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第二章 クオルデン王立魔法学園
学園散策
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部屋のドアがノックされ、シャドウとヒナタは顔を見合わせた。
ヒナタは隣の部屋に移動し、シャドウは急いで制服に着替え、ドアを開ける。
「はーい……あれ? あなたは、ラウラ王女殿下」
「はいダメです。やりなおし」
「……え」
「王女殿下、は必要ありません!! 先生も言ってたじゃないですか、学園では三等魔法師として扱うって……だからシャドウくんも、ラウラって呼んでください!!」
いきなりすぎて事態が飲み込みにくいシャドウ。何となくラウラの背後に立っているソニアを見ると、しかめっ面をしながら口を結んでいた。
すると、使用人室のドアが開き、ヒナタが出てくる。
「ラウラ王女殿下。何か御用でしょうか?」
「ヒナタちゃんもダメ!! 王女殿下、っていうのはナシで!!」
「え、えっと……」
「お嬢様、やはりいきなりは難しいのでは?」
「むー……ソニアの《お嬢様》が最大の譲歩だからね。まさか、シャドウくんたちにお嬢様って呼んでもらうわけにはいかないしー」
「……あの、それで、何か用事ですか?」
「うん。学園を一緒に回ろうと思って!!」
「……はい?」
驚くシャドウ……これは、誘われているのだろうか?
何となくまたソニアを見ると、ため息を吐きつつ説明する。
「……とにかく、一緒に行きましょう。あなたを誘うためだけに、お嬢様は殿下やハーフィンクス公爵令嬢のお誘いを断ったのですよ」
「…………え」
ソニア曰く。
『わたし、シャドウくんと一緒に周りますので!! あ、シェリアちゃんとユアンくん、一緒に回ったらどうかな?』
と……いきなり『くん付け』と『ちゃん付け』でシェリアとユアンを呼び、さらにシャドウを誘うためだけに二人の誘いを断ったらしい。
シャドウは頭を抱えたくなった。
強者とは別に、こうも任務の障害となる誘い、悪意無き邪魔が存在することを知ることができて、ある意味運がいいと考えることにした。
なんとも断りにくくなった。
(このお姫様、シェリアとユアン殿下の誘いを断って俺のところに来たのか……このまま俺が誘いを断れば、俺が周りから何を言われるか。誘いを受けたら受けたで、どうなるか……ああもう、このお姫様、これも演技で本当は『黄昏旅団』の関係者なのか?)
しばし考え込んでいると。
「あの~……ご迷惑でしたか?」
「あ、いや」
これまた、断りにくい。
シャドウは曖昧に微笑みつつ、ペコっと頭を下げた。
「で、では……ご一緒させて、いただきます」
◇◇◇◇◇◇
シャドウ、ラウラ、ソニア、ヒナタ。
四人は寮から出て、まずは図書館に向かった。
「ここの図書館、王都で二番目に大きい大図書館らしいですよ」
「へえ……」
図書館に到着。
中はかなり広い。円形の塔であり、各階層ごとにジャンル別の本が並んでいる。
塔は二十階建て。上まで行くのにかなり苦労しそうだ。
「わたし、アルマス王国でここの図書館の話は聞いてましたので、ぜひ来てみたかったんです」
ラウラが図書館を見上げながら言う。空洞の塔なので、見上げると高い天井までよく見えた。
「……読書、好きなんですか?」
「はい!!」
シャドウは思わず聞いてみたが、ラウラが嬉しそうに笑う。
「小さい頃から魔法の練習ばかりで……空いた時間はずっと、読書をして過ごしていました。なので、本は大好きです」
「…………」
ハーフィンクス家では、読書ですら許可が必要だったシャドウ。
楽しそうに本について語るラウラを見て、少しだけ羨ましいと思ってしまった。
図書館ばかりでは、とソニアが言い、次に向かったのは地下ショッピングモール。
「この学園、購買や飲食店関係は全部、地下にあるんですよね」
「いろいろな店があります。えっと……確か、地下ショッピングモールには二百以上の店が入っているとか」
ラウラ、ソニアが説明してくれる。
ちなみにシャドウ、ヒナタから地下の店についても聞いていた。
