大自然の魔法師アシュト、廃れた領地でスローライフ

さとう

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新たな開拓

第652話、まずはどんな種族か②

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 小人族に会った帰り、巨人族の集落が近いので寄ることに。
 道中、バルギルドさんが言った。

「巨人族か……」
「知り合いですか?」
「いや……巨人というからどのような種族か会いに行ったことがある。だが……」
「?」
「まぁ、自分の眼で確かめることだ」
「は、はあ」

 思わせぶりぃ……なんか気になってきた。
 歩くこと数時間。ディアーナが広げた地図を見ると、どうやら近いらしい。
 シオンは匂いをクンクン嗅ぐ……黒猫なのに犬みたいだな。

「……よくわからん」
「あんたもわかんないの?」
「匂いはするけど、なんか薄い……?」

 シオンが首を傾げ、エルミナも「なにそれ?」と首を傾げる。
 エルミナも知らない種族なのか?

「私にだって知らないことくらいあるわよ」
「そうなのか。村で最高齢の「あ?」……なんでもない」

 危ない危ない。エルミナ、最高齢って言うとキレるんだよな。
 俺はピンときてディアーナに言う。

「というか、巨人族っていうくらいだし、デカい住処なんじゃないのか?」
「闇悪魔族も交流がないので詳細は不明です。そういえば、不自然なくらいデータがない……ふむ」
「ん……おい、ニオイが強くなった。あっちだ」

 シオンに腕を引かれて先へ進むと───……あった。
 小さな集落だ。家というか、ボロのテントがいくつか並び、そこで色白の細い人たちがいる。

「ちょうどいいや。ここの人たちに、巨人族のこと聞いてみるか」

 俺はお土産のお酒を何本か出し、近づいてみた。
 すると、俺に気付いた色白の男性がビクッとする。

「ひっ……どど、どちら様でしょう?」
「こんにちは。えっと……少々、伺いたいことがありまして」
「は、はい……恐縮です」

 こ、腰低いな……ペコペコ頭下げてるし。
 というか、みんな色白いな。身体つきも貧弱だし……こんな言い方はアレだが、ガチムチ褐色のバルギルドさんと完全な対になってる。色白青ビョウタン……すまん失礼だよね。 
 すると、男性がビクビクしながら言う。

「な、なんでしょうか……?」
「えーと、この辺りに『巨人族』がいると伺いまして」
「は、はい……何用でしょうか?」
「はい。自分、緑龍の村から来たアシュトと申します。移住希望があると聞いて、巨人族がどのような種族なのかを見に来たんです」
「そ、そうだったのですか……恐縮です」
「はい。差し支えなければ、巨人族の方たちがどこに住んでいるか、お聞かせいただければ」
「え、ええと……その、ここです」
「え?」
「その、我々が巨人族です……も、申し訳ございません」
「…………え」

 きょ、巨人族……だよな?
 俺に向かってペコペコ頭を下げる男性を見て、首を傾げる。
 ディアーナを見るが、同じような反応だった。
 すると、バルギルドさんが言う。

「……間違いない。彼らは巨人族だ」
「え……」
「きょ、恐縮です。その……お、長を呼んできます」

 男性は、ペコペコしながら行ってしまった。
 数分後、頭頂部が禿げ上がった顔色の悪い男性が急ぎ足でやってきて、ペコペコ頭を下げる。

「遠路はるばるご苦労様です。いやはや、村長様自らお越し頂けるとは……恐縮です」
「恐縮です……」

 男性と、長がペコペコ頭を下げる。
 なにこの低姿勢……ってか、本当に巨人族なのか? 男性とか俺より身長低いぞ。
 シオンは完全に興味を失い、エルミナも欠伸してる。
 ディアーナは確認した。

「あの……巨人族、ですよね?」
「は、はい。恐縮です……」
「…………その、申し訳ございません。私の認識が間違っていたようです。巨人族はその、もっと大きいと想像していたので」
「きょ、恐縮です……」

 ディアーナと話し始めている男性と長。
 バルギルドさんが俺に言う。

「これが巨人族だ。闘争心の欠片もない、ひたすら謝り、機嫌を伺う……正直、ここまで卑屈な種族は好かん。自分たちを巨人族と思い込んでいる種族かと疑ったぞ。一度会っただけでオレは帰って来た……闘う気になど、到底なれなかった」
「で、ですよね……」

 取っ組み合いになったら俺でも倒せそうだ。
 すると、長が薄い頭髪を気にしながら言う。

「し、信じられないのもわかります……巨人族とは名ばかりの、貧弱で……で、でも。本当なんです。えーっと……タカオミくん、頼む」
「は、はい……恐縮です。では……」
「「「「?」」」」

 と、男性……タカオミさんがシャツを脱ぐ。
 ガリヒョロというのに相応しい身体だ。青白く、あばらが浮き出てる。腕とか俺よりも細い。
 すると、タカオミさんの眼がギョロっと光り、身体が膨張を始めた。

『ウォォォォォォォ……』

 モコモコモコと、肉が盛り上がり、体毛が伸び、一気に五メートルほど巨大化した。
 見た目は完全な魔獣。厳つい顔つき、口から伸びた牙、丸太を重ねたような腕と足、ムッキムキの身体。目は真っ赤に輝き、とんでもない威圧感があった。
 なになになになに、なにこれ? 

