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第一章
終わった後に残ったもの
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一部始終を見ていた職員室は、静まり返っていた。
A級召喚士リリーシャと『暴食』の魔人アベルの戦いが始まると思ったや否や、死んだはずのF級召喚士が立ち上がり、得体の知れない召喚獣を召喚。圧倒的な力で魔人を滅ぼしたのだ。
教師ファルオは、召喚獣ホルスの『感知投影』能力を解除する。
ホルスの目が光り、映像として出力されていたのが切れた。
「……今のは、一体」
この質問、疑問に答えられるのは誰もいない。
オズワルドは、顎に手を当ててしばし考え込む。そして、一つの答えを出した。
「まさか───「そう、『寄生型』じゃよ」───校長」
職員室の入口に、メテオールが立っていた。
魔人襲来の危機に急ぎ戻ってきたのだが……全て意味がなかった。
アルフェンが、魔人を滅ぼしてしまったから。
だが、それよりも気になることがあった。
ファルオが、メテオールに質問する。
「寄生型とは、もしや……」
「そうじゃ。あの少年……アルフェンと言ったか。あの少年の真の召喚獣じゃな」
「寄生型……やはり」
オズワルドも同じ答えに達した。
確認するように、メテオールに質問する。
「校長。寄生型召喚獣は世界でたった三人しかいないはず」
「そうじゃな。つまり、アルフェン少年が四人目じゃ。彼は右腕に召喚獣を寄生……いや、右腕そのものが召喚獣となった存在じゃ」
「馬鹿な……寄生型」
「だが、あれほどの身体能力。通常の人間ではあり得ん」
召喚獣には、さまざまなタイプがある。
その名の通り『獣』を召喚し、召喚士が命令を出す『相棒型』。
剣や盾などの武器を召喚し、召喚士そのものが戦う『装備型』。
気体や炎など、自然の物を媒介として召喚される『自然型』など、種類は大きく分けて三種類。
三種類の枠に分類されない召喚獣を『特殊型』と呼び、その中でも特に珍しい、召喚獣と召喚士の歴史が始まってから三人しか確認されていないのが『寄生型』なのだ。
オズワルドは、メテオールに質問する。
「しかし、あの……アルフェン? あの少年の召喚獣は『愛玩型』……大した能力のないクズ召喚獣でした。どういう理由で」
オズワルドの呼吸が一瞬止まった。
メテオールから、恐るべき重圧を感じたからだ。
「クズ、召喚獣?」
「あ、いや……し、失言でした」
「……『寄生型』は三人しか確認されておらん。アルフェン少年の命の危機に覚醒したのか、召喚獣の真の姿が寄生型だったのか。だが、今はそれどころではない。皆の者、やるべきことをやるのじゃ」
「は? ……やるべきこととは?」
オズワルドの『意味がわからない』という表情に、メテオールの目元がぴくっと動いた。
「……ファルオくん。あとはキミに任せる」
「え、あ、はい! えーと。よし、人数を分けてF級教室に行く。負傷者の救護と……死者の回収を。クラス受け持ちの先生は生徒を教室で待機させるように!」
ファルオの命令で教師たちは動きだした。
オズワルドは、ぽかーんとしたまま動かない。そこに、メテオールが言う。
「キミは、本当に召喚獣しか見ておらぬのだな」
「…………」
その声色は、明らかな失望の色を含んでいた。
◇◇◇◇◇◇
「…………」
アベルを消滅させて一分……アルフェンは右腕の力を抜くと、右腕が人の腕に戻った。
同時に、右半身を侵食していた黒い皮膚も治り、右目の色も元に戻る。
「……ありがとな、モグ」
右手を開き、閉じる。
試しにモグを召喚……できなかった。ただ、右腕となったモグは生きている。アルフェンはそう感じ、右手を自分の頬に這わせた……少しだけ、涙が出そうになった。
「おい」
「…………」
アルフェンは、半壊した校舎を眺める。
アベルのせいで、F級校舎は半分がなくなった。地面も更地になり、アルフェンが拳を叩き付けたクレーターが痛々しくのこっている。
