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第一章
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魔人襲来、そしてF級虐殺事件は瞬く間に王国中に広がった。
そして、たった一人の生徒により魔人が滅ぼされたというニュースも広がったが、その生徒が誰なのかまでは広まらなかった。
F級壊滅から十日……アルフェンは、誰もいなくなったF級寮で、硬いパンを齧っていた。
調理、掃除と家事は一人でやらなければならない。だが、一人分で済むので楽だ。
それに、ラッツたちの遺体や遺品は全て、家族の元に送られた。
空っぽの寮で、一人アルフェンは暮らしていた。
アルフェンは、二十日間の自主待機を命じられた。
一度、ファルオがアルフェンの元へ来て話をしに来た。
校舎の取り壊しという話もあったが、アルフェンが強く拒否したのでそのままだった。意外にもすんなり話が通ったことアルフェンは驚く。
アルフェンは、空っぽになった自室のベッドに寝転んでいた。
この十日間。来客はファルオ以外ない。誰が来ても追い返すつもりだった。
恐らく、アルフェンの処遇を考えているのだろう。
「……もう、どうでもいいかな」
そう思い、アルフェンはベッドから起き上がる。
鞄を引っ張り出し、私物をまとめ始めた。
着替え、教科書、数冊の本……驚くほど荷物が少ない。
「───どこへいくのかね?」
「っ!?」
いきなり声をかけられた。
驚いてドアの方を見ると、そこには一人の老人が立っていた。
さすがのアルフェンも、見覚えがあった。
「メテオール、校長……」
「うむ。少し、きみと話がしたくてのぉ……外に出んか?」
「…………いえ、俺はもう」
「辞めるのかね?」
「…………」
「きみの人生だ。好きにすればいい……だが、少しわしの話を聞いてくれんか」
「…………」
アルフェンは、鞄を放り投げた。
◇◇◇◇◇◇
二人がやってきたのは、F級校舎だった。
半壊した校舎はそのままだが、瓦礫や木片などは取り除かれ、アルフェンが空けた穴も修復されている。
メテオールと一緒に、教室に入った。
「ここの取り壊しも話に出たのじゃが、許可できなくてのぉ……いちおう、魔人討伐者の願いということにしておいたが、その願いがなくても壊さんかった」
「…………?」
「ふふ。なにせ、ここはわしが三年間学んだ校舎じゃからな」
「え……!?」
最強である二十一人の召喚士『剛力』のメテオールが、F級だった。
まさかの事実に、アルフェンは驚きを隠せない。
メテオールは、悪戯が成功した子供のように笑った。
「昔も今も、等級制度で他者を見下すのは変わっておらん。わしが元F級で、学園卒業時にお情けでE級に昇級したなんて、誰も信じない……同じ人間なのにのぉ」
「…………」
「今回、F級は囮に使われた。A級であるリリーシャ嬢を呼び戻し、戦闘態勢を整えるための時間稼ぎとしてな」
「……知ってます」
アルフェンは、十日間の間にいろいろ考えていた。
恐らく、F級は囮になったと思っていたが、メテオールの言葉で真実となった。
「まずは、謝罪させてほしい……すまなかった」
「……謝るくらいなら、もう帰ります。お偉いさんが頭下げたところで、もうこの校舎に仲間は戻ってこない」
「…………」
「俺、もう……この学園には」
「きみに、頼みがある」
メテオールは、八十を超えた老人とは思えない圧力の声で言う。
本題───アルフェンは、とっさに身構えた。
「魔人討伐……きみに、人類の脅威と戦ってもらいたい」
「……魔人」
「ああ。きみが倒したのは『暴食』の魔人アベル。魔帝が生み出した最強の召喚獣の一体じゃ。魔人は全七体……アベルが倒されたことで、残りの魔人も動くだろう」
「……そんなの、国がなんとかすればいい。それこそ、あなただっている。最強の二十一人もいる」
「それはできないのじゃ」
「え?」
「……二十一人は動けないのじゃ。王国の防衛、王族の守護という使命があるからの」
「そんなの……」
