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第九章
ラストバトル
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アースガルズ王城。
現在、ここにいるのはアースガルズ国王ゼノベクト、そして護衛を買って出たサンバルトだ。
地下特別室に避難するのではなく、謁見の間で戦いの報告を聞いているだけマシだろう。他の貴族は国王を差し置いて避難しているのに。
ゼノベクトは、サンバルトに聞く。
「サンバルト。メルは……」
「外で指揮を執っています。全く、あのお転婆め……」
王族自らが最前線で指揮を執ることに対し、お転婆という感想しか出ないサンバルト。
ちなみに、サンバルトはリリーシャから『王を守れ』と命じられたのでここにいる。自分もしっかりと戦っているつもりだった。
メルは、S級だけでなく、ピースメーカー部隊にも指示を出している。そんなことも知らず、のんきな二人は戦況についてあれこれ話していた。
「サンバルト。この戦い、勝てるだろうか?」
「当然です。リリーシャが指揮を執るピースメーカー部隊に負けはない」
「そうだな。うんうん」
馬鹿馬鹿しいくらい呑気な会話だった。
メルが聴いていたら頭を抱えたであろう。
ちなみに、この謁見の間にいるのは二人だけ。護衛は部屋の外で待機。王城周辺は二十一人の英雄たちが守っている。
ここに、死角はない。間違いなく……アースガルズ王国で一番安全だった。
だが、外がいくら堅牢でも、内側は?
「む? ……おお、お前たち」
謁見の間に入ってきたのは三人。
ヒルクライム、ユウグレナ。そして……ガブリエルだ。
A級召喚士二人に、特A級召喚士が一人。
なぜ、ここにいるのか。サンバルトは首を傾げる。
「何か報告ですか?」
「いえ。あなた方の命を奪いに来ました」
「「は?」」
次の瞬間、ヒルクライムの手に現れた『拳銃』がサンバルトめがけて数発の弾丸が発射された。弾丸はサンバルトの左肩、両足を撃ち抜く。
「ぐ、っがぁぁぁぁぁぁっ!?」
「あら優しい。頭を狙わないのね」
「まぁ、楽しむ時間はあるだろう?」
ユウグレナがクスクス笑い、ヒルクライムは拳銃をクルクル回す。
ゼノベクトは、わけもわからずのたうち回る息子を見た。そして。
「な、な、なにぉ!! 何をしているのだ!? 血迷ったか貴様ら!!」
「血迷ってなどいませんよ」
そして、ユウグレナ。
ユウグレナの周りに何十本もの『ロープ』が現れ、生き物のように動く。ロープはゼノベクトの元へ向かい、全身を拘束した。
「ぬがぁ!?」
「はいおしまい。ガブリエル様、この次は?」
「これから二人には遺書を書いていただきましょう。全ての権限を私たちに譲り渡すと書かせてね。その後は、外にいる魔獣の元へ放り出せば、二人仲良く捕食されるでしょう」
「それはいいな。だが、引きこもりの王が最前線へ出向くのは不自然だと思うが」
「最後くらい、英雄として終わらせてあげましょう。この国の王として勇敢に戦おうとした、それだけで国民は涙する」
ガブリエルは淡々と告げた。
ニュクスの襲来を利用したクーデターだ。
まさか、このタイミングで仕掛けるなど誰も考えていない。そして、英雄たちの配置は王城周辺がメイン。同じ英雄であるガブリエルが城を内側から守っていると知っていたので、まさか謁見の間でクーデターが起きているなど夢にも思っていなかった。
ユウグレナのローブがサンバルトにも巻き付き、ゼノベクトに巻き付いたロープの先端が細かくほぐれ、指先に絡みついていく。
「さぁ『グレイプニル』よ。ゼノベクトの筆跡をまねて遺書を書きなさい。その後はサンバルトの遺書もね」
ユウグレナは、羊皮紙とペンを手にゼノベクトへ近づく。
ロープにより無理やり立たされ、ゼノベクトの手にはペンが握られた。
