召喚学園で始める最強英雄譚~仲間と共に少年は最強へ至る~

さとう

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第六章

帰ってきたオズワルド

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 アルフェンたちが近隣の村に向かうと、アースガルズ王国から来た兵士数名がいた。
 その人たちにメルの手紙を渡すと、兵士たちは動きだす。
 アースガルズ王国、アルフヘイム王国へと連絡をするためだ。
 それを見届け、アルフェンとフェニアはすぐに村へ戻った。
 村に戻ると、すでに埋葬が終わり、墓には墓石と花が供えられており、村長の家にあった酒瓶が供えられていた。
 アルフヘイム王国軍やアースガルズ王国軍が来る前に埋葬は終わってしまった。

「どうか安らかに……」
「……守れなくて、ごめん」

 サフィーが祈りを捧げ、アネルが悔やんでいる。
 キリアスとグリッツも黙とうを捧げていたので、アルフェンとフェニアも加わった。
 祈りを捧げ終えると、キリアスが言う。

「早かったな」
「ええ、フェニアのグリフォンの速度は大したものですよ。なぁ」
「ふふん、まぁね~」

 フェニアは胸を張る。
 埋葬が終わったので村長の家に戻ると、すでにオズワルドが帰っていた。
 墓地は村のすぐ近くにある。キリアスやサフィーたちがいたのに、声すらかけず村長の家に向かったようだ。
 メルは、オズワルドに言う。

「住人の避難をしていたようね」
「ええ。魔人と魔獣が襲撃してすぐに行動に移したおかげで、僅かな命を救うことができました」
「ふーん? ……その僅かな命、みんな荷造りをしっかりして出ていったようね?」
「はて? なんのことやら。私は魔人襲撃が始まってすぐに、馬車の近くにいた住人たちを載せて近くの村まで運び、乗り切らなかった住人は魔人が来ていない村の反対側に向かわせ、近くの森に隠れるように言っただけですよ」

 もっともらしいことを笑顔で言うオズワルド。
 だが、その笑みがどうも胡散臭かった。
 そして、オズワルドは言う。

「そもそも、住人を守れなかったのはS級のせいでは? 私どもはできることを精一杯行いました。少なくとも、住人を守れなかったのはS級のせいだと私は思いますねぇ」

 メルの額に青筋が浮かび、座っていた足を組み替えた。
 オズワルドは、優雅に茶を啜る。

「間もなく、アルフヘイム王国軍がこちらに到着します。事情説明に私が残りますので、あなた方は全員、明日にでも撤収を」
「私も残るわ」
「……王女が残る必要は」
「王女命令よ。戦闘に携わった当事者・・・・・・・・・・として、王国軍に説明しないとね」
「…………チッ」

 オズワルドは小さく舌打ちをした。
 この男に任せておくと、魔人討伐の功績も全てA級のものにすり替えられる。アルフヘイム王国の心象をよくする材料を与えるわけにはいかない。
 メルは、アルフェンに言う。

「アルフェン。あなたはわたしの護衛として残りなさい」
「え、ああ……まぁ、うん」
「……不満そうね」
「いーえ全く。はい」
「よろしい。では、今日はもう全員休みなさい」

 こうして、魔人と魔獣との戦いは終わり、アースガルズ王国へ帰還することになった。
 だが、肝心なことを忘れていた。

「……ウィル、まだ戻ってこないのか」

 ウィルは、未だに帰ってこない。

 ◇◇◇◇◇◇

 翌日。
 リリーシャたちはアースガルズ王国に帰還した。
 アルフェンとメル、そしてオズワルドは残り、アルフヘイム王国軍の将軍に状況を説明する。アルフェンはメルの傍で聞いていたが、やはり直接戦闘に関わったメルの言葉は重みがあった。
 オズワルドがあまり口を挟むことなく説明は終わり、一日が終わる。
 ここまではよかった。だが、翌日の帰りが地獄だった。

「……俺、走って帰っていい?」
「馬鹿言わないで。誰がわたしの護衛をするの?」
「いや、でもさ……」

 馬車は一台だけしか残っていない。
 つまり、オズワルド、アルフェン、メルの三人で乗ることになった。
 御者はアルフヘイム王国軍の兵士が務めてくれる。
 オズワルドは、にっこり笑いながら言った。

「では、我々も帰還しよう」

 オズワルドがニコニコしながら馬車に乗り込む……正直、気持ち悪かった。
 だが、ここで逆らっても意味がない。アルフェンはメルに聞く。

「なぁ、ウィルは……」
「一応、生徒が一名行方不明とアルフヘイム王国軍には伝えておいたわ。見つけたら保護して送ってくれるそうよ」
「…………」
「大丈夫。あなたの知るウィルは魔人に負けるような男?」
「いや、問答無用でハチの巣にするような奴だ」
「だったら、わたしたちは今できること……帰ることを考えるわよ」