「ななな……え、えぇ!?」
「きょ、恐縮です……その、これが本当の姿でして」
『キョ、恐縮デス……』

 巨大で、筋骨隆々な魔獣猿。それが巨人族の真の姿。
 魔獣猿となったタカオミさんは、その巨体でペコペコ頭を下げていた。
 バルギルドさんが恐い顔をしている。

「素晴らしい……くくっ、なかなか楽しめそうだ」
「あの、バルギルドさん」
「わかっている。だが……長よ、なぜこれほどの力を隠す?」
「え、ええと……その、確かに我々の真の姿は強力です。ですが……見ての通り、この巨体です。オーベルシュタインではほぼ敵なしと言われましたが……その、我々は争いが苦手で、しかも大食らいなので、オーベルシュタインの生態系に影響を与えるほどになってしまって……それで、神話七龍の一体、賢龍ジーニアスに相談したところ、身体を小さくする魔法をかけてもらい、普段はこの姿で生活をしています」
「……なんと」

 もったいない。バルギルドさんはそう言おうとしたのか、でも言わなかった。 
 というか、ジーニアス様にアドバイスもらってたのか。
 
「あ、申し遅れました。私、巨人族の長ヒデユキと申します。あの、移住の件について、どうかよろしくお願いします」
「は、はい……」
『ヨ、ヨロシクオ願イシマス……恐縮デス』

 タカオミさんも、巨体のまま頭を下げた。

 ◇◇◇◇◇◇

 話を聞くと、巨人族は温厚な種族。本当は魔獣や動物を狩るのも好きじゃないとか。
 森の果物や木の実を食べて生活し、襲い掛かってくる魔獣だけを倒して食べていたとか……今更だが、とんでもないギャップだな。
 移住希望の理由は、安定した生活が欲しいから。他の種族たちと仲良くして、料理やら農業の技術を覚え、自分たちの生活を豊かにしたいとか。
 ちなみに、普段はガリガリヒョロヒョロだが、パワーなどは巨人族のままらしい。

「……面白い。一度、勝負をしよう」
「ひっ……」
「村長、いいか?」
「えーと……個人的にはすごく興味ありますけど、さすがに喧嘩は」
「いや、喧嘩ではない。単純な力比べだ」

 バルギルドさんは近くの木を真横に伐採。いい感じの高さになった切り株に腕を置いて構える。

「腕相撲か。これなら……あの、ヒデユキさん、いいですか?」
「ま、まあ……遊びなら。タカオミくん、いいですか?」
「わ、わかりました……では」

 切り株はこのままだとすぐ壊れそうなので、俺の魔法で補強した。
 バルギルドさんとタカオミさんが腕をがっしり組む。いや……腕の太さ、ぜんっぜん違うな。これ勝負にならないんじゃ……へし折れるぞ。
 すると、面白がったエルミナが間に立つ。

「じゃ、準備はいい? 力抜いて~───……ファイッ!!」
「「───ッ!!」」

 ブォン!! と、二人の立つ地面に亀裂が入った。

「ぬ!? っぎ、ッグ、ググ……ッ!!」
「ひ、っひぃぃぃ!?」

 ば、バルギルドさんが、こんな必死に歯を食いしばってるなんて……初めて見た。
 汗を流し、プルプル震え、徐々に、徐々にタカオミさんの腕を倒していく。

「つ、強いっ……う、うぅぅ」

 た、タカオミさん……あんた、全然普通じゃん。
 汗も掻かず、プルプル震えつつもバルギルドさんの力に耐えている。
 なにこの余裕……マジか。
 それから、なんと一分もタカオミさんは耐え、ようやく決着。
 バルギルドさんは大汗を流し、驚いたようにタカオミさんを見た。

「いやぁ、負けました。恐縮です……」
「……あ、ああ」

 と、とんでもないぞ……やっぱ巨人族ってすげえ。
 こうして、巨人族の挨拶を終えた。
 ディアーナが移住に関しての説明をしたり、希望を聞いたけど、小人族とは仲良くやれそうだと笑っていた。
 低姿勢すぎる巨人族に、テンションが高い小人族。意外と仲良くやれそうかも。
 帰り道、バルギルドさんはプルプル震える自分の腕を見て呟いた。

「フ……巨人族か。オレもまだまだだな」

 バルギルドさん以上のパワーを持つ巨人族か。本当に驚いたよ。
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