「な、なぜ、こんな……」
「決まっている。おこぼれの王なんて認めていないからよ」
「っく……」
そして、ゼノベクトは羊皮紙に遺書を書き始めた。
「刺せ」
「え?」
次の瞬間───ゼノベクトの『影』から現れた少年が、ユウグレナの腹にナイフを突き刺した。
ポカンとするユウグレナ。
少年はさらに数本のナイフをユウグレナに刺す。
「ごぷっ……っが、え?」
「ゆ……ユウグレナ!? な、なに!? っごぁ!?」
さらに、ヒルクライムの頭上に巨大な『水瓶』が現れ、脳天を直撃。
ヒルクライムは白眼を剥いて倒れた。
「な……これは」
「あなたなら、このタイミングを狙うと思っていたわ」
謁見の間のドアが開き、メルが現れた。
「叔父様、叔母様。そしてガブリエル……国家反逆罪の現行犯ね。まさかこのタイミングで事を起こすとは……可能性は低いと思っていたけど、準備して正解だった」
「貴様……」
「あなたと同じよガブリエル。わたしは、この戦争の先を見据えている。準備はずっと前からしていた」
部屋に入ってきたのは、バーソロミューとユイシスだった。
『影』に入っていた少年と少女は、すでに別の影に移動している。
「ガブリエル。特A級召喚士のあなたにこんなことを言うのは辛いわ。でも言わせて……あなたを拘束します」
「……やれやれ。まぁ、別に構いません。準備をしていたのは私も同じですから」
メルとガブリエル。
ニュクス・アースガルズと関係のない、裏側の戦いが始まった。
◇◇◇◇◇◇
アルフェンとウィルは、ニュクスのいる小高い丘まで来た。
丘に不釣り合いな椅子に座るニュクスと、そこに跪くアポカリプス。
ニュクスは、アルフェンを見てにっこり微笑んだ。
「やっほ~♪」
「……ニュクス・アースガルズ」
「ニュクスでいいよ。それより、かなり強くなったね。たった百日、気の持ちようでこうも変わるなんて、やっぱり人ってすごいね」
「身体鍛えても百日ぽっちじゃ意味ないからな。だから……ジャガーノートと話した」
「……ふーん」
ニュクスは、椅子に寄り掛かる。
足を組みかえ、アルフェンを見て笑った。
「命を捨てる覚悟、だね?」
「…………」
「やめときなよ。キミはまだ若い……こんなところで死ぬなんてもったいないよ」
「だから?」
「だから、あたしと一緒に来ない? アルフェンが望むことなんでもしてあげる。好きなだけ抱いていいし、欲しいものがあるならなんでも手に入れてあげる。どう?」
「いらねーよ。それに、俺はお前ほど寂しいわけじゃない?」
「……寂しい?」
「ああ。お前さ……明るく振舞ってるけど、なんとなくわかる。寂しいんだろ?」
「……寂しい、ねぇ? うーん。考えたことなかったな。話相手ならいっぱいいるし、別に寂しい……かな? うーん」
ニュクスは考え込んでしまった。
なんとなく、アルフェンにはわかった。
ニュクスは、一人ぼっちだ。いくら召喚獣を人の姿に似せようと、ヒトの真似事をさせようと……それは、人ではない。
アルフェンだって理解している。召喚獣は召喚獣、人は人だ。
だからこそ、手を取りあえる。でも、ニュクスはそれがない。利用するだけのモノにしか見ていない。
「お前の左手……ドレッドノート。そこに、ドレッドノートの意識はあるか?」
「そんなのないよ。昔、ジャガーノートにやられて消えちゃった」
「そうか……でも、ジャガーノートは言ってた。ドレッドノートの意識はまだ残ってるって」
「え……?」
「お前、その左手、道具としか見てないもんな。本当の意味で、ドレッドノートに話しかけたことあるか?」
「そんなの当たり前じゃん。あたしは、ドレッドノートを愛してるし! ドレッドノートだってあたしを」
「じゃあ……なんでドレッドノートの意志は出てこない?」
「そ、それは~……」
ニュクスは答えられなかった。
俯き、首を傾げ、腕をプラプラさせる。まるで子供のように。
