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黒猫のシオン
第618話、薬草採取……からの
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翌朝。
寝袋から出て、テントの外へ。
俺のテントではミュアちゃん、ルミナがスヤスヤ寝ている。最初は俺とエルミナ、シルメリアさんとミュアちゃんとルミナだったけど、ミュアちゃんとルミナが俺と一緒がいいと言い出したので、エルミナが交換したのだ。
おかげで、温かく寝られた。この二人、俺にくっついて離れなかったんだよね。
欠伸をすると、バルギルドさんが焚火に薪を追加していた。
「おはようございます……ふぁぁ」
「ああ……早いな、まだ夜明け前だぞ」
「ええ。温室の手入れで早く起きるんで……マンドレイクとアルラウネに任せてるから、早く起きなくてもよかったんだ。ふぁぁ」
とはいえ、二度寝する俺じゃない。
軽く背伸びしていると、バルギルドさんが立ち上がる。
「……ちょうどいい。少し、外へ」
「え?」
「大丈夫。すぐそこまでだ」
バルギルドさんと一緒に外へ。
洞窟から少しだけ歩き、木々の間を抜けると……そこは、開けた場所だった。
そして……その光景に、俺は圧倒される。
「う、わぁ……」
そこは、滝だった。
見上げると、滝から落ちる水が滝壺に落ちていくのが見える。
それだけでも神秘的な光景だが……そこからさらに、夜明けと共に上った朝日の輝きが、流れ落ちる水に反射してキラキラと輝いていた。
なんとまぁ、すごい。まさに大自然の生み出す神秘の光景。
「バルギルドさん、ありがとうございます。こんな光景、初めて見ました」
「そうか……」
「あ、せっかくだしエルミナたちも……って」
洞窟へ視線を向けると、ちょうどエルミナたちがやってきた。
「わぁ~……綺麗」
「美しいですね……」
「にゃあー……」
「みゃう。お腹減ったぞ」
ルミナ以外、朝日と滝のコラボレーションを満喫する。
せっかくなので、全員で近くの川の水で顔を洗った。
顔を洗い、少し早いけど朝食の用意をする。
シルメリアさんは、昨夜のうちに仕込んでおいたスープを用意。ミュアちゃんはサラダを用意し、エルミナはベーコンと卵を焼き始めた。
今日はベーコンサンドにスープ。ごきげんな朝食だ。
準備が終わり、さっそく全員で食べ始める。
「ん、うまい。シルメリアさん、このスープおいしいよ」
「ありがとうございます」
「にゃう。おいしい」
「みゃうぅ、おかわり」
「ん~ベーコンの塩、すっごく利いてるわ」
『クァァ……オハヨー』
お、ウッドも起きたな。
昨日は洞窟に到着するなり地面に潜って寝てたし、よく寝れたようだ。
ウッドには俺特製の栄養剤を渡した。ゴクゴク一気飲みし、満足したようだ。
食事が終わり、後片付け。
俺とバルギルドさんはテントを片付け、シルメリアさんたちは食事の片付けをする。
荷物をまとめ、準備完了だ。
「今日は、ナナイロシンギョウレンゲの群生地で薬草採取をします。採取後、またここに戻って一泊。明日、緑龍の村に帰ることになります。みんな、今日もよろしく」
「にゃあー!」『マカセロー!』
ミュアちゃんとウッドがいい返事をした。
テントや荷物をここに置いては? と言ったら、バルギルドさんは『魔獣が来るかもしれん』と言ったので全部持って行くことになった。
後に、この判断が正解だったことを知る。
◇◇◇◇◇◇
それから、二時間ほど歩き……ついに到着した。
「お、おぉぉぉぉ~~~ッ!! こ、ここが、ここが!!」
「アシュト、うるさい。魔獣が来るわよ」
「お、おお。すまん」
到着したのは、ナナイロシンギョウレンゲの群生地。
あるわあるわ……伝説の薬草が、見渡す限り生えている。
ここだけ木々がない。起伏のある地面で、大量にナナイロシンギョウレンゲが生えていた。
「ここだけなじゃない。この先にもまだまだある」
「す、すっげぇ……宝の山だ」
「ただの薬草にしか見えないけどねー」
「にゃあ」
「みゃう」
「よし!! みんな、さっそく採取するぞ。ウッド、こいつの葉っぱを食べてくれ。あとで村の温室に生やしてほしい!!」
『マカセロー』
「ご主人様。私は、昼食の用意をしておきます」
「お願いします!!」
「オレはこの辺りを回っておく。脅しをかけておけば、魔獣は近づかんはずだ」
「はい!! って、脅し?」
「殺気を飛ばすだけだ。魔獣が恐れ、寄らなくなる」
「にゃあ。ご主人さま、お手伝いするー」
「みゃう。薬草、採取するぞ」
「私も手伝うわよー」
さぁて、楽しい楽しい薬草採取の始まりだ!!
