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第三章
カドゥーケウス
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ぺたりと、アネルは崩れ落ちた。
「う、うぅぅ……うぁ、うぁぁぁぁん……」
ミノタウロスの大群は、ヒュブリスに仕組まれたことだった。
怒りのままに放った強烈な蹴りはヒュブリスを直撃。巨大黄金天秤に直撃し、天秤は粉々に砕け地面に落下……ヒュブリスはどうなったのか、まだわからない。
アルフェンは、アネルの脚に釘付けだった。
「なんって威力……しかも、速い……」
アネルの脚は、装甲が開き蒸気を出していた。
排熱行為、ということまでアルフェンにはわからない。鉄の骨、血管のようなコード、歯車、スプリングがカシャカシャ動いている。生身ではない、鉄の足だった。
すると、サフィーが近づき、アネルをそっと抱きしめる。
「アネル……」
「う、うぅ……アタシ、頭の中ぐちゃぐちゃで……ねぇ、あいつ……アタシの村、両親、家族……あいつのせいで、ひっく……」
「大丈夫です……今は、泣いていいんです」
「う、ぅぅぅ……」
ウィルも、アネルの足を見て冷や汗を流す。
寄生型の動体視力をもってしても、アネルの速度はすさまじい。
能力を使ったのか、それすら不明だ。今はアネルに質問できるような空気ではない。
「ん───ねぇ見て!! あれ、ヤバいよ!?」
フェニアが叫び、全員が砕けた巨大天秤を見た。
そこには、顔面を腫らせたヒュブリスが、両腕を広げてアルフェンたちを見ていたのである。
「いやぁ……少々、油断した。ふふ、脚の少女は《速度》か。右腕の少年、左腕の少年、両足の少女……ふむ、なかなか厄介である」
ドロドロと、地面から黄金が泥のようにうごめき、ヒュブリスが歩くたびに固まっていく。
まるで階段のように、少しずつ、少しずつヒュブリスは下りてきた。
アネルは眼をゴシゴシ擦り立ち上がる。
「家族の……みんなの仇!! アンタだけは許さない!!」
アネルの脚から蒸気が出た。
装甲が開き、噴射口が形成される。そして、噴射口から火を噴くと、アネルの身体は超高速で飛んだ。
狙いは顔面。一瞬でヒュブリスの真横まで移動し、ハイキックを繰り出す。
「二度は通じぬよ」
「ッ!!」
ドロリと、ヒュブリスの腕が黄金に包まれ硬化した。
アネルの蹴りは受け止められ、黄金の手で掴まれた。
「はな、離せっ!!」
「ふむ……人間や魔獣の組織と大きく異なっているな。鉄の骨、バネ、歯車、妙なホース……人体を鉄の部品に置き換えたのか? それに、この噴射口……脚の形を見るに、装甲を開いたことで形成されたようだ。ふむ……能力はさしずめ、『兵装』といったところかな?」
「なっ……」
「ははは。図星かい」
あっさり看破された。
そう、アネルの寄生型召喚獣『カドゥーケウス』の能力は『兵装』だ。
鉄、正確には『機械』の脚を自在に組み換えることが可能である。
「『獣の一撃』!!」
「おっと」
「チッ!!」
「おおっ」
アルフェンが拳を巨大化させ殴るが躱され、跳躍したウィルがヘッズマンを連射するが躱される。
攻撃はほぼ見切られている。だが、今の攻防でアネルを掴む手は離れた。
アルフェンはアネルの手を掴み、引き寄せる。
「大丈夫か?」
「うん……ごめん」
「いい。ところで、戦えるんだな?」
「……やる。よくわからないけど、身体は動くの」
「よし」
ウィルはヘッズマンを『機関銃』に変え乱射、フェニアが上空から竜巻を放ち、サフィーが氷の剣を放つ。だが、ヒュブリスは踊るように回避する。