真に通じ合っていれば、ドレッドノートの声は聞こえるはず。アルフェンとモグが通じあっているように、ニュクスとドレッドノートも話し合えるはずだ。
それができない今が、最大にして最後のチャンス。
ニュクスから、ドレッドノートを引き剥がす。
やり方は、一つだけある。
「ニュクス・アースガルズ……お前の中にあるドレッドノートを引きずり出す。そして……」
引き剝がす。
アルフェンは、右腕を構える。
すると……跪いていたアポカリプスが立ちあがった。
その眼は、アルフェンに向けられている。
だが……ずっと黙っていたウィルが前に出る。
「そこの雑魚、相手してやるよ」
「……主。ゴミの始末をしてきます」
「任せるね。あたし、アルフェンともっと話したくなっちゃった」
アポカリプスは一礼した。
すると、その肉体が変化していく。
キラキラした鋼のような皮膚が盛り上がり、まるで鎧のようになる。顔も兜を模したような形になり、手には大きな剣が握られた。
召喚獣としての姿。だが、これまでのような巨大化とは違い、肉が詰め込まれ精錬されたようなデザインだった。
ウィルは軽く口笛を吹く。
「この子、ベルゼブブより……ううん、あたしが召喚した中で最強の力を持ってるよ。キミ程度じゃ挽肉にされて終わりかもね」
「クソボケか? オレがこんな雑魚にやられるわけねーだろ」
ウィルはアルフェンの肩をパシッと叩く。
「死んだら殺す」
「お前もな。ウィル」
「フン……」
ウィルは笑い、アルフェンは左手の拳をウィルへ突き付けた。
ウィルは、右の拳をアルフェンの拳にぶつける。
「終わったら……一杯付き合えよ」
「ああ。もうすぐ十六歳だし、いくらでも付き合ってやる」
「へ……生意気なガキ。じゃ、後でな。アルフェン」
「おま、名前」
ウィルは飛び出し、左手をアポカリプスに向けた。
「穿て───『ヘッズマン』!!」
「ゴミを始末する」
弾丸が発射され、アポカリプスは弾丸を躱し───そのまま二人は丘の奥に消えて行った。
残されたのは、ニュクスとアルフェン。
「じゃ、始めよっか」
ニュクスは立ち上がり、座っていた椅子を異空間に収納する。
左手をアルフェンに向け、アルフェンも右手を向ける。
「献上せよ、『ドレッドノート』」
「奪え、『ジャガーノート』」
男と女、黒と白、赤と青、王と女王、右と左。
どこまでも正反対な二人は、唯一同じである金色の瞳で互いを見つめた。
「アルフェン、後悔するといいよ。あたしに喧嘩を売ったことをね」
「お前こそ後悔しろ……俺は、絶対に負けない!!」
最終決戦、開始。
現在、ここにいるのはアースガルズ国王ゼノベクト、そして護衛を買って出たサンバルトだ。
地下特別室に避難するのではなく、謁見の間で戦いの報告を聞いているだけマシだろう。他の貴族は国王を差し置いて避難しているのに。
ゼノベクトは、サンバルトに聞く。
「サンバルト。メルは……」
「外で指揮を執っています。全く、あのお転婆め……」
王族自らが最前線で指揮を執ることに対し、お転婆という感想しか出ないサンバルト。
ちなみに、サンバルトはリリーシャから『王を守れ』と命じられたのでここにいる。自分もしっかりと戦っているつもりだった。
メルは、S級だけでなく、ピースメーカー部隊にも指示を出している。そんなことも知らず、のんきな二人は戦況についてあれこれ話していた。
「サンバルト。この戦い、勝てるだろうか?」
「当然です。リリーシャが指揮を執るピースメーカー部隊に負けはない」
「そうだな。うんうん」
馬鹿馬鹿しいくらい呑気な会話だった。
メルが聴いていたら頭を抱えたであろう。
ちなみに、この謁見の間にいるのは二人だけ。護衛は部屋の外で待機。王城周辺は二十一人の英雄たちが守っている。
ここに、死角はない。間違いなく……アースガルズ王国で一番安全だった。
だが、外がいくら堅牢でも、内側は?
