大自然の魔法師アシュト、廃れた領地でスローライフ

さとう

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ビッグバロッグ祭り

第646話、ドラゴン家族の食べ歩き

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 古商業区。
 今日は『ビッグバロッグ祭り』で、様々な店が出店している。出店はいつもの数倍並び、商店も解放され安売りを行ったり、いつもはない珍しい商品を取り扱ったりと、活気がある。
 祭りに参加する人も、様々な種族がいる。
 獣人、人間、翼人、蟲人……そして、龍人。
 現在、古商業区の中央街道を、四人の家族が歩いていた。

「えへへ。ママとお買い物!!」
「ふふ、何年ぶりかしらねぇ」

 クララベルは、母親のアルメリアと手を繋いで歩いていた。
 その後ろには、父親のガーランドの腕を取り歩くローレライがいる。
 ガーランドは、ローレライに聞く。

「ローレライ。何か欲しいものはあるか?」
「古書が見たいです。掘り出し物があるって、アシュトが言ってましたから」
「ほう。古書か……お? 見ろ見ろ、あそこにあるぞ!!」
「きゃっ!? お、お父様っ」

 中央街道に並ぶ露店の一つに、本屋があった。
 折り畳み式の本棚には古めかしい本が収められ、シートに直座りしている店主の前にも、本が平積みされている。綺麗な置き方ではないし、本も薄汚れているのが逆に面白そうだった。
 ガーランドに引かれ、ローレライは古書露店の前へ。

「いらっしゃい。綺麗なお嬢さんに……大きな人」
「はっはっは。ぜんぶ買っ「少し、見せてくださいな」

 ガーランドの口に手を当て、ローレライが本を手に取る。
 そこに書かれていた文字が読めず、ガーランドは首を傾げた。
 仮にも一国の王。ドラゴンロード王国語以外にも、いくつかの言語は習得している。だが、それでもガーランドにはサッパリ読めない。

「むぅ……どこの文字だ?」
「これは……古代エルトゥールル語ね。驚いたわ、古の王国の本があるなんて」
「……お嬢さん、博識だねぇ」

 店主はニヤリと笑う。
 ローレライはクスっと笑い、店主に言う。

「あなた、こんな貴重な物を出していいのかしら? これ、ビッグバロッグ王国の歴史研究家に見せれば、全財産を出しても買う人がいるかもしれないわよ?」
「かもしれませんねぇ……ですが、お金には困ってませんので。歴史解明のヒントを提供するのもいいんですが、あたしはそこまで国に貢献するつもりもない。だったら、ちょっと博識な方の手に渡して、驚く顔を見たり、何も知らないインチキ読書家が『これは落書きだ』と自慢顔で評価するのを見てみたいのですよ」
「ふふ、ひねくれてるわね」
「ええ、そういう性分なもので」
「面白いわね。これ、買うわ」
「はい、ありがとうございます」

 支払いを済ませ、全十巻の貴重な古書をローレライは手に入れた。
 去り際に、ガーランドは言う。

「ふむぅ……全部買えばよかったのではないか?」
「それじゃ面白くないもの。お父様、店主とのやり取りを楽しむのも、祭りの醍醐味よ?」
「うーん、さすがローレライ!! 本当に大人になって……パパ嬉しいぞ!!」
「はいはい。じゃあ次は……あらら? お母様とクララベルは?」
「む? はぐれたか……気配を辿ればすぐに見つけられるだろう」
「じゃあ、それまではお父様とデートね」
「ッッッッ!! くはははははっ!! そうだな、デートだな!!」

 ガーランドのテンションが一気に上がり、ローレライの買った本の包みをブンブン振り回す。そして……ローレライにこっぴどく叱られるのだった。

 ◇◇◇◇◇◇

「ね、ママ。あっちにアクセサリーのお店あるよ」
「あら、あなたもそういうのに興味を持つお年頃なのねぇ」
「えへへー」

 アルメリアの腕に抱きつき甘えるクララベル。
 露店ではなく、商店に入る二人。
 そこは、異国のアクセサリーが多く並ぶアクセサリーショップだった。
 入るなり、店主の女性……羊の獣人が挨拶する。

「いらっしゃいませ」
「ええ。少し店内を見せてちょうだい」
「かしこまりました」

 羊の獣人女性はニコニコする。
 さっそく、二人は店内を見て回る。

「わぁ~……綺麗。ねぇママ、ママはアクセサリーいっぱい付けてるけど、どうやって選んでるの?」
「そうねぇ……その時の気分で選ぶこともあるけど、パパが選んでくれたアクセサリーを付けることが多いわね」
「パパが?」
「ええ。大好きな人が選んだアクセサリーを付けると、パパは喜んでくれるし、ママも嬉しいの」
「そうなんだー……」
「あなたも、アシュトくんにアクセサリーを選んでもらったら?」
「うん。姉さまと一緒に選んでもらう!! でも……今はママに選んでほしいな」
「ふふ、甘えん坊ね」

