大自然の魔法師アシュト、廃れた領地でスローライフ

さとう

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竜騎士の新人

第615話、新人竜騎士の苦悩⑤

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 ディミトリから情報を得た翌日。
 俺、シロ、ウッド、アシェルとゼブルン、二人のドラゴン、護衛のベヨーテを連れ、早朝からディミトリ商会へ。
 ディミトリ商会の地下にある魔法陣の前で、リザベルとディミトリ、数人の悪魔族がいた。
 ディミトリは一礼する。

「おはようございます。皆さん、『塩の山』へ向かう準備はできたようで……」

 相変わらず芝居がかってるな。
 俺は頷き、改めて今回の目的を説明する。

「これから向かうのは『塩の山』で、目的はそこにある希少鉱石『ピンキースター』だ。掌サイズで、目標は七個。みんな、わかってるな」
「「はい」」
『マカセロー!』
『きゃんきゃん!』
『フ……ゴエイハマカセナ』

 そしてディミトリへ。

「ディミトリ。換金の用意、頼んだぞ」
「かしこまりました。では……魔法陣の上へ。ああ、彼らは魔法陣の護衛をする者たちです。塩の山へは同行しませんので」
「わかってる」

 塩の山、かなり危険な場所らしい。
 護衛にベヨーテがいるけど、大丈夫だろうか。

『アシュト、シンパイスンナ。テキハオレガウツカラヨ』
「ああ、ありがとう。じゃあディミトリ、頼んだぞ」
「はい。では───……転移」

 すると、魔法陣が光り、一瞬の浮遊感……そして到着。
 アシェルは、ポツリと呟いた。

「ここが、塩の山……ま、真っ白ですね」
「すごいな、雪みたいだ……」
「あ、あの。アシュト様。これ……お塩みたいです」

 ゼブルンがしゃがみ、真っ白な地面を指ですくって舐める。
 辺り一面、雪山みたいな場所だ。カチカチに固まった塩の山で、木々は一切生えていない。
 と───ここで気付いた。

「あ!? や、やばい。こんな塩の大地じゃ、植物魔法が使えないぞ!?」

 しまったぁ……俺、いきなり役立たずじゃん。

 ◇◇◇◇◇

 というわけで……俺はディミトリからもらった羊皮紙を読む。

「えーっと……ピンキースターは、高密度な塩の結晶。塩の中を探せば、ごくまれに見つかる、か」
「あの、アシュト様……塩の中、というのは」
「………」

 俺は、見渡す限り塩しかない周りを眺め、曖昧に笑う。
 アシェルも「あ、あはは」と笑った。
 そしてゼブルン、彼女はすでに動いていた。
 手にスコップを持ち、砂の地面をザックザックと掘り返している。

「ピンキースター、ピンキースター、ピンキースター!!」
「ぜ、ゼブルン……?」
「見つけないと。先輩たちの、お給料を!!」
「……そうだね。よし、オレもやるぞ」

 アシェルもスコップ片手に、地面を掘り返す。
 相棒のドラゴンは、地面をペロペロ舐めていた。いやしょっぱいだろ……別にいいけど。
 さて、俺もやるか。

「シロ、ウッド」
『きゃんきゃん!』
『サガスー!』
「ああ。シロ、ピンキースターの匂い、わかるか?」
『くぅん……きゃぅぅん』
『スグニハワカンナイッテー』
「そっか。じゃあ、ゆっくりでいいから探してくれ。ここでは、お前の鼻が頼りだ」

 ちなみに……普通の犬では、塩の匂いに耐えられないらしい。
 だが、シロはフェンリルだ。この程度の塩、なんてことはない。
 さっそく、シロは地面をクンクン嗅ぐ。

「うーん。こんな塩の大地じゃ、植物魔法は使えないし……って、待て待て」

 ふと、俺は思った。
 そういえば『緑龍の知識書ムルシエラゴ・グリモワール』には、神話七龍の力が付与されたんだっけ……俺、植物魔法しか使ってなかったけど、もしかしたら他の魔法も使えたりなんか……。
 そう思い、本をめくってみた。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
 探知魔法・最上級
 〇夜鷹の眼ハイ・ホークアイ

 探し物を見つけるにはもってこいの眼。
 この魔法を使うと、この世の全てを見通せる。
 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 あった。ハイ・ホークアイかぁ……そういえば戦闘魔法に《鷹の眼》っていうのがあったな。使うと長距離まで見えるとかいう、遠距離狙撃用の眼。
 これはその最上位版ってわけか。
 さっそく、杖を取り出し自分の目元をなぞりながら使ってみた。

「探せ、『夜鷹の眼ハイ・ホークアイ』」

 目に魔力が集まり───……視界が一気に開けた。

「うわ、なんだこれ!?」

 世界がキラキラ光り出した。
 違う。このキラキラ……地面の至る所が、光っている?
 キラキラの数はそんなに多くない。光の大きさも、指先程度のモノばかりだ。
 試してみるか。

「ウッド、ここを掘ってくれ」
『ワカッタ!』

 試しに、小さなキラキラ部分をウッドに掘ってもらった。
 すると……出た。指先以下の大きさの『ピンキースター』だ。
 小さすぎて駄目だろうけど、やはり予想は当たった。