「む? ……おお、お前たち」
謁見の間に入ってきたのは三人。
ヒルクライム、ユウグレナ。そして……ガブリエルだ。
A級召喚士二人に、特A級召喚士が一人。
なぜ、ここにいるのか。サンバルトは首を傾げる。
「何か報告ですか?」
「いえ。あなた方の命を奪いに来ました」
「「は?」」
次の瞬間、ヒルクライムの手に現れた『拳銃』がサンバルトめがけて数発の弾丸が発射された。弾丸はサンバルトの左肩、両足を撃ち抜く。
「ぐ、っがぁぁぁぁぁぁっ!?」
「あら優しい。頭を狙わないのね」
「まぁ、楽しむ時間はあるだろう?」
ユウグレナがクスクス笑い、ヒルクライムは拳銃をクルクル回す。
ゼノベクトは、わけもわからずのたうち回る息子を見た。そして。
「な、な、なにぉ!! 何をしているのだ!? 血迷ったか貴様ら!!」
「血迷ってなどいませんよ」
そして、ユウグレナ。
ユウグレナの周りに何十本もの『ロープ』が現れ、生き物のように動く。ロープはゼノベクトの元へ向かい、全身を拘束した。
「ぬがぁ!?」
「はいおしまい。ガブリエル様、この次は?」
「これから二人には遺書を書いていただきましょう。全ての権限を私たちに譲り渡すと書かせてね。その後は、外にいる魔獣の元へ放り出せば、二人仲良く捕食されるでしょう」
「それはいいな。だが、引きこもりの王が最前線へ出向くのは不自然だと思うが」
「最後くらい、英雄として終わらせてあげましょう。この国の王として勇敢に戦おうとした、それだけで国民は涙する」
ガブリエルは淡々と告げた。
ニュクスの襲来を利用したクーデターだ。
まさか、このタイミングで仕掛けるなど誰も考えていない。そして、英雄たちの配置は王城周辺がメイン。同じ英雄であるガブリエルが城を内側から守っていると知っていたので、まさか謁見の間でクーデターが起きているなど夢にも思っていなかった。
ユウグレナのローブがサンバルトにも巻き付き、ゼノベクトに巻き付いたロープの先端が細かくほぐれ、指先に絡みついていく。
「さぁ『グレイプニル』よ。ゼノベクトの筆跡をまねて遺書を書きなさい。その後はサンバルトの遺書もね」
ユウグレナは、羊皮紙とペンを手にゼノベクトへ近づく。
ロープにより無理やり立たされ、ゼノベクトの手にはペンが握られた。
「な、なぜ、こんな……」
「決まっている。おこぼれの王なんて認めていないからよ」
「っく……」
そして、ゼノベクトは羊皮紙に遺書を書き始めた。
「刺せ」
「え?」
次の瞬間───ゼノベクトの『影』から現れた少年が、ユウグレナの腹にナイフを突き刺した。
ポカンとするユウグレナ。
少年はさらに数本のナイフをユウグレナに刺す。
「ごぷっ……っが、え?」
「ゆ……ユウグレナ!? な、なに!? っごぁ!?」
さらに、ヒルクライムの頭上に巨大な『水瓶』が現れ、脳天を直撃。
ヒルクライムは白眼を剥いて倒れた。
「な……これは」
「あなたなら、このタイミングを狙うと思っていたわ」
謁見の間のドアが開き、メルが現れた。
「叔父様、叔母様。そしてガブリエル……国家反逆罪の現行犯ね。まさかこのタイミングで事を起こすとは……可能性は低いと思っていたけど、準備して正解だった」
「貴様……」
「あなたと同じよガブリエル。わたしは、この戦争の先を見据えている。準備はずっと前からしていた」
部屋に入ってきたのは、バーソロミューとユイシスだった。
『影』に入っていた少年と少女は、すでに別の影に移動している。
「ガブリエル。特A級召喚士のあなたにこんなことを言うのは辛いわ。でも言わせて……あなたを拘束します」
「……やれやれ。まぁ、別に構いません。準備をしていたのは私も同じですから」
メルとガブリエル。
ニュクス・アースガルズと関係のない、裏側の戦いが始まった。
◇◇◇◇◇◇
アルフェンとウィルは、ニュクスのいる小高い丘まで来た。
丘に不釣り合いな椅子に座るニュクスと、そこに跪くアポカリプス。
ニュクスは、アルフェンを見てにっこり微笑んだ。
「やっほ~♪」
「……ニュクス・アースガルズ」
「ニュクスでいいよ。それより、かなり強くなったね。たった百日、気の持ちようでこうも変わるなんて、やっぱり人ってすごいね」
「身体鍛えても百日ぽっちじゃ意味ないからな。だから……ジャガーノートと話した」
「……ふーん」
ニュクスは、椅子に寄り掛かる。
足を組みかえ、アルフェンを見て笑った。
「命を捨てる覚悟、だね?」
