404 / 474
秋の訪れ
第598話、みんなでサツマイモを食べよう!
しおりを挟む
秋が深まり、緑龍の村の木々が彩り始めた頃。
俺は、屋敷の裏で落ち葉集めをしていた。
「ふぅ、結構な量になるな」
彩り始めた葉っぱが、はらはらと落ちてくる。
木々が多いので、葉っぱもかなりの量だ。
仕事が休みで、さらに運動不足ということもあり、裏庭の落ち葉掃除を俺が引き受けたのだ。
もちろん、一人ではない。
「まんどれーいく」
「あるらうねー」
「お、ありがとう」
サッとちりとりを構えるマンドレイクとアルラウネ。
久しぶりに三人で過ごしている。マンドレイクとアルラウネも楽しそうに手伝ってくれてる。
たまにこうして掃除するのも悪くない。
のんびり箒で履いていると、大きな木箱を抱えたエルミナがやってきた。
「アシュトー」
「エルミナ。なんだその木箱?」
「よ、っと……ふふふ、見て驚かないでよね!」
エルミナは木箱を置き、蓋を開けた。
中に入っていたのは……なんともまぁ、大きな『サツマイモ』だった。
エルミナは、サツマイモの一つを手に取って俺に見せる。
「ハイエルフの里にも秋が来てね。おじいちゃんが植えたサツマイモが大豊作なんだって。それで、緑龍の村にもおすそ分けってことで、大量に送られてきたのよ。今、村中を回ってみんなに配ってるの」
「へぇ~……でっかいな」
「大豊作。さらにでっかいおイモよ。甘くておいしい自慢のサツマイモなんだから!」
エルミナは胸を張って人差し指をピンと立てる。
マンドレイクとアルラウネは、木箱のサツマイモを指でつついていた。
「よし! まだまだ回らないと。じゃ、また後でね!」
「ああ、ありがとな」
エルミナは手を振りながら行ってしまった。
さて、掃除の続き……と思ったが。
「あるらうねー」
「ん? サツマイモが気になるのか?」
「あるらうねー」
アルラウネがサツマイモを指さし、俺の袖をクイクイ引っ張る。
マンドレイクは、大きなサツマイモを手に取ってジッと見ている。
俺はふと思った。
目の前にあるサツマイモに、集めた落ち葉。
そういえば……ビッグバロッグ王国に住んでた時、シャヘル先生とよくやったっけ。
俺はアルラウネの頭を撫で、マンドレイクの持つサツマイモを手に取った。
「よし。せっかくの機会だ、焼き芋でもやるか」
「まんどれーいく?」
「あるらうねー?」
「ははは。知らないか? よーし、任せておけ」
俺は胸をドンと叩き、焼き芋の準備を始めた。
◇◇◇◇◇◇
さて、用意したのは。
ヒュンケル兄が置いていった新聞、鍛冶場で使う薄手の耐火布だ。
俺はたらいに水を張り、マンドレイクとアルラウネにサツマイモを洗ってもらう。
「まんどれーいく!」
「あるらうねー!」
「よしよし。よーく洗ったら、濡らした新聞紙でサツマイモを包むんだ」
サツマイモを濡らした新聞紙に包み込む。
マンドレイクとアルラウネは、初めての作業を楽しそうにやっている。見ているこっちも楽しくなるね。
「最後に、薄手の耐火布に包んで完成!」
「まんどれーいく!」
「あるらうねー!」
「よし。芋の準備はできた。あとは……焚火だ!」
「「?」」
包んだサツマイモを落ち葉の中心近くに入れる。
杖を取りだし、呪文を唱え火球を生み出した。
そして、火球を落ち葉へ向けて放つと……落ち葉がじっくりジワジワと燃え出す。
あとは、葉っぱが燃え尽きるまで見守ればいい。
「まんどれーいく……」
「あるらうねー……」
「大丈夫大丈夫。サツマイモは焼けることなく、焚火の熱でじっくり温められるんだ。シャヘル先生とよくやったし、これでいいはずだ」
「まんどれーいく」
「あるらうねー」
二人は燃える落ち葉をジッと見ていた。
俺も、休憩がてら落ち葉の傍にしゃがみ込み、焚火を見守る。
じっくりと燃え、葉っぱが燃え尽きていく……なんというか、寂しいな。
それから十分ほどで、葉っぱが燃え尽きた。
俺は手袋をはめ、燃え跡から耐火布に包まれたサツマイモを取り出す。
「あちちっ、あち……ん、耐火布に包まれても熱い。いい感じだ」
耐火布を外すと、黒く焦げた新聞紙が見えた。
それを丁寧に剥がしていくと、表面の皮が硬くなったサツマイモが見えた。
マンドレイクとアルラウネはジッと見てる。
「見てろ……ほぉら、美味そうだぞ~」
二人の目の前で、焼き芋をぽきっと折る。
すると……香る香る。焼き芋の甘~い香り!
