最強スキル『忍術』で始めるアサシン教団生活

さとう

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第三章 黄昏旅団所属『死神』のラムエルテ

黄昏旅団所属『節制』プロシュネ①

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 目の前にいる『教師』は、にこやかに一礼した。

「では自己紹介を。私は『節制テンパランス』のプロシュネと申します」
「───!!」

 『節制テンパランス』。
 黄昏旅団の一人。元風魔七人の弟子。
 オールバックの黒髪から一房だけ神が出ており、眼は糸のように細い。
 口が裂けるような笑みを浮かべ、事態を飲み込めておらずドヨめく生徒たち向かって指を向ける。
 そして、あり得ないほど大きな指パッチンをすると、生徒たちの身体がビクッと震えた。

「お静かに」

 殺気。
 その威圧感に、ほとんどの男子が飲まれた。
 真の暗殺者の殺気。裏の世界を知らない、同級生に対しイキるだけの子供が耐えられる圧ではない。
 シャドウは、圧に潰れたフリ・・・・・・・をした。

(……強い)

 パワーズとは桁違い。
 指パッチンだけでわかった。尋常じゃないほど鍛え抜かれた『指』の力。
 すると、隣にいたユアンがゆっくりと手を挙げた。

「あ、あの」
「ん? あなたは?」
「ぼ、ボクは……クオルデン王国第二王子ユアン。こ、これは一体何の真似だい? こんなことをすれば、王立騎士団や王立魔法師団が間違いなく動く。それに、城には『虹色の魔法師アルコバレーノ』だっている……い、今なら、罪が軽くなるように、ボクから」

 と、ここまで言った時。プロシュネがパチパチと拍手をした。

「お優しい坊ちゃんだ。でも……一つ、勘違いをしています」
「え……」

 すると、いつの間にか接近していた補助員の一人が、ユアンの背後から腕を掴んで捻り上げた。

「ぐぁっ!?」
「王立騎士団? 魔法師団? アルコバレーノ? その程度、我らが恐れるとでも?」
「な、なんで……」
「これは実験なのです。我々に敵対する『子供』を炙り出すための、ね。それが師の望み」
(……!!)

 敵対する子供。
 そう言われ、シャドウは一瞬で理解した……自分のことだと。
 シャドウの正体までバレたわけじゃない。ヒナタとの接触から敵を『子供』と、そして新入生の中にいると過程し、騒ぎを起こして炙り出す『実験』……シャドウは理解した。

(間違いない。こいつら……二年、三年が学園にいない隙を狙って来やがった。恐らく……いや確実に、女子たちのところにも幹部級がいる)

 プロシュネが指を鳴らすと、補助員がユアンの手を引いてプロシュネの前へ。
 
「乱暴ですみませんね。ああ、彼らの紹介も。こちら、『魔術師』の保有する非公式魔法組織『デロス』の皆さんです。ふふふ、知っていますか?」
「ひ、非公式魔法組織……」
「ユアンくん。あなたは知っていましたねえ。『魔法は貴族だけのものではない』と掲げ、魔法の才能がないと捨てられた貴族の子孫が立ち上げた組織です。ふふ」
「……ほ、本気なのかい? 本気で、こんなことをして……く、クオルデン王国を敵に回すのかい!?」

 ユアンが叫ぶと、プロシュネがクスクスほほ笑む。
 そして、ユアンの人差し指を摘まむと、ベキッとへし折った。

「ぐあああああああああああ!?」
「もちろんです。ふふ、痛みを知らない貴族のお坊ちゃんの悲鳴は素晴らしいですねえ……アドラメレクも楽しんでいるでしょうか?」

 生徒たちは声も出せず、ただ青ざめた。
 シャドウも青ざめる演技をし───冷静に考える。

(……まだ印は結べない。こいつら、二十人しかいないくせに、一人一人を冷静に『監視』してやがる。せめて一秒……俺への注意が逸れたら)

 ユアンがどうなってもいい。
 問題は、シャドウが印を結ぶことで正体が露見すること。
 一筋の汗が流れる。

(女子……ヒナタ、ルクレは)