アルフェンは、アネルに言う。
「最初の一撃、あいつは躱せなかった。俺たちがあいつをひたすら攻撃するから、隙を見つけてその足で蹴りを叩きこめ」
「わかった……アタシ、やってみる」
「ああ。それと、その足の能力だけど……」
アネルの説明によると、ヒュブリスが言った通りでおおむねあっている。
金属の脚。パーツを組み換えて武装を造り出す『兵装』だ。現在使える兵装は一つだけ。
「『噴射口』……頭の中に言葉が浮かんだの。足にブースターを形成して噴射する。直線だけど超高速移動できる」
「よし。じゃあ任せるぞ」
ビキビキとアルフェンの右腕が脈動する。
「じゃあ───行くぞ!!」
アルフェンは走る。
向かうのはヒュブリスの懐。
ダモクレスから習った格闘術を思い出す。
「接近戦か!! 面白い!!」
アルフェンの正拳突きをヒュブリスは身体を捻り躱す。
半回転し、ひねりを加えた裏拳が繰り出された。アルフェンは身体をかがめて躱し、そのまま胴を狙った蹴りを放つ───が、ガードされる。
足を掴まれそうになったので距離を取り、右腕を伸ばしヒュブリスの眼前で巨大化させた。
「はっはぁぁ!! 楽しいねぇ!!」
「うるせっ!!」
巨大化させた手はバックステップで躱された───が。
「サフィー!!」
「はい!! 行きますよフェニア!!」
「ぬ!?」
サフィーが氷の塊をいくつも空中に生み出し、フェニアのグリフォンがその氷を巻き込んだ竜巻を造り出す。そして、バックステップで回避したヒュブリスに向けて放った。
「「『クラッシュストリーム』!!」」
合体技だ。
数日前の野営のテントで、ちょっとだけ話した合体攻撃だ。
ほぼ即興なのに、二人の息はピッタリだった。
「ぬぉぉぉっ!?───まぁ、痛みはないが寒いな」
ヒュブリスは少しおどけた───次の瞬間。
「ぐ、おぉぉぉっ!!」
「何!?」
氷の竜巻を中に、ウィルが身体をねじ込んできたのだ。
「ちょ!? あんた馬鹿!?」
「かか、解除!!」
ヒュブリスは聞いた。フェニアとサフィーの焦る声を。
どうやら、味方にも予想外な行動のようだ。ウィルの身体は氷で刻まれて血が出ている───だが、その眼は死んでいない。
ウィルは左手を───ヒュブリスに向けていた。
「しまっ」
「がら空きだぜ!!」
弾丸が発射され、ヒュブリスの両太ももを撃ちぬいた。
緑色の血が噴き出し、ヒュブリスの表情が変わる。
「ぐぅぅぅっ!? ははは、玉砕覚悟の一撃とは!!」
ウィルはボロボロになりながら転がり、同時に氷の竜巻が解除された。
ウィルにとどめをさそうとヒュブリスは。
「家族の仇───」
「ッ」
ほんの十メートル先に、両足が噴射口だらけになったアネルがいた。
ヒュブリスの表情が凍る。回避───不可能。防御───不可の。
「砕けろォォォォォォォぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
気付いた時には、アネルの脚が顔面にめり込んでいた。
脳が後頭部から飛び出さないのが不思議なくらいの威力で蹴られたヒュブリスは、回転しながら巨大天秤の残骸に突っ込もうと吹っ飛ぶ。
「とどめ、任せろ……!!」
だが、吹っ飛ぶヒュブリスの射線上に……右腕を構えたアルフェンがいた。
全力で拳を握り、構え───拳を放つ。
「『獣の一撃・全身全霊』!!」
放たれた拳。
アネルに蹴られ吹っ飛んだ勢いでカウンターとなり、アルフェンの拳はヒュブリスの顔面を捕らえた。
衝撃同士がヒュブリスの全身を滅茶苦茶に駆け回り、殴られたヒュブリスはアルフェンの傍で崩れ落ちた。