「投げ出せないのじゃ。それが二十一人の使命であり『制約』だからの……だから、国は召喚士を育て、魔人を倒すための力を育てている。アルフェン、きみの右腕は強力じゃ。身体能力と特殊能力を合わせれば、特A級にも匹敵する」
「…………」
「悲しみを産まないために、戦ってほしい」
その言葉に、アルファンの中で小さくなっていた『炎』が一気に燃え上がった。
どの口が……と、目の前にいるメテオールを睨みつける。
「……ふざけんな!! 悲しみを産まない? 産んだのはお前らみたいな権力を持つ大人が何もしないからだろうが!! F級は囮? ……その決定を出したのは、お前たち大人だろうが!!」
アルフェンは、メテオールに指を突き付けて叫ぶ。
メテオールは、アルフェンの言葉を全て受け入れた。
「すまない……わしには、謝ることしかできん」
「っく……ちくしょう」
メテオールは、アルフェンに聞いた。
「きみの右腕……きみの召喚獣は、どうしてきみに力をくれたのだ? 聞けば、きみの召喚獣は愛玩……いや、可愛らしいモグラだったそうじゃな?」
「……生きろ、って。魔人を……あ」
───アルフェン、魔人を倒せ。
モグの言葉が、アルフェンに蘇る。
それは、その場を切り抜けるためだけの言葉だったのか。
残り六人の魔人……アベルみたいな奴が、まだいるのか。
もしかしたら、またこの学園が。
「…………」
アルフェンは、そっと右腕を上げた。
そして、物言わなくなったモグに話しかけるように言う。
「モグ、俺……」
『───アルフェン、生きて。生きるために戦って』
「…………」
アルフェンは、手を強く握りしめた。
メテオールに向き直り、強く言う。
「わかった。俺にできることならやる。その代わり……いくつか条件がある」
「うむ。聞こう」
「俺は、俺が認めた大人の言うことだけを聞く。捨て駒にされたりするのはごめんだ」
「わかった」
「それと、俺はどのクラスにも編入する気はない。俺はこの教室で学ぶ」
「いいだろう」
「……本当にいいのか?」
「もちろん。ふふ、そのための準備はしておいた」
今更気付いたが、アルフェンはメテオールにタメ口だった。
メテオールは、こほんと咳ばらいをする。
「まず、きみの扱いは変わる。F級クラスは廃止。これよりきみは『スペシャル』……そう、『S級』クラスの生徒として学んでくれ。教室はここ、寮もそのまま、専属教師も付けよう」
「……え、えす級?」
「うむ。A級、特A級よりも上の特殊等級じゃ。この十日間で国王に認めさせたわい」
「…………」
「クラスメイトがいないのは寂しかろう。そこで、きみに誘致権限を与えよう。きみが認めた人間をS級クラスに配置する」
「……悪いけど、この学園には」
「話は聞いていたかの? わしは『きみが認めた』と言ったんじゃ。生徒じゃない人間を外でスカウトするのも可能じゃ。編入の手続きは任せておきなさい」
「お、おう……」
「それと、校舎の修復も行おう。学生寮にちゃんとした食材も卸そう。どうせお手伝いさんなどは拒否するじゃろうし」
「…………」
「さて、細かいことは後で書類を渡そう。質問はあるかね?」
「いや、大丈夫」
「うむ。では、明日から授業じゃ。遅れないようにの」
「え、明日!?」
「うむ。明日から専属教師が来る。今日はゆっくり休むといい」
メテオールは、にっこり笑ってその場から去った。
残されたアルフェンは、空を見上げて息を吐いた。
◇◇◇◇◇◇
寮に戻り、冷蔵庫を開けると……たくさんの肉が詰まっていた。
さらに、部屋には新しい制服があった。デザインは今まで同じだが、腕章に『S』の刺繍が施されている。
せっかくなので、アルフェンは大量の肉を焼き、皿にどっさりと盛って食べ始めた。
「うんまっ!! これ、めっちゃいい肉じゃん!!」
柔らかく、濃厚な肉汁がじゅわーっとあふれ出る高級肉。
久しぶりの肉に、アルフェンの手はとまらない。
「うんまい!! ……うめぇ……っ」
肉に、塩味が追加された。
「……うっ……うぅ、う……うっ」
ひとりぼっちで食べる肉。
美味かった。今までとは比べ物にならないくらい、いい肉だった。