少し休んだら埋めなくては……その前に。
「……みんな」
「聞いているのか、お前」
まず、仲間の死体を弔わなければならない。
家族の元へ送り返さないといけない。損傷の激しい死体もあるし、早く処理せねば傷む。
だが、アルフェンにそんな知識はない。さすがに教師が動くと信じたい。
「お前、聞いているのか」
「…………」
アルフェンは、声を無視して歩きだした。
もしかしたら、初めてかもしれない……姉のリリーシャが、話しかけてくることなど。
だが、アルフェンはすでに姉と思っていない。アベルの襲来時、助けようともしなかった人間なぞ、肉親だなんて思えなかった。
「貴様、なんだその腕は? 召喚獣……なのか?」
「…………」
「質問に応えろ」
「黙れ」
「…………今、なんと?」
不思議と、アルフェンに恐怖はなかった。
何もせず傍観し、救える命を救おうとしないA級召喚士なんて、アルフェンにとってアベルと同じくらい醜く、頭にくるものだった。
「戦いもしないクズが。何がA級だ……失せろ」
「…………」
リリーシャの額に青筋が浮かぶ。
すると、ファルオを中心とした教師たちが到着した。
ファルオは、アルフェンとリリーシャに話しかける。
「遅れて済まなかった。ここからは私に任せなさい。リリーシャくん、生徒たちに指示をして教室待機を命じて。アルフェンくん、きみもまずは休んでくれ」
「わかりました……」
「わかりました。じゃ」
アルフェンは、寮に戻ろうと歩きだす。
戻るには、リリーシャが引き連れていたB級生徒を横切らないといけない。だが、アルフェンはそんなことどうでもよかった。
「あ、アルフェン……」
「…………」
フェニアが、申し訳なさそうにアルフェンを見ていた。
だが、アルフェンはその視線を無視。救いを求めた視線を逸らされた時点で、アルフェンとフェニアの関係は変わっていた。
アルフェンは、生徒たちの視線を無視し……誰もいなくなったF級生徒寮へ。
四人部屋の、自分のベッドに身を投げだすと、そのまま眠ってしまった。
こうしてアルフェンは……クラスメイトを失い、新たな右腕を手にいれた。
A級召喚士リリーシャと『暴食』の魔人アベルの戦いが始まると思ったや否や、死んだはずのF級召喚士が立ち上がり、得体の知れない召喚獣を召喚。圧倒的な力で魔人を滅ぼしたのだ。
教師ファルオは、召喚獣ホルスの『感知投影』能力を解除する。
ホルスの目が光り、映像として出力されていたのが切れた。
「……今のは、一体」
この質問、疑問に答えられるのは誰もいない。
オズワルドは、顎に手を当ててしばし考え込む。そして、一つの答えを出した。
「まさか───「そう、『寄生型』じゃよ」───校長」
職員室の入口に、メテオールが立っていた。
魔人襲来の危機に急ぎ戻ってきたのだが……全て意味がなかった。
アルフェンが、魔人を滅ぼしてしまったから。
だが、それよりも気になることがあった。
ファルオが、メテオールに質問する。
「寄生型とは、もしや……」
「そうじゃ。あの少年……アルフェンと言ったか。あの少年の真の召喚獣じゃな」
「寄生型……やはり」
オズワルドも同じ答えに達した。
確認するように、メテオールに質問する。
「校長。寄生型召喚獣は世界でたった三人しかいないはず」
「そうじゃな。つまり、アルフェン少年が四人目じゃ。彼は右腕に召喚獣を寄生……いや、右腕そのものが召喚獣となった存在じゃ」
「馬鹿な……寄生型」
「だが、あれほどの身体能力。通常の人間ではあり得ん」
召喚獣には、さまざまなタイプがある。
その名の通り『獣』を召喚し、召喚士が命令を出す『相棒型』。
剣や盾などの武器を召喚し、召喚士そのものが戦う『装備型』。
気体や炎など、自然の物を媒介として召喚される『自然型』など、種類は大きく分けて三種類。
三種類の枠に分類されない召喚獣を『特殊型』と呼び、その中でも特に珍しい、召喚獣と召喚士の歴史が始まってから三人しか確認されていないのが『寄生型』なのだ。