 ついつい、アルメリアは甘やかしたくなってしまう。
 店内には、牛族や鹿族がツノに付けるアクセサリーも並んでいた。首輪や腕輪なども多くあり、人間よりも獣人や亜人に特化したアクセサリーショップだとわかった。
 アルメリアは、シンプルな白いチョーカーを手に取る。

「これ、あなたに似合いそうね。ほら、白いチョーカーに、雪の結晶……」
「わぁ……」

 チョーカーには、クリスタル製の雪の結晶が付いていた。
 それを手に取ると、クララベルは別のチョーカーを手に取る。

「ママ、こっちは姉さまに似合いそう!! 月のアクセサリーが付いてる」
「本当だわ。ふふ、じゃあ二つとも私が買うわ。あなたたちへのプレゼントよ」
「やったぁ。ありがとう、ママ!!」

 クララベルはアルメリアに抱きついた。
 母と娘のアクセサリー巡りは、ガーランドとローレライが合流するまで続いた。

 ◇◇◇◇◇◇

 四人になり、昼食を食べることにした。
 向かったのは、クララベルが見つけた『巨人料理・ジャンボ』という店。
 中に入ると、巨大なテーブルがいくつもならび、とにかく巨大な大皿がいくつも並んで、そこに料理が乗っていた。これにはローレライも驚く。

「大きいわねぇ……」
「いらっしゃい!! 四人でいいかなっ!!」
「はーいっ!!」
「じゃあ、そちらの席でお待ち下さいっとぉ!!」

 身長三メートルほどのウェイターが案内した席へ。
 クララベルは聞いてみた。

「お兄さん、おおきいね」
「ああ。店主以外の従業員は全員、『半巨人』だからね。知ってるかい、巨人種は」
「ええと……」
「巨人種は、その名の通り巨大な人間よ。平均身長は十メートル。人間と巨人のハーフを『半巨人』といい、こちらの平均身長は三~五メートル。身体の造りはほぼ人間で、人間の進化系とも言われているわね」
「博識なお嬢さんだねぇ」
「さすが姉さま!!」
「おっと。ご注文は? 今、祭りのイベントで『大食いチャレンジ』ってのをやってるんだ。ウチの『超絶・大盛ジャンボステーキ』を完食すると、賞金が出る。もちろん飲食代も無料になるぜ!! そっちのお父さん、どうだい?  
 娘さんにカッコいいところ、見せないかい?」
「『超絶・ジャンボステーキ』を持ってこい!!」

 間髪入れずガーランドが叫ぶ。
 
「はいよっ!! 超絶チャレンジ入りましたぁ!!」
「「「「「ジャンボ!! ジャンボ!! ジャンボ!!」」」」」

 店内の従業員たちが『ジャンボ!!』と叫ぶ。
 何事かと、店内の客たちも驚いていた。当然、ガーランドに注目が集まる。
 アルメリアは頭を押さえた。

「あなた……あまり目立つのは」
「がはははは!! まぁいいじゃないか。祭りだ祭り!! がっはっは!!」
「パパがんばって!!」
「おう!! がっはっは!!」

 それから数分。
 運ばれてきたのは、全長三メートルはある巨大なステーキだった。
 ありえない。
 横幅が三メートル、高さは一メートルはある。
 分厚すぎるジャンボステーキを四人がかりで運んできて、ガーランドたちのテーブルにドスン!! と置いた。

「制限時間は一時間!! パパのカッコいい姿……とは言ったが、奥さんや娘さんも一緒に協力してこいつを完食してくれっ!! では開始っ!!」
「いただきまぁ~……すっ!!」

 ガーランドは、持っていたナイフで肉を豪快に切り分け、一口食べる。

「……うまい。これは美味いぞ!! なんの肉だ? これは……そうか、ブラックオークの肉か!! くぅぅ~……いい脂が載っててうまい!! いくらでも食えるっ!!」

 ガツガツガツ……と、ガーランドの手は止まらない。
 最初はニコニコしていたウェイターだが、ガーランドの手が止まらないのを見て顔色が変わっていく。
 そして、ものの十分で完食してしまった。

「か、完食ぅ!! なんと、完食者が出たぞぉぉぉっ!!」
「「「「「ジャンボ!! ジャンボ!! 完食ジャンボ!!」」」」」

 どこからかドコドコと太鼓が鳴る。
 そして、ウェイターがガーランドに賞金を渡した。

「おめでとうございます!! 完食大成功!!」
「がっはっはっはっはぁ!! おかわりを持ってこーいっ!!」
「パパかっこいい!!」
「おう!! がーっはっはっはっは!!」

 ガーランドの笑い声は、店外まで響いたという。
 ドラゴン家族たちの祭りは、まだまだ始まったばかりである。
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