でも……いくら食べても満たされなかった。
誰もいない食堂で、アルフェンは一人泣き続けた。
そして、たった一人の生徒により魔人が滅ぼされたというニュースも広がったが、その生徒が誰なのかまでは広まらなかった。
F級壊滅から十日……アルフェンは、誰もいなくなったF級寮で、硬いパンを齧っていた。
調理、掃除と家事は一人でやらなければならない。だが、一人分で済むので楽だ。
それに、ラッツたちの遺体や遺品は全て、家族の元に送られた。
空っぽの寮で、一人アルフェンは暮らしていた。
アルフェンは、二十日間の自主待機を命じられた。
一度、ファルオがアルフェンの元へ来て話をしに来た。
校舎の取り壊しという話もあったが、アルフェンが強く拒否したのでそのままだった。意外にもすんなり話が通ったことアルフェンは驚く。
アルフェンは、空っぽになった自室のベッドに寝転んでいた。
この十日間。来客はファルオ以外ない。誰が来ても追い返すつもりだった。
恐らく、アルフェンの処遇を考えているのだろう。
「……もう、どうでもいいかな」
そう思い、アルフェンはベッドから起き上がる。
鞄を引っ張り出し、私物をまとめ始めた。
着替え、教科書、数冊の本……驚くほど荷物が少ない。
「───どこへいくのかね?」
「っ!?」
いきなり声をかけられた。
驚いてドアの方を見ると、そこには一人の老人が立っていた。
さすがのアルフェンも、見覚えがあった。
「メテオール、校長……」
「うむ。少し、きみと話がしたくてのぉ……外に出んか?」
「…………いえ、俺はもう」
「辞めるのかね?」
「…………」
「きみの人生だ。好きにすればいい……だが、少しわしの話を聞いてくれんか」
「…………」
アルフェンは、鞄を放り投げた。
◇◇◇◇◇◇
二人がやってきたのは、F級校舎だった。
半壊した校舎はそのままだが、瓦礫や木片などは取り除かれ、アルフェンが空けた穴も修復されている。
メテオールと一緒に、教室に入った。
「ここの取り壊しも話に出たのじゃが、許可できなくてのぉ……いちおう、魔人討伐者の願いということにしておいたが、その願いがなくても壊さんかった」
「…………?」
「ふふ。なにせ、ここはわしが三年間学んだ校舎じゃからな」
「え……!?」
最強である二十一人の召喚士『剛力』のメテオールが、F級だった。
まさかの事実に、アルフェンは驚きを隠せない。
メテオールは、悪戯が成功した子供のように笑った。
「昔も今も、等級制度で他者を見下すのは変わっておらん。わしが元F級で、学園卒業時にお情けでE級に昇級したなんて、誰も信じない……同じ人間なのにのぉ」
「…………」
「今回、F級は囮に使われた。A級であるリリーシャ嬢を呼び戻し、戦闘態勢を整えるための時間稼ぎとしてな」
「……知ってます」
アルフェンは、十日間の間にいろいろ考えていた。
恐らく、F級は囮になったと思っていたが、メテオールの言葉で真実となった。
「まずは、謝罪させてほしい……すまなかった」
「……謝るくらいなら、もう帰ります。お偉いさんが頭下げたところで、もうこの校舎に仲間は戻ってこない」
「…………」
「俺、もう……この学園には」
「きみに、頼みがある」
メテオールは、八十を超えた老人とは思えない圧力の声で言う。
本題───アルフェンは、とっさに身構えた。
「魔人討伐……きみに、人類の脅威と戦ってもらいたい」
「……魔人」
「ああ。きみが倒したのは『暴食』の魔人アベル。魔帝が生み出した最強の召喚獣の一体じゃ。魔人は全七体……アベルが倒されたことで、残りの魔人も動くだろう」
「……そんなの、国がなんとかすればいい。それこそ、あなただっている。最強の二十一人もいる」
「それはできないのじゃ」
「え?」
「……二十一人は動けないのじゃ。王国の防衛、王族の守護という使命があるからの」
「そんなの……」
「投げ出せないのじゃ。それが二十一人の使命であり『制約』だからの……だから、国は召喚士を育て、魔人を倒すための力を育てている。アルフェン、きみの右腕は強力じゃ。身体能力と特殊能力を合わせれば、特A級にも匹敵する」
