大自然の魔法師アシュト、廃れた領地でスローライフ

さとう

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ビッグバロッグ祭り

第643話、ドラゴン姉妹の家族祭り

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 ローレライ、クララベル、アイオーンの三人は、ヒュンケルが手配した高級宿にいた。
 部屋は三部屋。一人一部屋と豪勢だが、クララベルは思う。

「わたし、姉さまと一緒でいいのに。もったいないなー」
「ふふ、そうね」
「うんうん。言いたいことわかるわー」

 超久しぶりに姿を現したアイオーン。
 ローレライは、聞いてみた。

「あなた、今までどこにいたの? 家にもいないし、仕事場にもいないし」
「いやー、ずっと原稿やってて。あたしの書いた小説、出版社に売り込んだら『ぜひ本に!』ってなって、とにかく原稿作業が忙しくってねぇ」
「そ、そうなの? すごいわね……」
「というわけで、この『時流龍クロノスタシス・ドラゴン』アイオーンは、小説家としてデビューします! 図書館のお仕事は引退だべ!」

 胸を張るアイオーン。
 クララベルが「おおー!」とパチパチ手を叩き、喜ぶアイオーンがクララベルに抱きついてベッドに押し倒し、そのままゴロゴロ転がった。

「きゃーっ!」
「あはは。このこのっ、かわいいやつめっ!」
「あははっ、アイオーン姉さまくすぐったいー」
「もう、やめなさい。まったく……でも、おめでとう、アイオーン」
「むふぅ……日々の妄想が形になった瞬間。くふふ。最高だべさ」
「そ、そう」

 薄気味悪い笑みを浮かべるアイオーン。
 今日は、アイオーンが「祭り! 羽伸ばしたい」というので連れてきた。
 ローレライがアイオーンを見ると、アイオーンは小さく頷く。

「じゃ、あっしは祭りを堪能するんで! 姉妹で仲良くねー」
「え? 一緒に行かないの……?」
「うぐっ……そんな可愛い目で見ないで……その、あっしにもいろいろあるんでさぁ!」
「あなた、そんな喋り方だったかしら……何に影響されたの?」
「じゃあねっ」

 アイオーンは部屋を出て行った。
 クララベルが少しだけしょんぼりしてしまう。
 だが、ローレライはクララベルの頭をそっと撫でた。

「姉さま」
「ふふ、大丈夫。きっと楽しくなるから」

 と───……ここで、部屋のドアがノックされた。
 高級宿には、専属メイドによるお茶のサービスがある。
 おそらくそれだろうとクララベルは思うが、ローレライが言う。

「クララベル、ドアを」
「うん」

 ローレライに言われ、迷わずドアを開けた。
 そこにいたのは、メイドではなかった。
 大柄な男と、華奢な女。
 二人とも、頭にツノが生えていた。

「ふふ、かわいいクララベルのお出迎え。うれしいわね」
「クララベル!! くぅぅ、久しぶりだな可愛い!!」
「……ぱ、パパ? ママ?」
「うむ!! はっはっは、サプライズ大成功!!」
「成功ね、ローレライ」
「ええ。さ、二人とも入って」

 ズンズンと、ドラゴンロード国王ガーランドと、王妃アルメリアが入ってきた。
 ガーランドはローレライに抱きつこうとするがローレライはスルリと躱してアルメリアと抱擁。

「ローレライ。あなたは見るたびに素敵なレディに成長するわね。本当に、私の娘とは思えないくらい」
「そんな。私はお母様の真似をしてるだけよ」
「あら、嬉しい」

 アルメリアは、ローレライと額をコツンと合わせる。
 ガーランドもウンウン頷いている。
 すると、ようやくクララベルが。

「パパ、ママ!! え、え、どうして?」
「うむ!! ローレライに誘われてな、祭りを見物しに来た!!」
「姉さまが?」
「ええ。ローレライが、『家族でお祭りを見たい』って言ってね……国のことは、イクシオンとフォルテシモ義姉様に任せてきたわ。あの子、頑張り屋さんだから、数日は平気よ」