◇◇◇◇◇◇
数時間後。
俺は楽しく薬草採取していたのだが……。
「にゃあー……飽きた」
「あたい、寝る」
「私も疲れたわ……ってかアシュト、こんなにいっぱい採取してどうすんのよ。持って帰るの大変じゃない。それに、ウッドがいれば問題ないんでしょ?」
「そうだけど。伝説の薬草を採取してるんだぞ? ワクワクしないのか?」
「限度があるわよ……よし終わり。ミュア、ルミナ、シルメリアのところで、お菓子もらいましょ」
「にゃあぁ」
「みゃあぅ」
エルミナは、疲れたミュアちゃんとルミナを連れて行ってしまった。
むぅ……俺はまだまだ全然物足りないのに。
「ま、いいや。俺はもう少し───……」
と、採取の続きをしようとしゃがんだところで気付いた。
少し離れた距離。十メートルくらい先に……『黒い何か』がいた。
「…………っ」
やばい。
黒い何か。あれ、魔獣だ。
魔獣。バルギルドさんは……どうする、叫ぶか。
エルミナ、ミュアちゃん、ルミナはシルメリアさんの元へ。バルギルドさんはどこだ?
黒い何か。耳が見える……よく見えないけど、魔獣だ。
こっちを見てる気がする。やばい、どうする。
少しずつ後ずさりをすると、黒い何かも少し動いた。
どうする、このまま睨み合いをしているわけにはいかないぞ。
杖、魔法……ダメだ。絶対にあっちのが速い。
こうなったら……や、やるしか、ない。
俺は腰にある小さな採取用のナイフを抜く。すると……黒い何かが、ビタッと止まった。
俺は、小さく呟く。
「来るな、来るなよ……頼む、あっちに行ってくれ。頼む……」
だが───黒い何かは、身体を深く沈めた。
ナナイロシンギョウレンゲが生えているせいで、よく見えない。
でも、なんとなく察した。俺が刃物を抜いたことで、むこうも覚悟を決めたようだ。
来る。どうする。やばい。汗ダラダラだ……───来たっ!!
「う、おぁぁぁぁぁぁ「ご主人様」え」
バシィィッ!! と、俺の前にシルメリアさんが出て、黒い何かに向かって見事な回し蹴りを食らわせた。
黒い何かは地面を転がり、すぐに身体を起こし……って、え?
