大自然の魔法師アシュト、廃れた領地でスローライフ

さとう

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ビッグバロッグ祭り

第641話、それぞれの出発前日

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 ビッグバロッグ祭り、出発前日。
 エルミナは、シレーヌとエレインの家にいた。
 家には、エルミナ、シレーヌとエレイン、メージュにルネアの五人がいる。

「あのさ、ビッグバロッグ王国のお祭り行くけど、あんたたちも行く?」
「え? ビッグバロッグって確か、村長の故郷じゃん。あたしたち、行っていいの?」

 メージュがクッキーをこりこり食べながら言う。
 今日は幼馴染五人の女子会。
 ビッグバロッグ祭りにアシュトたちと行こうと思っていたのだが、予定が誰とも合わない。なので、メージュたちをさそってみたのだ。
 すると、ルネアが挙手。

「わたし、行きたい」
「じゃ、ルネアは決定。シレーヌとエレインは?」
「あたしもいいよ~」
「私、村長の故郷に興味がありますっ」

 シレーヌがのんびり言い、エレインがやや興奮しながら言った。
 メージュは少し悩んだが、頷く。

「うん、あたしも行こっかな。農園もそんなに忙しくないしね」
「どうせ転移魔法で行くから平気よ。あとさ、宿とかも私たちで決めよ。せっかくだしさ、お酒美味しいところとか、ご飯美味しいところでさ」
「わお、いいじゃん」

 シレーヌがエルミナの腕を取り、ウキウキしながら言う。

「ねぇねぇエルミナ。あたしお肉食べた~い!」
「私もお肉食べたい! エレイン、ルネア、メージュは?」
「わたし、おさかな」
「私は甘い物がいいですっ」
「あたしは……そうねぇ、そのビッグバロッグでしか食べられないやつとか?」

 ハイエルフ五人のビッグバロッグ祭りについての話合いは、深夜まで及んだという。

 ◇◇◇◇◇◇

 ミュディは、ライラと一緒にミュディの部屋で編み物をしていた。
 作っているのは靴下。
 カラフルな糸を組み合わせ、カラフル模様の靴下を編んでいる。異なる糸を組み合わせた縫物の練習だ。
 ライラは、尻尾を振りながらミュディに言う。

「ビッグバロッグ祭り、たのしみだね」
「ふふ、そうだね。ライラちゃん、行きたいところある?」
「わたし、服がみたい! いろんな服、みてみたい!」
「あはは。ライラちゃんらしいね」

 ライラは、裁縫に夢中だった。
 一年ほど前まで、ミュアや子供たちと一緒に遊ぶのが何よりも好きだったが、製糸場で働くようになり、裁縫にのめり込んでいった。
 ハンカチや手袋などを編んでミュアたちにプレゼントしたり、帽子やカバンなど、難しい編み物にも挑戦していた。最近はメキメキ腕を上げている。
 
「ライラちゃん、上手になったね」
「わう?」

 子供たちの成長は早い。
 村に来たばかりの頃は、毎日泥だらけになるまで遊び回り、アシュトやみんなとお風呂に入ることが日常だった。でも……最近のライラは、女湯でミュディたちと入ることが多い。というかほとんどだ。
 一緒に入るのが恥ずかしくなってきたのだろう。ほんの少し、身体つきも女性らしくなりはじめている。
 ミュアやルミナなどは羞恥心というのが薄く、アシュトに髪やネコミミを洗ってもらっているようだが。
 
「ミュディおねえちゃん、ここどうかな」
「どれどれ……」

 ミュディは思う。
 もし、自分に子供ができたら……こんな風に、編み物を教えたりするかもしれない、と。

 ◇◇◇◇◇◇

 シェリーは、ウンウン唸っていた。

「うーん、ビッグバロッグ祭り……」
「なーに唸ってんのよ」

 シェリーの部屋にいるのは、ラクシュミだ。
 魔道具師を目指しており、ディミトリ商会では研修という形で働いているのだ。
 魔法学園にも通っており、毎日忙しい。
 いちおう、アシュトの家に住んでいるのだが、忙しくてなかなか帰れないのが現状。アシュトにも最近会っていないらしく、やや不満そうだった。

「ね、ラクシュミ。ビッグバロッグ祭りが近いけど、あんた行く?」
「え!? もうそんな時期なの!? 行く行く、行くに決まってるじゃん!!」
「でもあんた、仕事は?」
「ディミトリ会長に言って休みもらうっ!! アシュトくんの名前出せば一発でしょ!!」
「そうかもだけど……そういうのやめた方がいいわよ」
「冗談。ちゃんと申請するから平気よ。会長も『学業優先ですヨォ!!』って言ってたし」
「それならいいけど」