 イクシオンはアルメリアの弟で、フォルテシモはガーランドの姉。二人は夫婦であり、その娘がアイオーンだ。
 クララベルは、幸せいっぱいの笑みを浮かべ、アルメリアに抱きついた。

「ママぁ!!」
「あらあら。甘えん坊のクララベル、あなたはいつまでも変わらないわねぇ」
「ね、ね、お祭り一緒に行けるんだよね? ね?」
「ええ。もちろん」
「パパもだよね!」
「当・然!! 命に代えても祭りを楽しむぞ!!」
「意味が分からないわ……でも、お父様も、お母様も、一緒で嬉しいわ」
「うぉぉぉぉぉぉぉぉん!! ローレライ、私も嬉しいぞぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「きゃぁ!?」

 ローレライに抱きつき、わんわん泣くガーランド。
 クララベルも、アルメリアから離れるつもりがないようだ。
 
「姉さま、ありがとう!! 姉さまのおかげで、すっごく楽しいお祭りになりそう!!」
「ええ。私も、すごく嬉しい……ふふ」

 部屋が三部屋の理由も、ようやくわかった。
 ドラゴン家族たちの祭りが、始まった。

 ◇◇◇◇◇

 ミュディは、宿屋の一室でニコニコしていた。
 理由は、アセナとレムス。

「そっかぁ~、お二人はお付き合いしてるんだねぇ」
「え、ええ」
「お、おう」
「で、で? 二人の出会いは?」
「えっと……移住で来たレムスと、兄さんの薬院で出会って」
「まあ、喧嘩も多かったけど、その……す、好きになって。オレから告白して」
「け、結婚を前提に付き合っています。はい……その、ミュディさん、これは何のお話ですか?」

 ミュディ。
 他人の色恋話が好き。初々しい、十三歳同士のかわいい恋愛話を、宿屋に入るなり一時間も聞いていた。
 ミュディは思う。

「私とアシュトは幼馴染で、恋人同士っていうの経験してなかったからなぁ……村で再会して、一緒に過ごして、そのままプロポーズ……うう、これはこれでいいけど、恋人っていうのもいいなあ!!」
「「は、はあ……」」
「くぅん……ミュディ、まだ?」
「え? あ……そ、そうね。お祭りだもんね!! よーしみんな、お姉さんが奢っちゃう!! お昼を食べに行こう!!」

 ライラに袖を引かれ、ミュディはようやく子供たちと町に出た。

 ◇◇◇◇◇

 シェリーは、ラクシュミと同じ部屋でベッドに転がっていた。

「ねー、どこ行く?」
「そうねぇ。せっかくだし、商人区画でしか食べれないスイーツ巡りしよっか」
「いいわね。シェリー、この辺でおススメある?」
「あたし、商人区画に来たこと、ほとんどないのよ。だから適当~」
「それもいいね。じゃ、行く?」
「ええ」

 二人は立ち上がり、宿から出た。
 並ぶと姉妹にしか見えない二人。綺麗な銀髪が風で流れ、太陽の光でキラキラ輝く。
 道行く人が、美少女姉妹に見惚れるのがわかった。

「おーおー、シェリーのこと可愛いってさ」
「あんたのことでしょ」
「ふふふ。私は可愛いの知ってるからね」
「はいはい。ところであんた……留学、ちゃんとできてるの?」

 ラクシュミは、ディミトリの元で魔道具師になるべく勉強している。
 魔法学園でも、本格的に進路を決めて勉強中だ。

「当たり前でしょ。私、いつか自分のブランド立ち上げるの夢なんだから。美容関係の魔道具いっぱい作って、女商会長として華々しくデビューするんだから!」
「ま、あんたならできるんじゃない? ディミトリさんの支援もあるし、お兄ちゃんも応援してるし」
「アシュトくん! ね、アシュトくんと結婚したいんだけどどうなったの? 保留のままなんだけど!」
「知らないわよ。お兄ちゃんも忙しいし」
「むぅ~……帰ったら大胆にアピールしようかしら」
「好きにすれば? あ、見てみて。クレープ売ってる」
「あ、食べる!!」

 シェリーとラクシュミは、甘い物巡りを開始した。
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