ソニアがヒナタに言う。
「主が望む物を買いにいくなら、中央にある総合スーパーマーケットがおススメだ。大抵のものはそこで手に入る」
「なるほど……覚えておきます」
と───総合スーパーマーケットに向かおうとした時だった。
「あ……ら、ラウラさん」
「あれっ、ユアンくん!! どうしたのかな?」
第二王子ユアンが、従者の少女と一緒にいた。
シャドウはユアンに向かって頭を下げる。
「あ、あの……奇遇だね」
「うんうん。あ、さっきはごめんね、お誘い断っちゃって」
「いいんだ。その……よかったら、みんなで一緒に回らないかい? その、そっちの彼も良ければだけど」
「俺は構いませんよ」
「じゃあ、みんなで回ろっか」
ラウラがポンと手を叩き、ユアンが合流。さりげなくラウラの隣に並ぶと、モジモジしながらラウラに話しかけていた。
シャドウはその後ろを歩くと、ソニアが隣に並ぶ。
「……ユアン殿下は、お嬢様の幼馴染でもあるんだ」
「そうなんだ」
「うむ。まぁ、その……見ての通りだ」
恋する少年と、鈍感な少女にしか見えない。
そして、シャドウは気付いた。
ユアンの護衛の少女が、どこか寂しそうにユアンを見ていることに。
「……あちらの護衛の方は?」
「ユアン殿下の護衛だ。私と同じ騎士で、アルトアイネス騎士爵家から来た騎士ファリンだ」
「……へえ」
なんとなく、ユアンに気がありそうな気がした。
すると、ラウラがいきなり振り返る。
「ね、シャドウくんもこっち来てよ。ユアンくんと挨拶、してないよね?」
「え、ああ……」
ラウラではなく、ユアンの隣に移動すると、ユアンが笑う。
「初めまして。ユアンです」
「……シャドウ・クサナギです。よろしくお願いします」
何となく、ラウラと接する時は注意した方がいい……そんな気にさせる気配を感じた。
(というか……目立ちたくないのに、なんでこんなことになってるんだ)
第二王子ユアン、アルマス王国第一王女ラウラ。その二人と一緒に行動……どう考えても、目立たないわけがなかった。
ヒナタは隣の部屋に移動し、シャドウは急いで制服に着替え、ドアを開ける。
「はーい……あれ? あなたは、ラウラ王女殿下」
「はいダメです。やりなおし」
「……え」
「王女殿下、は必要ありません!! 先生も言ってたじゃないですか、学園では三等魔法師として扱うって……だからシャドウくんも、ラウラって呼んでください!!」
いきなりすぎて事態が飲み込みにくいシャドウ。何となくラウラの背後に立っているソニアを見ると、しかめっ面をしながら口を結んでいた。
すると、使用人室のドアが開き、ヒナタが出てくる。
「ラウラ王女殿下。何か御用でしょうか?」
「ヒナタちゃんもダメ!! 王女殿下、っていうのはナシで!!」
「え、えっと……」
「お嬢様、やはりいきなりは難しいのでは?」
「むー……ソニアの《お嬢様》が最大の譲歩だからね。まさか、シャドウくんたちにお嬢様って呼んでもらうわけにはいかないしー」
「……あの、それで、何か用事ですか?」
「うん。学園を一緒に回ろうと思って!!」
「……はい?」
驚くシャドウ……これは、誘われているのだろうか?
何となくまたソニアを見ると、ため息を吐きつつ説明する。
「……とにかく、一緒に行きましょう。あなたを誘うためだけに、お嬢様は殿下やハーフィンクス公爵令嬢のお誘いを断ったのですよ」
「…………え」
ソニア曰く。
『わたし、シャドウくんと一緒に周りますので!! あ、シェリアちゃんとユアンくん、一緒に回ったらどうかな?』
と……いきなり『くん付け』と『ちゃん付け』でシェリアとユアンを呼び、さらにシャドウを誘うためだけに二人の誘いを断ったらしい。
シャドウは頭を抱えたくなった。
強者とは別に、こうも任務の障害となる誘い、悪意無き邪魔が存在することを知ることができて、ある意味運がいいと考えることにした。
なんとも断りにくくなった。
(このお姫様、シェリアとユアン殿下の誘いを断って俺のところに来たのか……このまま俺が誘いを断れば、俺が周りから何を言われるか。誘いを受けたら受けたで、どうなるか……ああもう、このお姫様、これも演技で本当は『黄昏旅団』の関係者なのか?)