ふんわりした甘い香り、もちっとした黄色い芋が目の前に。
「まんどれーいく……!!」
「あるらうねーっ!!」
「ははは。熱いから気を付けてな。はい」
二人はさっそく焼き芋にかぶりつくと、熱いのか口を「ほっほっ」とさせる。
俺も、自分の焼き芋を食べる。
「ん……!! うまい。甘くてモチモチ、これぞ焼き芋……!!」
「まんどれーいく!!」
「あるらうねー!!」
「はいよ。おかわりね」
二人にもう一本ずつ焼き芋を渡すと、ホクホクしながら食べ始めた。
俺ももう一本食べる。うん、やっぱりおいしい。
「おい」
「ん? おお、ルミナ」
「何食べてるんだ。お前ばっかりずるいぞ」
ルミナが尻尾を揺らしながら来た。
ネコミミが片方だけしおれている。ああ、これは不機嫌の証だ。
俺とマンドレイクとアルラウネだけ焼き芋を食べてるのが気に喰わないんだな。
俺はルミナの頭を撫でつつ焼き芋を渡す。
「熱いから気を付けろよ」
「みゃ……あちっ、あつい!! みゃうぅぅぅっ!!」
「ほらほら、火傷するなよ?」
「みゃあー……」
焼き芋の皮をむき、ルミナに渡す。
ちろちろと舐め、身をパクっと食べる……すると、ネコミミがピンと立った。
眼もキラキラ輝き、尻尾もブンブン揺れる。ああ、美味いんだな。
「うまい。おい、もっとよこせ」
「はいはい。マンドレイクとアルラウネも食べるか?」
「まんどれーいく」
「あるらうねー」
「よし、俺も食べるぞ。ほらみんな、いっぱい食べろよー」
俺たちは、お昼ご飯が食べられなくなるくらい、焼き芋を満喫した。
◇◇◇◇◇◇
◇◇◇◇◇◇
◇◇◇◇◇◇
場所は変わり、屋敷のキッチン。
ここでは、ミュディ、ミュア、ライラ、シルメリア。そしてカエデがエプロンを付け気合を入れていた。
何をするのかと言うと。
「よし。これより、きのことサツマイモの料理を始めるのじゃ!」
「よろしくね、カエデちゃん」
「にゃうー」
「くぅん。サツマイモ、いい匂い」
「よろしくお願いします」
サツマイモは、エルミナが運んできた物。きのこはアシュトが収穫してきた余りだ。
たまたまライラと遊びに来ていたカエデが『妖狐族に伝わるサツマイモ料理を教えるのじゃ』と言い出し、キッチンにいたミュディとシルメリアを巻き込んで、こうして料理を始めたのだ。
ミュディは、カエデの尻尾を触るのを我慢しつつ言う。
「ね、カエデちゃん。サツマイモ、どんな調理をするの?」
「サツマイモは、基本的には焼いたり蒸したりするのが一般的なのじゃ。でも、妖狐族の里では、コメと一緒に炊いたり、揚げたりするのも多いのじゃ」
カエデは尻尾をフリフリする。
さっそく包丁を掴もうとするが、シルメリアが先に取った。
「この包丁はカエデには大きすぎます。私とミュディ様でやりますので、指示を」
「にゃあ。わたしもやりたいー」
「わ、わたしも。くぅん」
「むぅ……仕方ないのじゃ。ミュア、ライラには別の仕事を任せるのじゃ」
ミュアとライラはコメを丁寧に洗う作業を命じた。
ミュディはサツマイモを輪切りにし、シルメリアは皮をむいてざく切りする。
ざく切りした芋、コメ、酒を少々、塩を入れ、普通に炊く。
その間、輪切りにしたサツマイモを鍋に入れ、砂糖、レモン汁、水を入れて火にかけた。
落し蓋をして、芋が乾燥しないようにして待つ。
「これでいいのじゃ。さて、次はきのこなのじゃ。きのこといえばやっぱり網焼き、そして天ぷらなのじゃ!」
「にゃぉぉー」
「わぅぅん」
「天ぷらって、妖狐族がよく作る揚げ物だよね?」
「うむ。ご飯との相性が抜群なのじゃ」
カエデの尻尾が今までにないくらい揺れている。
シルメリアはきゅっと顔を引き締めた。
「天ぷらは、妖狐族の料理人から教わりました。ミュディ様、網焼きをお任せしてよろしいでしょうか?」
「うん。じゃあライラちゃん、一緒にやろっか」
「わん!」
「にゃあ。わたしもシルメリアとやる!」
「わらわもやるのじゃ!」
キッチンは、一気に騒がしくなる。
網焼き、天ぷらの音が響き、キッチン内は香ばしい香りで満たされる。
カエデは、落し蓋を開けて確認した。
「うむ。できたのじゃ! サツマイモのレモン煮、完成なのじゃ!」
サツマイモのレモン煮。
