大自然の魔法師アシュト、廃れた領地でスローライフ

さとう

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新たな開拓

第657話、新たな村づくり

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 久しぶりの大仕事ということで、新たな村の建築地にエルダードワーフたち五十人と、資材運びのサラマンダーたち五十人、護衛兼森林伐採のバルギルドさん、ディアムドさん、調理係として銀猫十人、そして新たに村に住む小人族、巨人族、幽鬼族、白猫族の代表たちを連れてやってきた。
 新たな地に到着!! というが……当然、何もない。
 木々が生い茂り、地面も硬く、ただの森のど真ん中だ。
 俺は建築班リーダーのアウグストさんに聞く。

「さて、まずはやっぱり」
「木々をぶっ倒すことだろうな。大まかな建築計画はある。まずはこの地をまっさらにすることから始めるぞ。おいバルギルド、ディアムド、出番だぜ」
「うむ」
「狩り以外の仕事は久しぶりだ」

 二人はオリハルコン製の大戦斧を肩に担ぎ、首をコキコキ鳴らす。
 そして、斧を思い切り振ると、大木が一太刀で切り落とされ、巨木が倒れた。

「フン!! フン!! フン!!」
「ゼア!! セイ!! ハァッ!!」

 轟音が響くたびに、巨木が切り落とされる。
 アウグストさんは、エルダードワーフたちに向かって叫んだ。

「野郎ども!! それぞれの役割はわかってんな!? 久しぶりの大仕事、気合い入れていくぜ!! 今日飲む酒は美味いぞぉ!!」
「「「「「オォォォォゥ!!」」」」」

 サラマンダーたちが荷物を降ろし、鋸やカンナなどを出し、エルダードワーフたちに渡していく。
 すると、合図もなくそれぞれ動き出した。
 俺はアウグストさんに聞く。

「あ、あの……図面とか見なくていいんですか?」
「全員、どこにどの家を、どんな建築物を作るかココに全部入っちょるわ」

 アウグストさんは、頭を指でトントン叩く。
 サラマンダーたちが倒された木を運び、エルダードワーフたちが加工を始める。サラマンダーたちはさらに分かれ、切り株を引っこ抜いたり、熱気で木材を乾燥させたりしていた。

「巨人族、小人族、白猫族の家族構成や住む人数も頭に入っちょる。予備の住居もいくつか、それと村長用の家や、会議用の家、宿屋、種族が集まるための家も建てる。ま、この人数なら三日ってところだな」

 と、軽く喋っている間に、小屋が一軒できた。

「……あの小屋は?」
「銀猫たちが休む家だ。泊まり込みになるんだろ? 若けぇ女に野宿させるわけにはいかんだろ」

 気遣いのプロだ……。
 銀猫たちが来たのは、料理を作ったりみんなの世話をしてもらうためだ。アウグストさんは「三日で村を作る」なんていうが、その間にも食事などは当然必要になる。
 銀猫たちのリーダーはオードリーだ。さっそく小屋に入るなり荷物を出して仕込みを始める。
 こんな風に喋っている間に、もう数軒の基礎工事が終わっていた……は、早すぎるだろ。

「あ、あの~……村長」
「あ、はい」

 タカオミさんが申し訳なさそうにペコペコ頭を下げる。

「その、私たちにも何か手伝えることがあれば……きょ、恐縮です」
「いらん」
「え」
「わりーな。ワシらに任せて、あんたらは引っ越しの準備でもしてな。ククク、久しぶりの大仕事でな、全員楽しくて仕方ねぇんだ」
「は、はあ……きょ、恐縮です」

 アウグストさんは上機嫌だ。
 とりあえず、建築は任せていいだろう。

「村長、村長、そっんっちょう!!」
「え、あ、はい」
「畑、畑、はったっけ!! みんなの畑はどっこかな?」
「「「どっこかな?」」」

 マホマホさんと、仲間の小人族たちが踊りながら言う。
 俺は図面を広げて言う。

「えーと、今いるここが居住区なので、ここの伐採が終わったら川までの道を作るため木を伐採します。で、川の近くに畑を作りますので……整地が終わるまでお待ちください」
「オッケーオッケー!! オッケーオッケー!!」
「「「オッケーオッケー!! オッケーオッケー!!」」」

 うーん、この人たちほんと楽しそうだな。
 さて、ここらで新しい村について軽く説明する。
 まず、中心地に居住エリアを作る。ここは幽鬼族以外の三種族が住まう家を建てる。
 そして、その周囲に畑、墓地を作る。墓地は幽鬼族の家でもある墓石を置き、畑は小人族の希望で、一つの村が丸ごと入るくらい大きな畑を作ることになった。
 白猫族たちは、小人族の手伝いをすることが決まっているので、白猫族たちの居住エリアには空き家を多く作り、いざという時の避難所兼、ほかの種族が来た時に入ってもらう家になる。
 家の建築は三日で終わる……とんでもない速度だけど、エルダードワーフたち、サラマンダーたち合わせて百人もいればあっという間に終わりそうだ。

「みゃうー」
「ん……って、ルミナか」
「おい、こいつをなんとかしろ」
「ふにゃあ」
「し、シロネちゃん? ハクアさんは?」

 シロネちゃんは、ルミナにぴったりくっついて甘えていた。
 ハクアさんを探すと、銀猫たちの手伝いをしている。どうやら一緒に来たはいいが退屈なようだ。
 今更だけど、ルミナは当たり前のように付いてきてるし……まぁいいや。

