大自然の魔法師アシュト、廃れた領地でスローライフ

さとう

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新たな開拓

第651話、まずはどんな種族か①

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 さて、開拓をすることは決まったが……それ以外は何も決まっていない。
 種族の代表たちも仕事があるし、まずは俺が大雑把な計画を立て、ディアーナに見てもらい、種族の代表たちに見てもらい、決定する方式となった。
 というわけで、しばらく薬師はお休み……ココロには負担をかける。

「問題ありません。私、先生がどんな村を作るのか興味あります!!」
「はは。ココロも薬師として成長したし、新しい村ができたらそこで薬師をやってもらおうかな」
「え……」
「……ん。なんとなく言ったけど、いいかも」
「えええええ!? でで、でもでも、わたし、まだ未熟で」
「いや、わかってるよ。それを言うなら俺だって未熟だ。新しい村はそう遠くない場所に作るし、いざとなったら俺を呼んでもいい。ココロ専用の温室を作るのもいいな。薬院も、ココロの好みで作らせるか」
「……っ」

 ココロの表情、不安三割、ワクワク四割、ドキドキ三割ってところか。
 っと……その前に、確認しないといけない。

「な、ココロ」
「は、はい」
「俺はさ、ココロをオーベルシュタインに縛り付けるつもりはない。俺から学ぶことが無くなったら、オーベルシュタインを出て勉強するのもいい。広い世界を知りたいなら、止めるつもりはないぞ」
「せ、先生……」
「ま、考えといてくれ」

 人生は長い。ココロが俺から卒業したら、薬師を目指している子をまた弟子にすればいい。
 そうやって、薬師を目指す子が増えて、住人の健康につながれば、それでいい。

「先生!!」
「うおっ」
「私、やりたいです!! 新しい村ができたら、そこで薬師をやりたいです!!」
「いや……そんなすぐ答えを出さなくても。悪い、そんなつもりじゃ」
「違うんです!! 先生、言いましたよね? 広い世界を知りたいなら、って……私にとってはここが、オーベルシュタインが広い世界なんです。知らない病気、本、薬草、薬……学園だけじゃ学べないことがたくさんありました。だから、先生から学んだことを活かして、自分なりにやってみたい……生意気ですけど、そんな風に考えてたんです」
「……ココロ」
「もちろん、先生からまだまだ学びたいです。これからもご指導、よろしくお願いします!!」

 ココロはガバッと頭を下げた。
 これは本気だな。なら、止める理由はない。

「わかった。新しい村が完成したら、ココロを薬師として常駐させる。俺も見たことがない種族だから、最初は手間取ると思うけど」
「はい!!」

 というわけで……新しい村が完成したら、ココロを薬師として常駐させることになった。

 ◇◇◇◇◇
 
 さて、開拓のために必要なのは土地だ。
 緑龍の村から近い場所が理想だ。そして、住むのに適した土地であること。
 まず、水……そして、大地。
 来る種族はわかっているけど、その種族が住むのに適した地にしないといけない。他にも、緑龍の村から出て、新しい村に住みたいって住人も出るかもしれないしな。
 まず、緑龍の村が使っている川の近くはダメだ。
 村ではけっこうな量の水を使用している。同じ川の水だと、川が使えなくなった時に、二つの村で水が使えないなんてことになる。
 なので、水源は別なところから。

「うーん。水源から遠くなるなぁ……」

 俺は、薬院の自室にこの辺り一帯の地図を広げる。
 この地図、ドワーフたちが街道を広げるついでに、コツコツと描いた地図だ。人狼族、ハイエルフの里、エルダードワーフの穴倉などの位置が正確に記されており、川や山なども正確に書かれている。
 緑龍の村を通る川が一番大きく長い。
 
「にゃあ。ご主人さま、お茶ー」
「おっと、ミュアちゃんか」

 ミュアちゃんがお茶を淹れに来てくれた。
 地図はそのままに、ソファへ座る。
 ミュアちゃんはカーフィーを淹れ、俺の前に置いてくれた。

「にゃ……ご主人さま、これは?」
「これは地図だよ。近く、新しい村を作ることになってね」
「にゃあ!! 楽しみ」
「あはは。楽しみにしててね」
「にゃう。ご主人さま、村ってことは、また誰かくるの?」
「うん。この村にはもう、人は増やしづらいんだ。だから、新しい村を作って、みんなそこで住めるようにしようと思ってね」
「にゃー……どんな人たち?」
「えーと、巨人族、小人族、白猫族、幽鬼族って人たちだよ」

 人かどうかわからん種族もいるけど。
 幽鬼族って絶対怖そうだな。

「にゃ、しろねこ……」
「ふふ、どんな人たちだろうね」

 カーフィーを飲む……ふぅ、この苦みがたまらん。

「にゃあ。どんな人か会ってみたいー」
「……ふむ」

 今さらだが、確かにその通りかも。
 そもそも、どんな人たちが来るのか。どんな暮らしをして、どんな生活をしてるのか。
 いきなり村を作って「じゃ、ここに住んでいいですよ」ってのは違うな。
 土地のことを考える前に、移住希望種族に会うべきかな。