「なるほどな。地面の光る部分に、お宝が埋まっているのか」
「あ、アシュト様!? め、目が光ってますけど!?」
「だ、大丈夫ですか!?」
「あ、いや。これは魔法の光なんだ」

 どうやら、今の俺の眼は光ってるらしい。
 なんか恥ずかしいし、さっさと探した方がよさそうだ。

「ウッド、シロ、アシェル、ゼブルン。これから俺の指示に従って、周りを掘ってくれ。ベヨーテは引き続き護衛を頼む」

 さーて……この反則的な魔法の力で、ピンキースターを探そうじゃないか。

 ◇◇◇◇◇

「「「…………」」」
『くぅーん』
『イッパイ、イッパイ!!』

 えー……やりすぎましたね。
 現在、俺たちの目の前に、ピンキースターの原石が四十個ほどあった。
 アシェルはやや青ざめている。

「あ、あの……な、なかなか見つからない鉱石、なんですよね」
「あ、ああ」
「あ、アシュト様の指示した場所を掘っただけなのに、こんなに……」

 ゼブルンは、鉱石の一つを手に取って眺める。
 加工前の石はピンク色のザラザラした石だ。これを加工すると、透き通った桃色の宝石になる。
 
「とりあえず、必要な分だけ持って行くか。残りは……村に置いておこう」
「「はい!」」
『オイオイ、オレノデバンハナシカヨ……?』

 結局、魔獣に遭遇せずあっさりピンキースターの原石を確保できた。
 ベヨーテには悪いけど、魔獣に遭遇しないのが一番だ。
 ディミトリ商会の人たちの元へ向かい、転移魔法を発動してもらった。
 到着したのは、緑龍の村にあるディミトリ商会の地下。
 すると、地下の隅っこでお茶を飲んでいるディミトリとリザベルがいた。

「「えっ」」
「ただいま。いやー……疲れたな」
「ああ、アシュト村長? も、もう戻ったのですか?」
「まぁね。ほれ、いっぱい」
「「!?」」

 アシェルが背負っていた籠を下ろし、中に入っている鉱石を見せる。
 ディミトリとリザベルは仰天していた。

「こここ、こんなにぃ!? あ、アシュト村長、なな、何をしたんですか!?」
「いや、普通に探したら見つかっただけ」
「オォォ!? す、素晴らしい……!! アシュト村長、こちら、全て買い取らせていただきたい!!」
「別にいいけど」
「ウッホォォォ!! ありがとうございます!!」

 換金し、給与分を分けてアシェルとゼブルンへ渡す。
 二人は、俺に向かって勢いよく頭を下げた。

「「アシュト様。本当にありがとうございました!!」」
「いいよ。それより、見つからないようにコッソリ戻せるか?」
「はい。なんとかやってみます」
「うん。じゃあ、後は大丈夫だな?」
「「はい!!」」

 こうして、またまた困っている竜騎士を助けた俺だった。
 その日の夜。
 俺はアシェルとゼブルンをバーに呼び、こっそり話をした。
 屋敷に併設されてるバーなら邪魔は入らない。銀猫のミリアリアも口は堅いしな。
 俺は軽く酒。二人は果実水を飲んでいる。
 おつまみは、魚の切り身だ。これがエルミナの作った清酒とよく合うんだ。

「で、お金は戻したのか?」
「はい。こっそりと……本当に、いろいろありがとうございました」
「アシュト様がいなかったら、あたし……」
「いやいや、気にしなくていいって」

 困った竜騎士を救うのも俺の仕事……なわけないけどな。
 とにかく、問題にならなくてよかったよ。

「あの、アシュト様。何かお礼を」
「いいって。それより、もうお金を落とさないようにしろよ」
「はい!!」

 ゼブルンは力強い返事をした。
 うんうん。いいことをした後はお酒がおいしい。

 ◇◇◇◇◇◇

 そして迎えた竜騎士の給料日。
 ちょっと気になったので、竜騎士の宿舎へ向かい、窓からこっそり様子を見た。
 中では、それぞれ騎士たちに、ランスローとゴーヴァンが給料を渡している。
 怪しまれている様子もないし、問題ないようだ。

「よかった、もう安心だな」
「お兄ちゃん、何してるの?」
「うおっ!?」

 びっくりして声が出てしまう。
 俺の後ろのいたのは、ローレライとクララベルだ。
 さらに、声が出たことで宿舎内の騎士も俺のいる窓を見る。やばい、目立ってしまった。
 ローレライは、首を傾げて言う。

「あなたがここに来るのは珍しいわね。何かあったの?」
「あ、いや。今日が給料日だって知ってさ……その、どんな風に渡すのかなーって」
「……ふぅん」
「お兄ちゃん、お給料欲しいの?」
「い、いや」

 うう、ローレライが怪しんでる。
 アシェルとゼブルンも何か冷や汗掻き始めたし!!

「あ、あー……そうだ。二人は何しにここへ?」
「お給料日だしね。労いの言葉をかけに来たのよ」
「みんな、わたしたちの騎士だしね」
「そ、そうか。じゃあ頑張ってくれよ。じゃあな!!」

 俺はダッシュでその場を離脱した。やばいやばい、あまり追及されるとボロ出しちゃうかも。
 とりあえず、『竜騎士給料事件』は胸の奥にしまって、忘れることにするか。
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