「お、おい。これって……まさか」
「……なるほど、そういうことですか」
「にゃあ、ご主人さまー!!」
「チッ……敵襲か!!」
「アシュト、無事!?」
『アシュトーッ!!』
ミュアちゃん、バルギルドさん、エルミナ、ウッドが来た。黒い何かを見て全員が止まる。
そして、ルミナが最後に来た。
「みゃう、何が───……えっ」
ルミナは止まった。
黒い何かを見て、止まった。
「ふしゅぅぅぅぅ……ッ!!」
黒い何かは、ヒトの姿だった。
ボロキレを纏っていた。
黒い髪、黒い眼。黒い尻尾……そして黒いネコミミが生えていた。
女の子だった。十六歳くらいだろうか、敵意剥き出しでこちらを見ている。
「く、黒猫族……?」
そう、『黒い何か』は……ルミナと同じ、黒猫族の少女だった。
◇◇◇◇◇◇
突如現れた、黒猫族の少女。
めちゃくちゃこっちを見て唸り声をあげている。初めて会ったルミナみたいだ。
とりあえず……俺の身の安全は保障された。
エルミナが俺に近づき、弓を手に持つ。
「……で、どうするの」
「どうするって……」
「今は、シルメリアとバルギルドが睨みを利かせてるから動けないみたいね。あの子、どうする?」
「え……」
どうするって……どう、したいんだろう。
あの子は、いきなり襲い掛かってきた。
敵、なのか? でも……初めて出会った、ルミナ以外の黒猫族だ。
ルミナを見ると、俺の袖をギュッと掴んでいる。
「みゃう。同族……ん? おい、あれ見ろ」
「え?……あ」
ルミナに言われ気付いた。
黒猫族の少女は、背中から血を流していた。さらに、ひどく顔色が悪く、脂汗も流している。
この時点で、もう決まっていた。
「バルギルドさん、シルメリアさん。あの子は怪我をしています。傷付けずに、捕まえることはできますか?」
「可能です」
「できるが……オレでは少し難しいな。シルメリア、任せていいか?」
「かしこまりました。では」
と、ここで俺の眼がおかしくなった。
シルメリアさんが消えた。
「ッ!?」
「少し、お休みください」
そして、黒猫族の少女の背後へ回り、首を手刀でトンと叩く。それだけで黒猫族の少女は意識を刈り取られ倒れる。だが、倒れる前にシルメリアさんが抱きとめた。
「……まるで見えなかった。もしかしたら、アーモやネマより速いかもしれん」
「…………」
今更だが……シルメリアさんは、バリバリの戦闘タイプだった。
◇◇◇◇◇◇
洞窟に戻り、少女の手当てをすることにした。
お湯を沸かし、うつ伏せにする。
背中がざっくり切れている。上半身裸にして、まずは傷口の洗浄をした。
ルミナは、複雑そうだ。
「バルギルドさん。少女が暴れないように、押さえてくれますか」
「わかった」
バルギルドさんに両足、シルメリアさんに両手を押さえてもらい、沸騰させた湯を冷ました水で洗浄する。
「ッッ!? ふ、みゃぁぁあァァァァ!?」
「落ち着いて。きみの怪我の治療をするだけだから!!」
「ふしゃぁぁぁぁぁぁっ!! アタシに触んなァァァァァっ!!」
ちゃんと喋れるようだ。
少女は暴れるが、バルギルドさんとシルメリアさんにガッチリ押さえ込まれて動けない。首をブンブン振ると、長い黒髪がバサバサ揺れた。
「───お静かに」
「ひっ」
だが、シルメリアさんの殺気に気圧された。
ネコミミが閉じ、ガタガタ震える。
背中の消毒をして、持参した傷口を背中に塗る。少女は痛みに顔をしかめていたが、恐怖で大人しくなっていた。
治療を終え、背中に包帯を巻く。
女の子で、上半身裸だし……ルミナにやってもらう。
「……お前、同族か」
「みゃう」
「……こいつらと、ツルんでるのか」
「……こいつの飼い猫」
ルミナは俺を見て言う。
すると、少女は俺をジロリと睨んだ。
「黒猫族を手懐けたのか。お前、何なんだ」
「何だと言われてもね。俺は、ただの薬師だよ。それより……なんで俺を狙ったんだ?」
「お前からいい匂いした。甘い匂い……」
ポケットを漁ると、おやつのクッキーが出てきた。
袋を開け、少女へ渡す。
「ん、うまいっ!! おい、もっとよこせ!!」
「ああ。その前に、きみの名前くらい教えてくれよ」
「シオン。ほら、よこせ!!」
シオンか。
黒猫族のシオン。ルミナという同族には興味がないのか、俺の持つクッキーに夢中だった。
クッキーはいいけど……さて、この子をどうしたもんかな。
