召喚学園で始める最強英雄譚~仲間と共に少年は最強へ至る~

さとう

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第五章

模擬戦①

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「あー……緊張してきたぁ」

 B級演習場控室で、アネルは胸を押さえて息を吐く。
 アルフェンはオレンジジュースを飲み、ウィルは椅子に座って大きな欠伸をする。
 そんな二人を見ながらアネルは言う。

「あんたら、緊張しないの?」
「「別に」」
「……度胸があると言うか。ってか、取材も来てるんだよ? 王女殿下……じゃなくて、メルも言ってたじゃない、負けたら終わりだって」

 今回の模擬戦は、アルフェンがオズワルドに売られた喧嘩を買った形だ。それをメルが『模擬戦』に変え、さらにS級がいかに優れているかをA級で試し、王国の記者を呼んで取材させるというものだ。
 メルの手腕は恐ろしかった。
 ウィルはテーブルの上にあったフェニアが買って来たクッキーをつまむ。

「ま、やることは一つ。殺せばいいんだろ?」
「こ、殺すのはダメだって! 医療班が優秀だから好きにやってもいいとは言ったけど」
「確か、『死神デス』のリッパー医師だっけ。二十一人の召喚士で、医療系最強の召喚獣『デス・オブ・ザ・ワイルド』を持つ」
「……医療系っていうか、バリバリの戦闘系みたいね」

 アネルは苦笑する。
 確かに、名前からして凶悪だが、リッパー医師は『死神に嫌われた医師』と呼ばれ、爆破され数百の肉片となった患者を蘇生させたという伝説もあった。
 アルフェンはオレンジジュースのお代わりを注ごうとしたが、オレンジジュースの瓶がビシリと凍り付く。

「もう! 飲みすぎはダメですよ」
「そうそう。もうすぐ試合なんだし。試合中にトイレ行きたくなったらどうすんのよ」

 サフィーとフェニアだった。
 そして、背後にはレイヴィニアとニスロクが。激励に来たようだ。
 レイヴィニアは、アルフェンの肩をポンポン叩く。

「来てやったぞ。お前、かなり嫌われてるらしいな。ま、せいぜい頑張れよ!」
「そりゃどーも……」
「ふわぁぁぁ~~~……ねぇ、寝ていい?」
「お前、何しに来たんだよ」

 どこまでも変わらない魔人たちだった。
 ちなみに、メルは外で取材を受けている。新聞社がたくさん来ているのだ。
 フェニアたちが来たことで、アネルの緊張もほぐれたようだが。

「失礼します。S級代表選手のアネル様、第一試合を始めますので、会場内へお願いしまーす!」

 B級の女子生徒が報告に。
 アネルは一気に緊張する。すると、ウィルが言った。

「おい、いつも通りやれ。ヴィーナスのババァとダモクレスのクソオヤジを相手にしてる時みたいにな」
「え、えぇ~……?」
「ダモクレスのクソオヤジに一撃食らわせたことあっただろ? それくらいの気合で行け」
「うぅぅ……だ、ダモクレス先生と一緒にしないでよ。この緊張、マジでやばいんだって!」
「ったく……終わったらメシおごってやる。いいからいけ」
「うぅ~……わかったよ」

 アネルはすごすごと部屋を出た。

「「「…………」」」
「……んだよ」

 アルフェン、フェニア、サフィーがウィルを見ていた。

「お前、アネルには優しいよな」
「うんうん。アネルも満更じゃなさそうだし~?」
「ふむ。ウィルはアネルが好きなのですか?」
「アホか」

 ウィルは一言で切って捨てた。

 ◇◇◇◇◇◇

 B級演習場。
 模擬戦内容は単純に『S級とA級、どちらが強いか』を比べる戦いだ。
 演習場内に遮蔽物もなく、透き通るような壁が外周を覆っている。
 透明な壁の周りには、記者たちの『撮影型召喚獣』が何匹も飛んでいた。
 アネルは、演習場内に入ろうとするが……目の前にある透明の壁のせいで入れない。

「えっと……なにこれ? 膜……?」
「オリハルコンじゃよ」
「うわぁっ!?」

 壁をじーっと眺めていたアネルの隣に、長い顎鬚に丸眼鏡をかけ杖を突いた老人がいた。
 にっこり笑い、アネルに言う。

「わしの『オリハルコン』が会場内を守っておる。大丈夫、思い切りやりなさい」
「あ、はい……えっと、どうやって入れば」
「ほれ、行かんかい」
「わわっ」
 
 彼こそ、アースガルズ王国召喚学園の『教授』であるグレイで、『タワー』の称号を持つ最強の二十一人の一人だ。
 召喚学園は六年生で、三年を超えると卒業資格を得ることができ、四年生に進級すると通常授業の難易度も跳ね上がる。それを教えるのが『教授』だ。
 教授は全員がA級召喚士で、全員が実力者である。
 グレイに背を押されたアネルは、壁を突き抜け演習場内へ。