しばし考え込んでいると。
「あの~……ご迷惑でしたか?」
「あ、いや」
これまた、断りにくい。
シャドウは曖昧に微笑みつつ、ペコっと頭を下げた。
「で、では……ご一緒させて、いただきます」
◇◇◇◇◇◇
シャドウ、ラウラ、ソニア、ヒナタ。
四人は寮から出て、まずは図書館に向かった。
「ここの図書館、王都で二番目に大きい大図書館らしいですよ」
「へえ……」
図書館に到着。
中はかなり広い。円形の塔であり、各階層ごとにジャンル別の本が並んでいる。
塔は二十階建て。上まで行くのにかなり苦労しそうだ。
「わたし、アルマス王国でここの図書館の話は聞いてましたので、ぜひ来てみたかったんです」
ラウラが図書館を見上げながら言う。空洞の塔なので、見上げると高い天井までよく見えた。
「……読書、好きなんですか?」
「はい!!」
シャドウは思わず聞いてみたが、ラウラが嬉しそうに笑う。
「小さい頃から魔法の練習ばかりで……空いた時間はずっと、読書をして過ごしていました。なので、本は大好きです」
「…………」
ハーフィンクス家では、読書ですら許可が必要だったシャドウ。
楽しそうに本について語るラウラを見て、少しだけ羨ましいと思ってしまった。
図書館ばかりでは、とソニアが言い、次に向かったのは地下ショッピングモール。
「この学園、購買や飲食店関係は全部、地下にあるんですよね」
「いろいろな店があります。えっと……確か、地下ショッピングモールには二百以上の店が入っているとか」
ラウラ、ソニアが説明してくれる。
ちなみにシャドウ、ヒナタから地下の店についても聞いていた。
ソニアがヒナタに言う。
「主が望む物を買いにいくなら、中央にある総合スーパーマーケットがおススメだ。大抵のものはそこで手に入る」
「なるほど……覚えておきます」
と───総合スーパーマーケットに向かおうとした時だった。
「あ……ら、ラウラさん」
「あれっ、ユアンくん!! どうしたのかな?」
第二王子ユアンが、従者の少女と一緒にいた。
シャドウはユアンに向かって頭を下げる。
「あ、あの……奇遇だね」
「うんうん。あ、さっきはごめんね、お誘い断っちゃって」
「いいんだ。その……よかったら、みんなで一緒に回らないかい? その、そっちの彼も良ければだけど」
「俺は構いませんよ」
「じゃあ、みんなで回ろっか」
ラウラがポンと手を叩き、ユアンが合流。さりげなくラウラの隣に並ぶと、モジモジしながらラウラに話しかけていた。
シャドウはその後ろを歩くと、ソニアが隣に並ぶ。
「……ユアン殿下は、お嬢様の幼馴染でもあるんだ」
「そうなんだ」
「うむ。まぁ、その……見ての通りだ」
恋する少年と、鈍感な少女にしか見えない。
そして、シャドウは気付いた。
ユアンの護衛の少女が、どこか寂しそうにユアンを見ていることに。
「……あちらの護衛の方は?」
「ユアン殿下の護衛だ。私と同じ騎士で、アルトアイネス騎士爵家から来た騎士ファリンだ」
「……へえ」
なんとなく、ユアンに気がありそうな気がした。
すると、ラウラがいきなり振り返る。
「ね、シャドウくんもこっち来てよ。ユアンくんと挨拶、してないよね?」
「え、ああ……」
ラウラではなく、ユアンの隣に移動すると、ユアンが笑う。
「初めまして。ユアンです」
「……シャドウ・クサナギです。よろしくお願いします」
何となく、ラウラと接する時は注意した方がいい……そんな気にさせる気配を感じた。
(というか……目立ちたくないのに、なんでこんなことになってるんだ)
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