オズワルドは、メテオールに質問する。
「しかし、あの……アルフェン? あの少年の召喚獣は『愛玩型』……大した能力のないクズ召喚獣でした。どういう理由で」
オズワルドの呼吸が一瞬止まった。
メテオールから、恐るべき重圧を感じたからだ。
「クズ、召喚獣?」
「あ、いや……し、失言でした」
「……『寄生型』は三人しか確認されておらん。アルフェン少年の命の危機に覚醒したのか、召喚獣の真の姿が寄生型だったのか。だが、今はそれどころではない。皆の者、やるべきことをやるのじゃ」
「は? ……やるべきこととは?」
オズワルドの『意味がわからない』という表情に、メテオールの目元がぴくっと動いた。
「……ファルオくん。あとはキミに任せる」
「え、あ、はい! えーと。よし、人数を分けてF級教室に行く。負傷者の救護と……死者の回収を。クラス受け持ちの先生は生徒を教室で待機させるように!」
ファルオの命令で教師たちは動きだした。
オズワルドは、ぽかーんとしたまま動かない。そこに、メテオールが言う。
「キミは、本当に召喚獣しか見ておらぬのだな」
「…………」
その声色は、明らかな失望の色を含んでいた。
◇◇◇◇◇◇
「…………」
アベルを消滅させて一分……アルフェンは右腕の力を抜くと、右腕が人の腕に戻った。
同時に、右半身を侵食していた黒い皮膚も治り、右目の色も元に戻る。
「……ありがとな、モグ」
右手を開き、閉じる。
試しにモグを召喚……できなかった。ただ、右腕となったモグは生きている。アルフェンはそう感じ、右手を自分の頬に這わせた……少しだけ、涙が出そうになった。
「おい」
「…………」
アルフェンは、半壊した校舎を眺める。
アベルのせいで、F級校舎は半分がなくなった。地面も更地になり、アルフェンが拳を叩き付けたクレーターが痛々しくのこっている。
少し休んだら埋めなくては……その前に。
「……みんな」
「聞いているのか、お前」
まず、仲間の死体を弔わなければならない。
家族の元へ送り返さないといけない。損傷の激しい死体もあるし、早く処理せねば傷む。
だが、アルフェンにそんな知識はない。さすがに教師が動くと信じたい。
「お前、聞いているのか」
「…………」
アルフェンは、声を無視して歩きだした。
もしかしたら、初めてかもしれない……姉のリリーシャが、話しかけてくることなど。
だが、アルフェンはすでに姉と思っていない。アベルの襲来時、助けようともしなかった人間なぞ、肉親だなんて思えなかった。
「貴様、なんだその腕は? 召喚獣……なのか?」
「…………」
「質問に応えろ」
「黙れ」
「…………今、なんと?」
不思議と、アルフェンに恐怖はなかった。
何もせず傍観し、救える命を救おうとしないA級召喚士なんて、アルフェンにとってアベルと同じくらい醜く、頭にくるものだった。
「戦いもしないクズが。何がA級だ……失せろ」
「…………」
リリーシャの額に青筋が浮かぶ。
すると、ファルオを中心とした教師たちが到着した。
ファルオは、アルフェンとリリーシャに話しかける。
「遅れて済まなかった。ここからは私に任せなさい。リリーシャくん、生徒たちに指示をして教室待機を命じて。アルフェンくん、きみもまずは休んでくれ」
「わかりました……」
「わかりました。じゃ」
アルフェンは、寮に戻ろうと歩きだす。
戻るには、リリーシャが引き連れていたB級生徒を横切らないといけない。だが、アルフェンはそんなことどうでもよかった。
「あ、アルフェン……」
「…………」
フェニアが、申し訳なさそうにアルフェンを見ていた。
だが、アルフェンはその視線を無視。救いを求めた視線を逸らされた時点で、アルフェンとフェニアの関係は変わっていた。
アルフェンは、生徒たちの視線を無視し……誰もいなくなったF級生徒寮へ。
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