「ルミナ、シロネちゃんの面倒、ちゃんと見てくれよ」
「なんであたいが……」
「俺は川の様子を見に行くから。行くぞウッド」
『オー!!』

 俺に付いて行こうとするルミナだが、シロネちゃんが甘えているため、仕方なくカバンからクッキーを出し、一緒に座って食べ始めていた……ふふ、お姉さんしてるじゃないか。
 俺はウッドと一緒に、建設地から少し離れた川へ。
 なかなかの流れだ。緑龍の村とは関係のない流れの川だ。仮にここが枯渇しても、緑龍の村には影響がない。

「おっ、魚が跳ねてるぞ」
『ホントダー!!』
「ふふ、綺麗ねぇ」
「ええ。ってシエラ様!?」
「ちゃお~」

 すると、川べりにシエラ様がいた。
 素足を際どいところまで見せ、川に足を浸けている……う、足ほっそ、真っ白。

「うふふ♪ アシュトくんってば……気になるなら、見てもいいのよ♪」
「え、遠慮します……」

 相変わらずなお姉さんだ。俺は軽く咳払いする。
 すると、シエラ様は川の水を軽く蹴り、ぱしゃっと水が跳ねた。

「アシュトくん、新しい村を作るのね」
「え、ええ。新しい種族をお迎えしたので」
「そう。ふふふ、ますます発展しちゃうのねぇ……楽しくなるわぁ♪」
「そうですね……緑龍の村に受け入れるのはもう限界が近かったので、だったら近くに村を一つ作ろうってことになったんです」
「そっかぁ。じゃあ、新しい名前も考えなきゃね」
「名前……?」
「ええ。あ、そうだわ。アシュトくんにいいこと教えてあげる」
「はい?」

 シエラ様は川から上がると、地面から根っこが生えてきて足に絡みつき、サンダルのようになった。
 ウッドが『オオー!』と言って真似をし、自分の足にサンダルみたいに根っこを伸ばす。

「この近くに、龍神族の国があるの。アンくんが祖じゃない、オーベルシュタインの龍神族ね」
「………………は、はい?」
「ルシファーくんも知らない龍神ね。『神龍皇王ゴッド・ゼウス・ドラゴン』トルトニスくんが治める国。一度、挨拶に行くのもいいかもねぇ~」
「……ど、ドラゴン? え、ろ、ローレライたちは知ってるんですか?」
「ううん、知らないと思うわ。あそこは閉鎖的な国だし、領地全体に結界が張られているから、誰も気づいてないわねぇ」
「そ、そんな……ど、ドラゴンロード王国以外にも、龍人の国があったなんて」

 当然、俺は疑わない。だってシエラ様が嘘つくわけないしな。
 すると、シエラ様が「あら?」と川を見た。

「ふふ、噂をすれば」
「へ?」

 すると、川の水がいきなり爆発的に盛り上がった。
 そして、水の形がドラゴンの頭になり、長い首がニューっと伸び、俺たちの前へ。
 透き通った、水のドラゴン。すごい、こんなの見たことないぞ。

『お久しぶりです、シエラ様』
「やっほ~、レヴィちゃん」
『少しあたりが騒がしく、様子を見に来たら……これは一体?』
「ふふ、近くで村づくりをしてるんですって。ね、レヴィちゃんも見学に来ない?」
『し、しかし……私は、偵察だけで、すぐ報告に戻らねば』
「じゃあ、ここにいるアシュトくんのこと、報告しておいてくれない?」
「え」
『え? そこの人間───……この感じ、ただの人間ではありませんね』

 水のドラゴンは、透き通った頭を俺に向ける。
 不思議と恐怖はない。ローレライやクララベルとは全く違ったタイプの龍人だ。
 すると、龍人は少しずつ小さくなり、俺の前で人間の姿になる。

「…………まさか、この人間」
「ふふ、大正解。この子はアシュトくん。私の眷属で~すっ♪」
「ば───……馬鹿な!? に、人間に……ムルシエラゴ様の力を!?」
「うん。アシュトくんなら、私の力でオーベルシュタインをより良くしてくれそうだったから」
「……我が主、トルトニスが聞いたらどう反応するか」
「レヴィちゃん。トルトニスくんもきっと、アシュトくんを気に入るわ♪」
「…………くっ」

 レヴィ。
 青いショートヘアに、水色の着物、目の色も青い十六歳くらいの少女だ。
 俺を見てムスッとし、顔を近づける。

「私は、『ドラゴンエイジ森国』偵察部隊長、『水漣龍メイルシュトロム・ドラゴン』レヴィ……貴様、アシュトと言ったな?」
「は、はい……」
「お前の名、我が主に伝えておく……連絡を待て」
「え、ええっと」

 それだけ言い、レヴィは川に飛び込んだ。音もなく着水し、水の波紋すら起こさず消えた。
 いきなりのことで唖然としていると、シエラ様が困ったように言う。

「ん~……もしかしたら、面倒なことになっちゃうかも♪」
「し、シエラ様……マジで勘弁してください!!」

 当然のことだが、とんでもないことになるのだった。
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