サツマイモの輪切りを、レモン汁と砂糖で甘く煮たもので、おやつに最適だ。
「こちらもできました。サツマイモの炊き込みご飯です」
シルメリアが鍋の蓋を開けると、ふんわり甘いサツマイモの炊き込みご飯の匂いが広がった。
匂いに敏感なライラの尻尾はずっと動きっぱなしだ。
「わぅぅん……いい匂い」
「お昼まで我慢しようね」
「くぅん」
網焼き、天ぷらも揚がる。
さすがに換気をしなければと、シルメリアが窓を開けた。
外の風が室内の空気を押し流し、秋の空気がキッチンに入ってくる。
すると、ライラが鼻をピクピクさせた。
「わぅ? なんか、焚火の匂いする」
「え? 焚火?」
「まさか……火事ですか?」
シルメリアが窓を全開にし、外を見た。
「……ああ、そういことでしたか」
「え? あ……」
「にゃう?」
「わぅ?」
「む?」
全員で窓の外を覗き込むと、そこには。
「ん~うまい」
「まんどれーく」
「あるらうねーっ」
「みゃう。もっとよこせ」
落ち葉で焚火をして、サツマイモを焼いているアシュトたちがいた。
すると、ミュアが言う。
「にゃあ! ご主人さまーっ!」
「ん? あ、ミュアちゃん。それに、ミュディにシルメリアさん、ライラちゃんにカエデも……何してるんだ?」
「にゃう。お料理してたの。ご主人さま、おいも焼いてるの? いいなー」
「あはは。いっぱいあるから、そっちに持って行くよ」
と、ここでシルメリアが言う。
「お待ちくださいご主人様。せっかくですので、外で食べませんか? こちらも、もうすぐサツマイモ料理が完成しますので」
「お、いいね。よし、じゃあテーブルの準備するか。みんな、手伝って」
「まんどれーく!」
「あるらうねー!」
「あたいも? めんどう……だけど、今回は手伝うぞ」
「ご主人様!! そのような仕事、私たちが」
「いやいや。やらせてよこれくらい」
アシュトはテーブルを準備しに行ってしまった。
ミュディは「よし」と腕まくりをする。
「みんな。こっちも速く仕上げて、みんなでサツマイモ料理食べようね!」
「にゃう!」
「わん!」
「うむ。楽しみなのじゃ」
「はい、ミュディ様」
全員で準備を済ませ、庭に大量のサツマイモ料理が並んだ。
◇◇◇◇◇◇
◇◇◇◇◇◇
◇◇◇◇◇◇
テーブルいっぱいに並んだサツマイモ料理は、どれもいい香りがした。
妖狐族の料理という、サツマイモのレモン煮、サツマイモご飯、サツマイモの天ぷら。以前収穫した残りのきのこも天ぷらに。そして、俺たちが焼いた焼き芋も。
どれも美味しそう。さっそく俺はレモン煮に手を伸ばす。
「おぉ……これは、甘くてうまい。レモンの味と砂糖の甘み、さらにイモの味が絡み合って……うむむ、とにかくうまいぞ!!」
「みゃう。あたいも食べる」
「アシュト、サツマイモのご飯も美味しいよ!」
「マジか。ミュディ、くれ」
「まんどれーく!」
「あるらうねー!」
「わぅぅん。網焼き、おいしい」
「やはり焼き芋は美味いのじゃ! 甘くてねっとりした芋の味がたまらんのじゃ!」
「……天ぷら。これはどの食材にも合いそうですね。他の銀猫たちにも教えないと」
しばし、全員でサツマイモの料理を楽しんでいると。
「あーっ!! なんかいい匂いすると思ったら、こんなところで食べてるっ!!」
「やっほ、村長」
「やっほー」
「ん~いい匂い。アタシらも食べたいなー」
「サツマイモ料理、素敵ですっ!」
エルミナ、メージュ、ルネア、シレーヌ、エレインのハイエルフたちだ。
サツマイモを配り終わったのだろうか。
俺はみんなを誘う。
「みんなも食べてけよ。どれも美味いぞ」
「やった! ほらみんな食べるわよ。あ、お酒ないお酒?」
「ないって。酒は後にしろよ……」
「酒、か。ふぅむ……エルミナ殿はお酒を造るのが得意じゃな?」
「そうだけど」
カエデはモフモフ尻尾を揺らしながら焼き芋を食べている。
そして、思い出したように言った。
「そういえば、妖狐族の里に、サツマイモから造ったお酒があったのじゃ」
「マジで!?」
「ぬぉぉ!?」
「カエデ、それ教えて。ってかちょうだい!!」
「わ、わかったのじゃ!! 尻尾を掴まないでほしいのじゃ!!」
イモ焼酎というお酒にエルミナがハマり出すのは、間もなくのことだった。
