大自然の魔法師アシュト、廃れた領地でスローライフ

さとう

文字の大きさ
456 / 474
新たな開拓

第650話、開拓のはじまり

しおりを挟む
 ビッグバロッグ祭りを終え、村に戻った俺を待っていたのは、村長としての仕事だった。
 薬院はココロに任せ、村役所の『村長室』で仕事をする俺。
 書類を眺め、村の産業物の出荷や輸入品などの報告書、そして未だに多く来る移住許可申請書を読む。
 書類の三割くらいは、移住に関する書類だった。
 俺は書類を眺めつつ、村長補佐兼村長代理のディアーナに言う。

「な、ディアーナ。移住の申請って未だに多いんだな」

 ディアーナは、眼鏡をくいっと上げて言う。

「そうですね。まぁ、当然でしょう」
「当然なのか?」
「ええ。緑龍の村ほど恵まれた地はありませんから。というか普通、他種族がこれほど集まり、共存して生きる場所など、私が知る限りありませんよ。そもそも、オーベルシュタインの種族は同族同士でしかやり取りしませんので」
「そうなのか? でも、魔界都市ベルゼブブとか」
「以前、話したと思いますが……闇悪魔族はもともと、悪魔族の上位種として、オーベルシュタインを統治しようとしていたんです。ですが、兄さんがそれを望まず、純血派と呼ばれた闇悪魔族を一掃し、他種族が集まる街を作ろうとして生まれたのが、魔界都市ベルゼブブなのです」
「そ、そうなんだ……ってか、ルシファーってホントすごいんだな」
「ええ。当時、闇悪魔族の戦闘力に対抗できるのは、神話七龍か対局の存在である熾天使族だけでした。兄さんはたった一人で、七十七の闇悪魔族の貴族を相手に、ほぼ無傷で勝利したのです。当時を知る闇悪魔族は少なくなりましたが、知る者は全員、兄さんの姿を見ただけで恐怖で死にますよ」
「ま、マジか……どんだけ~」

 ルシファー、温和な青年、話相手、飲み友達って感じだけど、普通に戦ってもヤベーんだな。
 デーモンオーガですら相手にならないっていうし。
 おっと、話が逸れた。

「で、移住申請だけどさ、悪魔族や天使族以外にもあるんだよな」
「ええ。小人族、巨人族、幽鬼族、白猫族……大きなところでは、こんな感じですね」
「へぇ~……って、知らない種族けっこう多いな」
「詳細はそちらに」

 と、ディアーナは山積みの書類を指さした。
 はいはいすみません。ちゃんと確認しますよ。

 ◇◇◇◇◇◇

「ふむふむ……なるほどなぁ」

 小人族、巨人族、幽鬼族、白猫族。どれも共通しているのは、『安住の地』を求めてオーベルシュタインを回っているってところだな。
 
「村で受け入れてもいいけど……」
「……村長、正直な意見を申しても?」
「ああ」
「……私は、反対です」
「……」

 まぁ、そんな気はしていた。
 正直、俺も厳しいとは思う。
 村の敷地を広げることはできると思うけど……これ以上は、管理が厳しい。
 現在の村の人数は三千人ほど。これ以上は村として維持できない。
 
「なぁ、ルシファーはどうやって、あれほどの街を作ったんだ?」
「……ああ。その手がありましたか」
「え?」
「兄さんは、最初からベルゼブブを作ったわけではありません。一つの村から始め、いくつも村を興し、最終的には一つの街として、魔界都市ベルゼブブを作ったのです」
「じゃあ……あ、そうか」
「ええ。緑龍の村に受け入れるのではなく、緑龍の村が支援する村を作り、受け入れるのです」

 そうか、新しい村を作って、そこで受け入れればいいのか。
 最終的に一つの街にするかどうかはさておき、新しい村造りはいいかも。
 
「よし、じゃあ新しい……といっても、さすがに俺たちだけで決めるのもな。村の種族代表を集めて、会議をするか」
「わかりました。では、代表を集めます」

 なんか、久しぶりの大仕事になりそうな予感!!