 シェリーは、自分用に入れたアイスティーを飲む。

「あんたさ、最近どうなの?」
「ん~?」
「勉強。学園に、ディミトリ商会と大忙しじゃん」
「ジーニアス先生は言いました。『若いうちの苦労は、大人になってから楽に変わる』って。今、魔道具師としての知識を積み重ねておけば、大人になって立派な魔道具師になった時に楽できるっ」
「人生、そう甘くないと思うけどねー」

 ちなみに、部屋にいるシェリーは髪を下ろしており寝間着だ。
 ラクシュミも薄手の寝間着で、シェリーと同じくらい長い銀髪がさらりと流れている。並ぶと姉妹のような美しさで、魔法学園の生徒が見れば恋に落ちるだろう。

「ま、いいわ。ビッグバロッグ祭り、あたしと一緒に回ろ」
「うん! あれ……アシュトくんは?」
「お兄ちゃんと予定合わないのよ」
「えー……?」
「文句言うなら連れて行かない」
「わわ、冗談だって!」

 姉妹のような二人は、夜遅くまで話していた。

 ◇◇◇◇◇◇

 ローレライの部屋に、クララベルがいた。
 姉妹は色違いの寝間着で、ローレライは読書をして、クララベルはローレライに甘えるように背中にだきついている。いつものことなのでローレライは気にしていないが、クララベルは言う。

「姉さま、ビッグバロッグ祭り、誰か誘う?」
「そうねぇ……アシュトたちとも、ミュディたちとも予定が合わないとなると」
「わたしと一緒!!」
「そうね。たまには、姉妹で回ろうかしら」
「やったぁ!!」

 クララベルは子供のようにはしゃぐ。
 
「いちおう、パパとママにお手紙出すね。もしかしたら来れるかも!!」
「……そうね」

 たぶん難しいだろう。
 でも、父のガーランドなら何とかしそうな気もする。
 そういう意味の『そうね』だった。

「えへへ。家族でお買い物したり、美味しいもの食べたいなー」
「……そうね」

 クララベルの笑顔のために、実現させてやりたい。
 ローレライは、クララベルが出す手紙のほかに、自分でも手紙を出そうと決めた。

「姉さま、お祭り楽しみだね」
「ええ。とても楽しみ」

 この日、姉妹はクララベルが眠くなるまで、祭りの話で盛り上がった。

 ◇◇◇◇◇◇

 ◇◇◇◇◇◇

「さて、祭りまでもう少しだけど、なに食べたい?」
「みゃう。にく」
「にゃあ。おさかな!」

 意見が割れた。
 俺は二人の頭を撫でながら「じゃあ両方」と言う。
 現在、俺たちがいるのは俺のベッドの上。
 ミュアちゃん、ルミナと一緒に、祭りでどこを回るか話していた。
 今回は、ミュディたちとも別行動。やるなら徹底的にと、泊まる宿や食事なんかも完全に別だ。たまにはこんな祭りの過ごし方もいいと、みんな賛成してくれた。

『アシュト~……ボクモイキタイ』
「もちろん、ウッドも一緒だぞ」
『ホント!? ヤッターッ!!』

 ウッドが喜んでいた。
 ウッドも最近、一緒に出掛けることが少ないからな。ビッグバロッグ王国は多種多様な種族が集まる街だし、ウッドがいても問題ない。
 すると、部屋のソファにいたモフ助、黒い柴犬の子供、黒い子猫が鳴いた。

『もきゅ』『クゥン』『ミャー』
「だめ。全員は連れて行けない。話合って一匹を決めて」

 ルミナがそう言うと、三匹はキューキュー鳴き、キャンキャン鳴き、ニャーニャー鳴いた。そして、黒い柴犬の子供がソファから降り、ルミナの前に。

「よし、お前を連れて行くぞ」
『ワン!』

 ど、どういう話し合いがあったのかな……?
 モフ助も、黒い子猫も何も言わないし。というか言葉通じてるのか?

「おい、フレキは?」
「フレキくんは明日来るよ。で、出発は明後日だ」
「みゃう、わかった」
「にゃああ、たのしみ」

 祭りまであと数日。
 ビッグバロッグ王国商人たちの開催する祭り、思いっきり楽しもう!!
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