最強スキル『忍術』で始めるアサシン教団生活

さとう

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第二章 クオルデン王立魔法学園

入学式前

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 入学式当日。
 シャドウは寮内の自室で制服に着替え、鏡の前で確認する。

「……アイテムボックスは胸に。リストブレード、手裏剣は数枚、苦無は一本が限度かな」

 手裏剣は足首に隠したホルスターに苦無と一緒に入れ、右手だけリストブレードを装備。
 アイテムボックスは、ヒナタが用意した胸に隠すタイプの小さな物を一つだけ。
 刀や暗殺者のコート、その他の装備を全てカバンのアイテムボックスに入れ、そのカバンをさらに胸のポーチに隠すことで、なんとか全ての装備を持つことができた。
 すると、隣の部屋からノック。

「失礼します。シャドウ様、準備ができました」
「俺もできた……」
「シャドウ様?」

 制服姿のヒナタだった。
 長い黒髪をポニーテールにして、従者用の学生服を着た姿は似合っている。
 スカートが短いが、スパッツを履いていた。
 ちなみにシャドウの部屋の隣はヒナタの部屋。学園が生徒に与えた寮の部屋は個室で、従者用にも小さな部屋が与えられている。

「何か変でしょうか?」
「あ、いや……その、似合っている」
「……ありがとうございます」

 ヒナタは何度か目をぱちぱちさせ、褒められていると気付き頭を下げた。
 シャドウは照れを隠すように言う。

「一応、リストブレードは一本だけ装備した。あと足首に手裏剣と苦無を。胸に隠した薄型のポーチに、アイテムボックスをしまっている」
「いいと思います。それと……こちらを」

 ヒナタは、魔法師が使う『杖』をシャドウに渡す。
 
「こちらには、『炎の槍ファイアジャベリン』と『風の刃エアスラスト』のテンプレートが入っています。忍術を使用する際、こちらを使うフリをしてください」
「わかった。魔法授業はどうしてもあるしな……」
「それと、最後に復習です」
「……注意すべきは、黄金世代」

 黄金世代。
 それは、『虹色の魔法師アルコバレーノ』の名を関するクオルデン王国の七大貴族。
 シャドウも、クオルデン王国に入ってから知った。今回の入学式では、クオルデン王国の七大貴族に属する魔法師が七人、入学する。

 『火』のハーフィンクス公爵家。
 『水』のブリトラ侯爵家。
 『土』のグランドアクシス公爵家。
 『風』のスラッシア伯爵家。
 『光』のクオルデン王家。
 『闇』のディザイア伯爵家。
 『無』のアルトアイネス騎士爵家。

「まさか、七属性最強の貴族が揃って入学するとは……」

 ちなみに、ハーフィンクス家からは、シャドウの元妹シェリアが出る。
 シャドウは、ヒナタから見せてもらった名簿にある名前を見る。

「そして、アルマス王家から、二属性の天才ラウラ姫……」

 後の情報でわかったことだが、シャドウが出会ったラウラ姫は、アルマス王国始まって以来、『光』属性を操る天才であった。
 そのほかにも、クオルデン王国貴族はもちろん、他国からも有名な魔法の貴族が続々と入学する。そして、誰かが『黄金世代』と言ったことをきっかけに、入学者たちを『黄金世代』と呼ぶようになった。

「……ある意味、チャンスだな」
「はい。有名どころの貴族たちが目立てば、シャドウ様は動きやすくなるかと。この年代の子供、貴族は、自分の実力をひけらかし、目立つことしか考えていないので」
「辛辣だが……まあ、その通りだろうな」

 シャドウは名簿を置き、教師の名前が書かれてるファイルを手に取る。

「教師も二百人以上、教師以外にここで働いている大人は五百人以上……掃除人や植木職人、食堂のおばちゃんから購買のおじさんと、疑いだしたらキリがない。それに、旅団は大人だけとは限らない……」
「情報が圧倒的に足りませんね……ですが、学園生活を送りながら、情報を集めてみせます」
「そっちはお前の専門だ。俺も力になるけど、あまり期待しないでくれ……」
「シャドウ様は、暗殺の方をお願いします。ハンゾウ師から体術、武器術を習いはしましたが、シャドウ様の足下にも及びませんので」