寝袋から出て、テントの外へ。
俺のテントではミュアちゃん、ルミナがスヤスヤ寝ている。最初は俺とエルミナ、シルメリアさんとミュアちゃんとルミナだったけど、ミュアちゃんとルミナが俺と一緒がいいと言い出したので、エルミナが交換したのだ。
おかげで、温かく寝られた。この二人、俺にくっついて離れなかったんだよね。
欠伸をすると、バルギルドさんが焚火に薪を追加していた。
「おはようございます……ふぁぁ」
「ああ……早いな、まだ夜明け前だぞ」
「ええ。温室の手入れで早く起きるんで……マンドレイクとアルラウネに任せてるから、早く起きなくてもよかったんだ。ふぁぁ」
とはいえ、二度寝する俺じゃない。
軽く背伸びしていると、バルギルドさんが立ち上がる。
「……ちょうどいい。少し、外へ」
「え?」
「大丈夫。すぐそこまでだ」
バルギルドさんと一緒に外へ。
洞窟から少しだけ歩き、木々の間を抜けると……そこは、開けた場所だった。
そして……その光景に、俺は圧倒される。
「う、わぁ……」
そこは、滝だった。
見上げると、滝から落ちる水が滝壺に落ちていくのが見える。
それだけでも神秘的な光景だが……そこからさらに、夜明けと共に上った朝日の輝きが、流れ落ちる水に反射してキラキラと輝いていた。
なんとまぁ、すごい。まさに大自然の生み出す神秘の光景。
「バルギルドさん、ありがとうございます。こんな光景、初めて見ました」
「そうか……」
「あ、せっかくだしエルミナたちも……って」
洞窟へ視線を向けると、ちょうどエルミナたちがやってきた。
「わぁ~……綺麗」
「美しいですね……」
「にゃあー……」
「みゃう。お腹減ったぞ」
ルミナ以外、朝日と滝のコラボレーションを満喫する。
せっかくなので、全員で近くの川の水で顔を洗った。
顔を洗い、少し早いけど朝食の用意をする。
シルメリアさんは、昨夜のうちに仕込んでおいたスープを用意。ミュアちゃんはサラダを用意し、エルミナはベーコンと卵を焼き始めた。
今日はベーコンサンドにスープ。ごきげんな朝食だ。
準備が終わり、さっそく全員で食べ始める。
「ん、うまい。シルメリアさん、このスープおいしいよ」
「ありがとうございます」
「にゃう。おいしい」
「みゃうぅ、おかわり」
「ん~ベーコンの塩、すっごく利いてるわ」
『クァァ……オハヨー』
お、ウッドも起きたな。
昨日は洞窟に到着するなり地面に潜って寝てたし、よく寝れたようだ。
ウッドには俺特製の栄養剤を渡した。ゴクゴク一気飲みし、満足したようだ。
食事が終わり、後片付け。
俺とバルギルドさんはテントを片付け、シルメリアさんたちは食事の片付けをする。
荷物をまとめ、準備完了だ。
「今日は、ナナイロシンギョウレンゲの群生地で薬草採取をします。採取後、またここに戻って一泊。明日、緑龍の村に帰ることになります。みんな、今日もよろしく」
「にゃあー!」『マカセロー!』
ミュアちゃんとウッドがいい返事をした。
テントや荷物をここに置いては? と言ったら、バルギルドさんは『魔獣が来るかもしれん』と言ったので全部持って行くことになった。
後に、この判断が正解だったことを知る。
◇◇◇◇◇◇
それから、二時間ほど歩き……ついに到着した。
「お、おぉぉぉぉ~~~ッ!! こ、ここが、ここが!!」
「アシュト、うるさい。魔獣が来るわよ」
「お、おお。すまん」
到着したのは、ナナイロシンギョウレンゲの群生地。
あるわあるわ……伝説の薬草が、見渡す限り生えている。
ここだけ木々がない。起伏のある地面で、大量にナナイロシンギョウレンゲが生えていた。
「ここだけなじゃない。この先にもまだまだある」
「す、すっげぇ……宝の山だ」
「ただの薬草にしか見えないけどねー」
「にゃあ」
「みゃう」
「よし!! みんな、さっそく採取するぞ。ウッド、こいつの葉っぱを食べてくれ。あとで村の温室に生やしてほしい!!」
『マカセロー』
「ご主人様。私は、昼食の用意をしておきます」
「お願いします!!」
「オレはこの辺りを回っておく。脅しをかけておけば、魔獣は近づかんはずだ」
「はい!! って、脅し?」
「殺気を飛ばすだけだ。魔獣が恐れ、寄らなくなる」
「にゃあ。ご主人さま、お手伝いするー」
「みゃう。薬草、採取するぞ」
「私も手伝うわよー」
さぁて、楽しい楽しい薬草採取の始まりだ!!