崩れ落ちたヒュブリスは、激しく痙攣し呻いていた。
「う、うぅぅ……うぁ、うぁぁぁぁん……」
ミノタウロスの大群は、ヒュブリスに仕組まれたことだった。
怒りのままに放った強烈な蹴りはヒュブリスを直撃。巨大黄金天秤に直撃し、天秤は粉々に砕け地面に落下……ヒュブリスはどうなったのか、まだわからない。
アルフェンは、アネルの脚に釘付けだった。
「なんって威力……しかも、速い……」
アネルの脚は、装甲が開き蒸気を出していた。
排熱行為、ということまでアルフェンにはわからない。鉄の骨、血管のようなコード、歯車、スプリングがカシャカシャ動いている。生身ではない、鉄の足だった。
すると、サフィーが近づき、アネルをそっと抱きしめる。
「アネル……」
「う、うぅ……アタシ、頭の中ぐちゃぐちゃで……ねぇ、あいつ……アタシの村、両親、家族……あいつのせいで、ひっく……」
「大丈夫です……今は、泣いていいんです」
「う、ぅぅぅ……」
ウィルも、アネルの足を見て冷や汗を流す。
寄生型の動体視力をもってしても、アネルの速度はすさまじい。
能力を使ったのか、それすら不明だ。今はアネルに質問できるような空気ではない。
「ん───ねぇ見て!! あれ、ヤバいよ!?」
フェニアが叫び、全員が砕けた巨大天秤を見た。
そこには、顔面を腫らせたヒュブリスが、両腕を広げてアルフェンたちを見ていたのである。
「いやぁ……少々、油断した。ふふ、脚の少女は《速度》か。右腕の少年、左腕の少年、両足の少女……ふむ、なかなか厄介である」
ドロドロと、地面から黄金が泥のようにうごめき、ヒュブリスが歩くたびに固まっていく。
まるで階段のように、少しずつ、少しずつヒュブリスは下りてきた。
アネルは眼をゴシゴシ擦り立ち上がる。
「家族の……みんなの仇!! アンタだけは許さない!!」
アネルの脚から蒸気が出た。
装甲が開き、噴射口が形成される。そして、噴射口から火を噴くと、アネルの身体は超高速で飛んだ。
狙いは顔面。一瞬でヒュブリスの真横まで移動し、ハイキックを繰り出す。
「二度は通じぬよ」
「ッ!!」
ドロリと、ヒュブリスの腕が黄金に包まれ硬化した。
アネルの蹴りは受け止められ、黄金の手で掴まれた。
「はな、離せっ!!」
「ふむ……人間や魔獣の組織と大きく異なっているな。鉄の骨、バネ、歯車、妙なホース……人体を鉄の部品に置き換えたのか? それに、この噴射口……脚の形を見るに、装甲を開いたことで形成されたようだ。ふむ……能力はさしずめ、『兵装』といったところかな?」
「なっ……」
「ははは。図星かい」
あっさり看破された。
そう、アネルの寄生型召喚獣『カドゥーケウス』の能力は『兵装』だ。
鉄、正確には『機械』の脚を自在に組み換えることが可能である。
「『獣の一撃』!!」
「おっと」
「チッ!!」
「おおっ」
アルフェンが拳を巨大化させ殴るが躱され、跳躍したウィルがヘッズマンを連射するが躱される。
攻撃はほぼ見切られている。だが、今の攻防でアネルを掴む手は離れた。
アルフェンはアネルの手を掴み、引き寄せる。
「大丈夫か?」
「うん……ごめん」
「いい。ところで、戦えるんだな?」
「……やる。よくわからないけど、身体は動くの」
「よし」
ウィルはヘッズマンを『機関銃』に変え乱射、フェニアが上空から竜巻を放ち、サフィーが氷の剣を放つ。だが、ヒュブリスは踊るように回避する。
アルフェンは、アネルに言う。
「最初の一撃、あいつは躱せなかった。俺たちがあいつをひたすら攻撃するから、隙を見つけてその足で蹴りを叩きこめ」