 そう言って、メルは馬車へ。
 アルフェンは、ウィルが消えた方向をもう一度だけ見て、馬車に乗り込んだ。

 ◇◇◇◇◇◇

「「「…………」」」

 馬車の中は静寂だった。
 アルフェン、メル、オズワルドという面子だ。話が弾むわけがない。
 メルは小さなため息を吐き、アルフェンに言う。

「アルフェン。魔人討伐の報酬は期待しておきなさい。全部の望みはかなえてあげられないかもだけど……まぁ、領地くらいはあげられると思う」
「……フハッ」

 と、オズワルドが鼻で笑った。
 ビシリ───と、メルの表情が凍り付く。

「何かおかしかったかしら?」
「いえ……ふふ、魔人討伐の報酬にしては大きすぎるかと。それに、一個人にそこまで肩入れした報酬を渡すと、勘違いする輩も多いのでは?」
「だからなに?」
「領地を得るということは爵位を与えるということ。ふふ、『力ある身勝手な少年』に、領地の管理など不可能でしょう」
「それはあなたが決めることじゃないわ。アルフェンは立派よ」
「ええ、確かに立派です。だがそれは、一兵士としてです。貴族としての器というより、戦力としての器なら立派といえる。メル王女殿下、あなたの目は節穴だ」
「───……」

 ピィン───と、細い糸が伸び切ったような音がアルフェンには聞こえた……気がした。
 アルフェンはゴクリと唾を飲む。オズワルドはたいして怖くないし、メルも怖いとは思わない。だが、二人の間に流れる空気が怖かった。魔人や魔獣とは違う恐怖がある。

「ところで、少し聞きたいのだけれど」
「なんなりと」
「……住人を馬車に乗せて、残りを村から逃げて森に隠れるように言ったのは、あなたよね?」
「ええ」
「あなたが連れた住人の家を見たけど……ずいぶんと綺麗に支度がしてあったわ。着替えや金品、大事な物を袋詰めさせて馬車に乗せるなんて、ずいぶんと余裕があったのね?」
「さぁ? なんのことでしょう?」
「それと……正直に答えて」
「……はい?」

 メルは、アルフェンが今まで見た表情の中で、最も恐ろしい目つきをして言った。

「あなた、魔人が『二人』来ることを知ってたわね?」
「……さぁ? 『預言』にはそのようなこと」
「推測だけど、あなたが選んだ住人だけ予め避難の準備をさせて逃がしたんじゃないの? そして、残りの住人は魔人が現れる方向へ向かわせた……たまたまアネルが戦ってたから、住人の死は『事故』ではなく、S級が守れなかったという事実に捻じ曲げられる。そして、あなたが救った……ああ、救ったなんて言葉使いたくないわ。送った住人を見たけど……どうも重要な人物がいたようね」

 ここで、初めてオズワルドの眉がぴくっと動いた。

「その反応、当たりね。わたしの『スカイライダーズ』の一体が、あなたが向かった村に行って状況を伝えてくれた。どうやら、あの村に隠れ住んでいたようね、アルフヘイム王国の王子デリングが」
「さぁ、偶然では?」
「あなた、相当な報酬をもらえそうね? さらに今回は二体の魔人討伐という功績も得た。あなたが監督した召喚師たちが魔人を二体討伐。さらにアルフヘイム王国の王子を救いだした。A級召喚師たちの戦いを美談にして、住人を守り切れなかったS級を叩くシナリオはすでに用意しているのかしら? アースガルズ王国で多額の報奨金をもらい、アルフヘイム王国で公爵待遇で迎えられる───……そんな筋書きかしらね?」
「……いやはや、メル王女殿下。あなたは脚本家の素質もあるようだ」

 アルフェンも小さく頷いてしまった。確かに、メルは脚本家の素質があるかもしれない。
 だが、メルは鼻を鳴らす。

「脚本家の素質は否定しない。今の話にはなんの証拠もないからね……二度目の『預言』があった証拠があればいいけど、『運命』は自分が出した預言の内容は知らないからどうしようもない」
「ほほお?……それは知らなかった」
「白々しい……」

 オズワルドのニヤニヤは止まらない……全て知っていたのだ。
 オズワルドは足を組み換え、深く座りなおす。

「まぁ、そういうことだと仮定して……もうどうしようもありませんな」
「…………」
「メル王女殿下。今回はあなたの負けです……私は、私の功績を得てこの国を見限りますよ。私が隣国の王子を救ったことは事実ですし、今回の魔人討伐遠征で監督を務めたのも事実。それに、あの無能な王なら、私が隣国に行くことも反対しないでしょう」
「…………」
「ふふ、アルフェンくん」
「……なんですか」
「きみは、きみの戦いをしたまえ。馬鹿みたいに力を振い、この世界を平和にしておくれ。私は平和になった世界で、私の理想を実現しよう」
「…………」

 それっきり、オズワルドが口を開くことはなかった。
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