◇◇◇◇◇◇
数時間後。
俺は楽しく薬草採取していたのだが……。
「にゃあー……飽きた」
「あたい、寝る」
「私も疲れたわ……ってかアシュト、こんなにいっぱい採取してどうすんのよ。持って帰るの大変じゃない。それに、ウッドがいれば問題ないんでしょ?」
「そうだけど。伝説の薬草を採取してるんだぞ? ワクワクしないのか?」
「限度があるわよ……よし終わり。ミュア、ルミナ、シルメリアのところで、お菓子もらいましょ」
「にゃあぁ」
「みゃあぅ」
エルミナは、疲れたミュアちゃんとルミナを連れて行ってしまった。
むぅ……俺はまだまだ全然物足りないのに。
「ま、いいや。俺はもう少し───……」
と、採取の続きをしようとしゃがんだところで気付いた。
少し離れた距離。十メートルくらい先に……『黒い何か』がいた。
「…………っ」
やばい。
黒い何か。あれ、魔獣だ。
魔獣。バルギルドさんは……どうする、叫ぶか。
エルミナ、ミュアちゃん、ルミナはシルメリアさんの元へ。バルギルドさんはどこだ?
黒い何か。耳が見える……よく見えないけど、魔獣だ。
こっちを見てる気がする。やばい、どうする。
少しずつ後ずさりをすると、黒い何かも少し動いた。
どうする、このまま睨み合いをしているわけにはいかないぞ。
杖、魔法……ダメだ。絶対にあっちのが速い。
こうなったら……や、やるしか、ない。
俺は腰にある小さな採取用のナイフを抜く。すると……黒い何かが、ビタッと止まった。
俺は、小さく呟く。
「来るな、来るなよ……頼む、あっちに行ってくれ。頼む……」
だが───黒い何かは、身体を深く沈めた。
ナナイロシンギョウレンゲが生えているせいで、よく見えない。
でも、なんとなく察した。俺が刃物を抜いたことで、むこうも覚悟を決めたようだ。
来る。どうする。やばい。汗ダラダラだ……───来たっ!!
「う、おぁぁぁぁぁぁ「ご主人様」え」
バシィィッ!! と、俺の前にシルメリアさんが出て、黒い何かに向かって見事な回し蹴りを食らわせた。
黒い何かは地面を転がり、すぐに身体を起こし……って、え?