 そう考えた時、一瞬だけ楽しそうにシャドウの腕を引くラウラが思い浮かぶ。
 できることなら、助けたい。
 危険を犯し、確実にこの場にいる全員を殺すと決意し、印を結ぼうとした時だった。

「おうおうおう!! 黙って聞いていれば、勝手なこと言ってんじゃねぇぞ!!」
「……?」

 いきなりデカい声で、拳を振り上げる男子生徒がいた。
 深紅のツンツン頭に、なぜか着ている運動着を脱ぎ捨て上半身裸になる。
 十六歳にしてはかなり鍛え抜かれた肉体をしており、プロシュネ、そして周りの二十人に拳を向けながら前に出た。

「オレはレックス!! こんな卑怯な真似しねぇでタイマンしろや!! おうおう、タイマンだ!!」
「……ふむ。学園にいるということは貴族なんでしょうが、品位にかけますね」

 ◇◇◇◇◇◇

(───今!!)

 ◇◇◇◇◇◇

 全員の視線がレックスに向いた瞬間、レックスは高速で印を結ぶ。
 そして、軽く地面を踏むと同時に心で叫んだ。

(鋼遁、『鋼棺はがねひつぎの術』!!)

 術が発動した瞬間、八十名の生徒たちの足元から『鉄の棺』が現れ、全員を飲み込んだ。

「なっ」

 これにはプロシュネも、デロスの構成員たちも驚く。
 土に含まれる鉄分を取り出し固め、魔力により補強する。シャドウオリジナルの属性『鋼』による拘束忍術。
 大きさは棺桶よりやや大きい。頭頂部に少しだけ空気穴が空いており窒素の危険性はない。
 いきなり現れた『棺桶』に、生徒たちが驚き絶叫した。

「プロシュネ様!!」
「慌てるな。どうやら、実験は成功のようですね」

 どこか落ち着いたプロシュネ。
 その時───棺桶の一つが砕け散る。

「…………」

 そこにいたのは、一人の『暗殺者アサシン』だった。
 黒いコートにフード、口元はマスクで隠し、首にはマフラーを巻いている。
 腰には刀を差し、僅かに見える目元は氷のように冷え切っていた。

「確定ですね。一年一組男子……この中に『風魔七忍』ハンゾウがいる」

 プロシュネは構えを取る。
 シャドウは右手の人差し指と中指を立て、顔の前に持ってきた。

「ククク、ではお相手願いましょう。ああ、一対二十一なんて卑怯なことはしません。そもそも、この二十人……なんのためにいると思いますか?」

 プロシュネが指を鳴らすと同時に、二十人が一斉に逃げ出した・・・・・

「風魔七忍は一年一組男子!! わが師『死神デス』に報告を!!」
「───!!」

 戦闘員ではなく、連絡員。
 二十人が、一人も同じ方向に逃げることなくバラバラに散った。
 同時に───シャドウは手裏剣を両手に二十枚持ち、一斉に投げる。
 そして、複雑な印を結び、小声で言う。

「磁遁、『手裏剣乱舞しゅりけんらんぶの術』」

 投げた手裏剣の速度が上がり、さらに複雑な動きをしながら二十人を追う。
 地中にある鉄を操作できるなら、すでにある鉄を操作できるはず。
 その発想から、土遁と雷遁を併用し『磁』の属性を生み出した。
 手裏剣は、逃げた二十人の頭に深くめり込んだ。二十人は一斉に倒れ……全員、死んでいた。
 プロシュネの口元がヒクヒク動く。

「忍術……指の組み合わせで魔法式を再現することで、魔法式を刻むことなく全ての属性を再現する……言うのは簡単ですが、行うには馬鹿げた量の魔力が必要になる。こんなことができるのはハンゾウか、我らのボスくらいかと思いましたが」

 シャドウは喋らず、腰の『夢幻』を抜いて構える。

「いいでしょう。このプロシュネの力をお見せしましょう」

 プロシュネは指をゴキゴキ鳴らし、ゆっくりと構えを取った。
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