「わわわっ、へぶっ」

 足がもつれ転んでしまった。
 そして、クスクスと嘲笑が……目の前にいるのは、男二人に女一人。このアースガルズ召喚学園の生徒会役員、つまり学園最強の八人の内三人だ。
 アネルは慌てて立ち上がる……ちなみに、転んだ瞬間もばっちり『撮影』されたことにはまだ気づいていない。
 生徒会役員。そして相手は貴族。さらに年上の先輩。
 それらが重なり、アネルは一気に緊張……赤いポニーテールを揺らしながらあいさつした。

「はは、はじめまして!! えっと……」
「ああ、いい。何も言うな」

 男子が手で制する。
 生徒会書記のアボイドは、大柄で筋肉質な肉体を強調するようなスーツを着た貴族の少年だ。等級はBで、相当な実力者である。
 アボイドは、アネルを見てニヤッと笑う。

「S級。ふふん、アルフェン・リグヴェータ以外は大したことないと聞いている。魔人討伐の功労者である彼はリリーシャ様が直々に処刑するとして、雑魚であるキミはオレらが相手だ」
「は、はぁ……その、はい」

 そして、生徒会広報のレイブンが言う。

「おいアボイド、油断すんなよ」
「するか。カーラ、お前は手を出すな……まずは、オレが相手をする」
「仕方ないわねぇ……」

 カーラと呼ばれた生徒会書記でショートヘアの少女は、腕組みして苦笑する。
 アネルはいまいち空気が読めていなかった。

「あの、いつ始めるんでしょうか?」
「ふん……間もなく始まりだ。見ろ、王女殿下が記者に説明をしている」
「あ、ほんとだ」

 メルが、記者たちに何かを言っていた。
 アネル側からは何をしゃべっているのかわからない。そして、メルが一礼すると、記者たちが一斉にメモの用意をしたり、召喚獣に撮影を命じた。
 すると、演習場内に今日の審判役を務めるファルオの声が。

『それでは、召喚獣を』

 すると、アボイドの四肢に金属の籠手と具足が、レイブンの周りにカラスが、カーラの周囲に四枚ほどの『鏡』が浮かび上がった。
 アネルは深呼吸……そして、半身で構えを取る。

「奔れ───『カドゥーケウス』」

 アネルの両足が赤く、金属製の義脚に変わる。
 装甲が開き、蒸気を吐きだし、内蔵された歯車が回転、コードに電流が走り、パイプに血液のような液体が流れていく。
 アネルが愛した召喚獣ピンクの、本当の姿。

「そいつが寄生型か……フン、オレの『カイザーウエポン』に勝てると思うなよ?」

 アボイドが格闘家のような構えを取る。

『それでは……始め!!』

 ファリオの合図で、試合が始まった。
 同時に、アボイドが走る。
 装備型召喚獣カイザーウエポン。能力は───。

「───シュッ」
「え」

 アボイドの目の前に、アネルの脚があった。
 全身に衝撃が走ると同時に意識消失。
 開始の合図と同時に両足の『噴射口ブースターユニット』で超突進、アボイドに三十発の連蹴りを叩きこんだ。
 この間、半秒。
 四肢粉砕骨折、内蔵損傷、骨盤、背骨も砕けたアボイドは時速数百キロで壁に激突。即死───にはならなかった。壁が全ての衝撃を吸収し、場外へ。

「───はっ!! カー」

 ラ、とレイブンは言えなかった。
 だがカーラは動いていた。
 装備型召喚獣『ミラーフォース』を全て正面へ展開。相手の攻撃を跳ね返す能力だ。
 アネルは跳躍し、右足を折りたたんだ。

「『誘導弾ニーミサイル』」

 折り曲げた膝がガパッと開き、小型ミサイルが発射。
 ミサイルは真っすぐ飛び、鏡の前で軌道を変えカーラの背後へ。そして地面に着弾。

「ギャァァァァァッ!?」

 派手に爆発し、カーラは右腕が爆破の衝撃で千切れて吹っ飛び全身火傷を負う。
 この時点で、レイブンは敗北を悟った。
 次元が違う。だが───レイブンには『参った』を言う時間さえない。アネルが速すぎた。

「『女郎蜘蛛ジークスパイダー』」

 アネルの両足が組みかえられる。
 金属が分解、再構築され、巨大で多関節の脚が片方四本ずつ、つまり八本脚になった。
 蜘蛛のような素早い動きでアネルは接近。レイブンは己の召喚獣を《分裂》させることもできずに迫るアネルを見上げた。

「マジかよ、おい」
「終わりです」

 ドスドスドスドス、ドスドスドスドス……八本の脚がレイブンの身体に突き刺さり、レイブンはそのまま意識を失った。
 試合開始から僅か十数秒。学園最強の生徒会役員三人はあっさり敗北した。
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