最強スキル『忍術』で始めるアサシン教団生活

さとう

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第三章 黄昏旅団所属『死神』のラムエルテ

正体

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 シャドウは一人で、ラウラとユアンに連れられ、ショッピングモールにある飲食店にいた。
 店内には四人しかいない。
 シャドウ、ラウラ、ユアン、そしてシェリアの四人。
 ラウラは、グラスを手に嬉しそうに叫んだ。

「では!! 一年一組のクラス委員親交会をはじめま~す!! かんぱいっ!!」
「か、かんぱいっ」
「乾杯」
「かんぱーい」

 ラウラに合わせ、やや緊張気味のユアン、シャドウ、やる気のなさそうなシェリアがグラスを合わせた。
 中身はオレンジジュースで、シャドウは一気に飲む。
 料理が運ばれ、食事会が始まった。
 食事が始まるなり、ラウラは骨付き肉をモグモグ食べる。

「従者のみんなには悪いけど、今日は四人で楽しもうねっ!!」
「う、うん。そうだね」
「……ん」
「んふふ。ねぇねぇお兄ちゃ~ん……あたし、いろいろ聞きたいんだけど、いい?」

 シェリアがニコニコしながらシャドウを見るが、シャドウは無視……しようと思った。だが、後々面倒くさい絡まれ方をされても嫌なので、ここでシェリアとのケリを付けるつもりで言う。

「いいぞ。その代わり、聞きたいことを聞いたら俺に関わるな。お前らハーフィンクス家の連中は、俺にとって憎悪の対象ってことも忘れるなよ」
「なっ……何よそれ!!」

 シャドウは無感情だった。シェリアを見もしないで淡々と言う。
 するとラウラが手で制する。

「すとっぷ!! まーまー喧嘩しないで。そういえば私も、シャドウくんのこと知らないなあ」
「……ボクは別に興味ないけど」
「んふふ。殿下にお姫様も気になるぅ? まあ、ちょっと調べればわかることだけどねぇ」

 その通り。
 シャドウがハーフィンクス家を追放された経緯は、クオルデン王国の王子と、アルマス王国の王子が調べれば簡単にわかるだろう。
 なので、シャドウが言う。

「俺は魔力こそあるが、魔術回路が存在しない欠陥だったんだ。だからハーフィンクス家で冷遇されて、十五歳になって追放されたんだよ」
「ま、魔術回路が存在しないって……あ、あり得るのかい?」
「ああ。正確には、眠っていただけで、ちゃんと存在したけどな」

 正確には、ヘドロ以上に濃厚過ぎるシャドウの魔力が、シャドウの魔術回路に詰まり固まっていたせいだった……が、そんなことは言っても意味がない。
 
「でもでも、アルマス王国に来て、魔法を使えるようになったんだよね」
「ああ。クサナギ男爵のおかげでな」
「そっか~……クサナギ男爵、一度しか会ったことなかったけど、すごく優しい人だったなあ」

 ラウラがサラダをモグモグ食べながら言う……誰よりも食事を楽しんでいるようだ。
 すると、シェリアが言う。

「ね、お兄ちゃん。お姉ちゃんにお兄ちゃんのこと伝えたら、すっごく興味津々だったよ? 殿下は知ってるよね、お姉ちゃんのこと」
「……まあね。兄さんの婚約者だし、何度か会って食事をしたこともあるよ」
 
 その表情は、暗くも明るくもない……シャドウにはわかった。
 ユアンは、姉セレーナを嫌悪している。

「あ、私も知ってる!! 学園で三人しかいない『四種持ち』のお方だよね~、ユアンくんのお兄さんロシュフォール先輩の婚約者で、学園一の秀才カップル!! ん~憧れちゃうなあ」
「お姉ちゃんはすっごいんだから。ふふーん」

 姉を褒められ上機嫌のシェリア。
 
「ハーフィンクス家の天才姉妹、か」

 シャドウがポツリと言うと、ユアンがシャドウをチラッと見る。
 四種持ちの天才セレーナ、火属性の天才シェリア。
 そこに、シャドウの名前はない。全く気にしていないことだが。

「ま、お兄ちゃんのことはわかったし、もういいや」
「待て。俺から一つ」
「なに?」
「俺を『お兄ちゃん』って呼ぶな。気色悪いんだよ」
「なっ……」
「身内でもない人間にそう呼ばれるのは怖気がする。それと、お前の聞きたいことは終わったな? これからは俺の視界に入らないようにしろ」