 ◇◇◇◇◇◇

 さて、久しぶりの会議だ。
 集まったのは、ハイエルフのエルミナ、エルダードワーフのアウグストさん、デーモンオーガのバルギルドさんに、銀猫族のシルメリアさん、花妖精のフィル、ブラックモールのポンタさん、妖狐族のカエデ、サラマンダー族のグラッドさん、石蛇女族のステンナ、女郎蜘蛛族のメイニー、闇悪魔族のディミトリ、熾天使族のアドナエル、豆狸族のタヌスケさん、黒猫族のシオンとルミナ、エルダーリッチ族のワイトさんだ。今更だが多すぎる。 
 俺はさっそく、第二の村について話をする。

「いいんじゃねぇか?」

 と、アウグストさんが言う。

「新しい村か。くくっ、久しぶりに大仕事になりそうだ。以前と違い、今回は人手も多い。すぐにできるだろうよ」
『我々の建築技術が、試される時、ですネ』
「オレらも手ぇ貸せば、さらに早くできましょう」

 アウグストさん、ワイトさん、グラッドさんが乗り気だな。
 エルミナも言う。

「面白そうね。ってか、ハイエルフたちも新しく移住したいって子が多くてさー」
「ククク、新たなビジネスの予感……!!」
「確かに。ヘイヘイ、アシュトチャンよぉ、オレも噛ませてもらうゼェ!!」
「あ、アナタ!! そうやってまた!!」
「フフゥン、早いモン勝ち、サ!!」

 ディミトリ、アドナエルうるさいな……まぁ賛成ってことか。
 カエデはモフモフ尻尾をフリフリする。椅子の上で器用なやつだ。

「わらわも賛成なのじゃ。ふふふ、実は試してみたい温泉があるのじゃ。でも、緑龍の村には転移魔法陣の関係で温泉が作れんからの……新たな地で試すのじゃ」
「ぼくたちも賛成なんだな!!」
「私たちも異論ありません。現在、我々の同族は五名しかいませんが……もう少し、この地で生活できればと」
「我々もです。女郎蜘蛛族は新たな村に賛成です」

 カエデ、ポンタさん、ステンナ、メイニーも賛成だ。
 シルメリアさん、バルギルドさんは無言で頷いた。

『わたしはどっちでもいいかなー、ユグドラシルあるこの地から離れないし』
「アタシもどうでもいい」
「みゃうー」

 フィル、シオンはどっちでもいいのか。というかルミナがいつの間にかいるし。
 とりあえず、賛成意見が多数ってところだな。
 ディアーナに視線を送ると、小さく頷く。

「では、賛成意見多数ということで、緑龍の村が支援し、新たな村を開拓。移住希望の種族を受け入れたいと思います。開拓先については、これから検討を進めていきます。緑龍の村が一丸となり、新たな村の開拓ができるよう、頑張りましょう」

 というわけで、『第二の村』計画が始まった。

 ◇◇◇◇◇◇

 夜、バーでローレライと飲みながら今日のことを話した。

「ってわけで、新しい村を作ることになった」
「なるほどね……」
「まだまだ先の話になるけど、第三、第四と村を作るかもな」
「ふふ、面白そうね」

 酒を飲みながら話していると、ミュディとシェリー、クララベルとエルミナが来た。

「おお、みんな来たか」
「今日の話でしょ? 私がみんなに説明したわよ」

 エルミナに先手を打たれたか。
 ミュディは果実水を飲みながら言う。

「新しい村かぁ。ね、そこでもお仕事とかするの?」
「うーん、産業的なのはよくわからん。そもそも、受け入れる種族が何をできるかわからないし」

 新しい村、かあ。
 新しい名前も付けなきゃいけないのかな。開拓もあるし、緑龍の村からあまり離れるわけにはいかないってのもある。場所も、準備も、何もかも足りていない。
 とりあえず、少しずつ進めていこう。

「明日から、第二の村に関する会議が始まる。みんなも参加して、いろいろ意見を出してくれ」

 新たな村づくり。やることがいろいろありそうだ。
しおりを挟む
感想 1,145

あなたにおすすめの小説

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

腹違いの妹にすべてを奪われた薄幸の令嬢が、義理の母に殴られた瞬間、前世のインテリヤクザなおっさんがぶちギレた場合。

灯乃
ファンタジー
十二歳のときに母が病で亡くなった途端、父は後妻と一歳年下の妹を新たな『家族』として迎え入れた。 彼らの築く『家族』の輪から弾き出されたアニエスは、ある日義母の私室に呼び出され――。 タイトル通りのおっさんコメディーです。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  お気に入り・感想、宜しくお願いします。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。