そして、しばらく村ではサツマイモ料理が大流行するのだった。
俺は、屋敷の裏で落ち葉集めをしていた。
「ふぅ、結構な量になるな」
彩り始めた葉っぱが、はらはらと落ちてくる。
木々が多いので、葉っぱもかなりの量だ。
仕事が休みで、さらに運動不足ということもあり、裏庭の落ち葉掃除を俺が引き受けたのだ。
もちろん、一人ではない。
「まんどれーいく」
「あるらうねー」
「お、ありがとう」
サッとちりとりを構えるマンドレイクとアルラウネ。
久しぶりに三人で過ごしている。マンドレイクとアルラウネも楽しそうに手伝ってくれてる。
たまにこうして掃除するのも悪くない。
のんびり箒で履いていると、大きな木箱を抱えたエルミナがやってきた。
「アシュトー」
「エルミナ。なんだその木箱?」
「よ、っと……ふふふ、見て驚かないでよね!」
エルミナは木箱を置き、蓋を開けた。
中に入っていたのは……なんともまぁ、大きな『サツマイモ』だった。
エルミナは、サツマイモの一つを手に取って俺に見せる。
「ハイエルフの里にも秋が来てね。おじいちゃんが植えたサツマイモが大豊作なんだって。それで、緑龍の村にもおすそ分けってことで、大量に送られてきたのよ。今、村中を回ってみんなに配ってるの」
「へぇ~……でっかいな」
「大豊作。さらにでっかいおイモよ。甘くておいしい自慢のサツマイモなんだから!」
エルミナは胸を張って人差し指をピンと立てる。
マンドレイクとアルラウネは、木箱のサツマイモを指でつついていた。
「よし! まだまだ回らないと。じゃ、また後でね!」
「ああ、ありがとな」
エルミナは手を振りながら行ってしまった。
さて、掃除の続き……と思ったが。
「あるらうねー」
「ん? サツマイモが気になるのか?」
「あるらうねー」
アルラウネがサツマイモを指さし、俺の袖をクイクイ引っ張る。
マンドレイクは、大きなサツマイモを手に取ってジッと見ている。
俺はふと思った。
目の前にあるサツマイモに、集めた落ち葉。
そういえば……ビッグバロッグ王国に住んでた時、シャヘル先生とよくやったっけ。
俺はアルラウネの頭を撫で、マンドレイクの持つサツマイモを手に取った。
「よし。せっかくの機会だ、焼き芋でもやるか」
「まんどれーいく?」
「あるらうねー?」
「ははは。知らないか? よーし、任せておけ」
俺は胸をドンと叩き、焼き芋の準備を始めた。
◇◇◇◇◇◇
さて、用意したのは。
ヒュンケル兄が置いていった新聞、鍛冶場で使う薄手の耐火布だ。
俺はたらいに水を張り、マンドレイクとアルラウネにサツマイモを洗ってもらう。
「まんどれーいく!」
「あるらうねー!」
「よしよし。よーく洗ったら、濡らした新聞紙でサツマイモを包むんだ」
サツマイモを濡らした新聞紙に包み込む。
マンドレイクとアルラウネは、初めての作業を楽しそうにやっている。見ているこっちも楽しくなるね。
「最後に、薄手の耐火布に包んで完成!」
「まんどれーいく!」
「あるらうねー!」
「よし。芋の準備はできた。あとは……焚火だ!」
「「?」」
包んだサツマイモを落ち葉の中心近くに入れる。
杖を取りだし、呪文を唱え火球を生み出した。
そして、火球を落ち葉へ向けて放つと……落ち葉がじっくりジワジワと燃え出す。
あとは、葉っぱが燃え尽きるまで見守ればいい。
「まんどれーいく……」
「あるらうねー……」
「大丈夫大丈夫。サツマイモは焼けることなく、焚火の熱でじっくり温められるんだ。シャヘル先生とよくやったし、これでいいはずだ」
「まんどれーいく」
「あるらうねー」
二人は燃える落ち葉をジッと見ていた。
俺も、休憩がてら落ち葉の傍にしゃがみ込み、焚火を見守る。
じっくりと燃え、葉っぱが燃え尽きていく……なんというか、寂しいな。
それから十分ほどで、葉っぱが燃え尽きた。
俺は手袋をはめ、燃え跡から耐火布に包まれたサツマイモを取り出す。
「あちちっ、あち……ん、耐火布に包まれても熱い。いい感じだ」
耐火布を外すと、黒く焦げた新聞紙が見えた。
それを丁寧に剥がしていくと、表面の皮が硬くなったサツマイモが見えた。
マンドレイクとアルラウネはジッと見てる。