 シャドウは立ち上がる。
 シェリアが震えていたが、完全に無視。

「あ、シャドウくん……」
「待った。ラウラさん、今は何も言わない方がいいよ……彼の立場になればわかる。ハーフィンクス家を恨むのは当然だろうし」
「……うん。シェリアちゃん、大丈夫?」
「……うるさい」

 シェリアも立ち上がり、ズンズンと店を出た。
 残されたのは、ラウラとユアン。

「みんな、仲良くできるといいのにな……よし!! ユアンくん、全部食べちゃおっか!!」
「う、うん……って、全部!?」

 ラウラと二人きりになれた喜びも束の間……ユアンはラウラにいいところを見せようと食べまくり、迎えに来た従者によって運ばれる醜態をさらすのだった。

 ◇◇◇◇◇◇

 ヒナタは一人、夜の学園校舎の屋根に立っていた。
 気配を殺し、百メートル以上離れた位置から見つめる先にあるのは、第三図書館。
 図書館を観察していると、司書員が出てきた。

「……来た」

 司書員は一人じゃない。もう一人、司書長であるゲルニカもいる。
 司書はゲルニカに頭を下げ、別方向へ。
 ゲルニカも一人で歩き出した。

「……」

 ヒナタはフードを被り、マスクを付けて追う。
 尾行……ヒナタは、ハンゾウから暗殺スキルのいろはを叩きこまれた。
 忍術こそ使えないが、ハンゾウの開発したテンプレートである『変化の術』で他者に変身することで、潜入任務も行える。
 潜入、調査、尾行、裏工作。これに関してはシャドウでも歯が立たない。
 ハンゾウ曰く、『ヒナタの尾行を撒くのはほぼ不可能』とのこと。
 ヒナタは気配を殺し、音もなく進む。
 時間は夜。一般的に門限は夜の十時。現在はまだ八時過ぎなので、生徒の往来は多い。
 すれ違う生徒は皆、ゲルニカに頭を下げた。

(こうしてみると、普通の教師……でも)

 ヒナタは確信した……ゲルニカは、普通ではない。
 歩き方。それだけでわかった……あの歩き方は、特殊な訓練を受けた者の歩き方だ。
 ゲルニカが向かうのは、職員用の宿舎。
 校舎から離れた場所にあり、生徒用の寮よりも立派な建物である。

(……寮の敷地内に入っていく。今日は行動を起こさないのかも)

 ヒナタの胸ポケットには、ゲルニカの司書室で見つけた鍵のコピーがある。
 何気ない鍵……厳重に隠してあるのなら重要な物に違いないが、机の上にある小さなケースに、ポンと置かれていた。
 逆にこういうのが怪しいんだ……と、ハンゾウが笑いながら教えてくれた。

(……宿舎に入った。今日はここまでかな)
「お嬢さん、何か御用かな?」

 背筋が一瞬で凍り付いた───が、ヒナタは瞬間的に回し蹴りを放った。
 が、蹴りは空を描く。
 間違いなく、背後に誰かがいた。

「……ッ!!」

 ひたり……と、手がヒナタの肩に触れた。
 誰かいる。だが、ヒナタは視認できない。
 左右、上下、振り返る。だが、誰もいないのだ。

「……ははは」

 声がした方を向くと、そこにはいた。
 ゲルニカ。
 第二学年の教師。先ほどと同じ、司書の服装で。
 もう間違いない。この教師が『黄昏旅団』の一員だ。

「やれやれ、善良な教師を演じていたのだが……バレてしまったようだ」
「…………」

 戦うべきではない。
 今すべきことは、この情報をシャドウに届けること。

「きみも、『風魔七忍』の一人かね? ふむ……その名を知る者はもう、我ら以外にはいないと思ったが……ああ、ハンゾウの弟子か?」

 挙動、容姿、声ですら情報になる。
 逃げるための全力───そう、ヒナタはプロだ。
 腰のポーチから煙玉を出し、手裏剣を同時に投げる。

「ほう?」

 ゲルニカは人差し指を振ると、手裏剣の真ん中に空いた穴に指を通して受け止める。
 だが、同時に煙玉が爆発……周囲が煙に包まれた。

「ははは、逃げ足の速い……女の子のようだ」

 そこにはもう、ヒナタはいなかった。
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