「よし、決めた……ありがとうね、ミュアちゃん」
「にゃあぅー」

 ミュアちゃんの頭を撫で、ネコミミを優しく揉んだ。
 さて、そうと決まれば……ディアーナのところへ。

 ◇◇◇◇◇

 ディアーナに「どんな種族が移住希望か会いたい」と言い、まずは『小人族』に会うことにした。
 村に呼ぶのもいいけど、実際にどんな暮らしをしているのか、こちらから出向くことに。
 小人族が住んでいるのは、村から徒歩一日くらいのところにある岩場だ。
 さっそく、俺とエルミナ、シオン、ディアーナ、護衛にバルギルドさんを行く。
 到着したのは、岩石地帯……初めて来たぞ、こんな場所。

「なんか、発掘現場みたいね……」

 岩が散乱した場所だ。魔獣のねぐらみたいだぞ。
 シオンが鼻をスンスン鳴らすと、俺の背中をバシバシ叩く。

「なんか匂う。甘い匂いだ……それと、火の匂い」
「わかるのか?」
「ああ。アタシ、鼻が利く」

 勝手についてきたシオンだけど、けっこう役に立ってる。
 ディアーナは、バルギルドさんからセントウ酒を受け取ると、蓋を開けて中身を少し零した。
 おいおい、もったいない。

「ちょ、もったいない!!」
「いいのです」

 エルミナが抗議するが、しれっと言うディアーナ。
 すると、バルギルドさんが「む」と何かを察知。
 俺もそちらの方を見ると……何か、いた。

「おお、酒、酒の匂い。お酒の匂いがするぞ!!」
「…………」

 足元に、小さな人がいた。
 いや、小さい。
 村で一番小さいのは花妖精たちだけど、フィルたちは人じゃなくて妖精だ。
 今、岩陰から見えているのは、全長三十センチほどのヒトだった。

「あ!! 黒い眼鏡のヒトだ!!」
「眼鏡、眼鏡!!」
「黒い!! 黒い眼鏡!!」

 おお、いっぱい出てきた。
 三十センチくらいのヒトたちがわらわらと。
 黒い眼鏡……ああ、ディアーナのことか。
 ディアーナは「こほん」と咳払いをして、小人たちのリーダー格に言う。

「マホマホさん、先日の件で話をしに来ました」
「おお!! 移住、移住!! 我らの畑!! ようやくできるっ!!」
「落ち着いてください。こちら、緑龍の村の村長、アシュト様です。本日は、皆様に移住に関しての質問をしに来ました」
「おお、おお!! 噂、噂の、噂の村長!!」
「「「噂の村長!! 噂の村長!!」」」

 な、なんかノリノリなヒトたちだな。
 俺はしゃがむが、それでも小人族たちを見下ろすようになってしまう。ポンタさんたちよりも小さいな。

「初めまして。俺はアシュトです。村長やってます」
「マホマホ、マホマホ!! わっしはマホマホ!! みんなのリーダー!!」
「ど、どうも」

 握手……というか、俺が人差し指を出すと、マホマホさんが指を握る。
 マホマホさん。小さいけどでっぷりしたお腹、髭顔、ニコニコした表情をした、優しそうなヒトだ。着ているのはモコモコした羊の毛で編んだ上着で、帽子はなんと葉っぱで作ってある。
 他の人も、似たような感じだ。

「えーと、本日は移住に関して、話をしに来ました」
「おお、おお!! なんでも言っておくれやすっ!!」
「は、はあ……」

 ディアーナにバトンタッチ。
 ディアーナは移住の許可、そして移住に関しての希望を聞く。

「畑、畑!! わっしら畑が作りたいっ!!」
「畑?」

 疑問符を浮かべるとディアーナが言う。

「小人族は、野菜のスペシャリスト。彼らに育てられない野菜はないと言われています」
「おお、それはすごい」
「もちろん、もっちろん!! みんなに野菜をおっすそわけ!!」
「「「「「おっすそわけ!!」」」」」

 なんなんだこのノリは……シオンとか「うるさいこいつら」とか言ってネコミミ閉じちゃうし。
 まぁ、楽しそうで何より。
 他に話を聞くと、家は小さめで、二階など昇り降りが苦手なので平屋を希望。そして何よりも畑をたくさん作ってほしいとのことだ。
 畑か。新しい村でも、やっぱり必要……というか、彼ら小人族に任せておけば安心だな。

「わかりました。では、村が完成したらまた来ますので、それまでお待ちください。ああ、村の建築が始まったら、何名かご意見を伺うため、同行を願います」
「まっかせろ、まっかせろ!!」
「「「「「フーフー!! フーフー!!」」」」」

 とりあえず話し合いは終わった。
 小人族……なんとも、ノリノリな人たちだった。
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