「…………」
「やめときなよ。キミはまだ若い……こんなところで死ぬなんてもったいないよ」
「だから?」
「だから、あたしと一緒に来ない? アルフェンが望むことなんでもしてあげる。好きなだけ抱いていいし、欲しいものがあるならなんでも手に入れてあげる。どう?」
「いらねーよ。それに、俺はお前ほど寂しいわけじゃない?」
「……寂しい?」
「ああ。お前さ……明るく振舞ってるけど、なんとなくわかる。寂しいんだろ?」
「……寂しい、ねぇ? うーん。考えたことなかったな。話相手ならいっぱいいるし、別に寂しい……かな? うーん」
ニュクスは考え込んでしまった。
なんとなく、アルフェンにはわかった。
ニュクスは、一人ぼっちだ。いくら召喚獣を人の姿に似せようと、ヒトの真似事をさせようと……それは、人ではない。
アルフェンだって理解している。召喚獣は召喚獣、人は人だ。
だからこそ、手を取りあえる。でも、ニュクスはそれがない。利用するだけのモノにしか見ていない。
「お前の左手……ドレッドノート。そこに、ドレッドノートの意識はあるか?」
「そんなのないよ。昔、ジャガーノートにやられて消えちゃった」
「そうか……でも、ジャガーノートは言ってた。ドレッドノートの意識はまだ残ってるって」
「え……?」
「お前、その左手、道具としか見てないもんな。本当の意味で、ドレッドノートに話しかけたことあるか?」
「そんなの当たり前じゃん。あたしは、ドレッドノートを愛してるし! ドレッドノートだってあたしを」
「じゃあ……なんでドレッドノートの意志は出てこない?」
「そ、それは~……」
ニュクスは答えられなかった。
俯き、首を傾げ、腕をプラプラさせる。まるで子供のように。
真に通じ合っていれば、ドレッドノートの声は聞こえるはず。アルフェンとモグが通じあっているように、ニュクスとドレッドノートも話し合えるはずだ。
それができない今が、最大にして最後のチャンス。
ニュクスから、ドレッドノートを引き剥がす。
やり方は、一つだけある。
「ニュクス・アースガルズ……お前の中にあるドレッドノートを引きずり出す。そして……」
引き剝がす。
アルフェンは、右腕を構える。
すると……跪いていたアポカリプスが立ちあがった。
その眼は、アルフェンに向けられている。
だが……ずっと黙っていたウィルが前に出る。
「そこの雑魚、相手してやるよ」
「……主。ゴミの始末をしてきます」
「任せるね。あたし、アルフェンともっと話したくなっちゃった」
アポカリプスは一礼した。
すると、その肉体が変化していく。
キラキラした鋼のような皮膚が盛り上がり、まるで鎧のようになる。顔も兜を模したような形になり、手には大きな剣が握られた。
召喚獣としての姿。だが、これまでのような巨大化とは違い、肉が詰め込まれ精錬されたようなデザインだった。
ウィルは軽く口笛を吹く。
「この子、ベルゼブブより……ううん、あたしが召喚した中で最強の力を持ってるよ。キミ程度じゃ挽肉にされて終わりかもね」
「クソボケか? オレがこんな雑魚にやられるわけねーだろ」
ウィルはアルフェンの肩をパシッと叩く。
「死んだら殺す」
「お前もな。ウィル」
「フン……」
ウィルは笑い、アルフェンは左手の拳をウィルへ突き付けた。
ウィルは、右の拳をアルフェンの拳にぶつける。
「終わったら……一杯付き合えよ」
「ああ。もうすぐ十六歳だし、いくらでも付き合ってやる」
「へ……生意気なガキ。じゃ、後でな。アルフェン」
「おま、名前」
ウィルは飛び出し、左手をアポカリプスに向けた。
「穿て───『ヘッズマン』!!」
「ゴミを始末する」
弾丸が発射され、アポカリプスは弾丸を躱し───そのまま二人は丘の奥に消えて行った。
残されたのは、ニュクスとアルフェン。
「じゃ、始めよっか」
ニュクスは立ち上がり、座っていた椅子を異空間に収納する。
左手をアルフェンに向け、アルフェンも右手を向ける。
「献上せよ、『ドレッドノート』」
「奪え、『ジャガーノート』」
男と女、黒と白、赤と青、王と女王、右と左。
どこまでも正反対な二人は、唯一同じである金色の瞳で互いを見つめた。
「アルフェン、後悔するといいよ。あたしに喧嘩を売ったことをね」
「お前こそ後悔しろ……俺は、絶対に負けない!!」
最終決戦、開始。
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