「わかった……アタシ、やってみる」
「ああ。それと、その足の能力だけど……」
アネルの説明によると、ヒュブリスが言った通りでおおむねあっている。
金属の脚。パーツを組み換えて武装を造り出す『兵装』だ。現在使える兵装は一つだけ。
「『噴射口』……頭の中に言葉が浮かんだの。足にブースターを形成して噴射する。直線だけど超高速移動できる」
「よし。じゃあ任せるぞ」
ビキビキとアルフェンの右腕が脈動する。
「じゃあ───行くぞ!!」
アルフェンは走る。
向かうのはヒュブリスの懐。
ダモクレスから習った格闘術を思い出す。
「接近戦か!! 面白い!!」
アルフェンの正拳突きをヒュブリスは身体を捻り躱す。
半回転し、ひねりを加えた裏拳が繰り出された。アルフェンは身体をかがめて躱し、そのまま胴を狙った蹴りを放つ───が、ガードされる。
足を掴まれそうになったので距離を取り、右腕を伸ばしヒュブリスの眼前で巨大化させた。
「はっはぁぁ!! 楽しいねぇ!!」
「うるせっ!!」
巨大化させた手はバックステップで躱された───が。
「サフィー!!」
「はい!! 行きますよフェニア!!」
「ぬ!?」
サフィーが氷の塊をいくつも空中に生み出し、フェニアのグリフォンがその氷を巻き込んだ竜巻を造り出す。そして、バックステップで回避したヒュブリスに向けて放った。
「「『クラッシュストリーム』!!」」
合体技だ。
数日前の野営のテントで、ちょっとだけ話した合体攻撃だ。
ほぼ即興なのに、二人の息はピッタリだった。
「ぬぉぉぉっ!?───まぁ、痛みはないが寒いな」
ヒュブリスは少しおどけた───次の瞬間。
「ぐ、おぉぉぉっ!!」
「何!?」
氷の竜巻を中に、ウィルが身体をねじ込んできたのだ。
「ちょ!? あんた馬鹿!?」
「かか、解除!!」
ヒュブリスは聞いた。フェニアとサフィーの焦る声を。
どうやら、味方にも予想外な行動のようだ。ウィルの身体は氷で刻まれて血が出ている───だが、その眼は死んでいない。
ウィルは左手を───ヒュブリスに向けていた。
「しまっ」
「がら空きだぜ!!」
弾丸が発射され、ヒュブリスの両太ももを撃ちぬいた。
緑色の血が噴き出し、ヒュブリスの表情が変わる。
「ぐぅぅぅっ!? ははは、玉砕覚悟の一撃とは!!」
ウィルはボロボロになりながら転がり、同時に氷の竜巻が解除された。
ウィルにとどめをさそうとヒュブリスは。
「家族の仇───」
「ッ」
ほんの十メートル先に、両足が噴射口だらけになったアネルがいた。
ヒュブリスの表情が凍る。回避───不可能。防御───不可の。
「砕けろォォォォォォォぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
気付いた時には、アネルの脚が顔面にめり込んでいた。
脳が後頭部から飛び出さないのが不思議なくらいの威力で蹴られたヒュブリスは、回転しながら巨大天秤の残骸に突っ込もうと吹っ飛ぶ。
「とどめ、任せろ……!!」
だが、吹っ飛ぶヒュブリスの射線上に……右腕を構えたアルフェンがいた。
全力で拳を握り、構え───拳を放つ。
「『獣の一撃・全身全霊』!!」
放たれた拳。
アネルに蹴られ吹っ飛んだ勢いでカウンターとなり、アルフェンの拳はヒュブリスの顔面を捕らえた。
衝撃同士がヒュブリスの全身を滅茶苦茶に駆け回り、殴られたヒュブリスはアルフェンの傍で崩れ落ちた。
崩れ落ちたヒュブリスは、激しく痙攣し呻いていた。
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