 そう言い、ヒナタは名簿をアイテムボックスにしまう。
 
「よし、忘れ物はないな……ヒナタ、そろそろ行こうか」
「はい」

 部屋を出て最初に向かうのは、入学式が行われている大講堂。
 目立たないように、そして暗殺のための学園生活が、始まろうとしていた。

 ◇◇◇◇◇◇

 大講堂に移動すると、すごい偶然だった。

「あーっ!! シャドウくん!!」
「…………あ、ああ。どうも」

 アルマス王国第一王女アウラが、お供のソニアを連れ、大講堂の正面にいた。
 偶然、バッタリ出会ってしまった。しかもシャドウの名を出して。
 ソニアがシャドウをジロっと睨み、ヒナタは一礼する。

「ふふ、久しぶりだね。元気だった?」
「あ、ああ。まあ……」
「あれ、元気ない? これから入学式だよ、がんばろっ!!」

 世間一般で、ソニアは『可愛い』に分類されるのだろう。
 淡い金色の髪、柔和で整った顔立ち、身体付きもよく制服の胸部を盛り上げる二つの塊は、十六歳ではかなり大きい方だろう。帽子を被り、髪には星を模した髪飾りを付けているのが特徴的だった。
 すると、ソニアが割り込む。

「姫様。この場では少し目立っているようです、どうかご挨拶は後ほど」
「あ、うん。じゃあ後でね、シャドウくんっ、ヒナタちゃんっ!!」
「「…………」」

 二人は一礼……嵐のような女の子だった。
 ある意味、ソニアに感謝しつつシャドウたちは講堂へ。
 講堂内は広く、入学式での席は自由のようだ。空いている席に座り待っていると。

「シャドウ様……」
「……今、確認した」

 大勢の男子、女子を連れて、一人の少女が講堂に入って来た。
 栗色の長い髪をツインテールにした、小柄で可愛いらしい少女……シャドウの元妹、シェリアだ。
 すでに大勢の子分を引き連れているのを見ると、ハーフィンクス家の名を上手く利用しているようだ。

「眼を合わせるなよ。アレは任務に関係ない生物だ」

 冷酷、いや無感情だった。
 ハーフィンクス家で姉妹にいじめられていたことなんて、シャドウにとってどうでもいいことである。
 シェリアは子分たちと会話しながら席を探している。
 そして───。

「あ、シャドウく~ん!!」
「……シャドウ?」

 ラウラがシャドウを見つけ、声をかけて来た。
 その声に、シェリアが反応……シャドウを視認した。
 その展開、間の悪さにシャドウは頭を抱えたくなる……だが、もう遅い。
 シェリアがシャドウを見つけ、目を見開き、向かって来た。
 そして、ラウラも。

「あれれれ~? なんでこんなところに、お兄ちゃんがいるのかな?」
「シャドウくんまた会えたねっ」

 シェリアの声に被せるように、ラウラが挨拶してきた。無自覚なのか、ニコニコしている。
 シェリアが一瞬だけ眉をピクリと動かし、ラウラを睨む。

「あなた、今はあたしが喋ってるんだけど~」
「あ、ごめんなさい。えへへ」
「なんかムカつくね~……あなた、名前は?」
「申し遅れました。わたし、アルマス王国第一王女、ラウラです」
「……第一王女」

 さすがに、一国の貴族と王女では立場が違う。
 アルマス王国は小国だが、王女であることに変わりはない。
 シェリアはムスッとして、シャドウを見て言う。

「まあ、いろいろ楽しい話、聞けそうだね……またね、お兄ちゃん」
「……失礼ですが、どちら様でしょうか」
「はあ?」
「自分は、クサナギ男爵家の、シャドウ・クサナギ男爵です。どちらかと勘違いされてるのでは?」
「……ふーん。そういう態度取っちゃうんだ。ま、面白いことになりそうだし、いいけどね~」

 ニヤニヤ笑い、シェリアは子分と共に消えた。
 ラウラは首を傾げ、ヒナタは終始影に徹し、ソニアは警戒していた。
 そしてシャドウは……入学式すら始まっていないのに、頭を悩ませるのだった。
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