「見てろ……ほぉら、美味そうだぞ~」
二人の目の前で、焼き芋をぽきっと折る。
すると……香る香る。焼き芋の甘~い香り!
ふんわりした甘い香り、もちっとした黄色い芋が目の前に。
「まんどれーいく……!!」
「あるらうねーっ!!」
「ははは。熱いから気を付けてな。はい」
二人はさっそく焼き芋にかぶりつくと、熱いのか口を「ほっほっ」とさせる。
俺も、自分の焼き芋を食べる。
「ん……!! うまい。甘くてモチモチ、これぞ焼き芋……!!」
「まんどれーいく!!」
「あるらうねー!!」
「はいよ。おかわりね」
二人にもう一本ずつ焼き芋を渡すと、ホクホクしながら食べ始めた。
俺ももう一本食べる。うん、やっぱりおいしい。
「おい」
「ん? おお、ルミナ」
「何食べてるんだ。お前ばっかりずるいぞ」
ルミナが尻尾を揺らしながら来た。
ネコミミが片方だけしおれている。ああ、これは不機嫌の証だ。
俺とマンドレイクとアルラウネだけ焼き芋を食べてるのが気に喰わないんだな。
俺はルミナの頭を撫でつつ焼き芋を渡す。
「熱いから気を付けろよ」
「みゃ……あちっ、あつい!! みゃうぅぅぅっ!!」
「ほらほら、火傷するなよ?」
「みゃあー……」
焼き芋の皮をむき、ルミナに渡す。
ちろちろと舐め、身をパクっと食べる……すると、ネコミミがピンと立った。
眼もキラキラ輝き、尻尾もブンブン揺れる。ああ、美味いんだな。
「うまい。おい、もっとよこせ」
「はいはい。マンドレイクとアルラウネも食べるか?」
「まんどれーいく」
「あるらうねー」
「よし、俺も食べるぞ。ほらみんな、いっぱい食べろよー」
俺たちは、お昼ご飯が食べられなくなるくらい、焼き芋を満喫した。
◇◇◇◇◇◇
◇◇◇◇◇◇
◇◇◇◇◇◇
場所は変わり、屋敷のキッチン。
ここでは、ミュディ、ミュア、ライラ、シルメリア。そしてカエデがエプロンを付け気合を入れていた。
何をするのかと言うと。
「よし。これより、きのことサツマイモの料理を始めるのじゃ!」
「よろしくね、カエデちゃん」
「にゃうー」
「くぅん。サツマイモ、いい匂い」
「よろしくお願いします」
サツマイモは、エルミナが運んできた物。きのこはアシュトが収穫してきた余りだ。
たまたまライラと遊びに来ていたカエデが『妖狐族に伝わるサツマイモ料理を教えるのじゃ』と言い出し、キッチンにいたミュディとシルメリアを巻き込んで、こうして料理を始めたのだ。
ミュディは、カエデの尻尾を触るのを我慢しつつ言う。
「ね、カエデちゃん。サツマイモ、どんな調理をするの?」
「サツマイモは、基本的には焼いたり蒸したりするのが一般的なのじゃ。でも、妖狐族の里では、コメと一緒に炊いたり、揚げたりするのも多いのじゃ」
カエデは尻尾をフリフリする。
さっそく包丁を掴もうとするが、シルメリアが先に取った。
「この包丁はカエデには大きすぎます。私とミュディ様でやりますので、指示を」
「にゃあ。わたしもやりたいー」
「わ、わたしも。くぅん」
「むぅ……仕方ないのじゃ。ミュア、ライラには別の仕事を任せるのじゃ」
ミュアとライラはコメを丁寧に洗う作業を命じた。
ミュディはサツマイモを輪切りにし、シルメリアは皮をむいてざく切りする。
ざく切りした芋、コメ、酒を少々、塩を入れ、普通に炊く。
その間、輪切りにしたサツマイモを鍋に入れ、砂糖、レモン汁、水を入れて火にかけた。
落し蓋をして、芋が乾燥しないようにして待つ。
「これでいいのじゃ。さて、次はきのこなのじゃ。きのこといえばやっぱり網焼き、そして天ぷらなのじゃ!」
「にゃぉぉー」
「わぅぅん」
「天ぷらって、妖狐族がよく作る揚げ物だよね?」
「うむ。ご飯との相性が抜群なのじゃ」
カエデの尻尾が今までにないくらい揺れている。
シルメリアはきゅっと顔を引き締めた。
「天ぷらは、妖狐族の料理人から教わりました。ミュディ様、網焼きをお任せしてよろしいでしょうか?」
「うん。じゃあライラちゃん、一緒にやろっか」
「わん!」
「にゃあ。わたしもシルメリアとやる!」
「わらわもやるのじゃ!」
キッチンは、一気に騒がしくなる。
網焼き、天ぷらの音が響き、キッチン内は香ばしい香りで満たされる。
