屋台のお手伝いをしているようだ。
 ミュディは、立ち話だけでは邪魔になるので、ワインを注文する。

「カレラちゃん。アイスワイン二つおねがいします」
「はい。メリル、アマンダ」
「「はい、ご主人様」」

 銀猫のメリルとアマンダが、慣れた手つきで樽からワインを注ぐ。
 綺麗な水色のワインだ。グラスに注ぐと霜が立った。
 グラスを受け取り、ミュディとシェリーは軽く合わせて飲む。

「わ……甘くて美味しい。しかも、冷たくて気持ちいかも」
「ほんと、すごいわ……」
「あーっ!! ミュディみっけ!! あ、美味しそうなの飲んでるっ!!」

 と、いきなり現れたエルミナ。
 ミュディのグラスを覗き込み、カレラに言う。

「私も同じのちょうだい!」
「え、エルミナ。びっくりしたぁ」
「お、驚かさないでよ」
「もう! ミュディもアシュトもいきなりいなくなってさ、探したのよ?」

 アイスワインを受け取り一気に飲む。
 すると、エルミナの顔が明るくなった。

「おいしい!! わお、何このお酒!! おかわりっ!!」

 一気に騒がしくなった。
 すると、メリルが小さなコップに果実水を注ぎ、ミュアへ。

「にゃう。サービスです」
「わぁ、ありがとー!!」

 小さな銀猫二人は、仲良く果実水を飲み始める。
 こうして、アシュトのことを忘れ、ミュディたちはアイスワインで乾杯をするのだった。
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