「お、おい。これって……まさか」
「……なるほど、そういうことですか」
「にゃあ、ご主人さまー!!」
「チッ……敵襲か!!」
「アシュト、無事!?」
『アシュトーッ!!』
ミュアちゃん、バルギルドさん、エルミナ、ウッドが来た。黒い何かを見て全員が止まる。
そして、ルミナが最後に来た。
「みゃう、何が───……えっ」
ルミナは止まった。
黒い何かを見て、止まった。
「ふしゅぅぅぅぅ……ッ!!」
黒い何かは、ヒトの姿だった。
ボロキレを纏っていた。
黒い髪、黒い眼。黒い尻尾……そして黒いネコミミが生えていた。
女の子だった。十六歳くらいだろうか、敵意剥き出しでこちらを見ている。
「く、黒猫族……?」
そう、『黒い何か』は……ルミナと同じ、黒猫族の少女だった。
◇◇◇◇◇◇
突如現れた、黒猫族の少女。
めちゃくちゃこっちを見て唸り声をあげている。初めて会ったルミナみたいだ。
とりあえず……俺の身の安全は保障された。
エルミナが俺に近づき、弓を手に持つ。
「……で、どうするの」
「どうするって……」
「今は、シルメリアとバルギルドが睨みを利かせてるから動けないみたいね。あの子、どうする?」
「え……」
どうするって……どう、したいんだろう。
あの子は、いきなり襲い掛かってきた。
敵、なのか? でも……初めて出会った、ルミナ以外の黒猫族だ。
ルミナを見ると、俺の袖をギュッと掴んでいる。
「みゃう。同族……ん? おい、あれ見ろ」
「え?……あ」
ルミナに言われ気付いた。
黒猫族の少女は、背中から血を流していた。さらに、ひどく顔色が悪く、脂汗も流している。
この時点で、もう決まっていた。
「バルギルドさん、シルメリアさん。あの子は怪我をしています。傷付けずに、捕まえることはできますか?」
「可能です」
「できるが……オレでは少し難しいな。シルメリア、任せていいか?」
「かしこまりました。では」
と、ここで俺の眼がおかしくなった。
シルメリアさんが消えた。
「ッ!?」
「少し、お休みください」
そして、黒猫族の少女の背後へ回り、首を手刀でトンと叩く。それだけで黒猫族の少女は意識を刈り取られ倒れる。だが、倒れる前にシルメリアさんが抱きとめた。
「……まるで見えなかった。もしかしたら、アーモやネマより速いかもしれん」
「…………」
今更だが……シルメリアさんは、バリバリの戦闘タイプだった。
◇◇◇◇◇◇
洞窟に戻り、少女の手当てをすることにした。
お湯を沸かし、うつ伏せにする。
背中がざっくり切れている。上半身裸にして、まずは傷口の洗浄をした。
ルミナは、複雑そうだ。
「バルギルドさん。少女が暴れないように、押さえてくれますか」
「わかった」
バルギルドさんに両足、シルメリアさんに両手を押さえてもらい、沸騰させた湯を冷ました水で洗浄する。
「ッッ!? ふ、みゃぁぁあァァァァ!?」
「落ち着いて。きみの怪我の治療をするだけだから!!」
「ふしゃぁぁぁぁぁぁっ!! アタシに触んなァァァァァっ!!」
ちゃんと喋れるようだ。
少女は暴れるが、バルギルドさんとシルメリアさんにガッチリ押さえ込まれて動けない。首をブンブン振ると、長い黒髪がバサバサ揺れた。
「───お静かに」
「ひっ」
だが、シルメリアさんの殺気に気圧された。
ネコミミが閉じ、ガタガタ震える。
背中の消毒をして、持参した傷口を背中に塗る。少女は痛みに顔をしかめていたが、恐怖で大人しくなっていた。
治療を終え、背中に包帯を巻く。
女の子で、上半身裸だし……ルミナにやってもらう。
「……お前、同族か」
「みゃう」
「……こいつらと、ツルんでるのか」
「……こいつの飼い猫」
ルミナは俺を見て言う。
すると、少女は俺をジロリと睨んだ。
「黒猫族を手懐けたのか。お前、何なんだ」
「何だと言われてもね。俺は、ただの薬師だよ。それより……なんで俺を狙ったんだ?」
「お前からいい匂いした。甘い匂い……」
ポケットを漁ると、おやつのクッキーが出てきた。
袋を開け、少女へ渡す。
「ん、うまいっ!! おい、もっとよこせ!!」
「ああ。その前に、きみの名前くらい教えてくれよ」
「シオン。ほら、よこせ!!」
シオンか。
黒猫族のシオン。ルミナという同族には興味がないのか、俺の持つクッキーに夢中だった。
クッキーはいいけど……さて、この子をどうしたもんかな。
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