カエデは、落し蓋を開けて確認した。
「うむ。できたのじゃ! サツマイモのレモン煮、完成なのじゃ!」
サツマイモのレモン煮。
サツマイモの輪切りを、レモン汁と砂糖で甘く煮たもので、おやつに最適だ。
「こちらもできました。サツマイモの炊き込みご飯です」
シルメリアが鍋の蓋を開けると、ふんわり甘いサツマイモの炊き込みご飯の匂いが広がった。
匂いに敏感なライラの尻尾はずっと動きっぱなしだ。
「わぅぅん……いい匂い」
「お昼まで我慢しようね」
「くぅん」
網焼き、天ぷらも揚がる。
さすがに換気をしなければと、シルメリアが窓を開けた。
外の風が室内の空気を押し流し、秋の空気がキッチンに入ってくる。
すると、ライラが鼻をピクピクさせた。
「わぅ? なんか、焚火の匂いする」
「え? 焚火?」
「まさか……火事ですか?」
シルメリアが窓を全開にし、外を見た。
「……ああ、そういことでしたか」
「え? あ……」
「にゃう?」
「わぅ?」
「む?」
全員で窓の外を覗き込むと、そこには。
「ん~うまい」
「まんどれーく」
「あるらうねーっ」
「みゃう。もっとよこせ」
落ち葉で焚火をして、サツマイモを焼いているアシュトたちがいた。
すると、ミュアが言う。
「にゃあ! ご主人さまーっ!」
「ん? あ、ミュアちゃん。それに、ミュディにシルメリアさん、ライラちゃんにカエデも……何してるんだ?」
「にゃう。お料理してたの。ご主人さま、おいも焼いてるの? いいなー」
「あはは。いっぱいあるから、そっちに持って行くよ」
と、ここでシルメリアが言う。
「お待ちくださいご主人様。せっかくですので、外で食べませんか? こちらも、もうすぐサツマイモ料理が完成しますので」
「お、いいね。よし、じゃあテーブルの準備するか。みんな、手伝って」
「まんどれーく!」
「あるらうねー!」
「あたいも? めんどう……だけど、今回は手伝うぞ」
「ご主人様!! そのような仕事、私たちが」
「いやいや。やらせてよこれくらい」
アシュトはテーブルを準備しに行ってしまった。
ミュディは「よし」と腕まくりをする。
「みんな。こっちも速く仕上げて、みんなでサツマイモ料理食べようね!」
「にゃう!」
「わん!」
「うむ。楽しみなのじゃ」
「はい、ミュディ様」
全員で準備を済ませ、庭に大量のサツマイモ料理が並んだ。
◇◇◇◇◇◇
◇◇◇◇◇◇
◇◇◇◇◇◇
テーブルいっぱいに並んだサツマイモ料理は、どれもいい香りがした。
妖狐族の料理という、サツマイモのレモン煮、サツマイモご飯、サツマイモの天ぷら。以前収穫した残りのきのこも天ぷらに。そして、俺たちが焼いた焼き芋も。
どれも美味しそう。さっそく俺はレモン煮に手を伸ばす。
「おぉ……これは、甘くてうまい。レモンの味と砂糖の甘み、さらにイモの味が絡み合って……うむむ、とにかくうまいぞ!!」
「みゃう。あたいも食べる」
「アシュト、サツマイモのご飯も美味しいよ!」
「マジか。ミュディ、くれ」
「まんどれーく!」
「あるらうねー!」
「わぅぅん。網焼き、おいしい」
「やはり焼き芋は美味いのじゃ! 甘くてねっとりした芋の味がたまらんのじゃ!」
「……天ぷら。これはどの食材にも合いそうですね。他の銀猫たちにも教えないと」
しばし、全員でサツマイモの料理を楽しんでいると。
「あーっ!! なんかいい匂いすると思ったら、こんなところで食べてるっ!!」
「やっほ、村長」
「やっほー」
「ん~いい匂い。アタシらも食べたいなー」
「サツマイモ料理、素敵ですっ!」
エルミナ、メージュ、ルネア、シレーヌ、エレインのハイエルフたちだ。
サツマイモを配り終わったのだろうか。
俺はみんなを誘う。
「みんなも食べてけよ。どれも美味いぞ」
「やった! ほらみんな食べるわよ。あ、お酒ないお酒?」
「ないって。酒は後にしろよ……」
「酒、か。ふぅむ……エルミナ殿はお酒を造るのが得意じゃな?」
「そうだけど」
カエデはモフモフ尻尾を揺らしながら焼き芋を食べている。
そして、思い出したように言った。
「そういえば、妖狐族の里に、サツマイモから造ったお酒があったのじゃ」
「マジで!?」
「ぬぉぉ!?」
「カエデ、それ教えて。ってかちょうだい!!」
「わ、わかったのじゃ!! 尻尾を掴まないでほしいのじゃ!!」
イモ焼酎というお酒にエルミナがハマり出すのは、間もなくのことだった。
そして、しばらく村ではサツマイモ料理が大流行するのだった。
115
あなたにおすすめの小説
腹違いの妹にすべてを奪われた薄幸の令嬢が、義理の母に殴られた瞬間、前世のインテリヤクザなおっさんがぶちギレた場合。
灯乃
ファンタジー
十二歳のときに母が病で亡くなった途端、父は後妻と一歳年下の妹を新たな『家族』として迎え入れた。
彼らの築く『家族』の輪から弾き出されたアニエスは、ある日義母の私室に呼び出され――。
タイトル通りのおっさんコメディーです。
猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る
マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・
何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。
異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。
ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。
断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。
勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。
ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。
勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。
プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。
しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。
それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。
そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。
これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~
北条新九郎
ファンタジー
三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。
父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。
ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。
彼の職業は………………ただの門番である。
そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。
お気に入り・感想、宜しくお願いします。
転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。
不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。
14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。
転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする
初
ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。
リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。
これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。