「…………」
「悲しみを産まないために、戦ってほしい」
その言葉に、アルファンの中で小さくなっていた『炎』が一気に燃え上がった。
どの口が……と、目の前にいるメテオールを睨みつける。
「……ふざけんな!! 悲しみを産まない? 産んだのはお前らみたいな権力を持つ大人が何もしないからだろうが!! F級は囮? ……その決定を出したのは、お前たち大人だろうが!!」
アルフェンは、メテオールに指を突き付けて叫ぶ。
メテオールは、アルフェンの言葉を全て受け入れた。
「すまない……わしには、謝ることしかできん」
「っく……ちくしょう」
メテオールは、アルフェンに聞いた。
「きみの右腕……きみの召喚獣は、どうしてきみに力をくれたのだ? 聞けば、きみの召喚獣は愛玩……いや、可愛らしいモグラだったそうじゃな?」
「……生きろ、って。魔人を……あ」
───アルフェン、魔人を倒せ。
モグの言葉が、アルフェンに蘇る。
それは、その場を切り抜けるためだけの言葉だったのか。
残り六人の魔人……アベルみたいな奴が、まだいるのか。
もしかしたら、またこの学園が。
「…………」
アルフェンは、そっと右腕を上げた。
そして、物言わなくなったモグに話しかけるように言う。
「モグ、俺……」
『───アルフェン、生きて。生きるために戦って』
「…………」
アルフェンは、手を強く握りしめた。
メテオールに向き直り、強く言う。
「わかった。俺にできることならやる。その代わり……いくつか条件がある」
「うむ。聞こう」
「俺は、俺が認めた大人の言うことだけを聞く。捨て駒にされたりするのはごめんだ」
「わかった」
「それと、俺はどのクラスにも編入する気はない。俺はこの教室で学ぶ」
「いいだろう」
「……本当にいいのか?」
「もちろん。ふふ、そのための準備はしておいた」
今更気付いたが、アルフェンはメテオールにタメ口だった。
メテオールは、こほんと咳ばらいをする。
「まず、きみの扱いは変わる。F級クラスは廃止。これよりきみは『スペシャル』……そう、『S級』クラスの生徒として学んでくれ。教室はここ、寮もそのまま、専属教師も付けよう」
「……え、えす級?」
「うむ。A級、特A級よりも上の特殊等級じゃ。この十日間で国王に認めさせたわい」
「…………」
「クラスメイトがいないのは寂しかろう。そこで、きみに誘致権限を与えよう。きみが認めた人間をS級クラスに配置する」
「……悪いけど、この学園には」
「話は聞いていたかの? わしは『きみが認めた』と言ったんじゃ。生徒じゃない人間を外でスカウトするのも可能じゃ。編入の手続きは任せておきなさい」
「お、おう……」
「それと、校舎の修復も行おう。学生寮にちゃんとした食材も卸そう。どうせお手伝いさんなどは拒否するじゃろうし」
「…………」
「さて、細かいことは後で書類を渡そう。質問はあるかね?」
「いや、大丈夫」
「うむ。では、明日から授業じゃ。遅れないようにの」
「え、明日!?」
「うむ。明日から専属教師が来る。今日はゆっくり休むといい」
メテオールは、にっこり笑ってその場から去った。
残されたアルフェンは、空を見上げて息を吐いた。
◇◇◇◇◇◇
寮に戻り、冷蔵庫を開けると……たくさんの肉が詰まっていた。
さらに、部屋には新しい制服があった。デザインは今まで同じだが、腕章に『S』の刺繍が施されている。
せっかくなので、アルフェンは大量の肉を焼き、皿にどっさりと盛って食べ始めた。
「うんまっ!! これ、めっちゃいい肉じゃん!!」
柔らかく、濃厚な肉汁がじゅわーっとあふれ出る高級肉。
久しぶりの肉に、アルフェンの手はとまらない。
「うんまい!! ……うめぇ……っ」
肉に、塩味が追加された。
「……うっ……うぅ、う……うっ」
ひとりぼっちで食べる肉。
美味かった。今までとは比べ物にならないくらい、いい肉だった。
でも……いくら食べても満たされなかった。
誰もいない食堂で、アルフェンは一人泣き続けた。
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